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ソフィア
真実を伝える日 7
「いつからかは分からない。だけど……婚姻してからだんだん、貴方は変わった」
「僕が……?」
戸惑うようにロウディオは顔を上げる。ソフィアは、ロウディオを見ながら、その面影に二十五歳の彼を見出しているようだった。ソフィアは自分の手を握りながら、静かに話す。
「何が恋なのか分からない……と。そう仰ったことがあった。私に触れる手は優しかった。だけど……きっともう、その頃には彼は私を見ていなかった。優しさは、時にひどく残酷ね。私は仮初の愛に満たされる日々を演じた」
「……本当に、未来の僕はお前じゃない女と遊んでた……?」
ソフィアはその少年特有の高い声を聞きながら、自分は何を言っているのかとにわかに我に返る。
二十五歳のソフィアが愛を乞うたところで──それは十三歳のロウディオではないし、大人の愛を求められたところだロウディオも混乱するだけだろう。彼が知っているのは、泣き虫で、引っ込み思案で、だけどちゃっかりしているソフィア・アーリーのはずだ。煩わしい感情にどうにも身動きが取れないソフィアではない。これ以上は、言うべきではない。
ソフィアは首を振る。
「昨日はごめんなさい。言うべきだった、私たちのこと。貴方は当事者なんだもの。知っておくべきだったわ」
「…………」
「貴方の言う通り、私たちは上手くいっていなかった。だけど、私たちの間に夫婦の関係はあった……。殿下、もう一度尋ねますが、相手は私でよろしいのですか?」
最後の確認と言わんばかりにソフィアは彼に尋ねた。ロウディオはしばらくなにか考え込んでいたようだが、ハッとしたようにソフィアを見た。そして、なぜか苦しげな顔をした。
「……ソフィアは、僕のことが嫌いじゃないの?」
「嫌い……?」
(嫌いに、なれればよかったのにね)
ソフィアはほんの僅かに笑みを浮かべた。そして、首を振る。
「嫌いだったら、協力などしていませんわ」
「だけど……。どうして?ソフィアは酷いことされたんだろ。なのにどうして、嫌いにならないの?どうしてソフィアは……!どうして……僕は、そんな……。嘘だ。嘘だよ、ソフィア。きっと嘘だ。僕はだって、ずっとソフィアと」
そこまで口走ってから、ロウディオは自分がとんでもないことを口にしていると気づいたようで顔をさっと赤く染めて黙り込んでしまった。白皙の頬は耳まで赤く染まり、羞恥のあまり涙まで滲みそうだ。ソフィアは彼のその清らかな反応が眩しい。
「……なにかの、間違いだ」
ぽつりと、ロウディオはそう零した。
そう、思いたかったのかもしれない。
「殿下」
ソフィアが彼を急かすように名を呼んだ。ロウディオは首をゆっくりと振って、まだ赤い頬のまま、彼女を見た。
「……呪いが解けたら、僕は二十五歳の僕になる」
ソフィアは頷く。
「ソフィアは……呪いが、解けて欲しい?」
その問いには、ソフィアはすぐに答えることが出来なかった。ただ、咄嗟のことに息を飲むソフィアに、ロウディオは視線を逸らした。
「僕は……そんな自分に、なりたくない」
「殿下……」
「僕をロロって呼ばないソフィアといて……本当に僕は、楽しかったのかな」
「僕が……?」
戸惑うようにロウディオは顔を上げる。ソフィアは、ロウディオを見ながら、その面影に二十五歳の彼を見出しているようだった。ソフィアは自分の手を握りながら、静かに話す。
「何が恋なのか分からない……と。そう仰ったことがあった。私に触れる手は優しかった。だけど……きっともう、その頃には彼は私を見ていなかった。優しさは、時にひどく残酷ね。私は仮初の愛に満たされる日々を演じた」
「……本当に、未来の僕はお前じゃない女と遊んでた……?」
ソフィアはその少年特有の高い声を聞きながら、自分は何を言っているのかとにわかに我に返る。
二十五歳のソフィアが愛を乞うたところで──それは十三歳のロウディオではないし、大人の愛を求められたところだロウディオも混乱するだけだろう。彼が知っているのは、泣き虫で、引っ込み思案で、だけどちゃっかりしているソフィア・アーリーのはずだ。煩わしい感情にどうにも身動きが取れないソフィアではない。これ以上は、言うべきではない。
ソフィアは首を振る。
「昨日はごめんなさい。言うべきだった、私たちのこと。貴方は当事者なんだもの。知っておくべきだったわ」
「…………」
「貴方の言う通り、私たちは上手くいっていなかった。だけど、私たちの間に夫婦の関係はあった……。殿下、もう一度尋ねますが、相手は私でよろしいのですか?」
最後の確認と言わんばかりにソフィアは彼に尋ねた。ロウディオはしばらくなにか考え込んでいたようだが、ハッとしたようにソフィアを見た。そして、なぜか苦しげな顔をした。
「……ソフィアは、僕のことが嫌いじゃないの?」
「嫌い……?」
(嫌いに、なれればよかったのにね)
ソフィアはほんの僅かに笑みを浮かべた。そして、首を振る。
「嫌いだったら、協力などしていませんわ」
「だけど……。どうして?ソフィアは酷いことされたんだろ。なのにどうして、嫌いにならないの?どうしてソフィアは……!どうして……僕は、そんな……。嘘だ。嘘だよ、ソフィア。きっと嘘だ。僕はだって、ずっとソフィアと」
そこまで口走ってから、ロウディオは自分がとんでもないことを口にしていると気づいたようで顔をさっと赤く染めて黙り込んでしまった。白皙の頬は耳まで赤く染まり、羞恥のあまり涙まで滲みそうだ。ソフィアは彼のその清らかな反応が眩しい。
「……なにかの、間違いだ」
ぽつりと、ロウディオはそう零した。
そう、思いたかったのかもしれない。
「殿下」
ソフィアが彼を急かすように名を呼んだ。ロウディオは首をゆっくりと振って、まだ赤い頬のまま、彼女を見た。
「……呪いが解けたら、僕は二十五歳の僕になる」
ソフィアは頷く。
「ソフィアは……呪いが、解けて欲しい?」
その問いには、ソフィアはすぐに答えることが出来なかった。ただ、咄嗟のことに息を飲むソフィアに、ロウディオは視線を逸らした。
「僕は……そんな自分に、なりたくない」
「殿下……」
「僕をロロって呼ばないソフィアといて……本当に僕は、楽しかったのかな」
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◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。