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さっきのは一体、何だったんだ?
いきなり知らない人に腕を掴まれたら、誰だって驚くだろう。
私は掴まれた腕をさすりながら、集合場所へと向かったのだ。
そう言えば、私の髪色と同じ瞳だったなぁ。赤い瞳って初めて見た。
それよりも、穴が開くほど見るって、ああいう事を言うのだろう。
私の顔に、何か付いていたのか?
なんとなく気まずい。
それとも、私が何かしたとか?
バレない為とは言え、時間差で用を足しに行ったのが、いけなかったのか・・・。
もしかしたら、サボっているって思われたのかもしれない。
悶々とアレンシアは、全く見当違いの事で悩むのであった。
そして今日は盾や剣、接近戦を主とした重騎士の訓練だ。
私が最も苦手とする分野の為、早く1週間が過ぎないかなぁ、って祈るばかりである。
チーム分けでゲイルと一緒になったのだ。
ビルは弓騎士、アルトは騎馬隊へと行っている。
すると、先輩重騎士が鎧の身に付け方から、心構えまで丁寧に教えてくれた。
だが、この重装備が重すぎて、立ったまま一歩も足が前へ出ない。
その時、鎧を身に着けたゲイルが、ガチャガチャと音を立てて近づいて来た。
「アレン大丈夫?」
ゲイルは上背はあるが、痩せていて、筋力があるようには見えない。
だから、普通に動ける事に驚いてしまったのだ。
私は『大丈夫』と答えて歯を食いしばり、一歩また一歩と前に足を出す。
幸いにも、顔まで覆う兜を被っているので、表情は分からない。
無理をして動いているとは、誰も気付かないだろう。
なんとか集合場所に集まり、ここで重装備を解く事になった。
・・・本当に、死ぬかと思った。
鎧を脱いだ私の顔を見て、ゲイルが『顔が真っ赤だよ!熱があるんじゃない?』と心配そうに見て来るが、まさか生死の境を彷徨うほどの、火事場の馬鹿力を出していたとは言えない。
なので『ちょっと暑かったのかな?』と言って誤魔化したのであった。
そうして少し落ち着いて来た頃、先輩がみんなに話し始めたのだ。
「どうだ?重かったろう?
だがな、これだけじゃない。
剣も盾も、持たなくてはならないのだ。
重騎士は常に筋力トレーニングを欠かしてはならない。それに、重騎士は守りの要だ。
この重さが、戦う皆の命を支えているのだ。だから、絶対に倒れてはならない。
分かったか?」
先輩の話は、とても心に響いた。
歩兵は騎兵のように華やかではないし、弓兵のように先制攻撃が出来る訳ではない。
だが、彼らがいなければ、他の兵は思う存分に戦えないのだ。
彼らが倒れたら、勝利はないだろう。
改めて重騎士の重要性を認識したのであった。
そうして、その日は剣と盾の持ち方も教わり、実際に振ってみた。
やっぱり鎧と同じで重くて、私は片手で持つのがやっとだったのに対して、ゲイルはキレはないが、何回か振れている。
他の新人騎士もゲイルと似たり寄ったりだった。
筋肉量の違いを実感した私だったが、まだ始まったばかり。
この1週間は、出来る限りの最善を尽くそうと思ったのである。
そうして訓練が終わり、寮へ帰る道すがら、ビルとアルトに会った。
これから、ご飯を食べに行くとの事で、誘われたのだが、自炊をすると伝えると、何故かゲイルも私と一緒に作る、と言うではないか。
これって、私が1人で作る事になるよね・・・。
ゲイルにも出来る簡単な料理ってなんだろう?
と考えていたら、あっという間に寮へと着いたのだった。
部屋へと戻り、制服から私服へと着替えてキッチンへ行く。
すると、既にゲイルが椅子に座って待っていたのだ。
「お待たせ。
じゃあ、今日はポトフにしようと思うんだけど、それでいい?」
私はゲイルの了承を得たので、材料を用意して早速スタートする事にした。
ポトフの良い所は、切って煮るだけで出来るので、疲れている日には最適な料理だ。
ゲイルは野菜を切ってくれているので、私はウインナーをオリーブオイルで炒める事にする。
野菜を鍋に投入していき水を入れて火にかける。
焼き色が付いたウインナーと調味料を入れて後は煮込むだけなので、このまま放置で大丈夫だろう。
そして、ゲイルを見るとレタスを毟っていたので聞いてみた。
「料理を作った事ないの?」
「そうだね。家には料理人がいたから、した事ないな」
と毟る手を止めずに答えてくれた。
やっぱり、お金持ちはそうなんだなぁ。
・・・羨ましい。
そう思いながら鶏肉を茹でる。
今日はチキンサラダにするのだ。
ゲイルは思う事があるのか、再度口を開いた。
「でもさ、昨日はみんなで料理をして、食べて。
とても楽しかったんだ。
だから、やった事なくて足手纏いなのは分かってるんだけど、頑張るから教えてくれないかな?」
そう言われたら、嫌だとは言えない。
じゃあ少しずつ頑張っていこう、と話していたら鶏肉が茹で上がったのだった。
早速、ゲイルに鶏肉とフォークを2本渡して、裂いてもらう事にする。
ゲイルは、フォークを2本持って首を傾げていたが、やり方を教えると覚束ない手で、一生懸命に肉を裂いていた。
裂いた肉をサラダに乗せ、ポトフとカンパーニュを用意したら完成だ。
出来る事が1つ増えて嬉しいのだろう。
ゲイルが食べながら話しかけて来たのだ。
「今日の重騎士の訓練はすごかったよね。もう筋肉痛になって来てるよ。
先生からも結構鍛えられたと思ったけど、それ以上だった」
ゲイルは『ははっ』と笑って、カンパーニュに手をかける。
「アレンの先生は、どんな感じだったの?」
と聞かれて師匠の顔が浮かんだ。
どんな感じって言われても・・・。
おじさんで、訓練中は何だかんだで、教えてくれるけど、訓練が終われば、すぐにお酒飲み始めて、自意識過剰で態度がデカくって。
・・・って、変な事しか思い浮かばない。
思わず『普通の人だよ』と的外れな事を言ってしまったのだった。
その後、世間話をしていたら、ゲイルも弓希望だと言う。
そうして、あっという間に食べ終わり、食器類を一緒に片付けて、部屋へと戻り、寝支度をして、すぐにベッドへと滑り込んだのであった。
師匠に対する印象は、さっきゲイルに話した通りだが、それでも、何の見返りもない私に、指導してくれた事は、感謝してもしきれない。
そして私は、師匠と出会った後の事を、思い返したのである。
いきなり知らない人に腕を掴まれたら、誰だって驚くだろう。
私は掴まれた腕をさすりながら、集合場所へと向かったのだ。
そう言えば、私の髪色と同じ瞳だったなぁ。赤い瞳って初めて見た。
それよりも、穴が開くほど見るって、ああいう事を言うのだろう。
私の顔に、何か付いていたのか?
なんとなく気まずい。
それとも、私が何かしたとか?
バレない為とは言え、時間差で用を足しに行ったのが、いけなかったのか・・・。
もしかしたら、サボっているって思われたのかもしれない。
悶々とアレンシアは、全く見当違いの事で悩むのであった。
そして今日は盾や剣、接近戦を主とした重騎士の訓練だ。
私が最も苦手とする分野の為、早く1週間が過ぎないかなぁ、って祈るばかりである。
チーム分けでゲイルと一緒になったのだ。
ビルは弓騎士、アルトは騎馬隊へと行っている。
すると、先輩重騎士が鎧の身に付け方から、心構えまで丁寧に教えてくれた。
だが、この重装備が重すぎて、立ったまま一歩も足が前へ出ない。
その時、鎧を身に着けたゲイルが、ガチャガチャと音を立てて近づいて来た。
「アレン大丈夫?」
ゲイルは上背はあるが、痩せていて、筋力があるようには見えない。
だから、普通に動ける事に驚いてしまったのだ。
私は『大丈夫』と答えて歯を食いしばり、一歩また一歩と前に足を出す。
幸いにも、顔まで覆う兜を被っているので、表情は分からない。
無理をして動いているとは、誰も気付かないだろう。
なんとか集合場所に集まり、ここで重装備を解く事になった。
・・・本当に、死ぬかと思った。
鎧を脱いだ私の顔を見て、ゲイルが『顔が真っ赤だよ!熱があるんじゃない?』と心配そうに見て来るが、まさか生死の境を彷徨うほどの、火事場の馬鹿力を出していたとは言えない。
なので『ちょっと暑かったのかな?』と言って誤魔化したのであった。
そうして少し落ち着いて来た頃、先輩がみんなに話し始めたのだ。
「どうだ?重かったろう?
だがな、これだけじゃない。
剣も盾も、持たなくてはならないのだ。
重騎士は常に筋力トレーニングを欠かしてはならない。それに、重騎士は守りの要だ。
この重さが、戦う皆の命を支えているのだ。だから、絶対に倒れてはならない。
分かったか?」
先輩の話は、とても心に響いた。
歩兵は騎兵のように華やかではないし、弓兵のように先制攻撃が出来る訳ではない。
だが、彼らがいなければ、他の兵は思う存分に戦えないのだ。
彼らが倒れたら、勝利はないだろう。
改めて重騎士の重要性を認識したのであった。
そうして、その日は剣と盾の持ち方も教わり、実際に振ってみた。
やっぱり鎧と同じで重くて、私は片手で持つのがやっとだったのに対して、ゲイルはキレはないが、何回か振れている。
他の新人騎士もゲイルと似たり寄ったりだった。
筋肉量の違いを実感した私だったが、まだ始まったばかり。
この1週間は、出来る限りの最善を尽くそうと思ったのである。
そうして訓練が終わり、寮へ帰る道すがら、ビルとアルトに会った。
これから、ご飯を食べに行くとの事で、誘われたのだが、自炊をすると伝えると、何故かゲイルも私と一緒に作る、と言うではないか。
これって、私が1人で作る事になるよね・・・。
ゲイルにも出来る簡単な料理ってなんだろう?
と考えていたら、あっという間に寮へと着いたのだった。
部屋へと戻り、制服から私服へと着替えてキッチンへ行く。
すると、既にゲイルが椅子に座って待っていたのだ。
「お待たせ。
じゃあ、今日はポトフにしようと思うんだけど、それでいい?」
私はゲイルの了承を得たので、材料を用意して早速スタートする事にした。
ポトフの良い所は、切って煮るだけで出来るので、疲れている日には最適な料理だ。
ゲイルは野菜を切ってくれているので、私はウインナーをオリーブオイルで炒める事にする。
野菜を鍋に投入していき水を入れて火にかける。
焼き色が付いたウインナーと調味料を入れて後は煮込むだけなので、このまま放置で大丈夫だろう。
そして、ゲイルを見るとレタスを毟っていたので聞いてみた。
「料理を作った事ないの?」
「そうだね。家には料理人がいたから、した事ないな」
と毟る手を止めずに答えてくれた。
やっぱり、お金持ちはそうなんだなぁ。
・・・羨ましい。
そう思いながら鶏肉を茹でる。
今日はチキンサラダにするのだ。
ゲイルは思う事があるのか、再度口を開いた。
「でもさ、昨日はみんなで料理をして、食べて。
とても楽しかったんだ。
だから、やった事なくて足手纏いなのは分かってるんだけど、頑張るから教えてくれないかな?」
そう言われたら、嫌だとは言えない。
じゃあ少しずつ頑張っていこう、と話していたら鶏肉が茹で上がったのだった。
早速、ゲイルに鶏肉とフォークを2本渡して、裂いてもらう事にする。
ゲイルは、フォークを2本持って首を傾げていたが、やり方を教えると覚束ない手で、一生懸命に肉を裂いていた。
裂いた肉をサラダに乗せ、ポトフとカンパーニュを用意したら完成だ。
出来る事が1つ増えて嬉しいのだろう。
ゲイルが食べながら話しかけて来たのだ。
「今日の重騎士の訓練はすごかったよね。もう筋肉痛になって来てるよ。
先生からも結構鍛えられたと思ったけど、それ以上だった」
ゲイルは『ははっ』と笑って、カンパーニュに手をかける。
「アレンの先生は、どんな感じだったの?」
と聞かれて師匠の顔が浮かんだ。
どんな感じって言われても・・・。
おじさんで、訓練中は何だかんだで、教えてくれるけど、訓練が終われば、すぐにお酒飲み始めて、自意識過剰で態度がデカくって。
・・・って、変な事しか思い浮かばない。
思わず『普通の人だよ』と的外れな事を言ってしまったのだった。
その後、世間話をしていたら、ゲイルも弓希望だと言う。
そうして、あっという間に食べ終わり、食器類を一緒に片付けて、部屋へと戻り、寝支度をして、すぐにベッドへと滑り込んだのであった。
師匠に対する印象は、さっきゲイルに話した通りだが、それでも、何の見返りもない私に、指導してくれた事は、感謝してもしきれない。
そして私は、師匠と出会った後の事を、思い返したのである。
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