王妃の鑑

ごろごろみかん。

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満月の日(2)

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ふと、意識が浮上する。
………あら?私、どうして………。そこまで考えた時、思わず飛び跳ねるようにして起き上がった。
周りを見渡せば懐かしい光景が広がっていた。………ここは私の私室だ。元、私室。
王妃だった時に使っていた部屋だわ………

どうして?なぜ私はここにいるの………?
私は死んだのではないの………?

混乱した私が起き上がろうとした時、扉がノックされた。
返事をする間もなく扉が開かれる。入ってきた人物は………

「リリ、アベル…………」

掠れた声で名前を呼んだ。忘れもしない、彼女の姿形。オレンジアッシュの明るい髪色をした彼女は相変わらず頬の辺りだけ髪をカールさせていた。髪は一本にまとめていて、侍女のお仕着せを着ている。

………信じられなかった。
どうして、彼女が?
だってリリアベルは死んだはずじゃ…………

固まった私にリリアベルが驚いたように走りよってくる。

「妃殿下!大丈夫ですか?」

「リ、リリアベル?リリアベル……なの?」

「はい?そうですけど………大丈夫ですか?頭打ちましたか?」

心配そうにリリアベルが聞いてくる。その声の暖かさに思わず涙が込み上げた。
潰えたと思っていた涙は次々と溢れ、目元を濡らしていく。目が熱い。頬が熱い。思わず顔をおおってしまった私にリリアベルが焦ったように言った。

「妃殿下!?大丈夫ですか?どこか痛むところでも………!?」

「ごめん、ごめんなさいっ………ごめんなさい、リリアベル………!」

一度も言えなかった、謝ることも出来なかった。私が謝罪を次々に口にすると、リリアベルは困った顔をした。
そんな彼女の反応が、確かにリリアベルが生きてるのだと分かってますます胸が痛くなった。

「ごめんなさい、ごめんなさい………」

「妃殿下、落ち着いてください。何かあったんですか?」

「何も………何も無いの、何も無いのよ、リリアベル」

確かめるように彼女の名前を呼ぶ。リリアベルはここにいる。まだ生きている。まだ、何も起きていない。
しばらく泣き続けた私だったが、リリアベルが温かい濡れたタオルを持ってきてくれてそれを渡してくれる。タオルで目元を抑えながらも私は贖罪を続けた。
謝り続ける私に、リリアベルは困惑しているようだった。

これは夢なのだろうか?私の謝罪がしたいと言う思いから見せた幻?それでも良かった。リリアベルに謝りたかった、どうしても謝りたかった。
私に従事しなければリリアベルは死ぬことがなかったのに。リリアベルには故郷に恋人がいると以前聞いた。そして、結婚の約束をしているということも。

それを奪ったのは私だ。
全て、全て壊したのは、リリアベルの未来を奪ったのは私だ。
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