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第三章 騎士学校、留学(?)編
第1話 流れる噂
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「ううっ…寒いなぁ………」
そうぶつぶつ呟きながら、僕は二重に着ている上着をぎゅっと掴む。
ワーズ大陸中央に位置するタールランド王国は、西にロウジ山脈がある影響で、季節風の影響をもろに受ける。ちょうど今の時期は、タールランドで秋に当たる。木々の葉は赤く色づき、紅葉の名所として知られる観光地、ルマータ山には、朝市が終わり、休みに来た商人や、地元の人々など、たくさんの人で賑わうのだ。というわけで、僕は例年のように、ジーク兄さん、マクドル兄さんと、ホスロを含めた大臣達で紅葉見物に来たのである。
◇
「ざわざわ……ねぇ、みてよ。あいつ噂の新国王じゃない?」
「ほんとだ。《無能な君主》だって噂で有名らしいね。」
「どうしてジーク様やマクドル様が就任しなかったのかしらね?」
「しっ……聞こえてるぞ、おい!」
「………おい、タイト。本当にこれで良かったのか?」
「まぁ、しょうがないよ。本当のことを公表するわけにはいかないしね。」
テロ組織、〈ムーン〉の拠点制圧から1ヶ月がたつ。僕に対する評判は、その時からずっと《無能な君主》だ。拠点制圧をしたのにも関わらず、なぜそんな扱いかって? “箝口令かんこうれい”を敷かなきゃ、僕は以前と評判は変わらなかったかもしれない。
なんで“箝口令かんこうれい”を敷いたかって?
…包み隠さず言うなれば、身内の恥をさらしたくなかったからだ。
まさか、あの世界的テロ組織の〈ムーン〉の指導者が、前国王のルーク・タールの兄、カルメン・タールだったなどと口が裂けても言えない。ましてや、彼は伝説の勇者の血を引き、かつて《大災厄》を止めた、勇者カルメンと同一人物だったなどと言えば、間違いなく、国民の国家への信頼は塵となるだろう。(もしかしたら、勇者カルメンが彼だったなどと信用する人は、そう多くないかもしれない。)
てなわけで、この度の〈ムーン〉の拠点制圧は、ズール帝国の外交官、サガミを中心とした帝国軍と、我がタールランド軍の協力の下行われ、僕たちタールランドの王族は、1ミリも関わってないということにした。でなければ、変な噂がたちかねないからね。
…と、踏んで“箝口令かんこうれい”を敷いたら、逆効果となってしまった。
今までしっかりと事実を国民に公表してきた国家が、今回の制圧について本当の事をしっかりと話さず有耶無耶うやむやにしてしまい、真実を知りたい国民は落胆。よって、本当の事を話そうとしない国王、つまり執政官の僕に、矛先が飛んできたという訳ですよ。ええ。
いつの間にか、僕たち王族の周りにいた人々は軽蔑の眼差しを僕らに向け、そのまま山から降りて帰ってしまった。そして、辺りには静けさが漂っているのみとなった。
「…み、民衆が帰られて静かになりましたなぁ。さ、さあ、宴をしましょう!」
僕の事をフォローしようと、ホスロがそう言ってくれたが、僕の心には、ずっしり重い石が乗っかったままだ。でも、この石の重さに巻けるようでは、君主など到底務まらない。これを乗り越えるのも、また大切だ。
「そうだね。兄さんたちも座って、紅葉見物しようよ。」
「お、おう。そうだな!」
「久しぶりですね、こうやってみんなで紅葉を囲んだのは…。」
兄さんたちも僕の意図を汲んでくれて、皆で座って、改めて紅葉見物をすることにした。
「真っ赤な紅葉か……。うん、綺麗だなぁ。」
来るべき冬に備え、その支度をする木々は、毎年よりも美しく感じられた。
「………あの方ですか、“勇者の血を引く者”は。」
「ええ、そうでしょうな。大陸史には刻まれておりませんが、その世代世代に必ず2人は“勇者”がいるそうですからな。」
「そんな彼が、己の力を高めるために、我が校に学びに来られるのですからね………ふふ、楽しみです。」
