終末のボクたちは、スカイリアで待ってます〜仲間に振り回されて女装させられたりしつつVRMMOで生活するやつ〜

aoringo12

文字の大きさ
8 / 18

朝とスキル確認と諦め

しおりを挟む
「んおお・・・」

 朝です。おはようございます。
 ボクたちはあれから、ウサギや虫に悪戦苦闘し、どうにかクエストの達成ができました。
 相変わらずスキルに引っ掻き回され、スキルレベルは上がりましたが、まだまだまともに「戦える」とはいえない状況。

 総合ギルドの兄ちゃんの言うとおり、森に入らないで良かったと心から思ったのでありました。
 何もスキルが無い状態だったので、いくつかスキル獲得とレベルアップが出来ています。

 そんなこんな、悪戦苦闘している間に夕暮が近づいて来たところで街に帰り、門の警備をしている兵士さんに「おいしい食事が出る宿屋はどこか」と聞いてやってきたのがここ、兎のお宿だ。
 すぐにご飯を書き込み、倒れ込むようにベッドに沈んだのである。
 慣れない事をしてひたすら疲れていたのだ。

 ちなみに、ボクたちはお風呂やトイレといったものは必要ない。
 汚れはしばらくすると消えるし、汗もかかない。
 おトイレにも行きたくならない。
 とても便利だね。
 まあリアルでも似たようなもんだったけれど。それはそれ。

 面白かったのが、部屋に入った瞬間自動で靴が脱げた。
 ボクたちが日本人だからだろうか、靴を脱ぐ文化の無いひとたちはどうなるのか少し気になるところ。

 ウィンドウで確認すると今はゲーム時間で朝8時、リアル時間では深夜3時ってところ。
 ゲーム内ではリアルとの時間の流れが違っていて、リアルの3倍くらいでゲーム内時間は流れてる。ボクたちがゲームの中で3日暮らしていても、リアルでは1日しか立ってない。
 そう考えると、ひどくゆっくりと時間が流れているように感じてしまうから不思議だ。

 で、何故かボクはベッドの上、シオンとウヅキに抱きつかれてる。
 もうぎゅうぎゅうだ。
 抱きまくら扱いされてしまっている。息苦しかった原因はこれか。
 確かに昨日は3人一緒のベッドに入ったが。
 まあ良いんだけれど。
 大変よろしいのですけれども。

 ええ!(最大級の笑顔)。

 ウヅキの高い体温、シオンの柔らかさを同時に感じる。
 端的に言って、至福である。

「ふむ、起きたか」

 顔をあげると、モミジがこちらを見ていた。
 彼の前のテーブルには、様々な料理が並んでいる。
 宿屋に入る途中、奴がひたすら屋台で買い込んでいた食料だ。

 初期資金全部使っちゃったんじゃない? っていう勢いだ。

「いつから起きてたの?」

 聞いても肩をすくめるだけだ。
 こういうやつだ。
 どうでも良いことだけはぐらかす。
 逆に隠していた方がいいことはベラベラ喋る。意味不明だ。
 とはいえ、彼の燃費を考えるとまともに眠れるのかも怪しい。
 寝てる間に餓死してるなんてのも普通にありえそうな話だ。
 最悪だね。
 死因「熟睡」。

 起きたら隣から消えている筋肉、とかは一度経験してみたいところではある。
 ふふ。
 まあ、もう少しモミジががっつかなければ考えないでもない。
 慎みを持ちなさい。

 さて、まだ抜け出せそうにも無いので、皆のステータスでも確認しよう。
 体に回された腕と足でがっちりだ。
 シオンなんて、女の子がしていい体制じゃないね。

 ちなみにまだ装備品の類は購入していないので、まだ初期のままだ。
 ウサギや虫相手の今のならまだ必要なさそうだし。
 しばらくして次の街に行くことになったら、ドッさんにでも相談しようと思ってる。

 え?
 彼女たちを起こさないのだって?
 
 そんな!

