冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

文字の大きさ
126 / 173
聖国と帝国と金色の勇者

冥王、目の前のベヒーモスと傷ついたユカリ達。

しおりを挟む
 鋭いツノで狙い見定めているベヒーモスは、広い部屋を駆るユカリ達を翻弄させ反撃の機会を狙う。
 ベヒーモスの攻撃は、フェルトの大盾しか当たっていない、それ以外は全てペルセポネが割り込み弾き返している。
 ベヒーモスは、最初に弾き返された時から何故かペルセポネを避けユカリ達への直接攻撃を試みて縦横無尽に跳ねるように動く。

――――そりゃなぁ。武器でなら痛みで手を引くかもしれんが、ペルセポネは蹴りか拳で弾き返しているんだ。つまりペルセポネの反撃の一撃がベヒーモスの攻撃力を上回っていると本能的に理解しているのだろう。

 掛け声が飛び交いユカリ達は、ベヒーモスへ攻撃をし続けて数時間。
 疲労が溜まりスキルや魔法さえ出し尽くし、間合いを見て回復に務めている。
 フェルトが使う、敵を引き付ける大盾スキル《アトラクト》は、連発して使えずフェルト自ら動きベヒーモスの攻撃の間に入り大盾で受け流す。
 ベヒーモスの前脚が、リフィーナに目掛け振り下ろされる。
 フェルトは、ベヒーモスとリフィーナの間に駆け寄るが、足をもつれさせながらも攻撃を受け流す。
ベヒーモスの額は大盾と激突、否その額をしゃくり上げフェルトを天井へと突き飛ばす。

「「「フェルトぉっ」」」

 ベヒーモスは、ユカリに向け疾走し前脚を振り下ろす。
 身動き取れないのフェルトは、そのまま床へ叩き落とされ衝撃で吐血しと苦痛の表情。
 リフィーナが、フェルトの元に駆け寄る。
 ベヒーモスの攻撃を躱したユカリは、複数回の斬撃を与えるが、鼻に力をいれるベヒーモスは耐え抜き再びユカリへ突撃する。
 苦痛の表情をするフェルトに回復魔法を施すリフィーナ。
 ミミンは、その二人を隠すかのように前に出て魔力量の少ない魔法を放ちユカリを援護する。
 ユカリへの攻撃からフェルト達に狙いを変えたベヒーモスは、ゆっくりと四本の脚でのらりくらりとフェルト達を凝視し迫る。
 二歩ほど後退するミミンは、怯えて腰を抜かしてしまう。

「む、あ、あぁ」
「ミミン下がってっ」

 苦痛の顔をするユカリが、駆け寄りミミンの前に。
 歯ぎしりをしながらも一点に視線を向けるベヒーモス。
 荒れる息を整えようとしている満身創痍なユカリ。
 ベヒーモスの雄叫びが、天井や壁を振動させ目を見開き立ち向かうユカリへと上半身を上げ、覆い被さるかのように前脚を大きく振り上げる。
 決死の覚悟かユカリは、動かずベヒーモスへ睨む。
 ユカリの頭上へと振り下ろされるベヒーモスの前脚。

「「「ユカリっ」」」

 回復に務めるリフィーナ。
 足を振るえながらも、立ち上がろうとするミミン。
 床に手を付き今にも起き上がろうとするフェルト。 
 三人の声が部屋を響かせ、最悪の覚悟を決めたか目をつぶる。
 何かが弾け飛ぶようなこの部屋の音を全てかき消す程の大きな衝撃音。
 甲高い耳鳴りに負われ、瞑っていた目を開くリフィーナ達三人。
 その中で聞こえる声。