「「お待ちしてますよ、帝国騎士・魔法学校でね。」」
そうぶつぶつ呟きながら、僕は二重に着ている上着をぎゅっと掴む。
ワーズ大陸中央に位置するタールランド王国は、西にロウジ山脈がある影響で、季節風の影響をもろに受ける。ちょうど今の時期は、タールランドで秋に当たる。木々の葉は赤く色づき、紅葉の名所として知られる観光地、ルマータ山には、朝市が終わり、休みに来た商人や、地元の人々など、たくさんの人で賑わうのだ。というわけで、僕は例年のように、ジーク兄さん、マクドル兄さんと、ホスロを含めた大臣達で紅葉見物に来たのである。
◇
「ざわざわ……ねぇ、みてよ。あいつ噂の新国王じゃない?」
「ほんとだ。《無能な君主》だって噂で有名らしいね。」
「どうしてジーク様やマクドル様が就任しなかったのかしらね?」
「しっ……聞こえてるぞ、おい!」
「………おい、タイト。本当にこれで良かったのか?」
「まぁ、しょうがないよ。本当のことを公表するわけにはいかないしね。」
テロ組織、〈ムーン〉の拠点制圧から1ヶ月がたつ。僕に対する評判は、その時からずっと《無能な君主》だ。拠点制圧をしたのにも関わらず、なぜそんな扱いかって? “箝口令かんこうれい”を敷かなきゃ、僕は以前と評判は変わらなかったかもしれない。
なんで“箝口令かんこうれい”を敷いたかって?
…包み隠さず言うなれば、身内の恥をさらしたくなかったからだ。
まさか、あの世界的テロ組織の〈ムーン〉の指導者が、前国王のルーク・タールの兄、カルメン・タールだったなどと口が裂けても言えない。ましてや、彼は伝説の勇者の血を引き、かつて《大災厄》を止めた、勇者カルメンと同一人物だったなどと言えば、間違いなく、国民の国家への信頼は塵となるだろう。(もしかしたら、勇者カルメンが彼だったなどと信用する人は、そう多くないかもしれない。)
てなわけで、この度の〈ムーン〉の拠点制圧は、ズール帝国の外交官、サガミを中心とした帝国軍と、我がタールランド軍の協力の下行われ、僕たちタールランドの王族は、1ミリも関わってないということにした。でなければ、変な噂がたちかねないからね。
…と、踏んで“箝口令かんこうれい”を敷いたら、逆効果となってしまった。
今までしっかりと事実を国民に公表してきた国家が、今回の制圧について本当の事をしっかりと話さず有耶無耶うやむやにしてしまい、真実を知りたい国民は落胆。よって、本当の事を話そうとしない国王、つまり執政官の僕に、矛先が飛んできたという訳ですよ。ええ。
いつの間にか、僕たち王族の周りにいた人々は軽蔑の眼差しを僕らに向け、そのまま山から降りて帰ってしまった。そして、辺りには静けさが漂っているのみとなった。
「…み、民衆が帰られて静かになりましたなぁ。さ、さあ、宴をしましょう!」
僕の事をフォローしようと、ホスロがそう言ってくれたが、僕の心には、ずっしり重い石が乗っかったままだ。でも、この石の重さに巻けるようでは、君主など到底務まらない。これを乗り越えるのも、また大切だ。
「そうだね。兄さんたちも座って、紅葉見物しようよ。」
「お、おう。そうだな!」
「久しぶりですね、こうやってみんなで紅葉を囲んだのは…。」
兄さんたちも僕の意図を汲んでくれて、皆で座って、改めて紅葉見物をすることにした。
「真っ赤な紅葉か……。うん、綺麗だなぁ。」
来るべき冬に備え、その支度をする木々は、毎年よりも美しく感じられた。
「………あの方ですか、“勇者の血を引く者”は。」
「ええ、そうでしょうな。大陸史には刻まれておりませんが、その世代世代に必ず2人は“勇者”がいるそうですからな。」
「そんな彼が、己の力を高めるために、我が校に学びに来られるのですからね………ふふ、楽しみです。」
「「お待ちしてますよ、帝国騎士・魔法学校でね。」」
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