わだつみの宮にさよなら 小説版

高木解緒 (たかぎ ときお)

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「何が大丈夫なんだ?」
 帆織はつなる手を止めて問いかけた。大物釣りに使うケブラー紐三本と、こより一本を手のひらで丁寧に縒っていき、百メートルほどの細綱ほそづなを作るのである。こよりはトヨミが作った護符ごふをこれまた長々縒ったものだ。縒りあがった細綱には薄いにかわ含浸がんしんさせてよく乾かし、ごく小さな直垂しでを等間隔につけてからシラブカ釣りの道糸に使う。
 返事が無いことを不思議に思った帆織が顔を上げると、相手はこちらへ尻を向けた姿勢のまま上半身だけ後ろへひねり、やはり不思議そうな顔で、彼をきょとんと見つめ返していた。
「わたし、何も言ってないよ?」
「これで大丈夫かな、って今、言わなかったか」
「……ちょっと、そっちこそ大丈夫? 目を合わせたせいで、ノガレに何かもらったとか?」
「怖いこと言うなよ。そういう記録でもあるのか?」
「カメラ越しに目があったらどうなるか、なんて古文書にあるわけないじゃない」
 片方の眉を跳ね上げ、からかうように言ったトヨミだったが、すぐに畳の上を膝歩きでにじり寄ってきた。けがれの蓄積は白目に出るとかで、医者がやるように帆織の両の目元を無造作に引き下げ、顔を寄せて覗き込む。そう言えば最近、妙に肩が凝る気もする帆織は胡坐あぐらをかいたまま大人しく診察を受けた。真剣な眼差しに眼球内を照らされる気がする。
「だけど君も以前、子供が仕掛けたカメラを引き上げると言ってただろう。コハダもそうらしい。一昨日はフィンズが仕掛けた固定カメラを佃水軍が勝手に引き上げたとかで結構本気で喧嘩してた。仲裁が大変だったよ。コハダは無自覚にそういう気配へ敏感だ、って君の話だったしな。やっぱり、動画にも何かあるんじゃないのか?」
「そりゃ、通じる可能性は無いに超したことない。あいつらがどんな感覚を持ってるか、何ができて何ができないかなんて全然分かってないし、用心した方が良いに決まってる」
「動画の中からノガレが俺たちに何かできるっていうのか?」
「霊的に感づくくらいはできるんじゃないかな。こちらから見えてるってことは……」
「向こうからも見られてる、ってこと――?」
「サイトフィッシング、魚の見釣りなんか考えるとわかるでしょ。大事なのは向こうからもこちらが見えてると理解した上で、警戒心をかせてから餌なりルアーなりを食わせてやること。気づいている向こうに気づかないで下手に水際に近寄ると、魚は逃げちゃう」
「魚は逃げる。ノガレは――」
「付け込んでくる。だから気づけない人たちが一方的に気づかれる可能性だけがある動画撮影なんて、危なくってしょうがないと思う。コハダは、正しいことしてるよ」
「ダゴンネットのインスマフェスタはどうなんだ?」
「一応、チェックはしてる。顔にジャマーが掛かった私が映ったのも幾つかあったよ」
 ジャミング信号を受け取った機器では顔認識ソフトが映り込んだ人間の顔へモザイクやシール処理を施す。肖像権が厳しく騒がれるようになったここ数年で普及した技術だ。
「プロテクトを外してある危なそうなのには削除依頼も出すよ。でも帆織さんが言ってたみたいなのはまだ見つかんない。さっと見た限りノガレやシラブカが映ってる動画は私は見てない。ああ、でも、ちょっと気になることはあったかな。……今のところ子供たちで夜の動画を投稿してるのってフィンズ、イナコだけだよね?」
「そうだろうな。少なくともこの辺りでやってるのはフィンズだけらしい。最近じゃ水中ドローンまで投入して撮影実験を始めたって噂があるみたいだ。コハダが言ってた」
「スポンサーがついたかもしれない、と思うの」
「フィンズにか? どうして?」
「少し前からアップされる動画の画質がかなり上がったの。あの子たちのカメラって川中かわじゅうに幾つも仕掛けるじゃない。それにドローン。急に予算が跳ね上がった感じがしない?」
「貯金を崩したんじゃないか? あの子らだって漁でかなり稼いでいるはずだ」
「そうかも知れないけど、水軍に引き上げられる可能性があるのに、そんなお金の使い方するかな? 今までダース幾らで買って、自前で防水加工してた安物のCCDカメラが、急にEXハイビジョンのフル防水へ切り替わる理由って、他にあると思う?」
「なるほど……。だが仮に出資者ができたとして、フィンズに肩入れするのは誰だ?」
