神からのギフトで不老不死。面倒なことはすべて消してやる。〜死から始まるムエルトの物語〜

折原彰人

文字の大きさ
11 / 26
第一章

第11話 解体ショーが始まるってさ

しおりを挟む
「もう辞めてくれ!!」

 リアムがそう叫ぶ。

 もちろん攻撃が止まることはない。

 僕に纏わり付いている、この鬱陶しい手錠。壊そうとしてもびくともしない。

 魔力を封じるだけあってかなり頑丈だった。

 魔法さえ使えれば、こんな状況から一気に脱却できるのに──。

「見てたよ、見てたよ。あんたかなり頑丈な身体をしているみたいだな。これは拷問し甲斐がある!」

 と、新キャラの男が登場。

 彼は手をパンパンと二回叩いた。

 その男は、ねっとりとした見た目で、長髪をだらりと垂れ流している。

 一人のモブが、短剣をそのねっとり長髪男に渡した。

 そして、僕に向けられる刃先。

「抵抗したら、どうなるか分かるよな?」

 短剣を持った男は、リアムに目を向けた。

 僕は、溜め息が溢れてしまった。いつの間にか交代してしまった人質役。

 僕もそっちが良かった。こっちはめんどくさい。

「分かったから、やるなら早くしてよね」

 僕がそう言うと、短剣の男が周りの奴らに目配せした。

「おい、暴れないように抑えてろ!」

 男たちに腕を掴まれ、地面に膝をつかされ、身動きをとれないようにされた僕。

 そいつは、短剣を持って僕を見下ろしている。僕は、抵抗せず彼を見上げていた。

「本当に、羨ましい顔してるなー。腹が立ってくるよ」

 短剣を持ったその男がそう言って、僕の頬をなぞるようにして切りつけた。

 頬に痛みが走り、僕の首元に血が伝っていくのが分かる。

「あーー!! ゾクゾクするっ!! 綺麗な顔に傷が付いちゃったね! かわいそっ!」

 僕の目の前でそいつは興奮していた。頬を紅潮させて僕を見ている。

 ──気持ち悪っ。

「辞めろ!! もう良いだろう?! 頼むから、そいつだけは助けてくれ! なあ! 頼むよ!」

 リアムが、そう泣き叫んでいる。

「うるせっー!! 今はこいつのショータイム中なんだよ! お嬢様の趣味でビデオを回してあるんだ。お前は後からやってやるから、少し静かにしてろ!」

 リアムにナイフを向けていた男がそう言った。そして、リアムを殴った。ボコボコに殴られている。

 僕みたいにすぐに治らないから、あとから大変そうだなーと思った。

 リアムは、気を失ったのか動かなくなった。

「邪魔が入った。待たせて悪かったな。続きをしようか?」

「待ってないんだけど」

 短剣を振り回しながらそう言う男に、僕はそう返した。

 すると、短剣の男は、僕の顔をまじまじと見て、

「あれ? 頬の斬り込み、あんまり入ってなかったか? ──まあ、いいか。さぁ!! 続きをしよう!!」

 こいつは、馬鹿らしい。

 僕が片手を手錠から抜いたことにも気づいていない。

 どうせすぐに治るんだからいいか精神で、むりやり手錠から引き抜いてみた。

 リアムの騒動の甲斐もあって、僕はそれに成功した。

 かなり痛かったけどね。

「こいつ!? 手錠が外れている?! 手が血まみれだ!」 

「慌てるな、片手だけじゃ何もできないさ。さあ、次はお楽しみの時間だ!」

 短剣の男はそう言うと、憎たらしいほどの笑顔を向けてきた。

 その通り。

 僕の魔力は戻らない。 

 どうやら、もう片方も外さなくてはいけないようだった。こっちも無理やり引き抜くしかないらしい。

「めんどくさ~」

 僕がそう言うと、短剣を持った男は僕の胸ぐらを掴んだ。そして、気を失っているリアムに視線を向ける。

「あいつを殺されたくなかったら、大人しくお嬢様の趣味に付き合ってくれよ」

 そして、僕は地面に突き飛ばされた。

「まずは、足から切り落としていい? いいよね? やっちゃうよ!?」

 モブたちが、僕を押さえつける。身動きが取れなくなった僕は、まるで解剖される前のカエルのようだった。

 僕の視界に広がるのは、コンクリートの冷たい天井に吊るされている眩しい照明と、短剣を持った男。それから、僕を押さえている奴ら、そしてそれを囲むモブたち。

 きっと、もう一生見ることの出来ない眺めだと思う。見たく無いけど──。

「いくよ?!」

 そう言って、まるで子供のように嬉しそうに短剣を持った男が、涎を垂れ流して僕を見ていた。

 心底、不快だった。

 そして、手に持ったその短剣が振り下ろされる。

「ハハハハハハッ!! 痛いか? 痛いよな? 泣いてもいいんだぞ?」

 痛いに決まってる。ぶっ殺してやりたい。

 まるで、凍った氷水に浸かっているかのように、切断された足が冷たい。刺すような痛みがガンガンと脳天を貫いた。

 そこらから、嗤いが湧き起こっている。

「え? なんだ? 足が、生えてきた? は?」

「き、なんだ?! え? 気持ち悪い!」

「バケモノだ──!!」

「ば、バケモノ!!」

 歓声は、一瞬で悲鳴に変わった。

 それもそのはず。

 僕の足は元通りに治ったのだから──。

 まるで、汚いものから逃げるみたいに、男たちが僕から離れて行った。

 リアムなんてやっぱりもうどうでもいいや。

 さて、今から全員殺してあげよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...