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聖国と帝国と金色の勇者
冥王、知らず。妻ペルセポネとベット家の因縁。
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ペルセポネは、不快な者を見る目でアルファを睨みつけながら肩幅ほどに足を開き立ち腕組みする。
蹴られた痛みを堪えながら文句を飛ばし立とうとするアルファは、蹴られた際に手から離してしまったバスタードソードを拾い上げる。
「痛てぇっ」
その口調から怒り心頭のアルファの顔が、紅潮しペルセポネに斬り掛かろうとバスタードソードを振り上げる。
「てめぇかぁっ、ぶった斬……ってぇ……ぇぇ」
アルファの怒号は、この森を包こもうとするが、その口調がペルセポネの姿を見た途端小さくなり、紅潮していた顔が逆に青ざめていく。
アルファは、振り上げていたバスタードソードを手から離し固まってしまった。
「アルファどぉしたっ?」
「もしかして、あの女のスキル?」
「アルファを、みんな助けろ」
「動けないアルファを庇いつつ、あの女を倒すっ」
青髪男のベータと黄髪男のガンマは、武器を構えペルセポネに迫る。
緑髪女のデルタは、両手を前に出して魔法を放ち、桃色髪のイプシロンは、上空に向け手を広げている。
「お前らっ、やめ……」
アルファは、青ざめた顔をしたままベータ達の攻撃を静止しようと裏声になってまで声を出す。
だが、その声と同時にペルセポネに向かっていったベータとガンマが、突き飛ばされ地面を転がっていく。
「ちょ、何?」
「ベータ?……ガンマ?」
突然、吹き飛ばされ地面で横になりながら苦しんでいるベータとガンマの光景が目に入るデルタとイプシロンは、目を見開いて動きが止まる。
「やつはどこ?」
「き、消えたぁ?」
「敵から目を離しちゃダメよ」
「「なっ!!」」
二人の後ろに立つペルセポネ。
後ろから伝わる声に驚くデルタとイプシロンは、後ろを振り向くと目を見開きながら畏怖と共に飛び跳ねるようにペルセポネから離れ距離をとる。
「ば化け物ぉぉっ!!」
「イプシロン!?」
「私の、魔法でぇぇ」
焦燥するイプシロンは、桃色の髪を踊らさせ頭上に手を広げる。
俺たちがいるこの辺りを月明かりよりも更に照らす光と、熱さが伝わる程の大きな火球が作られる
。
「それよ。 あの女倒せるわ」
「私の持つ最強の魔法よっ。 これでも喰らって消し炭になれ」
挙げた手を勢いよく振り下ろし、ほくそ笑み勝ち誇った表情をするイプシロン。
「むぅー、あの魔法……」
「立てるユカリ?」
「ええ、ここから離れないと」
「私だってわかるわ。 あの魔法かなり強力だわ」
ユカリの肩を抱き上げるリフィーナと共にフェルトとミミンは、その場から逃げるように離れる。
――――何故、俺の方に?
「ハーデスさんっ」
「大丈夫そうだな」
「ええ、ですがアレ」
俺の存在に気づいたのか、フェルトの心配する声。ユカリとリフィーナは、息を整えながら空から落ちるイプシロンの魔法を見つめている。
「むー。 あの魔法、フレアボムの予感」
「フレアボム……熱がここまで届く程の」
「むむぅ、おねぇさま心配ぃぃっ」
灼熱の火球が、ペルセポネを狙ってゆっくり落ちていく。
その落ちる火球を見つめていた緑色の髪をしたデルタが、不敵な笑みをペルセポネにする。
「アルファ達に謝れば許してやるわっ」
「ダメよデルタ。 コイツは今ここで消してやるぅっ」
「はぁ」
「ため息着いて諦めたぁ?」
「あんたぁっ、とち狂ったの? 石なんか拾って」
「……」
二人の言葉に対し何も返さず足元に合った石を拾い上げるペルセポネは、その石を握りしめ落ちていく灼熱の火球に向け投げつける。
「はぁ、バッカじゃないのぉっ。 そんな小石、投げつけてぇっ」
「もう、やけくそみたいね。 フレアボムの中で消えちゃうって分からないのぉぉ!?」
ペルセポネの行動に、小馬鹿にしながら高らかに笑い声を上げるデルタとイプシロン。
アルファの表情から血の気が引く。