「そこまでは、わかんないよ。ただでさえ関わる人が増えすぎてるからね、今」
 肩をすくめるトヨミ。
 その背後では、それまで彼女が熱心に見ていた昼のワイドショーがやかましい。カイギュウ騒動は加熱こそすれ、収まる気配は一向に感じられなかった。それどころか、日に日に加熱しているようだ。突如として大川に現れた絶滅動物の大群は今や、世界からも注目されるビッグニュースとなった。イルカやアザラシが迷い込んだ時の比ではない。どのチャンネル、ネットサイトを見てもこの話題で持ちきりだ。
 最後のモルスカヤ・カロヴァ、すなはちステラーカイギュウを殺した男の名はイワンだそうである。姓には諸説ある。彼は、自分がある生物種の絶滅へ決定的に関与したことを自覚していたのだろうか。自覚していたとしたら、どのように自覚していたのだろうか。
 目撃談が無いわけではないが、その巨躯きょくや日がな一日沿岸で浮いている彼らの生態からして、種を維持できる頭数が生き残っているのであれば、もっと人々の目についただろう。
 それでステラーカイギュウは一七六八年以降、絶滅したことになっていたのだ。
 先日までは。
 両手の親指で帆織のまぶたを軽く押さえ、トヨミはもそもそと何やらつぶやいていたが、
「あ、ほら、帆織さん」
 促す声がしたかと思うと指が離れる。世界が明るくなり、冷水で目を洗った時のようなさっぱりした気分で、帆織は再びテレビの前に戻った少女の後姿と番組を交互に眺めた。
 画面には真奈が映し出されており、
「少しけて見えるぞ。照明が下手なんだ」
「おやおや、言いますねぇ」
 真奈は最初にその可能性を示した第一人者として、国際古生物学会と動物学会が共同で「大川に出現した巨大海獣」がステラーカイギュウかその亜種であることを正式に認めた件についてコメントしていた。
「しかし、連中はどこで生き残ってたんだろうな。大川に来たのは偶然だろうが……」
「さぁてね」
 気のない返事で画面を見つめるトヨミにつきあって、帆織もズームアップされた真奈の顔を眺める。こうして見ると中々にテレビえする彼女だ。ほんわかした見た目と知性のひらめく眼差しのギャップが見ている人間をきつけずにおかない。事実、彼女はここ数週間カイギュウ関連のコメンテーターとしてかなりの引っ張りだこだった。
 画面はVTRに切り替わり、「青の秩序ブルー・オーダー」日本支部の代表と名乗る男が熱心に、これからのカイギュウ保護の方向について語っている。さかんに「今度こそは」と叫び「贖罪しょくざいの機会」とまで言う様子は近き終末をく熱心な宣教師のようだ。それがまた画面の隅の小窓に映し出される真奈の理性を一層美しく、際立たせていた。
「人間ってホント、どうしようもないよね」
 ステラーカイギュウの発見と絶滅の解説が一段落し、話題が相変わらずの難民戦線拡大に変わったところでトヨミが鼻を鳴らした。テレビの電源を落とし、こちらへ向き直る。
 彼女はこの話題にかなり辟易へきえきしている様子だった。それはそうだろう。彼女としては、まずこうむっている実害がある。報道関係者やカイギュウ見物の野次馬でごった返しているのは昼も夜も同じだが、日没になると姿を消してしまうカイギュウを探し回る人々にヨドミばらいは幾度となく邪魔されていた。トヨミと帆織は照明やカメラのあみの目を縫うように、ひっそり動くしかない。水上警察に気を付けてさえいれば良かった以前と異なり、気ままに川の陰陽師をやれなくなったことそのものが彼女をかなり抑圧しているはずだった。
 その上、ステラーカイギュウの絶滅にまつわる人間の愚かしさ満載な物語は嫌でも毎日目につき、耳に入る。多感な川の少女がいい加減うんざりするのも当然だ。ならば情報を遮断しゃだんすればいい、と帆織は思わないでもないが、トヨミはこのニュースがどうしても気になるらしい。画面に映ると見ずにはいられないのだった。テレビにしても、物置きにあったものをカイギュウ関連の情報を得るため、わざわざ出してきたのだそうだ。
「時々な」
 麦茶へ一口つけ、帆織はグラスをちゃぶ台へ戻した。作業を再開しつつ、
「時々本当にどうしようもない、取り返しのつかないことをしてしまうんだよ。人間は」
「いっつもじゃない?」
 こちらを見据えた少女の目には純粋な義憤ぎふんがある。
「こういう話聞いてるとさ、川守かわもりなんて馬鹿らしくなる」
 凛とした眉をひくつかせ、トヨミは腕を組んだ。
「なにが〝今度こそ、大切にしなければなりませんね〟だっての。だったら最初から大切にしろよ、って話じゃん」
