〈完結〉βの兎獣人はαの王子に食べられる

ごろごろみかん。

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友達 兼 婚約者 3

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 それから数日。
 ティナは時間があればロベートの元にやってきた。えぐみのある薬湯を飲ませられるのは拷問かと思うほど苦痛な時間だったが、彼女の手厚い手当のおかげか数日経てばなんとか体を動かすことは可能になった。それでも傷は深く、痛みはあるが。
 話してみると、ティナディアという少女はあまりにも物を知らなかった。よくよく聞くと、彼女はβだから、という理由で村人から嫌われ、まともに教育を受けていない。彼のボタンを見て王族だと気が付かなかったのも、教育を受けていないからだろう。
 それでも彼女の話を聞くのは楽しかった。裏がなく、純粋で素直な彼女と話すのは何も疑わずに済み、他者に疑念ばかり抱いていたロベートは初めて何も警戒することなくひとと話すことが出来た。
 
 だけど、ここまで何も知らないのは気の毒だとロベートは思った。ふつうの村娘ですら知っていることを、彼女は知らない。国名すら知らなかったのだ。
 ティナはこの村を出た方がいい。田舎ではβを排斥する動きが多いが、王都ではそんなことはない。第二性別による差別は存在しない。
 
「ティナ、お前はいくつになる?」
 
「わたし?わたしは……ええと……たぶん十歳」
 
「たぶん?」
 
「教えてもらったことがないの。でも、あと八年で成人って聞いたから……十歳なのかな?」
 
 ロベートは絶句した。
 ふつうの子供なら生まれ日は家族に祝ってもらうものだ。しかし、ティナにはそれがなかったのだろう。βだから、という理由で。
 
「成人になったら、村を出なきゃいけないの。βがいたら……αとΩに良くないから」
 
 村でティナが恋をするとしたら、その相手は必然的にαかΩのどちらかになる。しかし、αは村でも数が少ない。万一、ティナがαと恋人になるようなことになれば、その分Ωがあぶれてしまう。Ωにとってもαにとっても要らない子であるティナを、村人は早々に厄介払いしたいようだった。
 
「ティナ、成人したら王都に来ないか?いや……成人する前でもいい」
 
「おうと?あ、あなたがいるところね?」
 
 ティナはにっこりと笑った。
 ロベートは不思議に思った。ティナは、ロベートが聞くだけでも村で酷い扱いを受けている。それなのになぜ、彼女はこんなに屈託のない笑みを浮かべることが出来るのか。
 
「そう。俺が迎えに来る」
 
「あなたが?」
 
「俺が約束するんだからな。俺が迎えに来る。ティナのために住む家も用意するし、ティナが苦労しない生活をさせるよ。だから、その時がきたら俺と来て」
 
「……いいの?でも、確かロベートはα──」
 
「αとβが一緒にいてもいいだろ。いいか、俺たちは今から友達兼婚約者だ」
 
「こんやくしゃ?」
 
 こんやくしゃ。その単語を知らないティナは何度も瞬きを繰り返す。
 
「ずっと一緒にいる、っていう意味だよ。俺はティナが気に入ったし、ティナも俺のこと嫌いじゃないだろ?」
 
 ロベートはそう言ったものの、あまり自信はなかった。ティナに好きじゃないと言われたらどうしよう。
 こればかりは彼女に聞いたことがないので彼にも分からない。内心不安に思うロベートに対し、ティナはにっこり笑った。
 
「きらいじゃない。だいすき!」
 
「ティナ……」
 
「ロベートはお友達だもの。お友達は、大好きよ」
 
「…………」
 
 ロベートは、結婚するならティナがいいと思った。貴族の令嬢と違い、ティナは素直だ。父親に命じられて、嫌々ロベートに言いよる娘たちとは違う。きっと彼女となら、両親のような仲のいい夫婦になれる。ロベートはそう考えた。
 
「きみが成人前に迎えに来るから、待ってて」
 
「うん。待ってるね」
 
 ティナは朗らかに微笑んだ。
 陽が落ちると、ティナは家に帰っていった。
 
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