冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

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人族の神エウラロノースと聖女アルダー

冥王、この世界の理がほんの少しだけ分かる。

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 軍服姿の者が東エメマヒガの街で見掛けるのが多くなって来た頃俺たちは、ヒロックアクツ商事の商隊と共に西に向かって進んでいる。
 道中魔物と出くわしユカリ達は率先して武器を振るう。
 進むにつれユカリ達は、魔物との交戦に時間が掛かっているように感じていると、そこのコベソの言葉が。

「この帝国の土地は西に行けば行くほど、より強い魔物が出て人が容易に住めないんですよ」
「そんな土地で魔物の強弱があるのか?」
「異界の樹海の幅が狭く、魔物が簡単に魔界から人族の地に流れてくるんですよ」
「異界の樹海が狭いってそれだけで、ランドベルクでもたしかヒグマクスでも異界の樹海あったのに?」
「人族の地を目指す魔物が、異界の樹海に住む魔物に取って食われてしまうと。 樹海の魔物は何故か高レベルの魔物を捕まえるようで」
「普通考えれば、弱い魔物が取りやすいのにな」
「そうなんですが、ランドベルクはそのおかげで平和なんですがね。 魔王が攻めてきた、あん時は焦りましたよ」

 俺たちは、魔王が攻めてきた時に備え異界の樹海に近い土地へ進んでいいるのだが、ペルセポネは少し不貞腐れている。

「どうしたペルセポネ? 魔物倒すのユカリ達に任せてしまった事が気に食わないのか?」
「――――そんな事ないわ。 ハーデスの事だから仕方なく、コベソやあのユカリ達に付き添っているだけなんだから」
「そう言うな。 あの人族の女の神……」
「エウラロノースですか?」
「そうだ。 その神と話をしなければならなっ……」
「どうしたの?」
「どうしたんです?」

――――俺は、あの神と話をつけねばならない。だが、あの女の神は……臭い……。
――――あの臭さ、それをどうにかせねばと、あの聖国の時奪った物がある。

「コベソ、これから発生する悪臭を無効化出来る物作れるか?」
「悪臭――――ですか? これは、良い香りのする……」
「くっさァァァァッ!! めめめいっハーデスッ!! なんてもん出すのっ」
「あぁ、これをだ」
「ペルセポネさん、良い香りですのに」
「コベソ、早く仕舞ってぇっ。 臭いっ臭いぃぃ……」

 ペルセポネは、咄嗟に俺の呼び名を変える。
 俺は、鼻をつまみながら手にする悪臭を撒き散らす名前すら忘れた香炉をコベソに渡す。しかしコベソは、堪能するかのような表情で香りを嗅いでいる。
 ペルセポネの鬼の形相にコベソもタジタジになり香炉を自らの空間収納へ入れる。
 その悪臭に腹が立ったのかペルセポネが、コベソを睨む。

「早く仕舞わないから、鼻についたじゃないのっ!!」
「そそそそそいわれても、人族のあんたは大丈夫なのかもしれないが私にはムリィィィッ」
「えええっ!!」
「臭くて気分悪くなったわ」

――――元々気分損ねてたじゃないか?

 そこに、魔物を討伐したユカリ達が、馬車に戻る。

「ふう、時間かかった、かかった」
「先日と同じ魔物のようでしたが、今日の方が強かったですわ」
「むぅ、魔法のダメージ通り悪い」
「コベソさん。 また解体お願いしますと伝えてください。 いつものあの馬車に積んだので」
「おお、わかった」

 ユカリの言葉に返答するコベソを他所に、リフィーナ達は馬車に入るやリラックスしだす。

「んー。いい香り」
「ええ、和みますわね」
「むぅ、少しポーっとなってきたぁ」

 表情が緩むユカリ達に、苛立ちが高なるペルセポネが噛み付く。

「はぁーっ!! 何言ってるの? 臭くて気分悪くなっているのに。 『良い香り』ですってぇっ!? こちらは、臭すぎてたまりませんがっ!!」
「えぇぇっ。 なにいきなり!?」
「そそそうですわ。 いきなり匂いで……もしかして匂いに耐える為の教義とかですかっ」
「むぅ、ミミンこの匂いも好きだけど、おねぇさまの匂いが好き……」

