冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

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第二の魔王と氷雪の魔女

冥王、温泉はロマンと出会い。

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 今にも雪を降りそうなどんよりした雲の下、既に見渡す景色が、白銀の世界。氷雪に色付けされた針葉樹の森を両脇に、俺達を乗せた馬車はひたすら北を進む。
 第一騎士団長との戦いで勝利を収めたユカリ達は、この騎士から魔王ノライフの事を少しだけ聞き出せたようだ。

「まさか、死霊の魔王だったとは思いませんでしたわ」
「死霊って事は、スペクターやファントムと同じ見た目って事?」
「むーっ、その魔王。 カツオフィレの聖女になったとか」
「取り憑いたとか。 魔王ノライフ……。 意味わからん」

 トンドも含めてユカリ達は、謎めいた魔王ノライフに対して色々考察をしている。
 それよりも、あの第一騎士団長の戦い。
 俺とペルセポネが、少しだけでも動いたらそれに反応しビクついて隙だらけ。ユカリ達も攻撃し放題で呆気ない結末だった。
 その事すら忘れ魔王ノライフがいると聞いた事から、魔族の領地で北の大地アイスクォールに向かっている。

――――何故、魔王が魔族の領地にわざわざ足を運ぶのか?どのような用事があるのか?疑問だらけである。

 外は、寒気で震えそうな程白い世界だが、この馬車の中だけは、そんな事無く快適に過ごせている。
 車中でコベソが、どこからが数枚のローブを取り出してきてユカリ達に渡している。

「そろそろだな。 このローブを持っておけ」
「うわ、なにぃっ? この汚いローブ」
「汚くねぇ。 この色柄は、れっきとした……」
「れっきとした?」
「トンドこのローブなんだっけ?」
「ん……。 そのローブか?」

「……」
「…………」
「………………」

 俺も含め全員トンドが、これから言おうとする言葉に集中する。

「温かいローブだ」
「はぁ? ローブ着てれば温かいの当たり前っ」
「ちょっとトンド!! 凄い物かと思ってましたわ」
「でも、それ……」

 ユカリは、目を微かに青く光らせると鑑識眼を使ってそのローブを見ながら、黙々と口を開く。

「遠赤効果。 防寒効果ある」
「あっ、思い出した。 火蜥蜴のローブ。 サラマンダーの」
「あぁー。 そんなのあったなぁ」

 悩むトンドとコベソだがユカリの言葉を聞いたリフィーナ達は、ローブを着るとユカリも直ぐに着だす。
 ミミンは、普段のローブの上にその火蜥蜴のローブを身につけた事で、動きづらいとか呟いていている。


 未だに、白銀の世界と言っても過言では無いこの景色にて魔物は、いるみたいだが、この馬車のおかげが、どんな理由かはわからないが、襲ってくる事無く、木々の間から覗いては直ぐに姿を消していく。
 そして、小動物等、たまにこの馬車と並行して走り出していた。
 そして生い茂る針葉樹の森。この山道を進み三日程経った頃、この馬車に乗っていた俺達は、この山道を抜ける。

 すると、先程まで真っ白な景色とは裏腹に、抜けた先のこの平原と見渡す限りの山に囲まれた景色は、まるで紅葉のように赤く染っている。
 その景色にユカリ達は、少し戸惑いを見せる。

「何、この……」
「おぞましい光景だわ」
「ムッゥ」

 雪雲で全く空が見えなかったが、人族の空なら見える景色は、真っ白だったに違いないが、ここは魔族の領地、空が赤く太陽が緑の魔界。

「アイスクォール。 標高が高く山に囲まれた国。 あの空によって血に染め上がった大地と言われ、それが『魔族の大地は全て血で染まっていると』噂話になったのがココ」
「……」
「そして、この積もる雪や気候のせいで、作物が育ちにくい」

 この景色に目を離せないユカリ達は、トンドの言葉を聞きながら再び、目を見開いて本来は真っ白だが、恐怖を突きつけられる程の赤い景色に目を見開いて黙っている。
 すると、リフィーナが、コベソとトンドに振り向く。

「これじゃぁ。 まるで血よ。 血ぃっ」
「二人とも……。 いえハーデスさんとペルセポネさんもこの景色見てよく平然としていられると思うわ」
「空が、原因なのはわかっているからな。 それに俺とペルセポネは、本物の……」
「ハーデスっ!!」
「あっ、あぁ。 魔界だからそんな事で驚いてもなと思ってな」

 ついつい冥界の事を口を滑らせてしまいそうだった俺を止めてくれたペルセポネ。コベソも何故か少しだけ安堵していると、そのままフェルトに口を開く。

「俺とトンドもだ。 このアイスクォールは……そうこれだ、これ。 匂わんか? この匂い」
「くさっ」
「むーっ」

 リフィーナとミミンは、両手で鼻を抑えペルセポネは、少し臭そうに鼻を動かしている。
 微かに匂う。エウラロノースの臭い、刺激臭とは違い、我慢しなくても良い程の匂い。

