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人族の神エウラロノースと聖女アルダー
冥王、一休みを希望するが問題は向こうからやってくる。
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猫獣人のシャルルを勇者キンジョウの仲間だった二人の男から救出し、その帰路。
日が傾き空が暗くなりつつある中で、俺の行く先にフラフラと揺れる六人の影がやってくる。
一つだけぼんやりと光る物が縦に揺れる。
向こうがこちらに気づく。
「むぅっ、おねぇさまぁっ」
「ハーデスさん、ペルセポネさん今まで何処に?」
「そうよ。 しかもトンドもいるし」
「もしかして、シャルル……さんですわ!!」
ミミンは、笑顔で俺たちにむけ手を大きく振るが、他三人は疲れ果てた表情だ。
しかもユカリは、聖剣クラウソラスを杖代わりにし、歩いている。
――――あの光は、聖剣クラウ・ソラスのだったか。それにしても聖剣……物というのは人の価値観はそれぞれなんだな。
ユカリ達は、ギルドの受付嬢とギルドマスターから質問攻めに合っていたそうだ。
シャルルを救出した経緯をユカリ達に伝えながら俺達はヒロックアクツの建物に戻る。
無事にシャルルを救い、帝国と聖国の同盟でコベソを気にかけながらも俺は一夜を明ける。
俺とペルセポネにユカリ達は、大部屋でゆったりと寛いでいる。
そんな中リフィーナは、満面の笑みで背中を大きく伸ばしながら、大きな声を部屋に響かせる。
「よく寝た。 あぁ未だに信じられい――――私達が記録を塗り替えたなんて」
「ふふ、そうですわ。 ベヒーモスにアースドラゴン……」
「むぅでも、おねぇさまが殆ど倒した」
「……」
ミミンの言葉で項垂れるユカリ達だがその表情は、昨日と打って変わって明るい。
紅茶と共に茶菓子を持ってきたシャルルは、何事も無かったかのような振る舞いで仕事に取り掛かっている。
腰掛け紅茶を啜っていたペルセポネが、急に立ち上がると、にこやかにユカリ達と俺を見回す。
「寝てみんな元気になったし……アースドラゴンの魔石、解体する人が来るまでダンジョンに潜りますかぁっ」
その言葉に一同沈黙してまう。
しかし、ミミンだけはペルセポネの言葉に目を輝かせながら頷いている。
「なによ黙って。 あの猫獣人も助けて、どぉ~せ暇なんだから、やるしかないでしょ」
ペルセポネの更なる言葉にリフィーナとフェルトが口を開く。
「確かに、暇と言われちゃぁ今日何をするか考えてないし」
「そうですわ。 でもシャルルさんも救出した事ですし、でも――――今日は体を休めたいですわ」
腕を組み少し険しい顔でユカリ達を見るペルセポネ。
「それなら、私……ハーデスと行くからっ」
――――あの階層まで結構日数使うぞ。それにこの俺だって休みたい時もある。
「なによ、鳩が豆鉄砲を喰らった顔をして」
「――――まぁ、俺はコベソの動向が気になってな」
「あのマルデブの?」
「あぁ、侵攻してきた魔王を撃退させた帝国と勇者を担ぐ聖国の状況も」
「ふん。 そんなのダンジョンから出たら答え出てるんじゃない?」
「それもありだが、魔王はまだいる。 話し合いの縺れて聖国と帝国の戦争になってみろ。 それを機に魔王が攻めくるだろ」
俺の言葉にペルセポネが、目を見開く。
「それもそうね。 戦争になったら聖女のババアの魔石、クソ男勇者の魔石、金髪女の魔石、魔王の魔石、逃しちゃうかぁ」
「あぁ、そうだな……」
俺は苦笑いで受け答える。
すると、扉をノックし入ってくる丸デブことコベソが深刻な表情だ。
「――――皆いるな」
「何よ。 急に入ってきて」
「急ぎなのだ」
「もしかして、シャルルさんの件?」
「シャルルの救出に困難が生じていたが、勇者キンジョウの仲間が暴走したと聞いた。 これには自分としても本当に良かった」
「そうよね」
「全くですわ」
「むぅー良か、よかっ」
「これで、ゆっくり一休みできる」
穏やかな空気に包まれるこの部屋。
血相を変えてやってきたコベソも近くの椅子に座り、落ち着きを取り戻したが。
