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「カジメ、離れるな」
少し歩調の乱れた少年へ帆織は静かに声をかける。相手はポケットから何か取り出そうとしていた動作を止め、小走りに駆けてきた。帆織が感じている奇妙な気配を、彼もやはり感じているのかもしれない。
温い空気に浸かった夜の街は不自然に静かだった。夕暮れ時にカラスの群れが突然騒ぎ出す、その直前のような雰囲気で、並び、聳え立つマンションに煌く数々の窓からずっと見張られている気さえしてくる。
追い付いて横並びに歩き出したカジメが、
「やっぱコハダの奴、俺らと組む気はねぇってことなんだろうな、イナコ」
「そうですね――」
上の空な少女はぼんやり答える。元より色白な顔はさらに白く、目も虚ろに見える。かなりショックを受けたらしい、と帆織は思った。事務所はもう閉まっているから詳しい事情を聴くのは明日に回して、保護したイナコとカジメを彼はとりあえず陸路で、それぞれの自宅まで送ってやることにしたのだった。
イナコは大川端に立つ指折りの高級マンション、カジメはその先の普通のマンションに住んでいる。先程まで一緒にいたトヨミは帆織がイナコに簡易聴取をしている僅かの間に、流下していたコハダのバヤックを回収、係留までしてくれたのだが、いつの間にか姿を消していた。カジメやイナコとの面倒を避けたのだろう。秋が深まってからの祓いや夜間パトロールについて相談しようと伝えてはあったので、あとで帆織が自分の端末を確認すれば、いつも一仕事終えてから入る挨拶メッセージが届いているはずだった。
「あいつ、意外と執念深い性質だからな」
イナコよりカジメの方が余程憤懣やるかたない様子で息巻いた。
「イナコに追い落とされたことをずっと恨んでやがったんだ。まあ、そりゃ分からんでもないけどな。だけどまた自分が有利になってんのに、造反の原因になったイナコや俺のグループを絶対許さないってのは少し、ケツの穴が狭すぎるぜ。今夜イナコを襲ったのは頭潰しってだけじゃねぇな、お前のビビった顔を見て少しでも溜飲を下げようって腹積もりだぜ、きっと。お前がちびってでもいりゃ、動画取られて末代まで強請られるところだ。それかその動画をネットへ卸して、溜飲をマイナスにする」
「まさか」
「サバサバして見える女ほど腹に色々抱えてるもんだろうが。だけどアイツは一度失敗したやり方へさらにぶっこむほどの阿保でもねぇ。今回は大方頭を潰してグダグダにしてから一人ずつ切り取っていくつもりだったんだろうけどよ、次は違う。全力で俺ら全体を潰しにくるぜ、きっと。どんな方法を使ってくるかは分からねえが使えるもんは全て使って、造反組の残党を一気に潰しに来るはずだ」
「――あのコハダがそんなことするか?」
「そりゃえこひいきだ、保安官」
少年は鼻で笑い、
「あいつもここの子供なんだぜ? それに、あいつが夜釣りに誘ってきたんだ。つまり今のあいつは夜の禁忌や協定を屁とも思っちゃいねぇ。それだけ俺らにブチ切れてる、ってことさ」
それが分かっていたからこそイナコは会見へ臨むにあたり、少し離れた陸上でGPSを追いかけたカジメに待機させて、相手が何か仕掛けて来たらその様子を撮影、あわよくば追加の交渉材料にする準備も万端整えていたのだ。
だが、珍しくカジメは殊勝な顔つきで、
「悪ィけど、ろくなもん撮れてねえよ」
急拵えで調達した機器の使い方が今ひとつ分からず、彼がおたついている間に全て終わってしまったのだという。
「でもよ、保安官も見たろ? ありゃ確かにコハダだったろ?」
「……ああ、それは間違いない」