 見慣れた黒のダイブスキンでなく、がら入りの白いTシャツにデニムのショートパンツという出で立ちの彼女は、川で会う時よりもよほど年相応の少女に見える。
 彼女の家、彼女の部屋にいるために本人がリラックスできていることも、印象を変えて見せる大きな理由だろう。いい部屋だ。若い娘の部屋にしては地味なようでいて、トヨミの部屋と聞けばなるほど似合っていると思われる。
 畳敷きの六畳間でくつろぎ、開け放した縁側の向こう、打ち水に濡れた庭木などを眺めていると、遠い蝉の声と首を振る扇風機のモーター音の対比に自然と郷愁が湧き起こる。実際には断熱気層だんねつきそうで家全体を取り囲んでいるのだろうが、雰囲気だけで充分に涼しく感じられる。高層マンションがつくる峡谷きょうこくにぽつりと佇む古びた純和風建築は、落ち着いた空気に包みこまれていつ来ても居心地がい。
 シラブカ退治の準備は帆織が非番の日にこの家、この部屋で少しづつ、だが着実に進められてきた。
 最初手をまめだらけにし、肩こりにため息ばかりついていた帆織もだいぶ縄をう手が慣れてきた。ちゃぶ台の向こうで仕掛けを整えるトヨミからの小言もかなり減った。
「川守の仕事とカイギュウの絶滅は関係無いだろ?」
「そりゃ、直接には無いよ」
 むくれ顔を見せるトヨミ。でも、と珍しく言いつのり、
「人間の中に、こういうことをしでかす、オリのみなもとがあるってことでしょ? 他の生き物を絶滅に追いやるだけじゃなくて、戦争でも犯罪でも、なんでもそうっちゃそうだけど」
「それは今に分かったことじゃないだろ。人間の本性に黒い部分があることは君くらいの歳ならもうとっくに、客観的に理解しているんじゃないのか?」
 理解はね、とトヨミは唇を尖らせた。
「納得するかどうかは別よ。私は永遠にすっきりしないってことだもん。おばあちゃんやお母さんがやっていた頃もすっきりしなかったし、私の娘や孫やひ孫も、その先もその先も川のオリをはらいきることはできない。永遠に人間が垂れ流し続けるから」
「まあ、切りが無いのは……、確かだろうなぁ」
「そうでしょ?」
 本当にきれいになることなんて永遠に無いんだよ、と少女は放り投げるように言い、
「オリをはらうより人間をはらった方が楽なんじゃないか、って思う時があるもんね。汚水の元栓を閉めることもできないのに、いくらゴミを掬っても仕方ないじゃん。やってもやらなくても一緒かもしれない、くらいに考えちゃうのは普通じゃない?」
「オリ云々うんぬんは俺にはなんとも言えないが……そうだな」
 大川の巫女、漆黒の女騎士も思春期の葛藤を抱えているらしい。彼女の不安をなんとかなだめてやりたくて帆織はうなった。達観し、児童心理に通じている潤地うるちならば、こういう時上手に慰められるのかもしれない。だが、そんなスキルを自分に期待できるはずもなく、
「前適応、って考え方がある」
「ゼンテキオウ……?」
 キョトンとしたが帆織を見つめた。彼は頷き、
「生物の進化に関する考え方の一つなんだ。ある環境に適応していた生き物の体の仕組みや行動が全く別の環境にも偶然、適応できることがある。単に、意外と役立つってだけじゃなくて、むしろ前にいた環境ではそれなりの活躍、予備機能みたいな役割しかしていなかった器官が、違う環境では抜群に活躍できたりする。次の環境へより良く適応できる仕組みが環境変化の前に〝用意されていた〟ように見えるくらいだ。これが跳躍的ちょうやくてき進化の原動力になることもあって、前の段階で潜在的適応が生じていた、ってんで〝前適応〟だ」
「あのさ」
 トヨミが遠慮がちに言った。
「結局何が言いたいのか、全然見えないんだけど」
「つまり、やってもやらなくても同じ、なんてことは無いって話さ。例えば肺だ」
「はい?」
「そう。脊椎せきつい動物が陸上に進出するにあたってどう進化したのかは、知ってるかい?」
「魚が両生類に進化して、両生類から爬虫類に進化して、って話?」
「それだ。魚が四肢動物ししどうぶつに進化する時に獲得した体の仕組みで、何か思いつくものは?」
「そうだなぁ」
 トヨミは眉根を寄せ、
「手足でしょ。あと、首とか」
「さすがだな」
「何が?」
「手足は誰でも思いつくが、一瞬で首が出てくることはあまり無いんだ。魚を毎日見てるから、四肢動物と魚の構造の違いが頭に刷り込まれているんだろう」
 そうなんだ、と少女は少し嬉しそうにして、
「あ、あと、後出あとだしみたいだけど、肺」