「違うわっ!! シャルルの件、本当にありがとうっ。 だが、今はそんな悠著にしている場合ではないっ」
「だがら、何なの急ぎの内容って?」
ペルセポネの冷ややかな言葉に、肩を落とすコベソだが、席を立つ。
「聖国の兵、軍隊がこの街にやってくる。 もしかしたらこの街戦禍に身まわれるかもしれん。 俺たちも早くこの街から出るぞっ」
あまりにも信じ難い内容がコベソの口から告げられる。その内容に黙ってしまうユカリ達。
しかし、リフィーナが疑問をぶつける。
「なんでよっ。 この街が危険って、まさか聖国は帝国とやり合うって事?」
「それって有り得ませんわ。 同盟国ですし戦争なんて」
「むぅ、ならなんで?」
リフィーナの眼光がコベソに向けられると、フェルトとミミンもコベソを睨みつける。
席を立つユカリが、リフィーナ達を見回すとコベソに問う。
「みんな、今すぐにでも離れよう。 それでコベソさん、従業員のみんなは?」
「うむ、聖国にいる従業員は全員国外に脱出させた。 いるのはここにいる者だけだ」
「みんな、行きましょ。 ここにいても――――何か悪い事が起きそう」
頷くコベソだが、困惑するリフィーナやフェルトにミミンは、ユカリの強い口調に圧され部屋を出る。
ペルセポネは、小声で「アースドラゴンの解体……」と呟いていたが、俺と共にコベソの後を追う。
俺達を乗せた馬車は、グランウェスの街を駆け抜けるが、聖国の兵が怒号を上げ追いかけてくる。
しかし、こちらは駆動の良い馬車に対し兵は足、全く追いつかない。
聖国の弓兵が、建物の屋根に潜んでいたらしく通り過ぎる馬車へ矢を放つが、この馬車、何故か当たらない。
どうもおかしいが、コベソは「この馬車が速すぎて矢が届かない」と鼻高々に自慢している。
更に破裂音なども耳に届く。
魔法使いなどの兵もいたみたいだが、これにもこのコベソは同じ事を言って迎撃しようとするユカリ達を説得していた。
――――何らかの細工があるのだろう。前にもこんな疑問がでたが、あの時は上手く言い汲められたような気がする。
駆ける馬車は更に加速しグランウェスの街を抜けひたすら西へ進む。
数日駆ける中、先を眺める俺は、行く手に見える高い城壁に目を凝らすとコベソが、何やらゴソゴソと動く。
「あれが、帝国側の国境です」
「簡単に入れるのか?」
「ええ、多分」
「多分? 入れなかったら」
「話し合いしますよ。 なんせこれがあるから」
コベソの手に何か巻かれた布があった。
馬車は大きな門の前で立ち止まると帝国の歩哨が、高い城壁の見張り台から大声で呼び掛けてくる。
「どこの者だ? 名乗れっ!!」
「ヒロックアクツ商事のコベソだっ」
困惑気味の御者に呼ばれコベソは、御者台に移動し手に持っていた布を広げ歩哨の兵に見せつける。
「門を開けよっ。 早く中に入れ」
歩哨の言葉に御者が手網を弾く。
進む馬車は城壁を潜る。
城壁を抜け出すと再び馬車は、地を走る。
そして、二日程。
草原を抜け、見えてくるのは大きな街。
道中小さな村はあったが、全く寄らなかった。
「ついに着いたのね」
「ええ、ですが……」
「むぅ、フェルト大丈夫」
「フェルト、何そんなに気を滅入っているの?」
俯くフェルトにミミンとユカリが心配し出す。
真剣な顔でコベソの言葉が飛ぶ。
「覚悟せい。 帝国に入ってしまったんじゃ」
「そうですわね。 勇者の仲間としてしっかりと務めを果たさなければなりませんわね」
目に輝きを灯すフェルト。
俺たちを乗せた馬車は、帝国東の街エメマヒガを通り着いたのは数多くの窓が並ぶ二階建ての大きな館。
降りる度に背伸びをするリフィーナ。
辺りを警戒しているのかフェルトは、周囲を何度も見渡す。
「やっと着いたのね」
「ここは、貴族の人が住んでいたのかしら」
「ここを紹介されたからな。奴らも着いている」
コベソの視線の先には数台の馬車。
荷物を下ろす人々の中に、猫耳を動かしながらハキハキと動くシャルルと指示をだしているトンドがいた。
◇◇◇◇
白き世界エウラロノースの住む世界。
白い人型の者に抑えられたまま為す術もなき勇者キンジョウ。
勇者キンジョウに跨り身体を重ね合わすエウラロノースは、快楽の悦に浸る。