帆織の視力は良いのだ。それにトヨミが「コハダ」と呟いたのも聞いている。
「あんな奴、保安官の権力でなんとかしてくれよ!」
「誰かをなんとかするような権力は俺にはないさ。明日コハダを訪ねて注意はしておくけどな。あんまりひどくなれば事務所から直接、学校に連絡がいくことにはなるだろうが……」
多くの狼藉が習慣化されている大川で〝あまりにひどい〟の線引きは中々難しそうだ、と帆織は思った。
それにカムバック運動の指導を通して区の教育委員会にも顔馴染みを増やし、女子中学生でありながら環境保護における地元名士の扱いを受けている今のコハダだ。区の小中学校が環境教育で彼女をほとんど必ず、理想の子供像として例示しているために、水軍に属さない子供でも彼女の顔や名を知らぬ者がない。勿論、そういう存在に反感を抱く児童、生徒も多い。だがそうした子供らは実際に彼女に会った時、かえって「おち」やすい。コハダの人的魅力やリーダーシップは嘘ではないからだ。むしろその快活さはどんな人をも惹きつける。反感は回心の土壌だ。だから結局、素直な子供たちも反発心旺盛な子供たちも彼女のカリスマを補強して周囲へアピールする宣伝材料となる。その結果、大人はより一層、コハダをモデルとして意識するようになる。
それ自体は悪い話ではないはずだ。佃水軍だけのものだったコハダの天性がいよいよ花開いたと考えられなくもない。
だがそんな状態では、今のコハダが夜の川に出ていたところで、何か運動に必要な正当な理由があったのだろう、と大人が勝手に結論付けてしまうかもしれない。他の行動にしても彼女の振る舞いがよほど、あまりにひどくならない限り適切な指導がなされない可能性も大きい。果たしてその〝よほど〟は、どれほどのものか。どれほどのものとして帆織自身が認識していくべきなのか。
戸惑いがこちらの顔に出ていたのか、目が合ったカジメはこれ見よがしに肩を竦めて見せた。
「まあ、いいって。取り敢えずは明日、頼んだぜ。汚い真似するなって、しっかりコハダに言ってやってくれよな」
「それは任せとけ。だがな、そういう汚い真似や裏工作ついては、君らだってあんまり人のこと言えんだろう?」
「そりゃ……」
「いい加減、海賊かマフィアごっこみたいな喧嘩はやめるんだな」
口ごもったカジメを見て帆織は微笑んだ。
「大体こんな素晴らしい環境で汚い大人のミニチュアみたいな、つまらん真似をするなよ。勿体ない。純粋に楽しむだけでいいじゃないか」
それから少しの間、三人とも黙って歩いたが、
「でも」
ふいにイナコが口を開く。
「練習だって必要じゃないですか?」
「――練習? なんの練習だ?」
「〝汚い〟大人社会で生きていくための練習です。ただ楽しんだってなんの勉強にもなりませんよね。いえ、ただ楽しめっていうのは、子供はただ楽しむ存在なんだって考えてる保安官のイメージ、あるいは願望の押し付けなんじゃないですか?」
むう、と帆織は唸った。イナコの口ぶりにいつもの相手を軽んずるような、皮肉めいた調子が無かったのだ。彼女は真剣だった。
「しかし……喧嘩やトラブルを見過ごすわけにもいかんだろ?」
「見過ごす必要は無いんです。それが社会的に見ておかしいことであれば保安官は厳しく対処しちゃっていいんです。それだって社会の在り方を教えることですよ」
でも、とイナコ。
「成長の在り方を決めつけちゃうのは危ないと思うんです。保安官なら現実に悪意が満ちてることも、充分ご存知ですよね。なんてったって、そういうのと戦った方なんですから。で、そういうのと戦う用意も子供にはやっぱり必要で――」
「ちょっと待て」
帆織は慌てて遮った。以前、トヨミとも似たようなやり取りがあったことを思い出している。