「はい、残念」
「なんでよ!」
 トヨミがほほを膨らませる。
「誘導じゃん! なんかずるくない?」
「だが本当なんだ。両生類の体に肺がそなわっていなければ、彼らが陸へ進出できなかったことは確かだよ。でも最初の肺は、陸上で呼吸するための器官だったわけじゃない」
「じゃあ何のためだったわけ?」
「色々と説はある。三億数千万年前に水中の酸素が激減した時代があって、内臓の一部が酸素をたくわえこめるように変異していた種類が結果的に生存競争で有利だったとか、大量の酸素を蓄え、消費できる器官を持つ種は素早い動きができるので、魚食魚の増えた水中で有利に生き残ることができたとか。いずれにしても初期において肺は陸上での生活に適応した器官だったのではなく、むしろ水中での活動を有利にすることを可能とするえらの予備器官、水中生活により適応するための器官だったんだ」
「陸に上がる時になって、それがうまいこと、もっともっと需要に合ってたってこと?」
「その通り」
 帆織は頷いた。
「鰓は陸での呼吸に向いてないし、皮膚呼吸だけでもやはり陸上進出は難しかっただろうからね。水中で発達させた肺が結果的には水中生活以上に、陸で役に立つことになった。現代の地球では、肺で呼吸ができる魚、ハイギョは明らかに魚類の主役ではないだろう? ところが、陸上の脊椎動物で肺を持たないものはいない。こういう例は他にもあるんだ。厳密に言えば、手足も首も前適応の段階があったはずだな。魚類から両生類への大進化の過程で言えば、浅瀬で水草を掻き分けることに適応していた手足が大地を掴みやすくして陸上への適応を楽にしたのさ。他にもクジラの耳石じせきとか、鳥類の羽根とかが有名どころだ。羽根はそもそも体温保持や走行時の姿勢維持のために発達したんで、飛ぶためじゃなかった」
「つまり、帆織さんはこう言いたいわけだ」
 身を乗り出す帆織とは逆に、少し身を引いてトヨミは彼を見つめる。
「取り敢えずなんかしとけば次のステージですごく役に立つかもしれない、と。だから、無駄なことなんかないんだ、と。やらない方がまし、ってことは無いんだ、と」
「まあ、そうだ」
「それならつべこべ面倒臭いこと言わずに、そう言えばいいだけじゃないの。大体、私にとっての次のステージって何?」
「それは分からんが。だけど、誰にだって次のステージはあるはずだろ?」
「それは、……そうかもしれないけどさ」
「どうした?」
 不意に黙りこくったトヨミへ、帆織は呑気に問いかけた。
 だが、相手はすぐには答えない。ためらいがちに伏せられた彼女の目は悪戯っぽく光るようでいて、ひどく真面目にも見えた。ちゃぶ台の上にあったシャープペンシルを取り、手中でもてあそびながら、たまにこちらを見上げるようにする。
「……帆織さんは新しいステージに適応できてるよね。前適応できてるからそういうこと言えるんだよね。ウン、そう。帆織さんはこのステージに、ちゃんと適応してる」
「どうしたんだ、急に?」
 帆織はいぶかしまずにおれない。
「俺の、新しいステージ? 俺の……適応?」
「あなたの新しいステージは、もちろん、この川のこと」
 トヨミは指で自分の方を指し示しつつ、
「あなたの何が前適応だったかって? 前のステージからこちらのステージに持ち越したものが帆織さんにはあるでしょ。前のステージでは役に立つどころか、自分の首を絞めるようなの適応。それが新しいステージではちゃんと機能して、すごく役に立ってる」
 そう思わない? とトヨミ。
「何の話だ」
 今度は帆織が身を引いた。
「俺の何が、あらかじめ用意されてた適応だと?」
 以前居た場所での、負の適応――。不正に関するレポートの一件が彼の脳裏をよぎる。
 だがまさか、トヨミがそのことを知っているはずもない。いずれにせよその話題は帆織にとって唐突過ぎた。君は俺の解説を誤解しているんじゃないのか、と抗議にも似た問いを投げようとする彼をトヨミは押しとどめ、
「あなたの前適応は――正しい行い。正しい、心」
 どう? とでも言いたげな、獲物を捕らえた猫めいて得意気な表情。はにかむ調子で、疑問のイントネーションをわずかに含みながら、しかし確信に満ちた声音こわねだった。
 帆織は唸る。
 やはり彼女は知っているのだ。彼が以前の場所で適応しそこねたことを。
 トヨミの謎めいた雰囲気には調査事故以来、だいぶ慣れてきたつもりだったが、ここに来て一気にそれがぶり返した気分だった。彼女の印象は猫の瞳よりもよく変わる。大川の魔女、夜の守護者、くつろいだ女子中学生。どれが本当の彼女なのか。