「ほらぁっ。 教えてあげたのに、バカはバカね」
「アルファらを蹴り倒せたのは、運が良かったのよ、まぐれなのよ」
デルタとイプシロンの笑う声が響き渡る。
ペルセポネの投げた小石が迫り来るフレアボムの中心を通ると、突然フレアボムの中が膨張しそのまま空中で拡散され消えていく。
「なっ」
「えっ」
小馬鹿な笑い声をしていたデルタとイプシロンの声と表情から一変、唖然として固まる。
静かになる森。
「「……」」
デルタとイプシロンは、口を開いたまま消えたフレアボムの空を見つめている。
この沈黙にため息混じりで口を開くペルセポネは、真っ青なアルファを睨む。
「まぁ、知る者と知らぬ者の差というのかしら」
「お前らっ」
「「痛っ」」
駆け足でペルセポネの元に近づくアルファは、デルタとイプシロンの頭を叩きながら、深々と頭を下げる。
「アルファ!?」
「おにぃちゃ?」
「すみませんでしたっ。 ペルセポネさん」
「えっ!!」
「こここここの人、この方は何?」
「うるさい……だっ黙って頭を下げろっ」
デルタとイプシロンは、アルファの口からペルセポネの名を聞くと表情が曇り出し、頭を地面に付け土下座をし出す。
「それで許してあげる。相手の力量をみて挑む事ね」
「あ、ありがとうございますっ」
「まぁ、いいわ。でも更に楯突いてくるなら、二人の身体から魔石を引きちぎって奪ってやろうとしてたけど」
「「……」」
「そこの伸びている二人を連れてどこかに行って」
「わ、分かりましたっ」
アルファは、土下座をしている二人の襟首を引っ張って起こし、無言のままベータとガンマを連れて森の中に消えていった。
「はぁ、欲しかったのよね。 あの桃色の女の魔石」
ペルセポネは、肩を落としながらそう呟き俺たちの元にくる。
「下手に人を殺すなよ」
「分かっているわよ」
「さすが、ペルセポネさんですわ。 投石のスキルまで持っているなんて」
「ええ、まぁ……」
「桁違いなのよ。 化け物と言われてもしょうが無い程に……」
「リフィーナ、貴女のスキルも桁違い。 『バカすぎる』のレベルは」
「なななななっ。 きぃ~っ、バカって言ったぁっ」
悔しそうな顔でペルセポネを睨むリフィーナの前を駆け足で通り抜けるミミンは、ペルセポネに抱きつこうと飛び込んでいく。
「おねぇぇさぁまぁっ!!」
「……」
地面にダイブするミミン。
それを回避したペルセポネ。
「ミミン、地面で寝てたら風邪ひくよ」
「おねぇさまが、避けなければ……おねぇさまの温もりが温めて……」
ミミンは、呟きながら起き上がる。
やっとの事で立っているユカリを見たペルセポネ。
「ユカリは、大丈夫そうね」
「ええ、体は……。 ですがさっきの防ぐ事で精一杯でした」
「あれは、桁違いよっ。 アルファ、ベットファミリーのパーティーでランクAの冒険者」
リフィーナの言葉で黙ってしまうユカリ達。
「まぁ、冒険者としてはランクBだけど、体の一部はランクAよ。 リフィーナっ」
リフィーナは、ペルセポネから掛けられた言葉に目を潤い感激している。だが、ほくそ笑むペルセポネの視線の先はリフィーナの胸当て。
その視線で気付くリフィーナは、紅潮させ怒りが爆発する。
「胸見んなぁぁっ!! ランクAじゃねぇっ」
その言葉は、森の中に響き渡っていった。
◆◆◆◆
森を抜けようとする五人。
アルファを挟むようにデルタとイプシロン、それぞれの間には意識を失っているベータとガンマを担ぎながら街に戻るべく進んでいる。
「そろそろ回復魔法使えそうだわ」
「分かった、下ろすぞ」
ベータとガンマを寝かせ、デルタは二人に向け手をかざし魔法を使う。
意識を取り戻す二人は、眼を擦り起き上がる。
「なんなんだあの女」
「トラウマもんだ」
目覚めた二人の言葉で、イプシロンがひきつりながらアルファに問いかける。
「なんなのっ、あの女。 私の最強魔法フレアボムをたった一つの小石でかき消すなんて」
「「それっマジかよ」」
イプシロンの言葉に驚くベータとガンマだが、頷くデルタの表情を見て本当だと知る。
すると、アルファが深刻な顔をして四人を見渡す。
