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ロウディオ
エピローグのその前に 3.5
─────────────
1月3日
ソフィアが愛おしくて、同じくらい憎い。
きみも僕と同じくらい苦しめばいい。
ソフィアの肩を抱いたのはレンゼル大臣だった。あのハゲオヤジ、立場を理解していないのだろうか?していないんだろう。でなければ王太子妃に気安く触れることなどしないはずだ。
次の議会が、彼の最後の出席日となるだろう。
1月10日
今日は腹が立つ日だった。ヴィンセン伯爵とかいう好色野郎。ソフィアに話しかけるなんて随分調子に乗ってるじゃないか。しかもソフィアは話しかけられて頬を染めていた。彼女には王太子妃としての自覚がないのか?ああ、いらいらする。
1月16日
今日思ったが、ソフィアは紳士のような振る舞いに弱いのかもしれない。思えば僕はいつも軽い空気で彼女に話しかけていた。このままヴィンセン伯爵に取られのは許せない。
慣れないが、まずはソフィアのことをきみ、と呼ぶところから始めることにした。なれない言葉に歯が浮きそうだが、ソフィアは驚いた顔をして、頬を赤く染めた。こんなのがいいのか?よく分からない。僕は距離ができたようで余計苦しいだけだ。
5月6日
香水臭いサンスティ夫人だが、夫を早くに亡くしたからか妙にベタベタしてくる。僕は乱交など興味ないのだから諦めて欲しい。いや、あの手の女が望むのは僕の地位か。あんな下品な女に欲情するなど女神が夫の浮気を許すくらいありえない話だ。
5月10日
会議のおりに子供はまだかといちいち言われるのが鬱陶しい。世継ぎは必要だが、猫の子のようにあちこちで子供を作れば後の王位継承争いが激化するだけだろう。そもそも妻はソフィア以外不要だと言ってるのに、いつになったら理解するんだ?
5月21日
ソフィアがようやく僕を意識した。あのしつこいサンスティ夫人だが、今だけは彼女に感謝している。夜会で、彼女がべたべた距離を詰めるところをみたソフィアが眉を寄せた。
やはり何も言わなかったけど、不快だったということは、僕を少しは好きなのだろうか?僕が好きなのはきみだと告げても、ソフィアは笑うだけで言葉を返しはしない。いつになったらソフィアは僕に愛を返してくれるんだろう。
6月21日
ソフィアは僕が女性と気安く接する時に限って、眉を寄せる。何も言わないけど、明らかに嫌がってるんだろう。言えばいいのに。きみが一言言えば、僕は彼女たちとの触れ合いを一切無くすのに。ソフィアは何も言わない。
8月6日
ソフィアはやはり、泣くところが一番かわいい。泣きそうになる表情を見ると、彼女の愛を感じられる。
8月14日
紳士のように振る舞うと最初こそ顔を赤らめていたソフィアだけど、だんだん寂しげな笑みを浮かべるようになった。
今日の彼女はそれがより顕著だ。
きっと、デーテル夫人との話を聞いたんだろう。デーテル夫人とは確かに話をしたし、気安い空気を作って見せた。ソフィアが誤解しているのは知っている。だけど、誤解させておけばソフィアは僕への愛情を見せる。やめられない。
その日は閨事の日と決まってるわけではなかったのに、つい彼女を抱いてしまった。愛してるよ、と言えば彼女は笑うだけだ。
決して愛の言葉は返さない。腹が立つ。お前が憎い。その細い首をしめてしまいたいと思ってることは、きっとお前は知らないんだろうな。知らなくていい。
僕がきみを殺すか、きみが僕を殺すか。どちらでもきっといい結末になる。そう言ったら、今度こそソフィアは僕を見限るだろう。
─────────
十八歳の日記から二十歳までの日記は似たような文章が続き、さらにその内容は酷くなっていった。香水の匂いをつけて、ほかの娘の存在を匂わせて、ソフィアを抱く。そうすれば、彼女は悲しそうな顔をするから、その時だけ愛を感じた。
歪んでいる。そうとしか言いきれない。
だけど僕は、二十五歳の僕に失望すると同時に、言いようのない恐れを感じた。
二十歳の日記に手を伸ばす。婚姻して二年が経過する。
1月3日
ソフィアが愛おしくて、同じくらい憎い。
