クマちゃんと森の街の冒険者とものづくり ~ほんとは猫なんじゃないの?~

猫野コロ

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第366話 優しいマスターと寝ていない冒険者達。ホワイト面接官クマちゃん。

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 ホワイト面接官クマちゃんは、ハッとした。決定ちゃん……と。



 クマちゃんは動かなくなったクライヴの膝を肉球でふみふみし、介抱していた。

「クマちゃ、クマちゃ……!」
『五回ちゃ、六回ちゃ……!』
 
 心臓マッサージをしているつもりらしい。

 優しい追い打ちをかけるクマちゃんに、マスターが告げる。

「白いの、多分そいつは……あまり、アルバイトには向かないと思うんだが」

 あまりもなにも全く役には立たない。とまではさすがに言えなかった。

 しかし戦闘能力はトップクラスだ。氷の男が力を発揮できるのは仕事場である。
 もこもこした赤ん坊に甘い彼は考えた。
 起きないようならそのまま置いていくが、動かぬ奴を残したところで……寂しさは紛れても作業は進まんだろうと。

「その代わり、になるかは分からんが……こいつらの『面接』をしてやってくれるか」

 そう言って、マスターが赤子に『動いている人間』差し出す。
『クマちゃんリオちゃんレストラン』でサイコロを振っていた冒険者達を。

『こいつら』

 それは渋い男の指示により、美形ギルド職員が全力で走り、たったいま連れてきたばかりのフレッシュな冒険者達のことである。

 湯上りなのに走らされた男は己を浄化し、服を脱ぎ、美しい布を腰に巻きつけ、美しい夏色のシャワーを浴びている。

 ――ああ、美しい景色を眺めながら美しい妖精クマちゃんと一緒に美しいお風呂に入れるのは、美しいこの家だけですね……――。

 だがもやの中の男に目を向ける者はいない。

「やば……なんすかここ……しかも妖精みたいなのが……」
「まっしろな豪邸……? 居間に温泉……? リオさんってこんなとこ住んでるんですか? クマちゃん抱っこしてワイン飲みつつ?」
「妖精が……可愛い妖精がいっぱいいるぅ……」


「クマちゃ……」

 ホワイト面接官クマちゃんは深く頷き、男性冒険者二人、女性冒険者一人をすぐに採用した。

 決め手は『目が合ったから』。非常にホワイトである。


「よかったねぇクマちゃん。こいつらにいっぱいお菓子集めてきてもらおー。マスター氷の人連れてっていいよ」

 こうして、もこもこ耐性の低いクライヴは解放された。
 彼がクマちゃんの手伝いをしたいならば、ウィルの立てた『計画』を進めるしかない。


 
「クマちゃーん、クマちゃーん」キュオー。

「すぐ戻る」

 愛し合う者達の美しい別れの儀。
 魔王様ルークが最愛のもこもこを指の背で優しくなでる。そして湿ったお鼻を鳴らすクマちゃんを、リオの腕にもふ――と戻した。

 マジですぐに戻ってくるやつ。金髪が真面目な表情で頷く。

「クマちゃんこっちおいでー。バイトのやつらのとこ行こ」

 キュオー。
 湿っぽい鼻歌が響く。――クマちゃんも行くちゃーん――。

 リオは「クマちゃん可愛いねー」と赤子を撫でまわし、可及的速やかにもこもこを連れ去った。



「クマちゃ、クマちゃ……」
『せちゅめいちゃ、おかちちゃ……』

 悲しみで口調がますます赤ちゃんめいているクマちゃんが、整列する冒険者達に指示を出す。

 アルバイトちゃん達に説明しまちゅ……。お仕事の内容ちゃんは、お菓子をたくちゃん集めることでちゅ……と。

「すげぇ楽しそうじゃないっすか。俺集めるの超得意なんで任せてください」
「実はオレも得意です。コレがあるんで」
「私も持ってまーす! お着替え済みでーす!」

 アルバイト達は自慢げに『クマちゃんカードケース』をチラ見せしてきた。
 
「あ、一応選んで連れてきたんだ」

 鬱陶しいギルド職員が適当に引き摺ってきたわけではなかったらしい。
 超高性能『クマちゃんカードケース』を持っていること。それがマスターの出した条件だったようだ。

「じゃあ俺とクマちゃんはこの家の周りにいるから、集めたら持ってきて」

「軽く千個くらい集めてくるんで――」
「じゃあオレはちょいレア系を探しに――」
「えーと、それなら私は足りない物を補う感じで――」



「最初に道つくったほうがよくね?」

「クマちゃ」

 一人と一匹は切り株に座り、プチ会議を開いていた。

「うわ、道だけでもめっちゃ迷うんだけど」

「クマちゃ、クマちゃ……」
『お家ちゃ、同じちゃ……』

「あ、全体的に海の中っぽくするってこと? いいねぇ」

 活きのいいアルバイトをゲットした一人と一匹が、どんどんおかしのかかる計画を立ててゆく。
 いっそ海底都市っぽくしちゃおー、と。
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