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ソフィア
最後の夜 2
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ソフィアの手によって灯りを絞られた室内は、ただただ暖かく、優しい空間だった。
「もう眠りましょう。明日もしたいことがあるのでしょう?」
「ん……。ソフィアも一緒に寝るよな?」
ソフィアはその言葉に戸惑った。
年幼いとはいえ、夫婦で、明日はすることが決まっているふたりだ。ここで眠ってもいいのだろうか。ソフィアは逡巡したが、不安そうなロウディオの瞳を見て、こくりと頷いた。
「わかりました。一緒に眠りましょう」
「ソフィアは……あったかいね」
「殿下……ロロの方があったかいですよ」
ソフィアの言う通り、ロウディオは子供体温なのでぽかぽかと温かい。既に瞼が落ちかかっているロウディオはふわりと笑って、そのまま目を閉じた。ソフィアは彼の金糸のような前髪を何度か撫でていたが、やがてロウディオが眠りに落ちると、彼の寝顔をじっと見つめた。
(彼が二十五歳に戻れば……私と殿下は離縁することになる……)
奇妙なことになったものだ。
ソフィアは理解していたはずだ。呪い解呪をすれば、手筈通り離縁をすることになる、と。そのためにソフィアは荷物をまとめて生家に戻る支度を整えていたし、何事もなければあの日にソフィアは王城を出る予定だった。
ソフィアはあどけない少年の寝顔を見ながら、胸が苦しくなった。
(この姿は一時的なもの……。もう二度と、会うことは無い)
呪いが解呪されれば、今のロウディオと会うことはもう二度とない。分かっていたはずなのに、分かりきっていることなのに、どうしてかソフィアは上手くそれを呑み込めない。
このまま時が止まってしまえばいい、など──。
ソフィアは考えてはいけない。
彼女は眠るロウディオを見ると僅かに微笑んで、寝室の灯りを落とした。
「もう眠りましょう。明日もしたいことがあるのでしょう?」
「ん……。ソフィアも一緒に寝るよな?」
ソフィアはその言葉に戸惑った。
年幼いとはいえ、夫婦で、明日はすることが決まっているふたりだ。ここで眠ってもいいのだろうか。ソフィアは逡巡したが、不安そうなロウディオの瞳を見て、こくりと頷いた。
「わかりました。一緒に眠りましょう」
「ソフィアは……あったかいね」
「殿下……ロロの方があったかいですよ」
ソフィアの言う通り、ロウディオは子供体温なのでぽかぽかと温かい。既に瞼が落ちかかっているロウディオはふわりと笑って、そのまま目を閉じた。ソフィアは彼の金糸のような前髪を何度か撫でていたが、やがてロウディオが眠りに落ちると、彼の寝顔をじっと見つめた。
(彼が二十五歳に戻れば……私と殿下は離縁することになる……)
奇妙なことになったものだ。
ソフィアは理解していたはずだ。呪い解呪をすれば、手筈通り離縁をすることになる、と。そのためにソフィアは荷物をまとめて生家に戻る支度を整えていたし、何事もなければあの日にソフィアは王城を出る予定だった。
ソフィアはあどけない少年の寝顔を見ながら、胸が苦しくなった。
(この姿は一時的なもの……。もう二度と、会うことは無い)
呪いが解呪されれば、今のロウディオと会うことはもう二度とない。分かっていたはずなのに、分かりきっていることなのに、どうしてかソフィアは上手くそれを呑み込めない。
このまま時が止まってしまえばいい、など──。
ソフィアは考えてはいけない。
彼女は眠るロウディオを見ると僅かに微笑んで、寝室の灯りを落とした。
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