「なぜ知ってる? つまり……俺の過去をどうして君が知ってるんだ?」
だが動揺する帆織に対して、イナコとカジメはきょとんと顔を見合わせるばかりだ。
「みんな知ってる、と思いますけど?」
「――トヨミや、コハダもか?」
「だから、みんな、ですよ。地域の川の子供たち、みんな」
「保安官が来る前さ、噂だったんだぜ」
カジメが言う。
「今度来る指導員ってのは前にいたところで汚職を暴いて、それでここに飛ばされてくるんだって。だから――」
「だから子供たちはあなたを保安官と呼んでいるんですよ? 特別の敬意を表して」
帆織は脳天を打たれた思いがした。ようよう口を開き、
「誰が、そんな噂を……」
「俺はコハダから、かな」
「私は……知らない間に知ってました」
その時だ。携帯端末の着信音が鳴り響いた。
「あ、私にです」
イナコが歩きながら端末を取り出す。メッセージの着信らしい。じっと、やぶ睨みのような顔をしている彼女へ、
「どうした、親御さんか?」
川で危ない目にあったので送っていくと、保護者には帆織からも伝えてある。
だがイナコは無言でディスプレイを睨み付けていたかと思うと、ふいに高々と笑い始めた。底抜けに明るく、おおらかに、ゲラゲラ笑い続ける。今度は帆織とカジメが顔を見合わせる番だった。
「どうしたんだ、一体?」
「全部――」
イナコはまだ悪戯っぽい瞳をくるくる輝かせながら、さもおかしげに、
「全部、嘘だったんですよ。全部。全部、嘘」
「――全部……嘘?」
「コハダ先輩やトヨミ先輩にも、気を付けた方が良いですよ、って言ってあげてくださいね、保安官」
その時、ちょうど百メートルほど向こうにイナコのマンションのエントランスが見え始め、「では!」と走り去る少女の後姿を帆織は呆気に取られて見送った。
その晩、結局、トヨミからのメッセージは来なかった。
「カジメ、離れるな」
少し歩調の乱れた少年へ帆織は静かに声をかける。相手はポケットから何か取り出そうとしていた動作を止め、小走りに駆けてきた。帆織が感じている奇妙な気配を、彼もやはり感じているのかもしれない。
温い空気に浸かった夜の街は不自然に静かだった。夕暮れ時にカラスの群れが突然騒ぎ出す、その直前のような雰囲気で、並び、聳え立つマンションに煌く数々の窓からずっと見張られている気さえしてくる。
追い付いて横並びに歩き出したカジメが、
「やっぱコハダの奴、俺らと組む気はねぇってことなんだろうな、イナコ」
「そうですね――」
上の空な少女はぼんやり答える。元より色白な顔はさらに白く、目も虚ろに見える。かなりショックを受けたらしい、と帆織は思った。事務所はもう閉まっているから詳しい事情を聴くのは明日に回して、保護したイナコとカジメを彼はとりあえず陸路で、それぞれの自宅まで送ってやることにしたのだった。
イナコは大川端に立つ指折りの高級マンション、カジメはその先の普通のマンションに住んでいる。先程まで一緒にいたトヨミは帆織がイナコに簡易聴取をしている僅かの間に、流下していたコハダのバヤックを回収、係留までしてくれたのだが、いつの間にか姿を消していた。カジメやイナコとの面倒を避けたのだろう。秋が深まってからの祓いや夜間パトロールについて相談しようと伝えてはあったので、あとで帆織が自分の端末を確認すれば、いつも一仕事終えてから入る挨拶メッセージが届いているはずだった。
「あいつ、意外と執念深い性質だからな」
イナコよりカジメの方が余程憤懣やるかたない様子で息巻いた。