勇者キンジョウは目は遠くを見つめながらも、自らの上で踊り狂うように止まることなく精を貪り食うエウラロノースに恐怖を覚える。
「ふふふ、やはり良いわぁっ。 あぁぁ……私の中に入っていく精。 それにやはり、地球人は最高なのよね」
「……」
「まぁ、そんな顔して……。 貴方が求めていた快楽じゃない」
「……」
「ふふふっ、それもそうね。 吸い取られる度に回復魔法と勇者のスキルで回復しているんだから。 最初はあんだけ歓喜し楽しんでいたのにっ――――そんな顔しないで」
キンジョウの胸に両手をつき腰を動かすエウラロノースは、まぶたが開いたまま視線が定まらないキンジョウの顔を見つめる。
その悦に浸るエウラロノースの元に別の白い人型の者が駆け寄ってくる。
「何、何かあった?」
「……」
「ちっ。失敗したあの女勇者が、帝国にですって?」
「……」
「――――まぁいいわ、戻りなさい」
白い人型の者が、うなずき場から離れていく。
エウラロノースは、腰を止め立ち上がると萎れた勇者キンジョウを見下げる。
「ねぇ、今まで戦ってた勇者も私にたぁぁくさんの精をくれたわァ。 で、今その勇者どうなったか……」
「……」
「そうよね、知らないわよね」
「……」
虚ろな目になる勇者キンジョウ。
「今、魔族となっているわよ。 それに魔神の言いなりで動いてるわ」
「……な」
「へぇ、まだ声出せるほど回復出来るのね。 そう、使えなくなった勇者は、あげたスキルを無くし私から魔神に渡して生まれ変わる――――魔族として二度目の転生」
「ま、まぞ……く」
「こき使われるのよ、魔神にそれに魔将にもね。 何も分からず、意識もなく使われるのよね魔族って」
「……」
「――――あっ少しだけ人間としての意識があるわ。現状に抗えない、そんなもどかしい表情がたまんないらしいわよ――――魔神が言ってたわね」
「……い……いや……だ」
「ふふ、私も人族の神なのよね。 そんな顔するなら、もう一度チャンスを上げるわ」
「……」
「女の――――勇者ユカリを殺しなさい。 そうしたら……魔族にしないって事――――考えてあげるわ」
「……や……る」
「ふふふ、そうよね」
不気味な微笑みエウラロノース。
萎れていた勇者キンジョウは、頷き肩を落としたままこの世界から飛ばされる。
日が傾き空が暗くなりつつある中で、俺の行く先にフラフラと揺れる六人の影がやってくる。
一つだけぼんやりと光る物が縦に揺れる。
向こうがこちらに気づく。
「むぅっ、おねぇさまぁっ」
「ハーデスさん、ペルセポネさん今まで何処に?」
「そうよ。 しかもトンドもいるし」
「もしかして、シャルル……さんですわ!!」
ミミンは、笑顔で俺たちにむけ手を大きく振るが、他三人は疲れ果てた表情だ。
しかもユカリは、聖剣クラウソラスを杖代わりにし、歩いている。
――――あの光は、聖剣クラウ・ソラスのだったか。それにしても聖剣……物というのは人の価値観はそれぞれなんだな。
ユカリ達は、ギルドの受付嬢とギルドマスターから質問攻めに合っていたそうだ。
シャルルを救出した経緯をユカリ達に伝えながら俺達はヒロックアクツの建物に戻る。
無事にシャルルを救い、帝国と聖国の同盟でコベソを気にかけながらも俺は一夜を明ける。
俺とペルセポネにユカリ達は、大部屋でゆったりと寛いでいる。
そんな中リフィーナは、満面の笑みで背中を大きく伸ばしながら、大きな声を部屋に響かせる。
「よく寝た。 あぁ未だに信じられい――――私達が記録を塗り替えたなんて」
「ふふ、そうですわ。 ベヒーモスにアースドラゴン……」
「むぅでも、おねぇさまが殆ど倒した」
「……」
ミミンの言葉で項垂れるユカリ達だがその表情は、昨日と打って変わって明るい。
紅茶と共に茶菓子を持ってきたシャルルは、何事も無かったかのような振る舞いで仕事に取り掛かっている。
腰掛け紅茶を啜っていたペルセポネが、急に立ち上がると、にこやかにユカリ達と俺を見回す。
「寝てみんな元気になったし……アースドラゴンの魔石、解体する人が来るまでダンジョンに潜りますかぁっ」
その言葉に一同沈黙してまう。
