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恐れの中に一粒のかけら
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何がどうなっているのか、全く分からない。
これは悪い夢なのだろうか。死に目に見る一瞬の走馬灯?だとしてもこんな、ロザリアと話している場面などでなくていいと言うのに。ミレイユは鬱々とした感情を抑えきれない。
「なんなのっ。媚び売り女のくせにいい態度じゃないの。身の程ってものを知らないようね。いいわ。私は優しいもの。お姉様が自戒するための機会を設けて差し上げるわ。ええ、私は姉思いの妹ですもの!」
ロザリアはそのままぺちゃくちゃと姦しい鳥のさえずりのように何事か並べ立ててミレイユを批判していたようだが、ミレイユはそれどころではなかった。この走馬灯が長すぎるために、もう嫌気がさしていたのである。
夢でまで妹にコケにされるなど、耐えられない。思った時、彼女の頬に衝撃があった。
「きゃあ!」
予期せぬ衝撃にミレイユが転げると、ロザリアはその反応に気を良くしたようにフン、と息を吐く。
「今日のお夕飯。お姉様は不要でしょう?まったく、嫌になってしまうわ。私の手を痛めてしまうではないの。そうしたらどう責任とってくれるのかしら!」
ロザリアは言うだけ言ってようやく清々としたようで、最後にひと睨みきかせると、踵を返した。
ミレイユは未だに呆然と髪も乱れたまま座り込んでいる。しかしややするとハッとしたように立ち上がり、自身の顔をぺたぺたと触りだした。
「どういうこと………?どういうことなの……」
震えた声で明らかにうろたえた様子を見せながらミレイユは顔や頭を確かめるように触れていくと、今度は恐る恐る、まるで触れたら指先から腐り落ちるとでもいうかのような仕草で、そっと自身の首筋に触れる。
「………あぁ!」
ミレイユは歓喜のあまり涙した。
生きている。ミレイユは、生きているのだ。
首も繋がっている。痛みもある。これは夢じゃない。
(神様なんて居ないと思っていた。でも、本当はいたのね。親愛なる主よ、慈悲の心を与えてくださったことに感謝致します)
ミレイユは涙ながらに手を組んで祈りを捧げていたが、やがてふ、と気が抜けたようにふらりと立ち上がった。もし、他者が今のミレイユを見たなら、その異様さに不気味がったことだろう。それほどおぼつかない、ともすれば夢遊病者のような動きで彼女は周囲を見渡した。
(ここは……シューザルトのお家ね)
覚えのある、荘厳な城はどこか冷たく感じる。
ミレイユは壁に手を付きながらよろよろと歩いていった。彼女は目まぐるしく、目にした情報を頭にインプットしていった。
(これは夢じゃない。じゃあ、なに?)
その時、どこか遠くで砲台が火を吹いた。
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