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第一章 “最弱”のギルド 編
5 訓練だ
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「この作戦には、本来ならば4~5人のパーティーを組んで挑むのが理想だ。罠を仕掛ける人物もそうだが、魔物を引き付ける役も必要でな。使う魔法のレベルはそんなに高くないが、なんにしても、人が少なすぎる。だからな…」
だから、もっと人を集めたい。しかし、お生憎様、この辺を通る冒険者など数が知れている。それに、予算も少なく、たまたま通りかかって請け負ってくれると言ってくれたとしても、高ランクの冒険者に仕事は頼めない。だから…
「…しっ支部長、目が…怖いですよ……?」
「ま、まさか………。」
「お前らって………魔法、使えるよな?」
「「ひいいっ!!!」」
「ええ、今でも覚えています。支部長は、恐ろしいほど目が輝いていました。」(後のミヨ談)
◇
「そう、その調子だ。大きな“玉“を作ることをイメージしろ。」
「…………………よいしょっと、あっと……なかなか慣れませんね…。」
「おお、ホントだ。キレイな玉になってきた。」
どうやら二人とも、魔法適性はちゃんとあるようだ。俺が現役だったときは、職員採用の条件として、最低限一つの属性で中級魔法を扱えることが示されていた。しかし、ここ数十年の働き方改革やらなんやらで、その規制も随分と緩いものになった。みた感じ、二人ともまだ十代後半から二十代前半といった感じなので、魔法適性がもしかしたらないかもしれないと思っていたが…。ミヨの方は色々と伸び代があるようだが、スバルは、詠唱に少し手間取るが、走りながらでも、何発か弱い魔法が打てるようになった。これなら、誘き寄せの人員にピッタリだろう。
「二人とも、短い間によくここまで扱えるようになったなぁ。」
「短いって………………二日経ってますけどぉぉぉぉ!!!??」
スバルが、悲鳴のような雄叫びをあげる。うん。まだまだ元気なようだ。
「すいません、少し休んでもいいですか?」
「ダメだ……と言うと思うか?」
「ふふっ…。」
ミヨは、少しバテているようだ。スバルは、鑑定士であり、魔法を扱うことが多い。それに比べてミヨは受付を担当するのみであり、直接自らの手を下すことはないから、魔法を扱わなくて良かったのだろう。
「しかし支部長………スバルくんはともかく、私の力までもここまで引き出せるなんて………一体どんな経験をしてきたんですか…?」
「どんな経験といわれてもなぁ………。俺はただ単に、冒険者として色々な依頼を受けてきただけだぞ?」
それ以外に何とも言いようがないのだが…。
「ははっ…………規格外………ですねっ…。」
「むぅ………普通だと思うのだがな。」
そういえば、聞くことがあるのだった。
「ミヨ。ギルドの近くの村に、誰一人も居なかったのだが、皆どこへ行ったか知っているか?」
一つ間を置き、驚いた返事が返ってくる。
「村って………ああ、“オアシス・ユーグ”のことですか?」
「“オアシス・ユーグ”? ………ユーグ村という名前じゃなかったのか?」
「村……という名前ではありませんが、多分支部長が言っているところと、私が言いたいところは、同じ場所だと思いますが……。そういえば、支部長はここに来るのが初めてでしたね。」
正確に言えば二回目だが、当時はまだ砂漠化していなかったから、一応俺は“初めて”来たことになるのだろう。
「このユンクレアの周りを、“熱砂”……“熱死の砂漠”に囲まれていることは、支部長もご存じのことかと思います。数十年前は、この辺り一帯は砂漠どころか荒れ地すらない、緑豊かな土地だったらしいのですが…。」
「魔物が暴れはじめた途端、この辺一帯の川が枯れてしまい……このような状況になってしまったんです。」
練習休憩に入ったスバルが、そう付け加える。
「なるほどな。だから、ユーグ村に住んでいた人々は、それぞれ別のオアシスに移り住んだんだな……。」
だとすると、この作戦が成功すれば……。
「分かった、ありがとう。よし、今日の練習はここまでにしよう。」
「………よしっ!」
「? ……まだ最後の試験訓練が終わっていませんけど?」
静かに喜ぶミヨとは対照的に、スバルはまだまだ頑張れそうだ。だが、ここで無理をしてしまうと、作戦に支障が出てしまう。相手が、自然を変える位の魔力を持っている可能性があるならば、ここで無駄に魔力を垂れ流すのはよろしくないだろう。それに、ヤツもそろそろ到着するころだ。
「……いや、今日の練習はここまでだ。今日の夜を使って、作戦を詳しく説明したい。それに、お前らの魔力は充分高まった。」
もう実戦に出ても問題はないだろう。
「ということは………支部長?」
「ああ。作戦を始めよう。」
「………よしっ! ……絶対にやり遂げてやるわ!!」
「しかし、支部長。まだ冒険者の方が到着されていませんが?」
「おいおい。スバル。それにミヨ。あそこを見てみろ。」
「………………ん? あ…………あの人って…………!」
重装備を担いだ冒険者が歩いてくる影が、一人。
「…………よう、“聖なる魔術師”。元気してたか?」
「…………その呼ばれ方はあまり好きじゃありませんね。久しぶりですね、フーガ。」
「ご無沙汰だな、ロイン。」
「しっ支部長…………この人……いや……この方って…………!!」