 自分からこの状況を壊すなんてとんでもない!!
 ボクは紳士を自負しているが、聖人ではないつもりだ。
 この状況を「おいしい」と思うくらいには夜のモンスターだ。

 「はぁ、やれやれ、こいつらはまったく」なんて、どこぞの小説の主人公みたいに、僕ちゃんは何も感じてませんよ、みたいな顔で彼女たちを起こすなんてことはしないのだよ。
 「え、なんだって?」系男子でもないつもり。

 話がそれた。
 これがボクのステータスだ。スキルのところだけ抜き出そう。

~~~~
スキル:
<植物知識><採取 Lv2><探索 Lv1><並列思考 Lv5><思考加速 Lv2>
<短剣 Lv2>
【ダブルアタック】
<デバッグ Lv3>
【デバッグ】
~~~~

で、それぞれ新しく獲得したスキルについて。

~~~~
<植物知識>
今までに得た植物についての知識がアイテムを見た時に表示されるようになる。また、<採取>や<捜査>に該当植物に様々なボーナスが発生する。ボーナスは、どれだけ該当植物についての知識が深いかで効果が変わる。このスキルのレベルは存在しない。

~~~~
<採取>
採取ポイントが見えるようになる。レベルによって、得られる数が上昇することがある。

~~~~
<探索>
周囲にあるものを探す。イメージした対象物が周囲にあると、その方向や距離を把握できる。スキルレベルによって感度と距離が上昇する。対象物を知っている必要があり、詳しいほど感度が上がる。

~~~~
<並列思考>
演算能力の上昇、主に魔法の詠唱速度や知識の獲得に影響する。スキルレベルが上がるほど、計算領域が広がる。

~~~~
<思考加速>
演算能力の上昇、主に魔法の詠唱速度や知識の獲得に影響する。スキルレベルが上がるほど、計算領域が広がる。

~~~~
<短剣>
短剣武器への熟練度を表す。<体術>や<格闘>と非常に相性が良い。高速戦闘向きの武器で、スキルレベルが上昇すると確率で1度に2撃分のダメージを与える事がある。

使用可能アーツ:【ダブルアタック】
~~~~

 <植物知識>はとてもおもしろいスキルだ。
 きちんと勉強して理解を深めていけば、植物が関わるスキルの補助になる。
 図書館などで図鑑を見ると良いと思う。

 <採取>は言わずもがな。
 このスキルを獲得した瞬間に、周囲にちょことちょことサークルが出来た。
 そこはある程度の薬草がまとまっていて、効率よく薬草がゲットできるようになった。

 ちなみに、ボクが採取済みの採集ポイントは、ボクからすると何も見えないんだけれど、他の皆にはまだ採集ポイントとして見えていたし、採取できた。
 撮り尽くしちゃっても問題ない。
 ここらへん、ゲームだね。

 <探索>も便利スキルだ。
 今後、色々な植物やら鉱石やらが必要になったら大活躍だと思う。
 ちなみに今のところ対して役に立っていない。
 地道な反復練習が必要だと思う。

 <並列思考>と<思考加速>は説明文が違うけれど特性がちょっと違う。
 <並列思考>は一度にできる処理が増える。
 【デバッグ】をして自分自身の演算能力を見てるとわかるけれど、獲得前と後で明らかに数字が違う。
 多分、【デバッグ】に必要な計算を<並列思考>が請け負ってくれているんだと思う。
 もっとレベルが上がれば他にも恩恵があるはずだ。

 <思考加速>はそのままだ。
 戦闘中とか、集中した時になんとなく周りの動きが遅くなる。ボクの思考だけが加速しているってことだ。
 今のところ無視できちゃうレベル。
 おそらく魔法とかを覚えたら、詠唱中もこの状態になってくれて、結果的に詠唱時間が短くなるんだと思う。

 この2つのあわせ技はとても強力だと思う。
 スキルレベルを上げるには、単純にひたすら脳みそを使う必要がある。
 ボクはこれらを思考系スキルと称することにした。
 もっと他にもあるだろうからコンプリートしたい。【デバッグ】を持ってるボクとはとても相性が良いスキル群だ。
 おかげで昨日は疲れ果ててダウンした。
 今後はペースを考えようと思う。

 <短剣>はとりあえず皆も覚えた。
 剣とかハンマーとか色々あったけれど、皆自分の体がまだ上手く動かせないのはわかりきっている。
 そんな中でそれらの武器を振るっても、事故の予感しかしない。
 まだ魔法も誰も使えないし、とりあえずダメージを正確に出せそうな短剣を満場一致で選んだわけだ。

 次、ウヅキ。

