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ヒロイン
桜並木
しおりを挟むルインクルード王立学園に続く一本道には、桜の花が植えられている。
街路樹として、数百本の桜が並んでいるのだ。
入学のこの時期になると、それはもう、たくさんの花を咲かせ、世界が桜色に染まったような、幻想的な光景が広がる。
まるで、別世界にでも迷い込んだようだ。
観光地になっても良さそうな光景ではあるのだが、実際には人ごみなど出来ていない。
その理由は単純で、厳密にはここが、すでに学園の敷地内であるからだ。
この道を辿った先に門があり、その門を潜ると学園が広がっているわけだけれど、その手前の並木道すら、一般人には入ることが許されない。
国内で最も格式があり、国内で最も警備の厳しい学園と言われるだけはあるだろう。
そんな並木道を、私は馬車に乗ったまま眺めている。
「お嬢様、膝で座るのは感心しません」
桜を見るために座席に膝立ちになっていたら、メイドのアルティナに指摘される。
貴族令嬢としてははしたなく見えたらしい。
ただ、貴族とは言っても私の家は男爵家に過ぎないので、庶民とそれほど変わらない。
父も母もおおらかで、細かいことは言わないのだ。
使用人の数も五人しかおらず、アルティナもその中の一人だ。
使用人のみんなも父と母の影響か、おおらかな人が多いのだけれど、アルティナは私の教育係を任されているせいか小言が多い。
私のために言ってくれているのだとは分かるけれど、たまにうざったくなる時がある。
「はーい」と返事をした私は、座り直す。
「はいは伸ばすものではありません」
淡々とした口調で指摘される。
アルティナが怒っているところは見たことがないけれど、淡々と指摘されるので言い返すことも出来ずに、むぅ、と頬を膨らませることしか出来ない。
言ってることは正しいのだ。
頬を膨らまして抗議の意思を表しているのに、アルティナは気づかないのか、気にしていないのか、何の反応も見せない。
仕方がないので首だけで外の景色を見る。
桜が綺麗だ。
私は両手の指を使って額縁を作る。
今度この景色を絵に描いてみよう。
刺繍もダンスも、令嬢らしいことはあまり得意でない私だけれど、絵だけは上手だと、アルティナも褒めてくれるのだ。
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