「お、そうか。お前らは初めて会うのか。紹介しよう。俺が冒険者だったときの相方、ロイン・スヴェルトスだ。」
二人とも、口を開けたまま固まってしまった。
だから、もっと人を集めたい。しかし、お生憎様、この辺を通る冒険者など数が知れている。それに、予算も少なく、たまたま通りかかって請け負ってくれると言ってくれたとしても、高ランクの冒険者に仕事は頼めない。だから…
「…しっ支部長、目が…怖いですよ……?」
「ま、まさか………。」
「お前らって………魔法、使えるよな?」
「「ひいいっ!!!」」
「ええ、今でも覚えています。支部長は、恐ろしいほど目が輝いていました。」(後のミヨ談)
◇
「そう、その調子だ。大きな“玉“を作ることをイメージしろ。」
「…………………よいしょっと、あっと……なかなか慣れませんね…。」
「おお、ホントだ。キレイな玉になってきた。」
どうやら二人とも、魔法適性はちゃんとあるようだ。俺が現役だったときは、職員採用の条件として、最低限一つの属性で中級魔法を扱えることが示されていた。しかし、ここ数十年の働き方改革やらなんやらで、その規制も随分と緩いものになった。みた感じ、二人ともまだ十代後半から二十代前半といった感じなので、魔法適性がもしかしたらないかもしれないと思っていたが…。ミヨの方は色々と伸び代があるようだが、スバルは、詠唱に少し手間取るが、走りながらでも、何発か弱い魔法が打てるようになった。これなら、誘き寄せの人員にピッタリだろう。
「二人とも、短い間によくここまで扱えるようになったなぁ。」
「短いって………………二日経ってますけどぉぉぉぉ!!!??」
スバルが、悲鳴のような雄叫びをあげる。うん。まだまだ元気なようだ。
「すいません、少し休んでもいいですか?」
「ダメだ……と言うと思うか?」
「ふふっ…。」
ミヨは、少しバテているようだ。スバルは、鑑定士であり、魔法を扱うことが多い。それに比べてミヨは受付を担当するのみであり、直接自らの手を下すことはないから、魔法を扱わなくて良かったのだろう。
「しかし支部長………スバルくんはともかく、私の力までもここまで引き出せるなんて………一体どんな経験をしてきたんですか…?」
「どんな経験といわれてもなぁ………。俺はただ単に、冒険者として色々な依頼を受けてきただけだぞ?」
それ以外に何とも言いようがないのだが…。
「ははっ…………規格外………ですねっ…。」
「むぅ………普通だと思うのだがな。」
そういえば、聞くことがあるのだった。
「ミヨ。ギルドの近くの村に、誰一人も居なかったのだが、皆どこへ行ったか知っているか?」
一つ間を置き、驚いた返事が返ってくる。
「村って………ああ、“オアシス・ユーグ”のことですか?」
「“オアシス・ユーグ”? ………ユーグ村という名前じゃなかったのか?」
「村……という名前ではありませんが、多分支部長が言っているところと、私が言いたいところは、同じ場所だと思いますが……。そういえば、支部長はここに来るのが初めてでしたね。」
正確に言えば二回目だが、当時はまだ砂漠化していなかったから、一応俺は“初めて”来たことになるのだろう。
「このユンクレアの周りを、“熱砂”……“熱死の砂漠”に囲まれていることは、支部長もご存じのことかと思います。数十年前は、この辺り一帯は砂漠どころか荒れ地すらない、緑豊かな土地だったらしいのですが…。」
「魔物が暴れはじめた途端、この辺一帯の川が枯れてしまい……このような状況になってしまったんです。」
練習休憩に入ったスバルが、そう付け加える。
「なるほどな。だから、ユーグ村に住んでいた人々は、それぞれ別のオアシスに移り住んだんだな……。」
だとすると、この作戦が成功すれば……。
「分かった、ありがとう。よし、今日の練習はここまでにしよう。」
「………よしっ!」
「? ……まだ最後の試験訓練が終わっていませんけど?」
静かに喜ぶミヨとは対照的に、スバルはまだまだ頑張れそうだ。だが、ここで無理をしてしまうと、作戦に支障が出てしまう。相手が、自然を変える位の魔力を持っている可能性があるならば、ここで無駄に魔力を垂れ流すのはよろしくないだろう。それに、ヤツもそろそろ到着するころだ。
「……いや、今日の練習はここまでだ。今日の夜を使って、作戦を詳しく説明したい。それに、お前らの魔力は充分高まった。」
もう実戦に出ても問題はないだろう。
「ということは………支部長?」
「ああ。作戦を始めよう。」
「………よしっ! ……絶対にやり遂げてやるわ!!」
「しかし、支部長。まだ冒険者の方が到着されていませんが?」
「おいおい。スバル。それにミヨ。あそこを見てみろ。」
「………………ん? あ…………あの人って…………!」
重装備を担いだ冒険者が歩いてくる影が、一人。
「…………よう、“聖なる魔術師”。元気してたか?」
「…………その呼ばれ方はあまり好きじゃありませんね。久しぶりですね、フーガ。」
「ご無沙汰だな、ロイン。」
「しっ支部長…………この人……いや……この方って…………!!」
「お、そうか。お前らは初めて会うのか。紹介しよう。俺が冒険者だったときの相方、ロイン・スヴェルトスだ。」
二人とも、口を開けたまま固まってしまった。
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