 そして彼女は、
「何を知ってる?」
 縁側を背に沈黙を守るトヨミの瞳が逆光の中で奇妙に輝いている。それは恋の告白にも似た興奮の色と見え、帆織の背中に冷えた汗を一筋、垂らす。思い出した。そうだった。彼女はそう言う瞳を川でよく、帆織へ向けてきたのだ。何か大切なことを忘れている気にさせ、落ち着いていられない気にさせる視線を向けて来たのだった。
 これだ。
 彼女は何を想っているのか。何を確かめようとしているのか。何を、期待しているのか。
 その時だ。
「トヨちゃん、新しいお客さんよ」
 トヨミの大叔母で、養い親である佐代里さよりが庭へ姿を現した。誰か引き連れている。


     ※


 有孔虫ゆうこうちゅう、というのは炭酸カルシウムでできた外殻がいかくを持つアメーバめいた微小動物だ。
 このグループが地球に登場したのは五億年ほど前だが、現在でも様々な有孔虫を自然界で見ることができる。大きさは一ミリ程度、ほとんどが水中に住んでいる。顕微鏡で見るとごく小さな貝のようにも見えるが、外殻形状のバリエーションははるかに多彩だ。種ごとに様々な形を持っている。螺旋らせん型、扇型、花形等々などなど、有名なのは南国土産みやげの星砂だろう。あれは中身が死んで抜け落ちた有孔虫の外殻だけが、海岸に延々と堆積したものなのだ。
 各種に固有な形状の変遷へんせんが年代ごと、生息環境ごとに豊かであり、かつ極微ごくびであるため大型動物の化石や遺骸などより損傷しづらく、自然界で保存されやすいという学術的有用性がこの外殻にはある。
 例えば古環境こかんきょう変遷へんせん辿たどる上で、地中に発見された有孔虫遺骸いがいを同定することで地質年代を推定したり、堆積環境がどのようなものであったかを知ることができる。また遺骸を構成する炭酸カルシウムの炭素の同位体を分析することで、当時の気象や海洋の様相を推定する手がかりの一つとすることもできるのである。
 そして夏休み前の川辺で帆織が気まぐれにそんな話をしてやったところ、マルタの今年の自由研究が速攻で決まったのだった。大川に生息する現生有孔虫の外殻標本コレクションだ。
「近所の海や多摩川、江戸川なんかの他の場所の標本と比較して、今の大川がどこと似ているか調べる、ってのはどうだ? すごい自由研究になるぞ?」
「そういう、めんどくせえ展開は無し。集めるだけ。らくに済ませちまうぜ!」
 マルタの能天気な笑顔を見ながら、帆織は笑いをかみ殺していた。相手は微小生物なのだから、顕微鏡を使って遺骸を拾い集めるだけでも相当に根気のいる作業になのだ。
「さてさて、あんたにできるでしょうかねぇ」
 と、さすがにコハダは鋭かったが、
「お前の顕微鏡借りれば楽勝よ!」
 マルタは気焔きえんを上げたものだ。コハダと帆織は互いに目配せし、肩をすくめあった。
 ところが意外にも、マルタには極微世界の鑑定が性に合っていたらしい。夏休み前から大川でサンプルを集めてはコハダの家へせっせと通いつめ、顕微鏡と部屋の主に、
「もううんざり!」
 と音をあげさせるくらい集中した。せっかくの夏休み、しかもカイギュウ騒動が絡んで今までにない稼ぎ時であるにも関わらず、恋人が自分ではなく顕微鏡に会いに家を訪れ、微生物の殻にばかりこだわっていることへ憤懣ふんまんやるかたないといった様子のコハダだった。
 だがそれでも水軍の漁をひきいた帰りには、その日現場へ出てこなかった副官のために、
「ねぇ保安官、かたまりってさ、有孔虫ついてるかな?」
 などとささやかな御土産を用意して帰ってやるところは、やはり中々に仲が良い。
「あいつにあんな真面目とこがあるなんて、私、知らなかった」
 保安官ありがとう、と、コハダは素直に礼を言ったものだ。
「最近、青の秩序とかさ、うんざりな話が多いじゃない。でも、一生懸命なあいつ見てると、私も頑張んなきゃ、って思えるんだ」
 本人には言わないでよ、と釘を刺された帆織はにこやかに頷いたのだった。


「自由研究で少し気になることがあってさ、保安官の意見を聞きたくなったんだ」
 慌ててシラブカ仕掛けを仕舞い込んだ二人には気づかない様子で、マルタは縁側へ腰を下ろす。トヨミがとげのある調子で、
「なら、うちに来る必要はないよね。帆織さんの事務所にでも行けばよかったのよ」
「早く聞きたかったからな。保安官、今日は非番だって知ってたし」
「どうして俺がここにいると分かったんだ?」