「イナコに追い落とされたことをずっと恨んでやがったんだ。まあ、そりゃ分からんでもないけどな。だけどまた自分が有利になってんのに、造反の原因になったイナコや俺のグループを絶対許さないってのは少し、ケツの穴が狭すぎるぜ。今夜イナコを襲ったのは頭潰しってだけじゃねぇな、お前のビビった顔を見て少しでも溜飲を下げようって腹積もりだぜ、きっと。お前がちびってでもいりゃ、動画取られて末代まで強請られるところだ。それかその動画をネットへ卸して、溜飲をマイナスにする」
「まさか」
「サバサバして見える女ほど腹に色々抱えてるもんだろうが。だけどアイツは一度失敗したやり方へさらにぶっこむほどの阿保でもねぇ。今回は大方頭を潰してグダグダにしてから一人ずつ切り取っていくつもりだったんだろうけどよ、次は違う。全力で俺ら全体を潰しにくるぜ、きっと。どんな方法を使ってくるかは分からねえが使えるもんは全て使って、造反組の残党を一気に潰しに来るはずだ」
「――あのコハダがそんなことするか?」
「そりゃえこひいきだ、保安官」
少年は鼻で笑い、
「あいつもここの子供なんだぜ? それに、あいつが夜釣りに誘ってきたんだ。つまり今のあいつは夜の禁忌や協定を屁とも思っちゃいねぇ。それだけ俺らにブチ切れてる、ってことさ」
それが分かっていたからこそイナコは会見へ臨むにあたり、少し離れた陸上でGPSを追いかけたカジメに待機させて、相手が何か仕掛けて来たらその様子を撮影、あわよくば追加の交渉材料にする準備も万端整えていたのだ。
だが、珍しくカジメは殊勝な顔つきで、
「悪ィけど、ろくなもん撮れてねえよ」
急拵えで調達した機器の使い方が今ひとつ分からず、彼がおたついている間に全て終わってしまったのだという。
「でもよ、保安官も見たろ? ありゃ確かにコハダだったろ?」
「……ああ、それは間違いない」
帆織の視力は良いのだ。それにトヨミが「コハダ」と呟いたのも聞いている。
「あんな奴、保安官の権力でなんとかしてくれよ!」
「誰かをなんとかするような権力は俺にはないさ。明日コハダを訪ねて注意はしておくけどな。あんまりひどくなれば事務所から直接、学校に連絡がいくことにはなるだろうが……」
多くの狼藉が習慣化されている大川で〝あまりにひどい〟の線引きは中々難しそうだ、と帆織は思った。
それにカムバック運動の指導を通して区の教育委員会にも顔馴染みを増やし、女子中学生でありながら環境保護における地元名士の扱いを受けている今のコハダだ。区の小中学校が環境教育で彼女をほとんど必ず、理想の子供像として例示しているために、水軍に属さない子供でも彼女の顔や名を知らぬ者がない。勿論、そういう存在に反感を抱く児童、生徒も多い。だがそうした子供らは実際に彼女に会った時、かえって「おち」やすい。コハダの人的魅力やリーダーシップは嘘ではないからだ。むしろその快活さはどんな人をも惹きつける。反感は回心の土壌だ。だから結局、素直な子供たちも反発心旺盛な子供たちも彼女のカリスマを補強して周囲へアピールする宣伝材料となる。その結果、大人はより一層、コハダをモデルとして意識するようになる。
それ自体は悪い話ではないはずだ。佃水軍だけのものだったコハダの天性がいよいよ花開いたと考えられなくもない。
だがそんな状態では、今のコハダが夜の川に出ていたところで、何か運動に必要な正当な理由があったのだろう、と大人が勝手に結論付けてしまうかもしれない。他の行動にしても彼女の振る舞いがよほど、あまりにひどくならない限り適切な指導がなされない可能性も大きい。果たしてその〝よほど〟は、どれほどのものか。どれほどのものとして帆織自身が認識していくべきなのか。
戸惑いがこちらの顔に出ていたのか、目が合ったカジメはこれ見よがしに肩を竦めて見せた。
「まあ、いいって。取り敢えずは明日、頼んだぜ。汚い真似するなって、しっかりコハダに言ってやってくれよな」