「父上、伯父上の話を覚えているか?」
「えっ?」
「それってアレだろ、確か昔ドラゴン討伐の話」
「あぁ、そうだ。 俺も十二の時に同行したんだが……」
「レッドドラゴン討伐成功の話だろ」
「そうだ。 だけどなその戦いレッドドラゴンの周りにグリーンドラゴンが数多く、俺達は死を迎える戦況だった」
□□□□
ベット家が、東の山脈にすむドラゴン討伐を当時の聖王から勅命を受ける。ベット家の当主、アルファの言う伯父上を筆頭にアルファの父と数名の使用人と部下の兵を連れ進行する。
その中に幼きアルファの姿。
アルファの伯父と父親は、冒険者ランクAを超える実力者。アルファもその二人に少しでも近づきたいと今回の討伐に参加。
進行会、話も少なく物音もあまり立てずに山道を進む。
真っ赤な鱗をギラつかせたまるで山のような大きさのドラゴンが、翼をはためかせ山間から現れベット家一行を見下ろしている。
「こいつが、レッドドラゴン」
「急に現れやがった」
兵達と伯父、父は武器を構え臨戦態勢になり使用人達は、その場から離れ支援準備に入る。
幼きアルファも武器を構えだす。
「父上、これがレッドドラゴンなのですね」
「あぁ、赤い鱗、赤い眼、まさにレッドドラゴンだ。 強さがヒシヒシと伝わるぞ」
「気を引き締めろ。 周りには何も居ないなっ?」
「伯父上、周辺いません」
「よく出来たアルファっ。 レッドドラゴンに集中しろよお前らっ」
□□□□
森の中で四人は、静かに語るアルファの声に耳を澄ます。
「確かここでレッドドラゴンを倒し、無事に戻って来たと言う話だった筈」
「そうよ。 伯父上が自慢気に語る話。 でもそれが、どうあの女と関係があるの?」
「レッドドラゴンの周りには確かに何もいなかった。 だがその後現れるんだ」
「現れる?」
「何が」
「三体のグリーンドラゴン」
「一体でもキツいグリーンドラゴンが」
「あぁ、俺達伯父上と父上は、レッドドラゴンと戦い傷を負い体力も削られ使用人や兵は、全て命を落としている中、周辺グリーンドラゴンに囲まれ絶体絶命の境地に立たされた」
「だけどな、一瞬で三体のグリーンドラゴンが崩れ落ちるように倒れるんだ」
「伯父上の話た中には、レッドドラゴンしか出てきてない」
「私もそれしか聞いてないわ。 ベータもガンマもでしょ」
「「あぁ」」
蒼白になるイプシロンとデルタ。ベータとガンマは神妙なアルファの顔を見つめる。
「俺は見たんだ。 一瞬で崩れ落ちるグリーンドラゴンに白鳥のような姿をした閃光に」
「白鳥?」
「その者が、レッドドラゴンと俺たちの間に立ちレッドドラゴンへ二本の剣を振るうんだ」
「まさか?」
「あぁ、そのまさかだ。 グリーンドラゴンを一瞬で倒しレッドドラゴンすら手足も出せず、切り刻んで倒したのが、あのペルセポネさんだ」
「伯父上達の話とは」
「違うわ」
「あぁ、俺はその後この話をしてはいけないと言われていた。 だが、あの人が現れた今、ベット家に関わる問題」
「つまり手柄を横取りしたのが……」
「伯父上達は、レッドドラゴンだけなからもしかしたら勝てたかもしれん。 だが、そこにグリーンドラゴン三体……」
「この話聞きたくなかったわ」
「あの女が現れたから、そういう嘘を言うのねアルファ」
「兄よ。 あの女に何が握られているのか?」
「俺は無い……。 いや握られているのはベット家の真実だな」
深刻な顔をするアルファ達。
「話した内容は、この俺がこの目で見た事。 あの人は、人族が数時間かけて倒すドラゴンをあっさりと倒せる実力者。 それがお前達に伝わればそれで良い」
「グリーンドラゴンとレッドドラゴンを……」
「ドラゴンを一瞬。 おとぎ話レベルだろ」
「ありえないわ」
「ドラゴンを一瞬で……。 フレアボムを一瞬で消す強さわかる気がする」
四人に背中を見せ森を進み出すアルファ。
疑念や不満の顔を伺わせる四人は、お互いの顔を見合わせ、その話を心に仕舞いアルファの後に続き街を目指していった。
蹴られた痛みを堪えながら文句を飛ばし立とうとするアルファは、蹴られた際に手から離してしまったバスタードソードを拾い上げる。