しかし、ミミンだけはペルセポネの言葉に目を輝かせながら頷いている。
「なによ黙って。 あの猫獣人も助けて、どぉ~せ暇なんだから、やるしかないでしょ」
ペルセポネの更なる言葉にリフィーナとフェルトが口を開く。
「確かに、暇と言われちゃぁ今日何をするか考えてないし」
「そうですわ。 でもシャルルさんも救出した事ですし、でも――――今日は体を休めたいですわ」
腕を組み少し険しい顔でユカリ達を見るペルセポネ。
「それなら、私……ハーデスと行くからっ」
――――あの階層まで結構日数使うぞ。それにこの俺だって休みたい時もある。
「なによ、鳩が豆鉄砲を喰らった顔をして」
「――――まぁ、俺はコベソの動向が気になってな」
「あのマルデブの?」
「あぁ、侵攻してきた魔王を撃退させた帝国と勇者を担ぐ聖国の状況も」
「ふん。 そんなのダンジョンから出たら答え出てるんじゃない?」
「それもありだが、魔王はまだいる。 話し合いの縺れて聖国と帝国の戦争になってみろ。 それを機に魔王が攻めくるだろ」
俺の言葉にペルセポネが、目を見開く。
「それもそうね。 戦争になったら聖女のババアの魔石、クソ男勇者の魔石、金髪女の魔石、魔王の魔石、逃しちゃうかぁ」
「あぁ、そうだな……」
俺は苦笑いで受け答える。
すると、扉をノックし入ってくる丸デブことコベソが深刻な表情だ。
「――――皆いるな」
「何よ。 急に入ってきて」
「急ぎなのだ」
「もしかして、シャルルさんの件?」
「シャルルの救出に困難が生じていたが、勇者キンジョウの仲間が暴走したと聞いた。 これには自分としても本当に良かった」
「そうよね」
「全くですわ」
「むぅー良か、よかっ」
「これで、ゆっくり一休みできる」
穏やかな空気に包まれるこの部屋。
血相を変えてやってきたコベソも近くの椅子に座り、落ち着きを取り戻したが。
「違うわっ!! シャルルの件、本当にありがとうっ。 だが、今はそんな悠著にしている場合ではないっ」
「だがら、何なの急ぎの内容って?」
ペルセポネの冷ややかな言葉に、肩を落とすコベソだが、席を立つ。
「聖国の兵、軍隊がこの街にやってくる。 もしかしたらこの街戦禍に身まわれるかもしれん。 俺たちも早くこの街から出るぞっ」
あまりにも信じ難い内容がコベソの口から告げられる。その内容に黙ってしまうユカリ達。
しかし、リフィーナが疑問をぶつける。
「なんでよっ。 この街が危険って、まさか聖国は帝国とやり合うって事?」
「それって有り得ませんわ。 同盟国ですし戦争なんて」
「むぅ、ならなんで?」
リフィーナの眼光がコベソに向けられると、フェルトとミミンもコベソを睨みつける。
席を立つユカリが、リフィーナ達を見回すとコベソに問う。
「みんな、今すぐにでも離れよう。 それでコベソさん、従業員のみんなは?」
「うむ、聖国にいる従業員は全員国外に脱出させた。 いるのはここにいる者だけだ」
「みんな、行きましょ。 ここにいても――――何か悪い事が起きそう」
頷くコベソだが、困惑するリフィーナやフェルトにミミンは、ユカリの強い口調に圧され部屋を出る。
ペルセポネは、小声で「アースドラゴンの解体……」と呟いていたが、俺と共にコベソの後を追う。
俺達を乗せた馬車は、グランウェスの街を駆け抜けるが、聖国の兵が怒号を上げ追いかけてくる。
しかし、こちらは駆動の良い馬車に対し兵は足、全く追いつかない。
聖国の弓兵が、建物の屋根に潜んでいたらしく通り過ぎる馬車へ矢を放つが、この馬車、何故か当たらない。
どうもおかしいが、コベソは「この馬車が速すぎて矢が届かない」と鼻高々に自慢している。
更に破裂音なども耳に届く。
魔法使いなどの兵もいたみたいだが、これにもこのコベソは同じ事を言って迎撃しようとするユカリ達を説得していた。
――――何らかの細工があるのだろう。前にもこんな疑問がでたが、あの時は上手く言い汲められたような気がする。
駆ける馬車は更に加速しグランウェスの街を抜けひたすら西へ進む。
数日駆ける中、先を眺める俺は、行く手に見える高い城壁に目を凝らすとコベソが、何やらゴソゴソと動く。
「あれが、帝国側の国境です」
「簡単に入れるのか?」