「それは任せとけ。だがな、そういう汚い真似や裏工作ついては、君らだってあんまり人のこと言えんだろう?」
「そりゃ……」
「いい加減、海賊かマフィアごっこみたいな喧嘩はやめるんだな」
口ごもったカジメを見て帆織は微笑んだ。
「大体こんな素晴らしい環境で汚い大人のミニチュアみたいな、つまらん真似をするなよ。勿体ない。純粋に楽しむだけでいいじゃないか」
それから少しの間、三人とも黙って歩いたが、
「でも」
ふいにイナコが口を開く。
「練習だって必要じゃないですか?」
「――練習? なんの練習だ?」
「〝汚い〟大人社会で生きていくための練習です。ただ楽しんだってなんの勉強にもなりませんよね。いえ、ただ楽しめっていうのは、子供はただ楽しむ存在なんだって考えてる保安官のイメージ、あるいは願望の押し付けなんじゃないですか?」
むう、と帆織は唸った。イナコの口ぶりにいつもの相手を軽んずるような、皮肉めいた調子が無かったのだ。彼女は真剣だった。
「しかし……喧嘩やトラブルを見過ごすわけにもいかんだろ?」
「見過ごす必要は無いんです。それが社会的に見ておかしいことであれば保安官は厳しく対処しちゃっていいんです。それだって社会の在り方を教えることですよ」
でも、とイナコ。
「成長の在り方を決めつけちゃうのは危ないと思うんです。保安官なら現実に悪意が満ちてることも、充分ご存知ですよね。なんてったって、そういうのと戦った方なんですから。で、そういうのと戦う用意も子供にはやっぱり必要で――」
「ちょっと待て」
帆織は慌てて遮った。以前、トヨミとも似たようなやり取りがあったことを思い出している。
「なぜ知ってる? つまり……俺の過去をどうして君が知ってるんだ?」
だが動揺する帆織に対して、イナコとカジメはきょとんと顔を見合わせるばかりだ。
「みんな知ってる、と思いますけど?」
「――トヨミや、コハダもか?」
「だから、みんな、ですよ。地域の川の子供たち、みんな」
「保安官が来る前さ、噂だったんだぜ」
カジメが言う。
「今度来る指導員ってのは前にいたところで汚職を暴いて、それでここに飛ばされてくるんだって。だから――」
「だから子供たちはあなたを保安官と呼んでいるんですよ? 特別の敬意を表して」
帆織は脳天を打たれた思いがした。ようよう口を開き、
「誰が、そんな噂を……」
「俺はコハダから、かな」
「私は……知らない間に知ってました」
その時だ。携帯端末の着信音が鳴り響いた。
「あ、私にです」
イナコが歩きながら端末を取り出す。メッセージの着信らしい。じっと、やぶ睨みのような顔をしている彼女へ、
「どうした、親御さんか?」
川で危ない目にあったので送っていくと、保護者には帆織からも伝えてある。
だがイナコは無言でディスプレイを睨み付けていたかと思うと、ふいに高々と笑い始めた。底抜けに明るく、おおらかに、ゲラゲラ笑い続ける。今度は帆織とカジメが顔を見合わせる番だった。
「どうしたんだ、一体?」
「全部――」
イナコはまだ悪戯っぽい瞳をくるくる輝かせながら、さもおかしげに、
「全部、嘘だったんですよ。全部。全部、嘘」
「――全部……嘘?」
「コハダ先輩やトヨミ先輩にも、気を付けた方が良いですよ、って言ってあげてくださいね、保安官」
その時、ちょうど百メートルほど向こうにイナコのマンションのエントランスが見え始め、「では!」と走り去る少女の後姿を帆織は呆気に取られて見送った。
その晩、結局、トヨミからのメッセージは来なかった。
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