すれ違いのその先に

ごろごろみかん。

文字の大きさ
21 / 25

隠していたものを暴いてしまったようで

しおりを挟む


「ごめんね。俺が悪かった。いくら腹に据えかねていたとしても、あの場で言うことではなかった。リーフェがいつ訪れてもおかしくない場所であの発言をした俺に全ての責があるよ」

「レイル………?」

「だけど………覚えておいて。俺が好きなのはリーフェで、きみ以外誰もいらない」

「え、ええ………と」

レイルは私が好きで、ヴィヴィアナ様のことは好きでもなんでもない………そういうこと?
それを理解すると、途端に私は気が抜けた。もし今私がたっていたのなら間違いなく座り込んでいた。それほどまでの脱力感。
そして、ついで頭に残るのはレイルの言葉。

ーーー俺が好きなのはリーフェで、きみ以外誰もいらない

これは、本当?本当ならば、それってすごく。すごく、嬉しいことなんじゃないかしら………?
思ってもみない告白に、じわじわと頬が赤くなるのがわかる。レイルはそんな私を見ると、私の前髪にひとつ口付けを落とした。ふわりと香るレイルの香水の匂いに思い出したように胸が音を立てる。

「愛してるよ、リーフェ。だけど、これくらいで疑われるような愛し方じゃ、ダメだったね。……俺はあなたを怖がらせたくないし、引かれたくもない。本当にね。俺はきみをとても愛してるんだ。きみに嫌われたら生きていけなくなるほどには」

「レイル…………?」

レイルは小さくつぶやくと、不意に私の体を引き上げた。突然のことに身動きの取れない私は、レイルの上に乗り上がる形になる。レイルはベッドに寝転び、私を見上げながら言った。

「だけど、そんなことも言っていられない。今回のようにまた誤解されたらたまったもんじゃないしね。だから、隠すのはやめる」

「あの、この体制は………」

「逃げないでね。リーフェ。俺が愛しているのはずぅっと、きみだけだから」

レイルの言っていることはよく分からない。混乱しながら私はレイルを見ると、不意に微笑みをおとしたレイルが私の目じりに口付けを落としてきた。びくりとして反射的にのけぞれば、レイルはそれを許さないとばかりにしっかりと腰を掴んできた。

「っ……んん、ん…………!」

しかしレイルはしっかりと私の首の後ろと腰に手を回して、口付けをやめなかった。さっきのような噛み付くキスとはまた違う。
吐息すらも塗りつぶしていくような、とても濃いキス。呼吸すらもままならなくて喘ぐように口を開ければ涎が顎を使うのが感覚でわかる。
ぐいっと首の後ろを引き寄せられて口内をぐるりと舌でまさぐられる。

「んっ、ぅ…………んっ………!」

ぴりっと走る痛み。そうだ、私思いきり口内を噛んだんだった………。口内の怪我は治りが早いと言うが、さすがに数日も経っていないんじゃ治りようがない。ぴりりとした痛みに身をよじると、唇を離したレイルが私の口元から零れた涎を舐め取りながら聞いてきた。

「リーフェ、怪我してるね。これ、どうしたの?」

どこか低い声にどきりとする。訳もなく焦って、私は誤魔化すように言った。

「ち、違うの。これは自分で………」

なにが違うのか自分でも分からない。だけどそういうと、体を起こしたレイルが私の耳を舌でつつきながらさらに聞く。

「自分で?どうして?リーフェは自分で口の中を噛んだの?なぜ?」

「そ、れはぁっ………ぁっ……」

ぺろりと耳朶を食まれて、甘噛みされる。それだけで腰に恐ろしいほどのゾクゾクとした何かが走って、私は思わずシーツを握った。

「悪い子だね。リーフェ。俺の大切なあなたの体に、傷をつけるなんて。それがいくらリーフェでも、許せないな」

「レ、レイル…………?」

「でも元はと言えば俺のせいか。俺があなたを追い詰めた。ということは、俺の責任。俺のせいだね。………リーフェ、この怪我は俺のせいだ」

「レイル?ちょっと、レイル……」

レイルがおかしい。どうしよう……?
なぜ、やっぱりレイルがおかしいわ。私は焦ってレイルの頬に手を滑らせるが、レイルの瞳は昏い色を宿していて、どこかトロリとしている。その瞳に見られているだけで腰がゾクゾクする。やだ、おかしい。何で、こんな。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】 エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの? こちらは恋愛ファンタジーです。 貴族の設定など気になる方は、お避けください。

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

処理中です...