「痛てぇっ」
その口調から怒り心頭のアルファの顔が、紅潮しペルセポネに斬り掛かろうとバスタードソードを振り上げる。
「てめぇかぁっ、ぶった斬……ってぇ……ぇぇ」
アルファの怒号は、この森を包こもうとするが、その口調がペルセポネの姿を見た途端小さくなり、紅潮していた顔が逆に青ざめていく。
アルファは、振り上げていたバスタードソードを手から離し固まってしまった。
「アルファどぉしたっ?」
「もしかして、あの女のスキル?」
「アルファを、みんな助けろ」
「動けないアルファを庇いつつ、あの女を倒すっ」
青髪男のベータと黄髪男のガンマは、武器を構えペルセポネに迫る。
緑髪女のデルタは、両手を前に出して魔法を放ち、桃色髪のイプシロンは、上空に向け手を広げている。
「お前らっ、やめ……」
アルファは、青ざめた顔をしたままベータ達の攻撃を静止しようと裏声になってまで声を出す。
だが、その声と同時にペルセポネに向かっていったベータとガンマが、突き飛ばされ地面を転がっていく。
「ちょ、何?」
「ベータ?……ガンマ?」
突然、吹き飛ばされ地面で横になりながら苦しんでいるベータとガンマの光景が目に入るデルタとイプシロンは、目を見開いて動きが止まる。
「やつはどこ?」
「き、消えたぁ?」
「敵から目を離しちゃダメよ」
「「なっ!!」」
二人の後ろに立つペルセポネ。
後ろから伝わる声に驚くデルタとイプシロンは、後ろを振り向くと目を見開きながら畏怖と共に飛び跳ねるようにペルセポネから離れ距離をとる。
「ば化け物ぉぉっ!!」
「イプシロン!?」
「私の、魔法でぇぇ」
焦燥するイプシロンは、桃色の髪を踊らさせ頭上に手を広げる。
俺たちがいるこの辺りを月明かりよりも更に照らす光と、熱さが伝わる程の大きな火球が作られる
。
「それよ。 あの女倒せるわ」
「私の持つ最強の魔法よっ。 これでも喰らって消し炭になれ」
挙げた手を勢いよく振り下ろし、ほくそ笑み勝ち誇った表情をするイプシロン。
「むぅー、あの魔法……」
「立てるユカリ?」
「ええ、ここから離れないと」
「私だってわかるわ。 あの魔法かなり強力だわ」
ユカリの肩を抱き上げるリフィーナと共にフェルトとミミンは、その場から逃げるように離れる。
――――何故、俺の方に?
「ハーデスさんっ」
「大丈夫そうだな」
「ええ、ですがアレ」
俺の存在に気づいたのか、フェルトの心配する声。ユカリとリフィーナは、息を整えながら空から落ちるイプシロンの魔法を見つめている。
「むー。 あの魔法、フレアボムの予感」
「フレアボム……熱がここまで届く程の」
「むむぅ、おねぇさま心配ぃぃっ」
灼熱の火球が、ペルセポネを狙ってゆっくり落ちていく。
その落ちる火球を見つめていた緑色の髪をしたデルタが、不敵な笑みをペルセポネにする。
「アルファ達に謝れば許してやるわっ」
「ダメよデルタ。 コイツは今ここで消してやるぅっ」
「はぁ」
「ため息着いて諦めたぁ?」
「あんたぁっ、とち狂ったの? 石なんか拾って」
「……」
二人の言葉に対し何も返さず足元に合った石を拾い上げるペルセポネは、その石を握りしめ落ちていく灼熱の火球に向け投げつける。
「はぁ、バッカじゃないのぉっ。 そんな小石、投げつけてぇっ」
「もう、やけくそみたいね。 フレアボムの中で消えちゃうって分からないのぉぉ!?」
ペルセポネの行動に、小馬鹿にしながら高らかに笑い声を上げるデルタとイプシロン。
アルファの表情から血の気が引く。
「ほらぁっ。 教えてあげたのに、バカはバカね」
「アルファらを蹴り倒せたのは、運が良かったのよ、まぐれなのよ」
デルタとイプシロンの笑う声が響き渡る。
ペルセポネの投げた小石が迫り来るフレアボムの中心を通ると、突然フレアボムの中が膨張しそのまま空中で拡散され消えていく。
「なっ」
「えっ」
小馬鹿な笑い声をしていたデルタとイプシロンの声と表情から一変、唖然として固まる。
静かになる森。
「「……」」
デルタとイプシロンは、口を開いたまま消えたフレアボムの空を見つめている。