きみも僕と同じくらい苦しめばいい。
ソフィアの肩を抱いたのはレンゼル大臣だった。あのハゲオヤジ、立場を理解していないのだろうか?していないんだろう。でなければ王太子妃に気安く触れることなどしないはずだ。
次の議会が、彼の最後の出席日となるだろう。
1月10日
今日は腹が立つ日だった。ヴィンセン伯爵とかいう好色野郎。ソフィアに話しかけるなんて随分調子に乗ってるじゃないか。しかもソフィアは話しかけられて頬を染めていた。彼女には王太子妃としての自覚がないのか?ああ、いらいらする。
1月16日
今日思ったが、ソフィアは紳士のような振る舞いに弱いのかもしれない。思えば僕はいつも軽い空気で彼女に話しかけていた。このままヴィンセン伯爵に取られのは許せない。
慣れないが、まずはソフィアのことをきみ、と呼ぶところから始めることにした。なれない言葉に歯が浮きそうだが、ソフィアは驚いた顔をして、頬を赤く染めた。こんなのがいいのか?よく分からない。僕は距離ができたようで余計苦しいだけだ。
5月6日
香水臭いサンスティ夫人だが、夫を早くに亡くしたからか妙にベタベタしてくる。僕は乱交など興味ないのだから諦めて欲しい。いや、あの手の女が望むのは僕の地位か。あんな下品な女に欲情するなど女神が夫の浮気を許すくらいありえない話だ。
5月10日
会議のおりに子供はまだかといちいち言われるのが鬱陶しい。世継ぎは必要だが、猫の子のようにあちこちで子供を作れば後の王位継承争いが激化するだけだろう。そもそも妻はソフィア以外不要だと言ってるのに、いつになったら理解するんだ?
5月21日
ソフィアがようやく僕を意識した。あのしつこいサンスティ夫人だが、今だけは彼女に感謝している。夜会で、彼女がべたべた距離を詰めるところをみたソフィアが眉を寄せた。
やはり何も言わなかったけど、不快だったということは、僕を少しは好きなのだろうか?僕が好きなのはきみだと告げても、ソフィアは笑うだけで言葉を返しはしない。いつになったらソフィアは僕に愛を返してくれるんだろう。
6月21日
ソフィアは僕が女性と気安く接する時に限って、眉を寄せる。何も言わないけど、明らかに嫌がってるんだろう。言えばいいのに。きみが一言言えば、僕は彼女たちとの触れ合いを一切無くすのに。ソフィアは何も言わない。
8月6日
ソフィアはやはり、泣くところが一番かわいい。泣きそうになる表情を見ると、彼女の愛を感じられる。
8月14日
紳士のように振る舞うと最初こそ顔を赤らめていたソフィアだけど、だんだん寂しげな笑みを浮かべるようになった。
今日の彼女はそれがより顕著だ。
きっと、デーテル夫人との話を聞いたんだろう。デーテル夫人とは確かに話をしたし、気安い空気を作って見せた。ソフィアが誤解しているのは知っている。だけど、誤解させておけばソフィアは僕への愛情を見せる。やめられない。
その日は閨事の日と決まってるわけではなかったのに、つい彼女を抱いてしまった。愛してるよ、と言えば彼女は笑うだけだ。
決して愛の言葉は返さない。腹が立つ。お前が憎い。その細い首をしめてしまいたいと思ってることは、きっとお前は知らないんだろうな。知らなくていい。
僕がきみを殺すか、きみが僕を殺すか。どちらでもきっといい結末になる。そう言ったら、今度こそソフィアは僕を見限るだろう。
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十八歳の日記から二十歳までの日記は似たような文章が続き、さらにその内容は酷くなっていった。香水の匂いをつけて、ほかの娘の存在を匂わせて、ソフィアを抱く。そうすれば、彼女は悲しそうな顔をするから、その時だけ愛を感じた。
歪んでいる。そうとしか言いきれない。
だけど僕は、二十五歳の僕に失望すると同時に、言いようのない恐れを感じた。
二十歳の日記に手を伸ばす。婚姻して二年が経過する。
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◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。