「前にコハダが言ってたんだ。保安官、最近トヨミを気にかけてるって。非番にも会ってるっぽいって。トヨミも保安官になついてて、とか。だから、もしかしてって思ってな」
「なるほどな」
 帆織は頷き、トヨミは気のない顔で
「ふーん」
 とだけ言う。
「トヨミが皆と仲悪いのを何とかできないか、って保安官、色々工夫してるんだろ? 俺のクラスの担任にも見せてやりたいぜ。保安官、先生になりゃよかったんじゃねぇの?」
 都合が良いのか悪いのか分からない誤解、能天気な少年の言葉に帆織は苦笑いで答え、
「で、有孔虫の何について聞きたいんだ? 俺は専門外だから、同定どうていは有孔虫学会の分類データベース見ろって話はしたと思うんだが。まあ、それでも同定は難しいがな」 
「俺な、このためにわざわざ顕微鏡のアダプター買ったんだぜ。対物レンズにセットして立体データとして読み取るやつ。そのデータを保安官が教えてくれたデータベースと突き合わせてパソコンで同定してるから、それそのものはあんまり難しくないんだ」
「はまったらしいな」
 帆織は昔の自分を見る気持ちで微笑んだ。彼の場合は有孔虫でなく魚鱗ぎょりんだったが。
「でもさ、ひでぇんだ。コハダの奴ケチだから、割り勘にしないって言ったくせに、俺が置いて帰った時は勝手にアダプタ使ってやがる。顕微鏡の貸し賃よ、って、嫌んなるぜ」
「コハダは、今日はどうしてる?」
「相変わらずカイギュウと遊びまわってるよ。だけど、ここんとこ変な大人たちがうるさくてよ……」
「早く本題に入んなさいよ」
 トヨミがぶっきらぼうにせっついた。マルタは肩をすくめ、
「まあそれで、集めた有孔虫の同定は結構、うまくいってるってわけさ。だけど、どうにも分からないのが何種かいたんだ。データベースにいっくら照合しても空振りでさ、それで最初は、新種を見つけちまったんだと思った。ナントカ・カントカ・マルタデスみたいな学名をつけちゃおう、とか企んじゃってたわけさ。でも、段々おかしい気がしてきた」
「どうして?」
「空振りする中に何種か、明らかに誰でも見つけられるだろ、っていうような奴がいる。浮遊ふゆう性、水の中に浮いているやつで、川の水を一掬ひとすくいすれば必ず入っているような奴さ」
「なるほどな。今までに見つけられていないわけがない、と」
「そう。保安官も言ってたろ? 特に大川は浄化の関係で微生物から大型動物に至るまでかなり細かく調査されてる、ここの有孔虫をネタに卒論書いた奴は国海大生だけでも百を下らないって。それなのに今更俺が、こんなにあっさり新種を見つけられるわけがない」
「だがアマチュアが新種を発見するなんて、無脊椎動物好きの世界では珍しくないぞ」
「まあ待てって、保安官。俺はすでに、そういう謎の有孔虫の同定に成功したんだ」
 にやり、とマルタが笑う。ほう、と帆織も目で笑い返し、
「どうやって?」
「ヒントはステラーカイギュウ……、つまり、絶滅したはずの過去の動物さ」
 ハッとトヨミが体を強張らせたのに帆織は気づいた。心なしか横顔も青ざめて見える。
「……古生物学会か古環境学会のデータベースにでもあたってみたか?」
「あったりぃッ」
 呑気なマルタは頓狂とんきょうな声を出した。
「二つとも使ったよ。ドンピシャだった。第三紀や白亜紀、ジュラ紀、中には古生代の種と一致した奴もいた。つまり有孔虫の中に、先祖返りしてる奴が結構いるらしいんだ」
 意見を聞きたいってのはこれさ、保安官――、と彼はを置いて、
「もしかしたら、大川そのものが昔にかえってるんじゃないのか、と俺は思う。原因はわからないけどさ。例えばすげぇきれいになった水が大昔の水の成分に近づいて、そのせいで生き物のDNAっぽいものがそれぽくなっちゃったとか……言ってる意味わかる?」
「言わんとしてることはな」
「ステラーカイギュウにしても、大川に上ってきた原因についてテレビで推理をコメントしてる人がいっぱいいるだろ? 真奈姉ちゃんとかさ。俺は、どこかに隠れて生き残っていたカイギュウたちが、昔の水の臭いを嗅ぎつけてやってきたんじゃないかと思うんだ」
「なるほど」
 帆織は腕を組んだ。
「トヨミはどう思う?」
 彼が問いかけたのは少女がまばたき一つせず、息をすることすら忘れて見えるほど固まっていたからだ。それまでの調子に戻って欲しくて、声をかけずにはいられなかった。
「え、私?」
 ビクン、と跳ね上がるようにトヨミは顔を上げ、せわしなく帆織とマルタを見比べる。