この沈黙にため息混じりで口を開くペルセポネは、真っ青なアルファを睨む。
「まぁ、知る者と知らぬ者の差というのかしら」
「お前らっ」
「「痛っ」」
駆け足でペルセポネの元に近づくアルファは、デルタとイプシロンの頭を叩きながら、深々と頭を下げる。
「アルファ!?」
「おにぃちゃ?」
「すみませんでしたっ。 ペルセポネさん」
「えっ!!」
「こここここの人、この方は何?」
「うるさい……だっ黙って頭を下げろっ」
デルタとイプシロンは、アルファの口からペルセポネの名を聞くと表情が曇り出し、頭を地面に付け土下座をし出す。
「それで許してあげる。相手の力量をみて挑む事ね」
「あ、ありがとうございますっ」
「まぁ、いいわ。でも更に楯突いてくるなら、二人の身体から魔石を引きちぎって奪ってやろうとしてたけど」
「「……」」
「そこの伸びている二人を連れてどこかに行って」
「わ、分かりましたっ」
アルファは、土下座をしている二人の襟首を引っ張って起こし、無言のままベータとガンマを連れて森の中に消えていった。
「はぁ、欲しかったのよね。 あの桃色の女の魔石」
ペルセポネは、肩を落としながらそう呟き俺たちの元にくる。
「下手に人を殺すなよ」
「分かっているわよ」
「さすが、ペルセポネさんですわ。 投石のスキルまで持っているなんて」
「ええ、まぁ……」
「桁違いなのよ。 化け物と言われてもしょうが無い程に……」
「リフィーナ、貴女のスキルも桁違い。 『バカすぎる』のレベルは」
「なななななっ。 きぃ~っ、バカって言ったぁっ」
悔しそうな顔でペルセポネを睨むリフィーナの前を駆け足で通り抜けるミミンは、ペルセポネに抱きつこうと飛び込んでいく。
「おねぇぇさぁまぁっ!!」
「……」
地面にダイブするミミン。
それを回避したペルセポネ。
「ミミン、地面で寝てたら風邪ひくよ」
「おねぇさまが、避けなければ……おねぇさまの温もりが温めて……」
ミミンは、呟きながら起き上がる。
やっとの事で立っているユカリを見たペルセポネ。
「ユカリは、大丈夫そうね」
「ええ、体は……。 ですがさっきの防ぐ事で精一杯でした」
「あれは、桁違いよっ。 アルファ、ベットファミリーのパーティーでランクAの冒険者」
リフィーナの言葉で黙ってしまうユカリ達。
「まぁ、冒険者としてはランクBだけど、体の一部はランクAよ。 リフィーナっ」
リフィーナは、ペルセポネから掛けられた言葉に目を潤い感激している。だが、ほくそ笑むペルセポネの視線の先はリフィーナの胸当て。
その視線で気付くリフィーナは、紅潮させ怒りが爆発する。
「胸見んなぁぁっ!! ランクAじゃねぇっ」
その言葉は、森の中に響き渡っていった。
◆◆◆◆
森を抜けようとする五人。
アルファを挟むようにデルタとイプシロン、それぞれの間には意識を失っているベータとガンマを担ぎながら街に戻るべく進んでいる。
「そろそろ回復魔法使えそうだわ」
「分かった、下ろすぞ」
ベータとガンマを寝かせ、デルタは二人に向け手をかざし魔法を使う。
意識を取り戻す二人は、眼を擦り起き上がる。
「なんなんだあの女」
「トラウマもんだ」
目覚めた二人の言葉で、イプシロンがひきつりながらアルファに問いかける。
「なんなのっ、あの女。 私の最強魔法フレアボムをたった一つの小石でかき消すなんて」
「「それっマジかよ」」
イプシロンの言葉に驚くベータとガンマだが、頷くデルタの表情を見て本当だと知る。
すると、アルファが深刻な顔をして四人を見渡す。
「父上、伯父上の話を覚えているか?」
「えっ?」
「それってアレだろ、確か昔ドラゴン討伐の話」
「あぁ、そうだ。 俺も十二の時に同行したんだが……」
「レッドドラゴン討伐成功の話だろ」
「そうだ。 だけどなその戦いレッドドラゴンの周りにグリーンドラゴンが数多く、俺達は死を迎える戦況だった」
□□□□
ベット家が、東の山脈にすむドラゴン討伐を当時の聖王から勅命を受ける。ベット家の当主、アルファの言う伯父上を筆頭にアルファの父と数名の使用人と部下の兵を連れ進行する。
