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よんじゅーきゅう
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意味深に呟くと王太子は突然カウンターに向かって歩いていった。店主の姿は見えない。そのままカウンターの中に入り、先程の娘が登っていったという螺旋階段に彼が足をかけようとした時。
「おや………今日は珍しいお客様が沢山いらっしゃいますね」
ひょこり、と螺旋階段の上から店主が顔を出した。水色の長髪を無造作にそのまま流した彼は王太子を見据えて瞳を僅かに細めた。
「私になにかご用でしょうか?」
「先程の女を匿ったな?」
「先程の女性………というとどなたのことでしょう?」
「隠し立てする気か。まあいい」
王太子はため息をついて、近くにあった壁によりかかった。そして静かに目を伏せながら店主に話しかける。
「最近何かと世間が騒がしいな」
「そのようですね。物騒極まりない」
「そして最近、その手がかりとなるものを我が調査隊が見つけてきたらしい」
「それはそれは。優秀ですね」
「駒が優秀でも使い親が頭足らずだとお互い苦労するな。………そういうことだろう?」
そう言いつつ王太子は再度螺旋階段を見上げた。店主は答えなかった。
***
ロティア通り三番地ーーー。
メゾネリアの入口。メゾネリアは地下にある店で、一見それはバーとさほど変わりなく見えるらしい。暗号を知るものだけがメゾネリアへと案内される。表面上の店名は『フラット・フラット』。私は地下へと続く階段に足を踏み入れながら、静かに階段を降りていった。
地下特有の匂いをかぎとりながら階段をくだりきる。そうすると、右手に店の扉があった。
扉を引くと、コロロン、と小さな鈴の音が響く。店内は暗く、まだ昼前だと言うのに思ったよりも人がいた。と言っても数人程度だが、それでも昼頃にこの人数が集まるのは珍しい。
カウンターとテーブルを見渡しながら、私は例の人物を探す。果たしてその人物は意外にも近くにいた。
カウンター席のテーブルを拭いている男。彼こそがメゾネリアへの案内人だ。見分け方は簡単。アメジストのネックレスをしている男が、案内人だ。私は彼に近づくと小さく呟いた。
「ここに用はないの。案内してちょうだい」
その言葉こそが、メゾネリアへの暗号。
退屈でしかないと思っていたお茶会を、一回目の人生は嬉嬉として私は楽しんでいた。今思い返しても無意味な時間にしか思えないけど、でもその中で培ったことが今を助けることもある。あの無駄な時間は全てが全て、無駄ではなかったということだ。
その男は私の言葉を聞くとひとつ頷き、テーブルを拭くのをやめた。………良かった、もし万が一、一回目の人生と今の人生で齟齬が出ていれば暗号が違っている可能性もあった。だけどどうやら同じらしい。そのことに心からほっとした。もしこれで暗号違いだったらわざわざ城からでてきた意味が無い。
「おや………今日は珍しいお客様が沢山いらっしゃいますね」
ひょこり、と螺旋階段の上から店主が顔を出した。水色の長髪を無造作にそのまま流した彼は王太子を見据えて瞳を僅かに細めた。
「私になにかご用でしょうか?」
「先程の女を匿ったな?」
「先程の女性………というとどなたのことでしょう?」
「隠し立てする気か。まあいい」
王太子はため息をついて、近くにあった壁によりかかった。そして静かに目を伏せながら店主に話しかける。
「最近何かと世間が騒がしいな」
「そのようですね。物騒極まりない」
「そして最近、その手がかりとなるものを我が調査隊が見つけてきたらしい」
「それはそれは。優秀ですね」
「駒が優秀でも使い親が頭足らずだとお互い苦労するな。………そういうことだろう?」
そう言いつつ王太子は再度螺旋階段を見上げた。店主は答えなかった。
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ロティア通り三番地ーーー。
メゾネリアの入口。メゾネリアは地下にある店で、一見それはバーとさほど変わりなく見えるらしい。暗号を知るものだけがメゾネリアへと案内される。表面上の店名は『フラット・フラット』。私は地下へと続く階段に足を踏み入れながら、静かに階段を降りていった。
地下特有の匂いをかぎとりながら階段をくだりきる。そうすると、右手に店の扉があった。
扉を引くと、コロロン、と小さな鈴の音が響く。店内は暗く、まだ昼前だと言うのに思ったよりも人がいた。と言っても数人程度だが、それでも昼頃にこの人数が集まるのは珍しい。
カウンターとテーブルを見渡しながら、私は例の人物を探す。果たしてその人物は意外にも近くにいた。
カウンター席のテーブルを拭いている男。彼こそがメゾネリアへの案内人だ。見分け方は簡単。アメジストのネックレスをしている男が、案内人だ。私は彼に近づくと小さく呟いた。
「ここに用はないの。案内してちょうだい」
その言葉こそが、メゾネリアへの暗号。
退屈でしかないと思っていたお茶会を、一回目の人生は嬉嬉として私は楽しんでいた。今思い返しても無意味な時間にしか思えないけど、でもその中で培ったことが今を助けることもある。あの無駄な時間は全てが全て、無駄ではなかったということだ。
その男は私の言葉を聞くとひとつ頷き、テーブルを拭くのをやめた。………良かった、もし万が一、一回目の人生と今の人生で齟齬が出ていれば暗号が違っている可能性もあった。だけどどうやら同じらしい。そのことに心からほっとした。もしこれで暗号違いだったらわざわざ城からでてきた意味が無い。
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