「はい、終わりぃ」

 ベヒーモスが、横転し遠くへ離れていく。
 ベヒーモスの振り下ろす前脚を握り拳で、反撃していたペルセポネのその拳から、煙が薄らと炊き上がる。

――――普通、殴るか?剣あるのに、剣を使え。
転回するベヒーモスは、反動を使って床に着地し、身構える。

 滑らかに二本の剣を鞘から抜くペルセポネは、微笑みを一瞬しベヒーモスを見つめる。

「あなた達はここまで、よく耐え抜いたものよ」
「で、ですが。 私達は」
「無理よ。 殆ど攻撃通ってないし」
「……」

 ペルセポネの言葉に黙ってしまうユカリに、上半身だけ起こせたフェルトが、口を開く。

「私達には、まだベヒーモスは無理なのかも知れませんわ」
「そうね。 ペルセポネの言う通りかも、攻撃しても硬いのよアイツ」
「む、魔法も効かない」

 ベヒーモスに対峙するペルセポネの姿を見渡しながら、リフィーナ達は口にする。

「ここは、ペルセポネさんにお願いするしかないわ」
「お願いも何も、私が受けた依頼だし」

 ゆっくりとベヒーモスへ近づくペルセポネ。

「ハーデス、四人を」
「あぁ、俺もベヒーモスと戦っていいんだぞ」
「いやよ。 このベヒーモスは私の獲物」

 近づくペルセポネにベヒーモスは、少しだけ後退する。
 俺は、ユカリ達に壁際へ先導し休ませる。

――――ペルセポネの攻撃に巻き込まれたら、ヤバいからな。

「大丈夫なのでしょうか?」
「あのベヒーモス、何故か距離を取ってるから大丈夫ですわ。 動きでペルセポネさんに怖気付いていると思いますわ」
「ランクA。 私達と、どれだけ差があるのか今まで見てても理解出来ない」
「むぅ、おねぇさまは無敵」

 二本の剣の軌道が、綺麗な弧が複数、残像を作り更に描かれる。
 ベヒーモスは、前脚から血飛沫を上げながらも前脚でペルセポネの斬撃を防いでいる。
 別の角度から攻めるペルセポネだが、ベヒーモスの肉体に斬撃を浴びせても、多くの血は出てこない。
 フェルトの肩を担ぐリフィーナは、ベヒーモスとペルセポネの戦いに目を奪われている。
 ユカリとミミンも、その戦いに視線を注ぐ。

「ダンジョンのベヒーモス。 やはり硬い」
「ペルセポネさんでも、ベヒーモスには苦戦するのですね」
「いや、あれは遊んでいるな」

 ユカリ達四人は、俺に視線を向け呆気に捉えている。

「え? どういう」
「ん、あぁベヒーモス、どう見ても魔王ノライフ位の強さと思える。 ただノライフは魔力が高いだけで、それらの能力は低いと思えるが」
「……」
「あのベヒーモス。 魔力は分からないが、攻撃力や防御力など能力値が、高いと見れるが。 どうだ?」
「ええ、確かに防御力なんて今まで見た敵の中でずば抜けている」

 目を青く光らせ鑑識眼を使うユカリは、ベヒーモスの能力値を口にする。

「あのベヒーモス。 魔法使える」
「使え……」

 ユカリの言葉が届く事は無さそうな距離で戦うペルセポネだが、その言葉を発した時から何故かベヒーモスの悲痛な鳴き声が、多くなる。

「何か、後ろから……」
「誰か、扉の向こう」
「む、いる」

 俺たちの近くにある、あの大きな扉の反対側から激しく叩く音と声。

『おい、なんで開かない?』
『いやぁ、先客がいたんですねぇ』
『俺たちよりも、先にって。 俺たちよりも強いやつなんているのかぁ?』
『そう言わないでくださいよぉ、だんなぁ』
『だんな……では無い。 まぁ、待つしかないのだな』
『ええ、入れるまで』

 そんな声がこちらまで聞こえると、ユカリの顔から血の気が引いている。

――――もしかして、それよりもこの扉。分厚いのに何故声が漏れる?

「まさか、前に進んでいるんじゃなかった?」
「あの声、あの声……」
「ユカリ落ち着きなさって。 ここは大丈夫ですわ」
「ええ、私は大丈夫」

 身を縮めるユカリに、背中をさするミミンとリフィーナ。

――――勇者キンジョウ、転移前に起こした事件がユカリにトラウマを植え付けたというのか。

 ベヒーモスの鳴き声が、小さくなる中ペルセポネの剣がベヒーモスの肉体を削る斬撃音が、部屋を響かせていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

処理中です...