368 / 548
第367話 菓子はみんなのために。黒髪の王。考えるマスター。仲良しな一人と一匹。
しおりを挟む
現在クマちゃんとリオちゃんは、道をつくっている。
◇
――ポヒー――。
聞き覚えのある笛の音。仕事へ向かおうと『クマちゃんリオちゃんパーク』の園内を歩いていた男達は音の方向を見た。
そこには予想通り、『黒髪のリオちゃん王』が。
相変わらずサングラスをかけている。楽しそうな恰好をしているわりに、ご機嫌というわけでもない。数時間前に会った時よりはマシになったようだが、少々疲れているように見えた。
もこもこの保護者達に用があるのか。
マスターが口を開きかける。
と同時に、男は笛を腰に戻し、拳銃のような形にした指先でピ、とどこかを指した。
そうしてそのままふらりと、どこかへ歩いて行った。
「少し遅れる――」
クライヴがマスターに言い残し、止める間もなく男を追いかけてゆく。
さきほどのことを気に病んでいるのだろう。『赤子のお願いを断った』というよりも『心臓への負荷のせいで意識が朦朧とし、答えられなかった』に近いと思うが。
「…………」
マスターはもこもこの言葉を思い出していた。
菓子の国を作ると、黒髪の男の仕事が減るというそれを。
『みんなちゃ、いっぱいちゃ、幸せちゃ、癒しちゃ、たまるちゃ……』
それから、幼いもこもこはいつも人々の幸せばかりを考えているということ。
きっと、菓子の国づくりもそういったものなのだろう。
人間のために力を尽くしてくれる幼子。
――本音をいうと、仕事は誰かに任せ、健気なもこもこを抱えて菓子を集めていたい。
酒場の人間にも、手があいている者は菓子集めをしろと伝えておくか。
マスターは真剣な表情で、「菓子を集められそうな人間がいたら声をかけておけ。深夜でも構わん。白いのには休息が必要だ」と鬱陶しい男に伝えた。
◇
マスターの言葉に感動した男が『世界を平和にするため菓子を集めよ』と書いた張り紙を、酒場のあちこちにばら撒いていたころ。
「クマちゃんこの道高いねぇ。……五メートルでお菓子の家くらいするねぇ」
「クマちゃ……」
リオとクマちゃんは『メインストリート』をつくっていた。
現在のもこもこは、『マーメイド妖精クマちゃん』と同じ美しい格好をしている。
高位で高貴なお兄さんが『これを――』と言って闇色の球体で渡してきた服だ。
『お兄さんめっちゃクマちゃんの服つくらせてるじゃん……』という言葉は、リオの心の扉にそっと仕舞われた。
「でも海底ならやっぱ青系でしょ。この水色の道でいいよね」
彼が選んだのは涼し気な『クマちゃんラムネちゃん』が使われたうろこ状タイル、クマちゃん宝石キャンディ入りだ。光に当たると小さな宝石がきらきらと光り、とても美しい。
未入手の高級素材を、作ったばかりの取引所で――クマちゃーん――と購入する。
「クマちゃ……」
「あ、こっちも? 混ぜちゃう感じ? いいねぇ」
一軒しかない家の前に、お高い道がまっすぐ、――クマちゃーん――と敷かれてゆく。
ところどころに、『美しいクマちゃんのレリーフ』が彫られた超高級な道も混ぜられる。
「クマちゃ、クマちゃ……」
「噴水かぁ。まぁ当然いるよね。……ヤバイヤバイ。めっちゃ高い。これ一個でソーダのやつくらいするし」
といいつつ、リオの手は肉球ボタンをぽち……と押していた。
――クマちゃーん――。
――お買い上げちゃーん――。
クマちゃんのお手々が示すものはとてもお洒落で高級感がある。
つまりお高い。だが抗えない。
「クマちゃんあっちの樹邪魔じゃね?」
「クマちゃ……」
ピヨピヨピヨ……。ピヨピヨピヨ……。
愛らしいもこもこがアヒルさんの笛を鳴らす。
『整地ちゃん』が終わるのを仲良く待つ。
「クマちゃん可愛いねー」「クマちゃ」
仲良しな一人と一匹は、あいた空間にひたすらまっすぐ、メインストリートを敷いていった。五メートルで菓子の家一軒分のそれらを。
「クマちゃんこれどこまで敷くかんじ? どっかで曲げたほうがよくね?」
「クマちゃ……」
そうしている間に、菓子を届けにアルバイトがやってくる。
「リオさーん! 足りないお菓子ってどれですかー」
と言いながら。腹にポケットが付いた服にたくさんの妖精クマちゃんを入れて。
「……じゃあクマちゃんキャンディとクマちゃんはちみつ」
リオは『なにその変な服』が口から出てくる前に、サッと目を逸らした。
◇
――ポヒー――。
聞き覚えのある笛の音。仕事へ向かおうと『クマちゃんリオちゃんパーク』の園内を歩いていた男達は音の方向を見た。
そこには予想通り、『黒髪のリオちゃん王』が。
相変わらずサングラスをかけている。楽しそうな恰好をしているわりに、ご機嫌というわけでもない。数時間前に会った時よりはマシになったようだが、少々疲れているように見えた。