――――ミミンは、何を言っているか分からん。だが、この面子ならミミンの発言を流す事が、暗黙の了解となってしまっているんだな。
 ペルセポネの矛先が再びコベソに向けられる。

「あんたが早く仕舞わないからっ。 その魔物解体の前に早く臭いどうにかしなさ……」

 ペルセポネは、立ち上がりコベソへ怒りをぶつけてた最中、少し沈黙をする。
 コベソも、理不尽な言葉を叩きつけられ返せない状況の中、止まるペルセポネに眉をひそめている。

「……解体……」
「かいたい……ですか?」
「そうよっ。 なんで早く言わないのってぇ」
「ええ、道中結構してたと思うのですが」
「してたけど、あんたが解体出来るなんて知らないのよっ」
「自分もトンドもできますが、基本うちの社員にやらせてますが……」
「どっちでもいいわ。 ハーデスあれを、あれを渡して解体してもらうわ」
「もしかしてアースドラゴンか?」
「そうよっ。 アースドラゴン解体してくれたら許してあげる」

 鼻を高くするペルセポネの要求にコベソは頭を抱える。

「アース……ドラゴンですか!?」
「ええ、冒険者ギルドでも専用の人でないと出来ないって言ってけど――――もしかして出来ないとは言わせないわ」
「ヒロックアクツ商事ならドラゴンでもどんな魔物でも解体できますよ。 でも許されるような行為してないのですが」
「まぁ、解体できるなら気分いいわ。 臭いけど気にしないであげる」

 鼻歌交じりの満面の笑みで席に座るペルセポネ。
 ユカリ達とコベソは、ペルセポネのその姿に唖然としていた。
 俺はペルセポネの言葉に頭を抱える。

――――こっちの人族ならあの臭い、とても良い物なのだろう。ペルセポネも激臭に耐えていたんだ、許せコベソよ。

 加速すると馬車に風が流れ、あの激臭は既に消え去っていた。



 時折魔物を退治し、過疎化した村を通り、俺たちの乗る馬車は城壁を囲む大きな都市に入る。
 フェルトは、目を輝かやかせながら口を半開きにしてその光景を眺めている。

「ついに、着いたわね。 エメマセタの街」
「あの街もこんなに素晴らしくなって…………。 私も嬉しいですわ」

 衛兵と話し終わったコベソの合図で、エメマセタの街に入っていく。そんな中、眉をひそめる俺にコベソが話しかけてくる。

「帝国ヴァルツァイファ。 言い難いから殆どが帝国で略すんです」
「そうね。 舌噛みそうだし」
「う~。 わたしの苗字でもありますし……何とも言えませんわ」
「むっ、言いづらい」

 リフィーナ達が、コベソの言葉に頷く。
 それを聞き流しながらコベソは、話を続けてくる。

「昔帝国が大きくなる前。 この辺りの地名をエメマと言って、それでエメマヒガとエメマセタと街の名前のになっているんですと……聞いた事ありますね」
「街やその土地の名前が、言いづらいというか――――頭に入ってこないような名前だからな」

 ペルセポネは納得の様子で頷き、コベソも頷きながら「自分も最初はそうでした」と小声を漏らしている。
 そしてユカリも一緒になって頷いているのは、名前すら覚えてないと言いた気な表情だ。
 そんな三人の行動に首を傾げるリフィーナとフェルト。
 街中をゆっくり走る馬車は、大きな宿の前を通り角を曲がると、そこには広場に数台の馬車があった。
 その馬車から荷物を降ろし運んでいく人が、多数いる中一人だけ見覚えのあるシルエット。
 長身にお腹だけ大きく膨れた男性、トンドの姿が見え、荷物を運ぶ者達に指示を出している様子が伺える。
 そのトンドに話しかけるコベソは、すこし腑に落ちない表情だ。

「無事に着いて何より」
「少し前に魔族とやり合っていた国とは思えん」
「もう少し東の帝都よりも、更に東の地域で争っていたらしい」
「あの金色の勇者が早く逃げるから、この辺りかと思ってたんだが……そりゃそうだな」