「大川に昔の環境がよみがえってるかもしれないって話さ」
 言いながら帆織は、この話が自分とトヨミとの間で今まで一度もされてこなかったことに気が付いた。彼があの晩、調査隊の面々とともに見た大規模な幻影が話題に上ることはこれまでなかった。ノガレやシラブカといった見えやすいモノたちの話、それをどう退治するかの話ばかりしていたのだ。
 なぜだろう、と帆織は自問した。なぜ自分はあれの正体についてトヨミに尋ねることをしていないのだろうか。すぐにでも尋ねそうなものではないか。
 考えられる理由は一つだ。つまり、どこかでおおよその見当がついているから――。
「そうだな、トヨミの意見も聞きたい」
「私は知らない」
 マルタの言葉が終わるより早く、トヨミは言い切った。
「私はそのままの川しか知らない。あんたやコハダみたいに、川の一つ一つを細かく切り取って見てみようとなんか、これっぽっちも思わない。分析なんてくだらない」
「何言ってやがる」
 相手の硬い声音こわねに対し、マルタの声はあくまで気楽で、
「有孔虫の分類だのプランクトンの分類だの、むしろお前が好きだったことじゃねぇか」
「へえ、じゃあトヨミも顕微鏡持ってるのか」
 何気なく合いの手を入れた帆織だったが、物凄ものすごい目つきに見据みすえられて口をつぐんだ。
「捨てちゃったよ、そんなの」
「もったいねぇなあ、俺にくれりゃ良かったのに」
 ついに、その場の空気が微動だにしなくなった。縁側から吹き込む涼風も跳ね返されるようだった。トヨミのこめかみがヒクつくのを帆織は見た。彼女が口を開く直前、
「トヨちゃん、ちょっと」
 奥から佐代里の甲高かんだかく呼ぶ声がした。一瞬のを置いて、
「はぁい」
 素直な返事とは裏腹に、勢いつけて乱暴に立ち上がった少女が、ずかずかと自分の部屋を出ていく。帆織は軽い息をついた。怪訝けげんな顔で部屋の主を見送った少年に呆れる思いがする。さすがの大川も女の子の気持ちを読むすべまでは与えてくれないようだ。
 奥ではトヨミと佐代里が小声でめている。やがてわざとらしい、大きな溜息が聞こえ、
「マルタッ、水ようかんとゼリーとどっちがいいッ?」
 恫喝どうかつめいた問いかけがあった。
「水ようかん!」
 のんびり歓待かんたいを受けることに決めたらしいマルタが、のっそりと部屋へ上がってくる。また台所からの溜息が響いたが、彼には聞こえていないようだ。
「この本、まだあったのかよ!」
 すぐには腰を下ろさず、部屋の中を懐かしげに見まわしていたマルタだったが、やがて小さくうめくと部屋の片隅にあるトヨミの勉強机へ歩み寄った。机上に開かれていた一冊をそのまま取り上げ、ぼんやりとページを指でなぞる。紙の感触を楽しんでいるらしい。
 やがて見られていることに気が付き、少年は帆織へ恥ずかしげな微笑を見せた。表紙をこちらへ向けてくれる。子供向けだが随分しっかりした絶滅動物図鑑だ。カイギュウ騒ぎに関してトヨミが引っ張り出して来たものなのだろう。かなり古い。大切に扱われてきたらしいが表紙は色褪いろあせ、小口こぐちもだいぶ変色している。
「すごいんだぜ、これ。絶滅動物図鑑のくせに、科学者が考えた未来の動物までってる。進化しすぎた空飛ぶ魚とか、イカが新世界の人類になるッとか、大真面目おおまじめに書いてんだ」
 マルタは目を細めてイラストを眺めている。旧友に思わず出会ったかのような顔つきで、普段は川での娯楽と儲けと自他の第二次性徴が人生の全て、刹那的せつなてき生き方を堂々としすぎて憚らない彼がこんな表情もするのかと、帆織はなんとなく嬉しい気持ちがした。
 トヨミはまだ戻らない。追加の麦茶へ氷を放り込む音が台所で勢いよく響く。
「おっ……保安官、こいつ知ってる?」
 ページをったマルタが、今度は見開きを帆織へ見せた。一匹の巨大な魚がいっぱいにえがかれている。暗い水中で猛然と反転するシーンで、つるりと丸味を帯びて異様に大きな頭部、全てを噛み砕く獰猛どうもう大顎おおあごが恐ろしげだ。
 実際、現在の研究では絶滅種、現存種を通じて発見されている生物で最も噛む力が強かった可能性が指摘される肉食魚であり、
「ああ」
 当たり前のことを聞くなとばかり帆織は頷いた。
「ディニクチスだな。ラテン語で〝恐ろしい魚〟って意味だ」
「世代が分かるなァ」
 やれやれとマルタは笑い返し、
「ディニクチスは科名だぜ。今は〝ダンクルオステウス〟って呼び方がメジャーなんだ」
「それくらい知ってるさ。だが俺にはやっぱり、ディニクチスがしっくりくる」