~~~
スキル:
<身体制限解除 Lv5><植物知識><採取 Lv2><捜査 Lv5><思考加速 Lv12><気配察知 Lv4><体術 Lv4>

<短剣 Lv2>
【ダブルアタック】
<格闘 Lv3>
【ステップ】
~~~~
<気配察知>
周囲にいる生き物の気配を察知するスキル。スキルレベルが上がるほど索敵範囲が広がる。周囲エリアの生き物についての知識が高いほど、精度も高くなる。

~~~~
<体術>
体をスムーズに動かす近接戦闘全般における補助スキル。攻撃や防御についてこれまでの行動結果から演算された思考誘導補助が入る。

~~~~
<格闘>
手足を使った攻撃での熟練度を表す。近接戦闘武器全般との相性が良い。体の位置を変えるようなスキルが多い。

~~~

 お察しかも知れないが、<思考加速>のレベルが高いのは、この子がひたすら無茶したからだ。
 最初に渡されたポーションはもう使い切ってしまった。
 さっきも言ったが、<思考加速>は周りの景色がゆっくりになる。
 つまり、<身体制限解除>で無理に動かしてもその動きについていけて、ある程度の融通が効く。

 血を撒き散らしながら舞う姿は一種美しくもあったが、見てるこっちはハラハラする。
 ウヅキは、小さいし、守ってあげたくなる保護欲を刺激しまくる外見をしている。そんな美少女が血を撒き散らしながら、痛みに眉を寄せながら短剣を振るっているのだ。
 それでいて、澄ました顔で戦闘が終わったら素振りを始めたりする。
 彼女の中できちんとペース配分はできているのだろうが、増減するHPが気になって仕方がなかった。

 そのお陰でスキルが凄い勢いで上がるのは計画通りではあるんだけれど、目立ってしょうがなかった。
 掲示板で変な話題になってそうだが、今更かな。

 血を撒き散らしながら動く羽目になるスキルなんて、誰が欲しがるだろうか。
 ボクなら取ろうと思わない。

 最終的に、電池が切れて草原で顔面から崩れ落ちるようにダウン。
 ボクで頭痛がするレベルの、暴れ馬な思考型スキルを酷使してたのだ。さもありなんってやつだ。
 モミジに背負われて宿屋まで連行され、食事を無理やり皆で詰め込んでベッドに放ったわけだ。

 スプーンでご飯を口元に近づける様は、見ようによっては恋人同士の定番「あーん」だが、こちらとしては赤ちゃんにご飯を上げている気分にしかならない。
 事務的に満腹度を満タンにしてやる作業でしかなかった。

 次、シオン。

~~~~
スキル:
<植物知識><採取 Lv2>

<傀儡術 Lv3>
【傀儡化】【部位傀儡】
<短剣 Lv2>
【ダブルアタック】

~~~~

 わあ、スッキリ。癒される。
 シオンはまあ、見た目通りほわほわっとしたお姉さんタイプなので、自分からあまり走ったりしない。
 その分後方からの支援に適してる。
 もしかしたら杖をもたせたほうが良かったかもしれないが、自分から短剣を装備してたし、何も言うまい。

 <傀儡術>については中々面白かった。
 生きているウサギは操れなかったが、腕や足といった体の一部の自由を奪ったりして行動を阻害することが出来た。
 また、ウサギをシオンが倒した場合、消えるまで少し時間がかかり、<傀儡術>の対象にできるようになっていた。

 これがまた面白くて、死んだウサギがシオンの思い通りに動き出し、同士討ちみたいな事をさせることができる。
 <死霊術>のエッセンスがあるんだろう。
 自動制御とマニュアルがあって、シオン曰く「マニュアルは頭が痛い」とのことで、しばらく練習していれば<並列思考>あたりを覚える気がする。

 今のところ特別凄いって魔法スキルではないけれど、その負荷から考えて今後どんどん使い勝手がよく、かつ強力なスキルになっていってくれるだろうと思う。

 さて、モミジだが。

「どうせ夜出歩いてたんでしょ。スキルどうなったの?」

 ~~~~
スキル:
<悪食 Lv10><植物知識><採取 Lv5><捜査 Lv5><思考加速 Lv2><狩猟 Lv3><鷹の目 Lv3><気配察知 Lv20><隠匿 Lv21><空間把握 Lv11><体術 Lv20><投擲 Lv5><夜目 Lv15><筋力強化 Lv2><器用強化 Lv5><弱点看破 Lv4>

<短剣 Lv11>
【ダブルアタック】【クリティカルアタック】
<格闘 Lv14>
【ステップ】【強撃】
~~~~

