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にじゅーよん
しおりを挟むよく分からないのだけど、つまり意地となって私の婚約を破棄したくないということでいいのかしら……。殿下の言葉はよくわからない。
「そうですか………」
まあ、そこに私の気持ちも殿下の気持ちもないんじゃ、この婚姻はただのお遊戯になってしまうのだけど。
私がそう告げると、おもむろに殿下はポケットから懐中時計を取り出した。細かい宝飾がたくさん着いていて、殿下の身分をすぐに察することが出来そうな一品だ。
「………もうこんな時間か。それじゃあ、今日は誘いに来ただけだから。次はまた約束の日に来ることにするよ」
「かしこまりました、ではその日にまた」
「昨日は突然の訪問、すまなかった」
「いえ……」
殿下に謝られている以上、それ以上言うことは出来ない。私も曖昧に笑みを浮かべていれば、殿下はそのまま側近の方を連れて退室された。その時、私と殿下、そしてもう一人の幼なじみである彼、ラーセルと目が合った。サラサラな透き通るような水色の髪に檸檬色の瞳をした彼は私と目が合うと楽しげに口角を上げる。私たちの婚約破棄騒動を楽しく感じているのだろう。やつはそういう男だ。
ぱたん、と扉が閉められ部屋に静寂がみちる。私はそれを見届けてから、ソファに深く腰をかけた。
***
特に何も無い日が過ぎ、そして嫌な日というのはあっという間にやってくる。
殿下とおでかけする日になると、朝早くから城の馬車が邸宅へとやってきた。
中から降りてきたのは意外にも殿下その人だった。殿下自らお迎えに来るとは思わなかったので少し動揺する。
「おはようございます、殿下」
「おはようございます、シャーロット。昨日はよく眠れた?」
全然眠れなかったわよ、おかげさまで。
そう言えたらいいのだがしかし私はただの公爵令嬢でしかないので、作られた笑みを貼り付けるのみ。
「ええ、ありがとうございます」
そう言うと、殿下は私の手を取りながら馬車に足をかける。そして、ぽつりと呟いた。
「そうか……。僕はあまり眠れなかったよ」
そう言って彼は馬車に乗り込んだ。朝の冷たい空気がふわりと香る。草花の匂いもする。殿下との遠出は置いておいて、私はこの朝の雰囲気が好きだった。
「殿下もですか?意外です」
そう伝えながら私も馬車に乗り込む。そうすると、殿下がこちらを振り向いて、少しだけ微笑んだ。
「僕も?……ということは、シャルロットも眠れなかったの?」
しまった、失言だった。
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