「そうかよ」
 マルタは小憎らしい笑みを見せた後、再び優しげな表情に戻ってディニクチス、もといダンクルオステウスの再現イラストをながめ始めた。
 約三億六千万年前から四億一千万年前、古生代デボン紀の海を支配した巨大魚で、推定全長は約一〇メートル。日本国内では国立科学博物館で一般展示されている頭骨の化石を見ることができる。頭から胸びれの付け根付近までが甲冑かっちゅうのように分厚く発達した装甲板で覆われ、おそらく、強烈な頭突きの一撃で獲物を失神しっしんさせた後、強靭きょうじん大顎おおあごで切断していたのだろう。原始的な魚類なので歯はまだ発達していない代わり、噛みあわせの巧妙な顎骨がっこつが、プレートカッターのように上下から押し切るのだ。
 成長しきったこの魚に勝てる存在はデボンの海にいなかった。海で生まれ、進化した魚類の一部が川に入り、両生類へ進化する場所である沼沢しょうたくまでも開拓しなければならなかったのは、ダンクルオステウスのような肉食魚の捕食から逃れるためだった、という説すらある。最初の脊椎動物から人へと至る道のりは、ただひたすら、捕食から逃れる道のりだったとする説の一部だ。
 だがイラストを眺めるマルタの目に怖れの色などあるはずもない。ただただ、強さへの憧れや滅び去った海の王者へせる純朴なロマンが瞳の中にきらめいている。
「好きなのか?」
 帆織が訊ねると彼は素直に頷いた。
「昔はよくここで、三人一緒にこの本を見たんだ。生命誕生からこっちで、最強の海の王者は何かって話になるとコハダは必ずモササウルスをしてた。それかリオプレウロドンだ。でも俺とトヨミはいつでも断然、ダンクルオステウスさ。恐竜くずれが魚の王様に勝てるもんか、ってんだ」
「コハダとトヨミと、三人とも幼馴染みか」
「そうだよ、言わなかったっけ?」
「聞いてないな」
「ちょっと、何やってんの?」
 冷たい声が室内に響いた。二人が振り返るもなく、盆をちゃぶ台に手荒く置いたトヨミは足早にマルタへ歩み寄る。
 図鑑を奪い取り、
「勝手に触んないでよ」
 睨みつけ、最初に開かれていたページ、ステラーカイギュウの復元図が精密にえがかれたページへと戻した。ぎゅっと押して見開きが閉じないようにする。
 再びマルタを睨み、
「出てって」
 顎で縁側を示した。マルタは毒気どくけを抜かれた顔つきで突っ立っている。
「おいおい、幼馴染みなんだろ? 懐かしむくらい許してやれよ」
「そういうんじゃないから」
 取りなす帆織に対する態度まで、まるで変わっていた。
「マルタ、出てって」
「……わかったよ」
 マルタは訳が分からないという顔をしながらも大人しく指示に従う。庭へ降り、
「じゃあな、保安官。トヨミも、何で怒らせちまったのか分かんないけど、悪かった」
「いいから、早く」
 マルタは首を振り振り姿を消した。見送ったトヨミは縁側へ仁王立ちするようにしばしたたずんでいたが、やがて意を決したように一息ひといきつくと振り返り、
「帆織さんも、悪いけど今日はもういいや。帰ってもらっていいかな」
「いや、そりゃそうだが、だけどこの縄が……」
「残りは私がやっとくから、いいよ。また、手伝ってほしい時には連絡するね」
 微笑む彼女の目が笑っていなかった。
「あと、さっきはゴメン」
「――さっき?」
「誰だって、気安くれられたくない話題くらいあるよね」
「ああ、あれか。いや、触れられたくないっていうより、どうして君がそのことについて知ってたのかってことの方が気になるくらいさ。謝ってもらう必要はないよ」
 帆織は明るく首を振ったが、これでむしろ「マルタと何かあったのか?」といったたぐいの質問を封じられたなと感じた。実際トヨミはそれっきり帆織へ背を向け、部屋の片付けを始めたのだ。

 そしてその晩遅く、トヨミからメッセージが届いた。文面は意外に明るめで、

 toyomi:またシラブカ来てた。やっぱ、二人でいるのに慣れちゃうと、一人で戦うのが難しいね。帆織さんの力が必要。決戦の時が来たら必ず知らせるから、よろしくね!

 ho‐ri:お疲れさま。運転手くらい、いつでも引き受けるから、出る時は遠慮しないで言ってくれ。もちろん、その時が来たら言ってくれな。協力できることは何でもするぞ!

 そう返しておいたが、既読のアイコンは付いたものの、それっきり返事が無かった。
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