王妃の鑑

ごろごろみかん。

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花舞う日

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「僕はお前を愛していない」

喉が凍るかと思った。彼の隣には見知らぬ美しい女の人がいる。彼女は誰?だなんて野暮なこと聞けやしない。瞬間的に悟った。彼女は彼の…………昨日まで婚約者だった彼の、愛しい人なのだと。

「………け、けれどアル様…………」

「口を慎め。お前にその名は許していない」

切って捨てられるように言われ、言葉を失う。同時に心臓が嫌な音を立てた。ドクリ、と。いや、そんなまさか。
だって、アル様………アルフェイン様はわたくしを良く思ってくださっていると………。そう、仰っていたのに。
目の前が真っ暗になった。信じることを脳内が拒否した。
これは………どういうこと、なの?
ふらつく足を何とか踏ん張る。たたらを踏んだ私をよそにアル様…………いえ、国王陛下がその隣にいた彼女の腰を引き寄せた。

「彼女の名はアデライード。お前も知っているだろう」

「ご機嫌麗しゅう、ネアモネ王妃殿下。こうしてお言葉を交わすのは初めてですわね。紹介に預かりましたアデライード・デッセフォンと申します。………これからどうぞ、よろしくお願いします」
 
ふわりと美しいほほ笑みでアデライードが笑った。私よりもずっと艶があり、色のある笑みだった。
理解したくなかった。わかりたくなかった。今日は私と陛下の婚姻の日。そして陛下が王冠を配した日でもある。
元々お体の弱かった前王が床に伏したのは突然のことだった。前々からアル………今の陛下が仰っていた。
『もう陛下は長くないかもしれない』
それ聞いた時、わたくしも覚悟はしていた。だけど当時王太子殿下だった彼はこうも続けた。
『陛下のお体が悪化する前に僕は王位をいただくことになる。ネア、きみも一緒だ。僕と一緒に歩んでくれるね?』
彼の優しさと力強さに満ちた声に、わたくしは一も二もなく頷いた。陛下が………アル様が好きだったから。彼は優しく私に話しかけてくれた。触れてくれた。キスだって未だにしたことがなかったけれど、それでも彼との間に育った絆は間違いがないと思っていた。………そう、思っていたのに。
前王のお体の調子が悪くなり、それから幾ばくかもしないうちにアル様………今の陛下が王位を賜った。それが今朝の話。
そして、王位を継ぐと同時にわたくしとの婚姻の儀が行われた。
今宵は初夜だった。わたくしと、アル様の。
好きだった。愛していた。恥ずかしいけれど、身を任せようと思っていた。家から唯一連れてきた侍女のリリアベルは今宵のために一段とわたくしを磨き上げてくれた。
はずかしいけれど、緊張していたけれど。それでもこれで彼と夫婦になれることを確かに喜んでいたのに。
心待ちにしていたのに…………
そんなわたくしを待ち受けていたのは部屋の中でソファに座る、愛しい人と見知った顔の美女だった。
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