悪役令嬢は鼻歌を歌う

さんごさん

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悪役令嬢

私の妹

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 私には妹がいる。

 一つ年下の十一歳。

 金髪碧眼の私に対し、妹は黒髪碧眼。

 吊り上がっていてきつい印象の目元が私なら、妹は垂れ下がっておっとりした印象を与える目つき。

 瞳の色が同じなだけで、見た目も、性格も、何もかも違う。

 本当に彼女が妹なのか、疑いたくなるほど私たちは似ていなかった。

 それにはもちろん理由があって、私たちの血は半分しか繋がっていない。
 正妻の子が私で、側室の子が妹。

 公爵家とかいう、王家に連なる血筋を持ったのが私たちだった。

 こんな家に生まれてしまうと、プライドというものが増長して膨れ上がり、自分よりも優れたものが許せなくなる。

 特に、同じ家で、同じ父を持って生まれ育った妹に対して、私は強く対抗心を燃やしていた。

 しかし、まあ、私はそれほど優秀な方ではなく、逆に妹は幼い頃から優秀さを発揮していたので、期待されるのはいつも妹ばかり。

 私の母は早くに他界してしまったので、妹が母親に可愛がられているのを見るたびに、憤りにも近い嫉妬心が、メラメラと燃え上がったものだった。

 けれど私には妹をぎゃふんと言わせるほどの能力はなく、最後の砦である『正妻の子』というところに縋っていた。

 何かに付けて『側室の子のくせに!』だとか、『私の母と比べてあなたの母は』というような言葉で罵倒したのを覚えている。

 彼女自身にさしたる欠点がなかったから、生まれという、本人にはどうしようもない要素に縋るしか、私は私を保つ方法を知らなかった。

 本当は母のことなんて、私もよく覚えていないのに。

 次第に父も私の疳癪に呆れたような表情を見せるようになって、家の中で唯一の味方であったはずの父も、妹の方を可愛がるようになった。

 私は孤立し、使用人たちからも避けられ、いつか見返してやると、馬鹿みたいに馬鹿なりの勉強を続けていた。

 才能というのは残酷なもので、私が五時間かけて理解したことを妹は一時間で理解出来る。私が一生かけても解決出来ないような問題を、数日で片付けてしまう。

 私に残ったのは孤独だけで、愛も、期待も、全てを妹が独占するようになった。

 妹が幸せそうに、当り前みたいに笑っているのが許せなかった。

 死んじゃえば良いのにと何度思ったことか。

 お茶会に向けて彼女の馬車が出発するたびに、盗賊にでも襲われて帰ってくるなと歯ぎしりをしながら睨みつけていた。

 数年前、妹が本当の天才であることが発覚した。
 魔法の適性が判明したのだ。

 魔法というのは百人に一人使えるかどうか。
 多いような、少ないような微妙な数字ではあるが、希少なことには変わりないし、何より妹はすぐに魔法を使いこなせるようになったので、魔法を使える子供の中でもとりわけ才能があるのではないかと言われていた。

 貴族にとって魔法使いはステータスだ。

 それだけで一目置かれるし、遺伝との相関関係は発覚していないが、次代に期待して婚約の打診などもひっきりなしに訪れる。

 私は妹がちやほやされているのが許せずに、私にも魔法の才能があるんだと思い込んで、家庭教師まで呼んでいた。

 今思うと黒歴史なのだが、魔法適性のない私が、使えるはずのない魔法を必死に勉強する様は周囲からは寒々しい目で見られるだけだった。

 当然、何年たっても魔法なんて使えず、妹との差は離れるばかりだ。

 姉でありながら、妹を何一つ上回ることの出来ない私は、周囲からは出来そこないにしか見えていなかったことだろう。

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