もこもこの保護者達に用があるのか。
マスターが口を開きかける。
と同時に、男は笛を腰に戻し、拳銃のような形にした指先でピ、とどこかを指した。
そうしてそのままふらりと、どこかへ歩いて行った。
「少し遅れる――」
クライヴがマスターに言い残し、止める間もなく男を追いかけてゆく。
さきほどのことを気に病んでいるのだろう。『赤子のお願いを断った』というよりも『心臓への負荷のせいで意識が朦朧とし、答えられなかった』に近いと思うが。
「…………」
マスターはもこもこの言葉を思い出していた。
菓子の国を作ると、黒髪の男の仕事が減るというそれを。
『みんなちゃ、いっぱいちゃ、幸せちゃ、癒しちゃ、たまるちゃ……』
それから、幼いもこもこはいつも人々の幸せばかりを考えているということ。
きっと、菓子の国づくりもそういったものなのだろう。
人間のために力を尽くしてくれる幼子。
――本音をいうと、仕事は誰かに任せ、健気なもこもこを抱えて菓子を集めていたい。
酒場の人間にも、手があいている者は菓子集めをしろと伝えておくか。
マスターは真剣な表情で、「菓子を集められそうな人間がいたら声をかけておけ。深夜でも構わん。白いのには休息が必要だ」と鬱陶しい男に伝えた。
◇
マスターの言葉に感動した男が『世界を平和にするため菓子を集めよ』と書いた張り紙を、酒場のあちこちにばら撒いていたころ。
「クマちゃんこの道高いねぇ。……五メートルでお菓子の家くらいするねぇ」
「クマちゃ……」
リオとクマちゃんは『メインストリート』をつくっていた。
現在のもこもこは、『マーメイド妖精クマちゃん』と同じ美しい格好をしている。
高位で高貴なお兄さんが『これを――』と言って闇色の球体で渡してきた服だ。
『お兄さんめっちゃクマちゃんの服つくらせてるじゃん……』という言葉は、リオの心の扉にそっと仕舞われた。
「でも海底ならやっぱ青系でしょ。この水色の道でいいよね」
彼が選んだのは涼し気な『クマちゃんラムネちゃん』が使われたうろこ状タイル、クマちゃん宝石キャンディ入りだ。光に当たると小さな宝石がきらきらと光り、とても美しい。
未入手の高級素材を、作ったばかりの取引所で――クマちゃーん――と購入する。
「クマちゃ……」
「あ、こっちも? 混ぜちゃう感じ? いいねぇ」
一軒しかない家の前に、お高い道がまっすぐ、――クマちゃーん――と敷かれてゆく。
ところどころに、『美しいクマちゃんのレリーフ』が彫られた超高級な道も混ぜられる。
「クマちゃ、クマちゃ……」
「噴水かぁ。まぁ当然いるよね。……ヤバイヤバイ。めっちゃ高い。これ一個でソーダのやつくらいするし」
といいつつ、リオの手は肉球ボタンをぽち……と押していた。
――クマちゃーん――。
――お買い上げちゃーん――。
クマちゃんのお手々が示すものはとてもお洒落で高級感がある。
つまりお高い。だが抗えない。
「クマちゃんあっちの樹邪魔じゃね?」
「クマちゃ……」
ピヨピヨピヨ……。ピヨピヨピヨ……。
愛らしいもこもこがアヒルさんの笛を鳴らす。
『整地ちゃん』が終わるのを仲良く待つ。
「クマちゃん可愛いねー」「クマちゃ」
仲良しな一人と一匹は、あいた空間にひたすらまっすぐ、メインストリートを敷いていった。五メートルで菓子の家一軒分のそれらを。
「クマちゃんこれどこまで敷くかんじ? どっかで曲げたほうがよくね?」
「クマちゃ……」
そうしている間に、菓子を届けにアルバイトがやってくる。
「リオさーん! 足りないお菓子ってどれですかー」
と言いながら。腹にポケットが付いた服にたくさんの妖精クマちゃんを入れて。
「……じゃあクマちゃんキャンディとクマちゃんはちみつ」
リオは『なにその変な服』が口から出てくる前に、サッと目を逸らした。
71
あなたにおすすめの小説
転生幼子は生きのびたい
えぞぎんぎつね
ファンタジー
大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。
だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。
神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。
たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。
一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。
※ネオページ、カクヨムにも掲載しています
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる