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師匠と初めて会った次の日
どうしても諦めきれない私は、師匠を探す事にしたのだ。
もちろん、道ですれ違った人と、そう簡単に会えるとは思っていない。
時間がかかっても、他に当てがない私には、師匠に教えてもらうと言う事に、賭けるしかなかったのだ。
だが、まさか探し始めた初日で、会えるとは思わなかった・・・。
だって寒い真冬に、昼から広場にある屋台で串肉齧りながら、お酒を飲んでいたら嫌でも目に入る。
おじさんは、私に剣技を教える運命なのかもしれない。
そう思ったら、嬉しくなり『おじさん!剣技教えて!』と前回と同様に前へ躍り出たのだ。
いきなり出て来た私の勢いに驚き『うわっ』と言って、肉とお酒を落としそうになったおじさんは、再度私を見てため息を吐いた。
「また嬢ちゃんか。つーか、いきなり出てきたら危ないだろ。そんなに俺が好きなのか?」
すごくイラっとするが、教えてもらう身だ。
我慢、我慢。
『ふぅっ』と息を吐き、気持ちも表情も立て直す。
『好きなのか?』は軽く受け流して、本題に入る事にした。
「騎士になりたくて。教えてくれる人を探しているんです」
「・・・。
あー、悪い。
・・・坊主だったんだな?
髪下ろしてピアスしてるから、てっきり嬢ちゃんだと思ったよ」
勘違いしていた事を後ろめたいのか、頭を掻きながら視線を泳がせている。
「・・・。
いいえ、嬢ちゃんで合ってます。
男装すれば騎士になれるかと思って」
そう言った私を見て、よほどビックリしたのか、こめかみを押さえながら問いただしてきたのだった。
「・・・どっからくるんだ?その発想は。
どうして騎士に拘る?」
「騎士が高収入だからです」
もうここまで話したら、変に嘘をつく必要もない。これまでの経緯を洗いざらい話したのだ。
「そうか・・・また無茶な事を考えるもんだな。
それで、本気なのか?」
「はい。だから力を貸してください。頼めるのが、おじさんしかいないんです」
私がおじさんの目を見つめて真剣に伝えると『はぁ』とため息をついて『名はなんと言う?』と問いかけて来たのだ。
「アレンシアです。13歳になります」
おじさんは腕を組み瞳を閉じて考えている。
私もそれを見ながらじっと待った。
難しい事は十分に分かっている。でも諦められない理由があるのだ。
一縷の望みを託して待っていたら、結論が出たのか、漸く目を合わせてくれたのだった。
「・・・では、まず初めに言っておくが、子爵家の娘だとしても、師匠の俺の言う事は絶対だ。
俺はお前に気を遣うつもりはないからな。
分かったか?」
まさかOKが出るとは思わなかったので『え?弟子にしてくれるって事ですか?』とアホな返事しか出てこなかったのだ。
すると、おじさんは半眼で見据えて口を開いた。
「今そう言っただろう?
それと、俺が出した指示には絶対文句を言うな。
いいな?」
「はい。はいっ!よろしくお願いします。」
嬉しくて二回も返事をしてしまった。
そうやって喜んでいる私を、おじさんが面白そうに見ていた事には、全く気が付かなかったのである。
こうして師弟関係が生まれたのだった。
明日から訓練を開始するとの事なので、時間と待ち合わせ場所を決めてから今日は解散となったのだ。
帰り道は嬉しすぎて、寒さも忘れた私は、鼻歌を歌いながらスキップでお家へと帰ったのだった。
【そして、待ちに待った次の日】
雲一つない冬空が広がっている。
待ち合わせをした、昨日の広場へとやって来たのだ。
冷たい空気を目いっぱいに吸い込み、深呼吸をしていると、おじさんがズボンのポケットに手を突っ込みながら、ダルそうにやって来たのだった。
「よう。今日も元気だな。
じゃあ早速、行くか」
私は『お願いします!』と挨拶をして、おじさんの後ろを小走りでついて行く。
歩いて行くと、ウインターマーケットを抜けて商店街へとやって来た。
お店を見ると昼時で、どこもとても賑わっている。
ここに何があるんだろう?
疑問に思う私を余所に、おじさんは脇目も振らず、目的地へとズンズン進んで行く。
「今日の訓練は、これだ」
そう言われて連れて来られたのは、一軒の八百屋だった。
「いいか?
ここで判断力と瞬発力、記憶力を養う訓練を行う。
接客、品出し、会計。
瞬時に判断して、全てを一人で熟してみろ。
時間は一時間だ。
ほら、行ってこい!」
「え?これ訓練なんですか?」
戸惑う私に『文句は言わないって、言ったろ?』とニヤっと笑って返して来たのだ。
えー!なんか思っていたのと全然違うけど。って思っていたら、次から次にお客様が来る。
会計していたら、ダイコンはどこかと聞かれて、品出ししていたら、会計が長蛇の列になって怒られるわで、散々だった。
てんてこ舞いしていたら、おばちゃんが休憩から戻って来たのだ。
八百屋の神が降臨されたのかと錯覚してしまう程に、クタクタで追い詰められていたのである。
その後、師匠はおばちゃんから何かを貰い、懐へと入れていた。
え!?
・・・今、お金もらってたよね。
もしかして、良いように利用されてない?
と疑心暗鬼になってしまった。
そうして訓練?も終わり屋台のある広場へと戻って来たのである。
おじさんは串肉とホットワイン。
私にも串肉とホットレモネードを買ってくれたので、お礼を言い受け取ったのだ。
「おじさん、さっきの八百屋はなんだったんですか?」
と聞かずにはいられなかった。
「ん?ああ。もちろん、訓練だぞ。
あと、俺の事は師匠と呼べ。
そして俺は、おじさんじゃない」
そう言うと、焼き立てアツアツの串肉に齧り付いている。
肉のタレが口元に付いたのか、親指で拭い、話し始めた。
「それとアレンシア。
いきなり剣を握れるとでも、思ったのか?」
私が納得していないと分かったのだろう。容赦なく私の願望を切り捨てて来たのだ。
「・・・いいえ。
・・・けど、基礎運動くらいは、すると思ってました」
私はホットレモネードを握り締めながら言った。
それを見ていた師匠は、何でもない事のように返して来たのだった。
「しただろ?今日は頭も身体も使ったじゃないか」
「そう言うのじゃなくって、もっと実戦的な事です。力もつけなきゃ、騎士にはなれない」
落胆している私に、師匠はため息を吐きながら言ったのだ。
「なぁ、アレンシア。
お前は女で、男とは違う。
いくら筋力を付けようと男には敵わないんだ。
だったら、お前にしかない長所を伸ばせば良い。
自分の長所は分かるか?」
両手を頭に当てて考えてみるが、足が速い事くらいしか思い浮かばない。
だから、そのまま伝えたのだった。
「そうだな。
それと、動作が素早く気配がない。
これは凄い利点だぞ!相手から読まれにくいし、奇襲にも向いている。
要するにだな、実戦も大事だが日々の生活の中だって、視点を変えれば訓練の一環になるんだ。
もっと視野を広く持て。
それに、俺は引き受けた以上、適当な事はしねーよ。
だから、安心してついて来い」
師匠がとても頼もしく見える。
師匠を選んでよかった!
それからの私達は、毎日毎日商店街へ行き、訓練に勤しんだ。
それに伴い、師匠の懐具合も潤っていったのだった。
訓練を始めて4ヶ月
寒さも和らぎ、鳥の囀りを感じるようになった頃。
私は、八百屋のベテラン店員となっていた。
もう、お客様を待たせて怒られる事はないし、野菜の値段、バックヤードの品数まで網羅している。
今日もいつもの調子で頑張り、広場へと来たのだ。
すると、師匠が何かを持っている。
「文句も言わず、良く頑張ったな。
・・・褒美だ」
そう言って渡してくれたのは、ショートソードだった。
まさか貰えるとは思わず、嬉し過ぎて剣に頬擦りをしようとしたら『刃物だから止めろ』と止められてしまったのである。
だが、それほどに嬉しかったのだ。
私は、師匠には何度もお礼を告げたのであった。
それから、なんと実戦を教えてくれると言うではないか。
もう八百屋へ行かなくていいらしい。
八百屋も楽しかったけど、何だか肩の荷が下りた気がしたんだっけ・・・。
懐かしい思い出に浸っていたら、結構な時間が経っていた。
そう言えば、師匠から貰ったショートソードをどの箱に入れたかな。
探したいところだけど、明日も体力的にキツイ重騎士の訓練なのだ。
今度の休みに探す事にして、今日はそろそろ寝るか。
そうして、私は夢の中へと旅立ったのである。
どうしても諦めきれない私は、師匠を探す事にしたのだ。
もちろん、道ですれ違った人と、そう簡単に会えるとは思っていない。
時間がかかっても、他に当てがない私には、師匠に教えてもらうと言う事に、賭けるしかなかったのだ。
だが、まさか探し始めた初日で、会えるとは思わなかった・・・。
だって寒い真冬に、昼から広場にある屋台で串肉齧りながら、お酒を飲んでいたら嫌でも目に入る。
おじさんは、私に剣技を教える運命なのかもしれない。
そう思ったら、嬉しくなり『おじさん!剣技教えて!』と前回と同様に前へ躍り出たのだ。
いきなり出て来た私の勢いに驚き『うわっ』と言って、肉とお酒を落としそうになったおじさんは、再度私を見てため息を吐いた。
「また嬢ちゃんか。つーか、いきなり出てきたら危ないだろ。そんなに俺が好きなのか?」
すごくイラっとするが、教えてもらう身だ。
我慢、我慢。
『ふぅっ』と息を吐き、気持ちも表情も立て直す。
『好きなのか?』は軽く受け流して、本題に入る事にした。
「騎士になりたくて。教えてくれる人を探しているんです」
「・・・。
あー、悪い。
・・・坊主だったんだな?
髪下ろしてピアスしてるから、てっきり嬢ちゃんだと思ったよ」
勘違いしていた事を後ろめたいのか、頭を掻きながら視線を泳がせている。
「・・・。
いいえ、嬢ちゃんで合ってます。
男装すれば騎士になれるかと思って」
そう言った私を見て、よほどビックリしたのか、こめかみを押さえながら問いただしてきたのだった。
「・・・どっからくるんだ?その発想は。
どうして騎士に拘る?」
「騎士が高収入だからです」
もうここまで話したら、変に嘘をつく必要もない。これまでの経緯を洗いざらい話したのだ。
「そうか・・・また無茶な事を考えるもんだな。
それで、本気なのか?」
「はい。だから力を貸してください。頼めるのが、おじさんしかいないんです」
私がおじさんの目を見つめて真剣に伝えると『はぁ』とため息をついて『名はなんと言う?』と問いかけて来たのだ。
「アレンシアです。13歳になります」
おじさんは腕を組み瞳を閉じて考えている。
私もそれを見ながらじっと待った。
難しい事は十分に分かっている。でも諦められない理由があるのだ。
一縷の望みを託して待っていたら、結論が出たのか、漸く目を合わせてくれたのだった。
「・・・では、まず初めに言っておくが、子爵家の娘だとしても、師匠の俺の言う事は絶対だ。
俺はお前に気を遣うつもりはないからな。
分かったか?」
まさかOKが出るとは思わなかったので『え?弟子にしてくれるって事ですか?』とアホな返事しか出てこなかったのだ。
すると、おじさんは半眼で見据えて口を開いた。
「今そう言っただろう?
それと、俺が出した指示には絶対文句を言うな。
いいな?」
「はい。はいっ!よろしくお願いします。」
嬉しくて二回も返事をしてしまった。
そうやって喜んでいる私を、おじさんが面白そうに見ていた事には、全く気が付かなかったのである。
こうして師弟関係が生まれたのだった。
明日から訓練を開始するとの事なので、時間と待ち合わせ場所を決めてから今日は解散となったのだ。
帰り道は嬉しすぎて、寒さも忘れた私は、鼻歌を歌いながらスキップでお家へと帰ったのだった。
【そして、待ちに待った次の日】
雲一つない冬空が広がっている。
待ち合わせをした、昨日の広場へとやって来たのだ。
冷たい空気を目いっぱいに吸い込み、深呼吸をしていると、おじさんがズボンのポケットに手を突っ込みながら、ダルそうにやって来たのだった。
「よう。今日も元気だな。
じゃあ早速、行くか」
私は『お願いします!』と挨拶をして、おじさんの後ろを小走りでついて行く。
歩いて行くと、ウインターマーケットを抜けて商店街へとやって来た。
お店を見ると昼時で、どこもとても賑わっている。
ここに何があるんだろう?
疑問に思う私を余所に、おじさんは脇目も振らず、目的地へとズンズン進んで行く。
「今日の訓練は、これだ」
そう言われて連れて来られたのは、一軒の八百屋だった。
「いいか?
ここで判断力と瞬発力、記憶力を養う訓練を行う。
接客、品出し、会計。
瞬時に判断して、全てを一人で熟してみろ。
時間は一時間だ。
ほら、行ってこい!」
「え?これ訓練なんですか?」
戸惑う私に『文句は言わないって、言ったろ?』とニヤっと笑って返して来たのだ。
えー!なんか思っていたのと全然違うけど。って思っていたら、次から次にお客様が来る。
会計していたら、ダイコンはどこかと聞かれて、品出ししていたら、会計が長蛇の列になって怒られるわで、散々だった。
てんてこ舞いしていたら、おばちゃんが休憩から戻って来たのだ。
八百屋の神が降臨されたのかと錯覚してしまう程に、クタクタで追い詰められていたのである。
その後、師匠はおばちゃんから何かを貰い、懐へと入れていた。
え!?
・・・今、お金もらってたよね。
もしかして、良いように利用されてない?
と疑心暗鬼になってしまった。
そうして訓練?も終わり屋台のある広場へと戻って来たのである。
おじさんは串肉とホットワイン。
私にも串肉とホットレモネードを買ってくれたので、お礼を言い受け取ったのだ。
「おじさん、さっきの八百屋はなんだったんですか?」
と聞かずにはいられなかった。
「ん?ああ。もちろん、訓練だぞ。
あと、俺の事は師匠と呼べ。
そして俺は、おじさんじゃない」
そう言うと、焼き立てアツアツの串肉に齧り付いている。
肉のタレが口元に付いたのか、親指で拭い、話し始めた。
「それとアレンシア。
いきなり剣を握れるとでも、思ったのか?」
私が納得していないと分かったのだろう。容赦なく私の願望を切り捨てて来たのだ。
「・・・いいえ。
・・・けど、基礎運動くらいは、すると思ってました」
私はホットレモネードを握り締めながら言った。
それを見ていた師匠は、何でもない事のように返して来たのだった。
「しただろ?今日は頭も身体も使ったじゃないか」
「そう言うのじゃなくって、もっと実戦的な事です。力もつけなきゃ、騎士にはなれない」
落胆している私に、師匠はため息を吐きながら言ったのだ。
「なぁ、アレンシア。
お前は女で、男とは違う。
いくら筋力を付けようと男には敵わないんだ。
だったら、お前にしかない長所を伸ばせば良い。
自分の長所は分かるか?」
両手を頭に当てて考えてみるが、足が速い事くらいしか思い浮かばない。
だから、そのまま伝えたのだった。
「そうだな。
それと、動作が素早く気配がない。
これは凄い利点だぞ!相手から読まれにくいし、奇襲にも向いている。
要するにだな、実戦も大事だが日々の生活の中だって、視点を変えれば訓練の一環になるんだ。
もっと視野を広く持て。
それに、俺は引き受けた以上、適当な事はしねーよ。
だから、安心してついて来い」
師匠がとても頼もしく見える。
師匠を選んでよかった!
それからの私達は、毎日毎日商店街へ行き、訓練に勤しんだ。
それに伴い、師匠の懐具合も潤っていったのだった。
訓練を始めて4ヶ月
寒さも和らぎ、鳥の囀りを感じるようになった頃。
私は、八百屋のベテラン店員となっていた。
もう、お客様を待たせて怒られる事はないし、野菜の値段、バックヤードの品数まで網羅している。
今日もいつもの調子で頑張り、広場へと来たのだ。
すると、師匠が何かを持っている。
「文句も言わず、良く頑張ったな。
・・・褒美だ」
そう言って渡してくれたのは、ショートソードだった。
まさか貰えるとは思わず、嬉し過ぎて剣に頬擦りをしようとしたら『刃物だから止めろ』と止められてしまったのである。
だが、それほどに嬉しかったのだ。
私は、師匠には何度もお礼を告げたのであった。
それから、なんと実戦を教えてくれると言うではないか。
もう八百屋へ行かなくていいらしい。
八百屋も楽しかったけど、何だか肩の荷が下りた気がしたんだっけ・・・。
懐かしい思い出に浸っていたら、結構な時間が経っていた。
そう言えば、師匠から貰ったショートソードをどの箱に入れたかな。
探したいところだけど、明日も体力的にキツイ重騎士の訓練なのだ。
今度の休みに探す事にして、今日はそろそろ寝るか。
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