「これって、硫黄?」
「そう、硫黄。 まさしく温泉が湧いている」

 ユカリは、嗅いだことが有るのだろ直ぐにその答えを導き出していた。
 そして、トンドの言葉にフェルトは、疑問を投げかけるもコベソが答える。

「この国は、魔鉄の採掘量が多い。 その昔だが、ランドベルクと取引していたと聞いたことがある」
「魔族と取引なんて、諸国の王やエウラロノース様に知れたらどんな仕打ちに合うかわからないわ」
「そうよ。 そんなのデタラメ。 魔族との取引なんて」

 フェルトとリフィーナが、コベソの言葉に突っかかってくる。

「まぁ、落ち着け二人とも。 ユカリ嬢ちゃんとミミンなんてあんなに落ち着いているのに」
「そ、そうね。 昔ですものね」
「そう、昔。 魔鉄が採掘できるが、食物が無いアイスクォール。 鉄が取りにくいが、農業が盛んのランドベルク。 双方に利があったんだろう」

 落ち着くフェルトとリフィーナは、再び鼻を抑えながら外を望む。
 御者の声を聞くと、御者台に乗り出すコベソとトンド。

「会頭、あれ煙が上がってる」
「来たか」
「まさにあの湯気」
「あの場所に向かえば」
「おお、あれだ。 あれこそ温泉」

 目を輝かせ声を弾ませ喜びに満ち溢れてそうなコベソとトンドは、この馬車の行く手を示すと加速し出す馬車。
 湯気が立ち込めるその敷地を柵で囲み、一件の小屋が建っている。

「あそこ、あの小屋付近に停めろ」
「会頭、はしゃぎ過ぎですよ。 トンドさんも何か言ってください」
「うぉっ、温泉はロマンだっ」

 はしゃぐ二人に困惑する御者と俺達も少し引き気味である。

「タオルその台に置いてある。 きちんと男湯女湯分かれていた筈だ」

 停車すると、まるで子供のようにはしゃぎ駆け出して我先にと小屋へまっしぐらなコベソとトンド。

「温泉か。 人は癒しを求めるものだな」
「古代ローマだっけ。 あの時のギリシャにも、浴場はあったし。 温泉なんかもあったような」

 俺は、ペルセポネと話しながらコベソ達の後を追う。

――――この世界の温泉が、どんな所か。興味が、湧いてくる。

 ペルセポネも、目を輝かせながら少し小走りになっているし、ユカリ達四人も俺とペルセポネの後に着いてくる。
 温泉の敷地に入ろうとするコベソとトンドが、何やら固まっているように見え、その向かいに四、五人の人、所々破損した軽装備な防具を身につけ、乱れた白銀の髪にミルクのような白い肌には傷や打痕した人物四人は、一人の女性を囲み、コベソとトンドと睨み合っている。

「ちっ、仲間か」
「人族が、何故こんな所に」
「やっとここまでお連れしたのに」
「姫様、下がって」

 武器に手をかける四人。そしてその後ろに身を潜める白銀の長髪、四人よりも白い肌、そして赤い瞳に所々破れたドレスと、破れた箇所から見える肌には赤い血がこびり付き傷ついている。
 その声を聞いたユカリ達は、小走りになって俺達に追いついた。

「魔族。 魔族?」
「肌が、褐色では無いわ」
「魔族全員が、褐色と思うな。 人族がっ!!」

 フェルトの言葉に、白銀長髪の四人の内少し幼さを感じる一人が、怒りだし抜剣。
 ユカリとリフィーナは、直ぐにコベソとトンドの前に駆け寄り柄に手をかけ睨む。
 如何にも一触即発の空気になった刹那、ドレスを着た女の一声「止めなさい!!」その言葉の後息切れをし地面に膝を着く。
 白銀長髪四人の内リーダーらしき人物が、まっすぐな眼差しでユカリに向け言葉を放つ。

「頼む。 人族の者よ。 ここは穏便にしてくれないか?」
「……」
「ユカリぃ。 魔族は、人族の敵。 逃がす必要ない」

 リフィーナは、口を開かないユカリに荒らげた声で目の前にいる白銀長髪の五人組に鋭い眼光を飛ばす。
 向こうも向こうで、「人族に頼み事など」「人族は我らの敵では」とリーダーらしき人物に他の三人が小さく伝えている。

「我々は、今までやってこれたじゃない?」
「で、ですが、アレは」
「なら、人族がわざわざこの地に足を踏み込んでいるこの彼等も、もしかしたら彼等と同様かも知れない。 それに今はそんな事で争っている場合では無い」
「そ、そうですが……」

 幼さを感じる一人が、武器をしまいドレスを着た女性の肩を抱いて立ち上がらせている。


「ユカリ、彼女らからは、あの魔族の嫌な感じがしないわ」
「ムッ。 私も」
「ええ、魔族なら嫌悪感というかそんな敵対心が、感じられないからここは……」
「そうね」

 ユカリの言葉に頷くフェルトにミミン。そして、リフィーナも、しかめっ面になりながらも賛同し武器から手を離している。

「何があったか話してくれますか?」

 ユカリの言葉に安堵の息をするリーダーらしき人物は、そのユカリの言葉を聞き、小屋の方をチラッと見た後、

「ええ、話します。 ですが、その前にあそこで……。 この国の魔将である姫様……。 スノー様の回復を優先させたい」

――――魔将?この国の?確か取り巻きの誰かが『姫様』と言っていたな。

 その魔将スノーと取り巻き四人が、温泉小屋に向って行った。
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