「ええ、多分」
「多分? 入れなかったら」
「話し合いしますよ。 なんせこれがあるから」
コベソの手に何か巻かれた布があった。
馬車は大きな門の前で立ち止まると帝国の歩哨が、高い城壁の見張り台から大声で呼び掛けてくる。
「どこの者だ? 名乗れっ!!」
「ヒロックアクツ商事のコベソだっ」
困惑気味の御者に呼ばれコベソは、御者台に移動し手に持っていた布を広げ歩哨の兵に見せつける。
「門を開けよっ。 早く中に入れ」
歩哨の言葉に御者が手網を弾く。
進む馬車は城壁を潜る。
城壁を抜け出すと再び馬車は、地を走る。
そして、二日程。
草原を抜け、見えてくるのは大きな街。
道中小さな村はあったが、全く寄らなかった。
「ついに着いたのね」
「ええ、ですが……」
「むぅ、フェルト大丈夫」
「フェルト、何そんなに気を滅入っているの?」
俯くフェルトにミミンとユカリが心配し出す。
真剣な顔でコベソの言葉が飛ぶ。
「覚悟せい。 帝国に入ってしまったんじゃ」
「そうですわね。 勇者の仲間としてしっかりと務めを果たさなければなりませんわね」
目に輝きを灯すフェルト。
俺たちを乗せた馬車は、帝国東の街エメマヒガを通り着いたのは数多くの窓が並ぶ二階建ての大きな館。
降りる度に背伸びをするリフィーナ。
辺りを警戒しているのかフェルトは、周囲を何度も見渡す。
「やっと着いたのね」
「ここは、貴族の人が住んでいたのかしら」
「ここを紹介されたからな。奴らも着いている」
コベソの視線の先には数台の馬車。
荷物を下ろす人々の中に、猫耳を動かしながらハキハキと動くシャルルと指示をだしているトンドがいた。
◇◇◇◇
白き世界エウラロノースの住む世界。
白い人型の者に抑えられたまま為す術もなき勇者キンジョウ。
勇者キンジョウに跨り身体を重ね合わすエウラロノースは、快楽の悦に浸る。
勇者キンジョウは目は遠くを見つめながらも、自らの上で踊り狂うように止まることなく精を貪り食うエウラロノースに恐怖を覚える。
「ふふふ、やはり良いわぁっ。 あぁぁ……私の中に入っていく精。 それにやはり、地球人は最高なのよね」
「……」
「まぁ、そんな顔して……。 貴方が求めていた快楽じゃない」
「……」
「ふふふっ、それもそうね。 吸い取られる度に回復魔法と勇者のスキルで回復しているんだから。 最初はあんだけ歓喜し楽しんでいたのにっ――――そんな顔しないで」
キンジョウの胸に両手をつき腰を動かすエウラロノースは、まぶたが開いたまま視線が定まらないキンジョウの顔を見つめる。
その悦に浸るエウラロノースの元に別の白い人型の者が駆け寄ってくる。
「何、何かあった?」
「……」
「ちっ。失敗したあの女勇者が、帝国にですって?」
「……」
「――――まぁいいわ、戻りなさい」
白い人型の者が、うなずき場から離れていく。
エウラロノースは、腰を止め立ち上がると萎れた勇者キンジョウを見下げる。
「ねぇ、今まで戦ってた勇者も私にたぁぁくさんの精をくれたわァ。 で、今その勇者どうなったか……」
「……」
「そうよね、知らないわよね」
「……」
虚ろな目になる勇者キンジョウ。
「今、魔族となっているわよ。 それに魔神の言いなりで動いてるわ」
「……な」
「へぇ、まだ声出せるほど回復出来るのね。 そう、使えなくなった勇者は、あげたスキルを無くし私から魔神に渡して生まれ変わる――――魔族として二度目の転生」
「ま、まぞ……く」
「こき使われるのよ、魔神にそれに魔将にもね。 何も分からず、意識もなく使われるのよね魔族って」
「……」
「――――あっ少しだけ人間としての意識があるわ。現状に抗えない、そんなもどかしい表情がたまんないらしいわよ――――魔神が言ってたわね」
「……い……いや……だ」
「ふふ、私も人族の神なのよね。 そんな顔するなら、もう一度チャンスを上げるわ」
「……」
「女の――――勇者ユカリを殺しなさい。 そうしたら……魔族にしないって事――――考えてあげるわ」
「……や……る」
「ふふふ、そうよね」
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