その中に幼きアルファの姿。
アルファの伯父と父親は、冒険者ランクAを超える実力者。アルファもその二人に少しでも近づきたいと今回の討伐に参加。
進行会、話も少なく物音もあまり立てずに山道を進む。
真っ赤な鱗をギラつかせたまるで山のような大きさのドラゴンが、翼をはためかせ山間から現れベット家一行を見下ろしている。
「こいつが、レッドドラゴン」
「急に現れやがった」
兵達と伯父、父は武器を構え臨戦態勢になり使用人達は、その場から離れ支援準備に入る。
幼きアルファも武器を構えだす。
「父上、これがレッドドラゴンなのですね」
「あぁ、赤い鱗、赤い眼、まさにレッドドラゴンだ。 強さがヒシヒシと伝わるぞ」
「気を引き締めろ。 周りには何も居ないなっ?」
「伯父上、周辺いません」
「よく出来たアルファっ。 レッドドラゴンに集中しろよお前らっ」
□□□□
森の中で四人は、静かに語るアルファの声に耳を澄ます。
「確かここでレッドドラゴンを倒し、無事に戻って来たと言う話だった筈」
「そうよ。 伯父上が自慢気に語る話。 でもそれが、どうあの女と関係があるの?」
「レッドドラゴンの周りには確かに何もいなかった。 だがその後現れるんだ」
「現れる?」
「何が」
「三体のグリーンドラゴン」
「一体でもキツいグリーンドラゴンが」
「あぁ、俺達伯父上と父上は、レッドドラゴンと戦い傷を負い体力も削られ使用人や兵は、全て命を落としている中、周辺グリーンドラゴンに囲まれ絶体絶命の境地に立たされた」
「だけどな、一瞬で三体のグリーンドラゴンが崩れ落ちるように倒れるんだ」
「伯父上の話た中には、レッドドラゴンしか出てきてない」
「私もそれしか聞いてないわ。 ベータもガンマもでしょ」
「「あぁ」」
蒼白になるイプシロンとデルタ。ベータとガンマは神妙なアルファの顔を見つめる。
「俺は見たんだ。 一瞬で崩れ落ちるグリーンドラゴンに白鳥のような姿をした閃光に」
「白鳥?」
「その者が、レッドドラゴンと俺たちの間に立ちレッドドラゴンへ二本の剣を振るうんだ」
「まさか?」
「あぁ、そのまさかだ。 グリーンドラゴンを一瞬で倒しレッドドラゴンすら手足も出せず、切り刻んで倒したのが、あのペルセポネさんだ」
「伯父上達の話とは」
「違うわ」
「あぁ、俺はその後この話をしてはいけないと言われていた。 だが、あの人が現れた今、ベット家に関わる問題」
「つまり手柄を横取りしたのが……」
「伯父上達は、レッドドラゴンだけなからもしかしたら勝てたかもしれん。 だが、そこにグリーンドラゴン三体……」
「この話聞きたくなかったわ」
「あの女が現れたから、そういう嘘を言うのねアルファ」
「兄よ。 あの女に何が握られているのか?」
「俺は無い……。 いや握られているのはベット家の真実だな」
深刻な顔をするアルファ達。
「話した内容は、この俺がこの目で見た事。 あの人は、人族が数時間かけて倒すドラゴンをあっさりと倒せる実力者。 それがお前達に伝わればそれで良い」
「グリーンドラゴンとレッドドラゴンを……」
「ドラゴンを一瞬。 おとぎ話レベルだろ」
「ありえないわ」
「ドラゴンを一瞬で……。 フレアボムを一瞬で消す強さわかる気がする」
四人に背中を見せ森を進み出すアルファ。
疑念や不満の顔を伺わせる四人は、お互いの顔を見合わせ、その話を心に仕舞いアルファの後に続き街を目指していった。
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フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
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「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
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