業腹

ごろごろみかん。

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日没の刻に

「私の名前はテレスティア・レベーゼ。あなたが何に追われてるかは存じ上げないけれど、あなたに用があるのは確かよ」

「は?俺に………?」

「あなた、私に協力して下さらない?」

ルアヴィスは王宮魔術師の中でも屈指の才を持つ一級魔術師の資格を持っている。彼がいれば心強いのは間違いないだろう。それに、ルアヴィスはたった今私にものすごい秘密を明かした。いや、偶然見てしまったのだけど。だけどちらにせよそれを使わない手はない。

「さっきのことだけど。私うっかりセレベーク様にあなたのこと、話してしまうかもしれないわ。だけどあなたが協力してくれるのなら忘れることにする」

「俺を脅してるつもり」

低い声でルアヴィスが言う。その通りだ。私は目的のためなら手段は選ばない。それでもまだ倫理に反することはしてないのだから逆に褒めて欲しい。私はにっこり笑って答えた。

「違うわ、これは約束よ」

「約束………ね」

「私は今から行きたい場所があるの。あなたはそこまで護衛してくれればいいわ。ああ、もちろん途中で合流するのよ。ここから一緒に行ったらそれこそ嫌な噂がたつわ」

私がつらつらと述べるとルアヴィスはしばし黙っていた。だけどようやく動き始めるとゆっくりと落ちた仮面を拾う。仮面に隠されるギリギリまで彼の空色の瞳を見ていたがやはり感情は読めなかった。

硬質な音がして、彼は仮面をつけた。

「テレスティア夫人、あなたは俺に何をさせたい?何をするつもり?」

「やだ、警戒しないで。ただ私は行きたい場所があるだけ。あなたは何もしなくていいわ。ただ私を守ってくれればいいの。外は何かと危ないでしょう?」

ルアヴィスがいれば百人力どころか千人力である。それほどまでに一級魔術師の力は強い。

「場所は?」

「待ち合わせ場所は………そうね。ルビーナ街の三番通路にしましょ。あそこならひと通りも多いから目立たないし、近くに裏路地があるからこっそり会うにはぴったり」

私は図書室で調べた本と地図の情報をもとに待ち合わせ場所を決めた。

「まるで逢い引きだな」

「周りに気づかれたら互いに合い挽き肉ミンチ。上手いこと言うのね」

私は笑っていうがルアヴィスは答えなかった。そして、少ししてから彼は言った。

「……三番通路の出口の方だ。入口はあれで騎士も結構いる。俺はあんたの巻き添えで死ぬのはごめんだ」

つい先程私を巻き込んで不穏な気配と隣合わせになった人が言うセリフではない。そう思ったが、私は彼の仮面を見ながら答えた。

「いいわ。じゃあ、日没の刻に三番通路の出口で。待ってるわよ、協力者さん」

そう言うと、私は踵を返した。
そのまま迷った足取りで、しかししっかりと脳裏に刻み込んでいる道を歩く。もし誰かにあっても迷い込んだと言い訳ができるような仕草と歩きかたを心がけながら私はシェリアの元へと戻った。
ここまでは上手くいっている。だからこそ、気を引き締めなければならない。同じ轍は踏みたくない。
しっかり、慎重に、焦ってはいけない。だけど時間がないのも確か。考えて行動しなければ。
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