 ……お、おう。まじでこいつ夜何してたんだ?
 <投擲>とか、皆でいる時は何も投げてなかったよな。

「食費は稼がないとな」

 何で稼いだんですかねえ。
 もう詳しく見るのもバカらしい。
 どうせ体がうまく動かなくて、虫とかウサギとか食べまくることになった自分にイラついて夜の街を走り回っていたんだろう。
 夜を疾走する筋肉だ。
 きっとこの街の都市伝説的な奴になるんだ。

 ほっとこう。ブラックボックスみたいなやつだ。



「うう~~~」

 ひとしきり唸り、思い切って起き上がる。
 今日もやりたいことはたくさんある。
 もったいないが、このままだといつまでも寝てしまう。さっさと起きて出来ることやってしまおう。

「ほらシオン、ウヅキ起きて」
「ううう」
「んー」

 ほらほらー起きないといたずらしちゃうぞーげへへ。

「ルイならいいです~」
「――いい」

 あらぁ。

「ふふん。じゃあ俺がお前らを弄んでやろう」
「はっ! 殺気!」
「っ!」

 あ! やせいの きんにく が あらわれた!



「魔法や武器の訓練ですね」
「はい。昨日は散々だったので、練習したり教えてもらえる所があればと。ボクと、彼女は後方支援が得意なので魔法がいいかなって。あと体を動かして慣れたいですし」

 さて、ところ変わってギルドだ。ボクたちは受付のお姉さんに、訓練できる場所について相談していた。ギルドっていうくらいだから、戦闘関係についてのノウハウは多いはずだと思ったのだ。

 ひとまず昨日と同じクエストを受けておいて、朝から昼ちょっと過ぎくらいまで訓練をしようと思う。その後で街を出て、昨日と同じくウサギたちを相手にドタバタするのが今日の予定だ。
 せめてウサギくらい軽く対処できるようになってから森に行こうと思う。

「ふふふ、昨日は大変だったみたいですね」
「ははは……」

 この感じは、ボクたちの事がお姉さんにも伝わっているのだろう。
 お恥ずかしい限りだ。
 ほら、モミジとウヅキは頭下げときなさい。

「基本属性の魔法と武器の訓練については、訓練場で講習を受けられます。回復や支援に特化した<神聖魔法>は教会で学ぶことが出来ます」
「教会ですか。入門する必要があったりするのですか?」

 教会、定番だね。おお、勇者よ、死んでしまうとはなさけない。ボクでも知ってるよ。あれは王様だっけ?

「基本的にはそうですが、旅人様方が神官になる必要はありません。お布施として、いくらかお金をお渡しするだけで教えてもらえると思いますよ」
「へぇ、もっと特別なものだと思ってました。イメージだと神聖魔法を覚えると、他の魔法が使えないみたいに思えますが、そこらへんは?」
「魔法に優劣はないですよ。どちらも覚えられますし使えるはずです。ただ、相性はたしかにあります。体の中に余分な属性が残り、効力が弱くなるとか。そのあたりのお話は、教会や訓練場で詳しく教えてもらえると思います」

 私は魔法の才能はなかったみたいで良くわからないんです、とお姉さんが苦笑いする。

「<生活魔法>くらいは使えるんですけれどね」
「? 生活魔法ってなんですか?」
「あら、知りませんか? 小さな火を起こしたり、服をすぐ乾かしたり服をきれいにしたりするんですよ。とても便利です」
「なるほど。確かに便利そうです。それも訓練場で教えてもらえますか?」
「えーっと、はい。多分聞けば教えてくれると思います。普通は皆子供の頃に覚えるので、あえて訓練場で講習としては教えてもらえないとは思いますけれど、大丈夫かと」
「おー」
「旅人様方は、<生活魔法>を知らないんですか?」
「多分誰も知らないと思います」
「講習会とかすれば、皆様喜ぶでしょうか?」
「うーん、多分、お金払ってでも習いたいっていう人が増えるんじゃないですかね」

