くだらない毎日に終止符を

ごろごろみかん。

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「…………」

その物言いに僅かにフランチェスカは眉をしかめた。疑問符と怒りが首をもたげたのがわかる。元来フランチェスカは気が長い方ではない。むしろ短気である。そんな彼女が長々と彼女達の大層な口上を聞いているはずがない。

(そもそも誰に向かって口聞いてるのよ)

フランチェスカはにっこりと笑ってリデルと向き合った。そして、ちらりと隣に立つユーリスを見る。

(女の趣味サイッアク)

長年の付き合いだがユーリスがここまで女の趣味が悪いとは思わなかった。それよりも、こんな女の本性すら分からなくてこの国は大丈夫なのだろうか?いや、ダメだろう。

(馬に蹴られて死んでしまえばいいのに)

そう思ったが、はたとフランチェスカは気がついた。
もし馬に蹴られて王太子が死ねばその馬のい行き着く先は死だ。王太子を殺した馬が生かされるとは思えない。
あんな男のために馬が死ぬのは忍びない。フランチェスカは考えを変えて、転んでそのまま階段から落ちて死ねばいいのに、に変えた。ユーリスに死んでもらいたいのは変わらない。

「お言葉ですが、リデルさん」

ひとつ笑って、フランチェスカは花開くような微笑みを乗せた。異性からしてみれば可憐な、同性からは媚びるように見えるそれはしかしフランチェスカの顔の作りがそうさせてしまうのだ。断じてフランチェスカの意思ではない。顔の作りが問題だって言うならどうすればいいのよ、熱湯でもかぶれっていうの?と内心フランチェスカは毒づいた。

「我が身を振り返ることも大切なのでは?そもそも、ここは学園ではありません。正式な夜会のパーティ。ここは平等を謳う学園ではなく、身分制度の生きる社交界でございましょう?…………ねぇ、ユーリス様?」

声をかけると、ユーリスはいささか気難しい顔をしながら視線を流した。自分から視線をそらされてフランチェスカはそれでも口元に笑みを描く。そして、ふわりと笑う。まるで、心からそう思っているように。

「それで、わたくしの証拠………でしたっけ。ごめんあそばせ、わたくしには全く覚えがありませんの。でも、そうなるとおかしいですわね。わたくし夢遊病にでもなってしまったのかしら?」

「フラン、冗談もそれまでにしろ。それに、リデルの話し方に問題は無い」

「まあ。ご理由をお聞かせ願えますか?」

聞くと、ユーリスはほほ笑みを浮かべた。だけどそれは嘲笑が混ざっていてありありとフランチェスカへの皮肉を感じさせる。

「彼女は私の婚約者になるからだよ」

ざわめく会場。
ひそひそと交わされる話し声。

それを耳にしながらフランチェスカは少しだけその瞳を丸くした。童顔で愛らしい彼女がそうするとなんとも可愛らしくあったが、ユーリスはそれを満足そうに眺めるだけだった。ユーリスが自分を思っていないことはそうそうに気がついているが、いつからこんなに嫌われるようになったのか。思い返せばリデルが転入してからが全ての始まりだったとフランチェスカは思った。こんなクズでも王太子なのだからこの国の行先も考えられるというものだ。

「そうですか。それはそれは………おめでとうございます」

「分からない?リデルが婚約者になるということは…………きみがその座を降りるということだ」

どこか偉そうに言うユーリスに、フランチェスカは彼をまじまじと見た。何回繰り返しても彼のこの偉そうな様子はいただけない。フランチェスカは気が短いのだ。手に持った扇で口元を隠しながら、フランチェスカはその目に隠しきれない侮蔑と嫌悪を乗せて彼に笑いかけた。

「まあ、なんて光栄な話なのかしら」

その声は高く、甘い声音ではあったが射抜くような鋭さがあった。
静まり返った会場は既に婚約破棄の場へと様変わりしていた。フランチェスカは今までの鬱憤を晴らすように言葉を並べていく。ただし、その顔には天使の笑みと称される甘いほほ笑みを浮かべて。

「ユーリス様、何か勘違いされてませんこと?」

「………何?」
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