15 / 17
ご挨拶ね。
ミィナから店主に話を通してもらい、一室借りることにすると私はルアヴィスと空室に入った。こんなところ誰かに目撃されれば醜聞は避けられないが、幸いにも私たちを知る人はここにはいない。フードも被っているし。
私はちらりとルアヴィスを見た。ルアヴィスはキョロキョロと周りを確認していたが、ふと視線が絡むと唸るように言う。
「で?俺に何の用」
「ご挨拶ね。まあいいわ、座ってちょうだい」
ルアヴィスにソファをすすめると、彼は無言で座る。私は彼のそんな様子を見ながら、ふと思い出した。
「そう言えばあなた、王宮で襲われてたわね」
「それが?」
「王宮で襲われるなんて、滅多にないことよ。しかもあんなに堂々と。………あれは、王太子の手のものね?」
聞くと、しかしルアヴィスは答えなかった。それが何よりの答えだろう。
私はため息混じりに言った。
「話を変えるわ。先程ミィナに話したとおり、一週間後に王宮は突然の爆発事故が起きる」
「それ、本当なのか?」
ルアヴィスがようやく顔を上げた。私はこくりと小さく頷く。元よりすぐに信じてもらえるとは思っていない。 ウィリアムの時のようにはなりたくない。
ルアヴィスは王族のーーーおそらく陛下の。落胤だということを誰にも言っていない。隠している。それは夫のセルベークも知らないようだった。つまり、ルアヴィスの秘密を知った今私の方にアドバンテージはある。
ウィリアムのように私を拘束することはルアヴィスの立場上難しいだろう。腐っても私は団長夫人。王太子と敵対関係にあるルアヴィスに私をとらえるだけの力はない。
ここでどうにかされる恐れはない。そう踏んで、私はルアヴィスに今までの話をした。
それでも全ては話さず、簡単に省略した内容だ。
「あんたは一回死んで、それで………」
「巻き戻ってるわけ」
「それを俺が信じると?」
「言うと思ったわ。まあ、いいの。別に信じてもらうために話したのではないし」
私はそう前置きすると、ルアヴィスを見た。彼の空色の瞳をじっと見る。瞳の中に浮かぶ四角の模様はやはり鮮やかだ。
「王宮で爆発が起きるとして、それはどこを爆破すると思う?私の記憶では玄関ホールの階段が崩れ落ちるほどの衝撃だったのよ。あれは柱を壊しただけじゃああんな衝撃は起きないわよね?」
「……………」
ルアヴィスは僅かに眉を寄せて、顎に指をかけた。そしてしばらくして呟くように答える。
「…………規模が分からないからなんとも言えない、が。一箇所を爆破するだけで王都が崩れかねない場所なら…………ある」
「それはどこ?」
聞くと、ルアヴィスはぱっと手を離して私を睨むように言った。
「その前に、あんたは誰だ?今の話、とてもじゃないが信じられない。それに俺の知るテレスティア・レベーゼはあんたのような女じゃない」
あなたにおすすめの小説
【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。
木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。
「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」
シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。
妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。
でも、それなら側妃でいいのではありませんか?
どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?
真実の愛の言い分
豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」
私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】私の大好きな人は、親友と結婚しました
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
伯爵令嬢マリアンヌには物心ついた時からずっと大好きな人がいる。
その名は、伯爵令息のロベルト・バミール。
学園卒業を控え、成績優秀で隣国への留学を許可されたマリアンヌは、その報告のために
ロベルトの元をこっそり訪れると・・・。
そこでは、同じく幼馴染で、親友のオリビアとベットで抱き合う二人がいた。
傷ついたマリアンヌは、何も告げぬまま隣国へ留学するがーーー。
2年後、ロベルトが突然隣国を訪れてきて??
1話完結です
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。