 そんな会話を横にペルセポネの突き刺さるような睨みが、コベソを捉える。
 すると、「痛っ」と叫ぶコベソは、青ざめた顔で後ろを振り替える。

「あっ、そうだトンド。 アースドラゴンの解体を頼みたいんだが?」
「ハーデスさんがお持ちのアースドラゴン?」
「そ、それだ。 頼むぞ」

 笑いながらこの場を去るコベソは、背中を痛そうにしながら、ユカリ達を案内する従業員と共に建物の中に入っていく。

「ちっ、あのまるデブ。 忘れてたわね」
「まるデブ――――プッ」
「コベソも、従業員やら物資の大移動でアースドラゴンに頭が回らないのだろ。 許してやれ」
「帝国と聖国の戦いなんて私には関係……」
「どうした、悪いものでも食ったか?」
「食べてないし、同じの食べてるんだからっ」
「冗談だ――――それより何か気になる事でもあるんだろ?」
「人族同士争いなんてしないとか言ってなかった?でも聖国と帝国、簡単に争うじゃんね」

 ペルセポネの疑問を他所にトンドは、お腹を抱えてわらっている。
 未だに収まらないみたいだが俺とペルセポネは、トンドの笑い声を無視しながら話を進める。

「何かあるのかもしれないな。 人族同士が争わない何かが」

 笑い声が少しずつ収まるトンドが「ありますよぉぉっ」と思い出さないように歯をかみ締めながら答える。

「この国、この地域は魔族の住む魔界と近いからです。異界の樹海が狭く魔素が極小量流れてくるんです」
「魔素が、関係あるの?」
「あ、あぁぁっ――――あ、あります」
「ねぇ、そんなに『まるデブ』が面白いの?」
「キィィィッ!!プップププゥゥッ」

 ペルセポネの言葉で再び腹を抱えて笑い出すトンドは、たまにむせているが堪えきれないみたいだ。
 そのトンドを鬼の形相で睨みつけるペルセポネは、次第に鼻をひくつかせている。

「そんなくっだらないっ事で笑うなっ!!」
「くっ……くくくっ」
「でぇっ、なんでっ!?」
「くくっ――――ふぅ……魔族は、魔素を必要とする存在、だから人族のような魔素が無い場所では力が弱まってしまうんです」

 ペルセポネの激昂にトンドが、静まり返り思い出し笑いをしない為か深呼吸をして、俺たちに説明をする。

――――その話、魔族が人族に来ると弱くなる……前にも似たような事聞いた事あるぞ。

「なにそんなの簡単な答えですよ」
「だから、何よっ」
「エウラロノースが、人族を守る為に自ら発する香をばらまいたからです」

――――は? 香だと……やつの臭いにおいが。
――――しかしあれだけの悪臭が、空気に混ざっているのなら、俺やペルセポネは既にこの世界から離れているが。

「あっ、もう既に無臭ですよ。 その話かなり昔ですし、大気に溶けてしまって効果だけが世界に広がったままですから」

 俺の苦い顔にトンドが、言葉を付け加える。
 それに加え「もう、匂いなんて全人族に染み付いているし、細胞レベルで耐性あるから、気にする人なんて皆無ですよ」とトンドは続けて話してくるが、それを気にも止めず、疑問が残るその説明に俺は眉をひそめていると。

「時折エウラロノースが地に降りるのは、効き目が薄くなった所を元に戻す為――――それに、聖女」
「聖女が、何かあるのか?」
「ええ、聖女もあの臭いの成分……いや、人族の神の加護と言うものを放つ事が出来て、エウラロノース同様に薄くなった地域の修復と――――時にはそれを使って魔族と戦ったりとか」
「聖女と呼ばれる人を、それぞれの国にいるのはその為か」

 俺の言葉にトンドは、頷くと辺りを見回している。

「片付け終わったみたいだ。 それよりもアースドラゴン解体を」
「そうだわ。 あのクセェ女よりもアースドラゴンの方が今は優先よ」

 ハッと思い出すペルセポネ。
 俺たちはトンドの案内で建物に入り、解体作業をするトンドにアースドラゴンを渡してその場を離れた。
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