 これは良いことを聞いたのではないだろうか。
 住人の皆は常識だと思っているのか。
 ボクたちは服が汚れたりしてもすぐきれいになるけれど、多分水に入れば水浸しだし、火を起こしたりするためにわざわざ<火魔法>を使うっていうのは、非効率だと思う。
 ぜひ覚えようと思う。

「それでは、訓練場で講習してくれるように頼んでおきますね」
「良いですね。よろしくお願いします。ボクも皆に教えてあげようと思います」

 ギルドを後にして訓練場に向かいつつ、さっそくフレンドからドッさんを呼び出す。
 まだ起きてるのか、休息を挟んだのかはわからないけれど、まだオンラインだ。

「おう……ルイか。話題になってるぜお前、というか横にいるだろう筋肉の兄ちゃんが、だが」
「みたいですね。まあ、ボクたちにわざわざ声かける人たちもいないので気にしていません。ちなみに筋肉はモミジって言います。筋肉呼びでも構いませんが」

 ドッさんの声はちょっと元気が無いというか、覇気がない。
 鉄を叩くカン、カン、という音が一定のリズムで聞こえている。
 ちゃんと寝てますか? と聞くと「ヘヘヘへ……」と虚ろな笑いが帰ってきた。
 これが生産職の本気、と軽く戦慄する。

「ギルドのお姉さんに聞いたんですが、生活魔法って知ってます?」
「んあー? 知らねえなあ? あんま強そうじゃねえが、どんなんだ?」

 そこで先程の話をドッさんにする。

「ふうむ。確かにそいつぁ便利だぜ。ゲーム攻略に直接必要なわけじゃねえが、身だしなみを気にする奴は多い。特に女の子なんて欲しがるやつも多いだろう。俺は男だが、鍛冶をやってるとゲーム的なエフェクトでも、汗だらけになってしょうがねえ。それが一瞬で拭えるならありがたいぜ。すぐ覚えられるのか?」
「多分。ギルドのお姉さんは魔法は覚えられなかったけれど<生活魔法>はいけたらしいので」
「そいつはいいな」
「訓練場でプレイヤー向けに講習会を始めるそうなんで、行ってあげると喜ぶと思います」
「なるほどな。じゃあ俺が掲示板に書いとくぜ。お前ら掲示板とか見ないんだろ」
「はい。ボクたちはよくわからないので、顔が広そうなドッさんに助けてもらおうと思って」
「おう、いくらでも頼ってくれて良いぜ。武器とか防具とかも欲しかったら言えよ! 森より先は絶対必要だからな!!」

 ありがとうございます、と挨拶をして通信を切る。
 これで掲示板の方は大丈夫だろう。

「さて、訓練場での講習なんだけれど、皆で生活魔法をまず教えてもらおうと思う」

 皆が頷くのを確認する。

「その後、ボクとシオンは魔法攻撃手段が必要だろうから魔法の講習、モミジとウヅキは武器講習に別れようと思う」

 ボクとシオンは完全に後衛職だし、ボクは<デバッグ>、シオンは<傀儡術>と魔法寄りなので、このまま魔法に特化したほうが良いように思う。モミジとウヅキに関しては、魔法よりも体を動かしたいだろうから、そのまま身体能力を高めるほうに訓練するほうが効率的だろう。

 昨日は一日一緒にいたけれど、だからといって、今後魔法や武器の訓練もずっと一緒だと流石に効率が悪すぎる。
 モミジやウヅキに魔法関係が不必要だとは言わないが、今のところ彼らに魔法の必要性をボクは感じない。

「うふふ、ルイと一緒~」
「まあ役割が違うからな」
「……しょうがない」

 シオンは顔が緩んでるし、ウヅキは納得してるが心なしかブスっとしている。
 今でこれだと先が思いやられる。
 ふー、やれやれだぜ。

 やれやれ系男子も行けるな? ボク。

「魔法講習が終わったら、そのまま武器講習に顔出すから」
「わかった」

 前衛組の体の動きは相当良くなったが、後衛組はまだぎこちない。
 魔法を覚えるってのは、体を動かせない免罪符とはならない。動けたほうが絶対に良い。
 そういう意味で、今日、気合を入れないといけないのはボクとシオンだろう。

 さあ、頑張っていこう!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...