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人間編
33:調査報告(2)
ロレンサが侍女殺害の件を、仮に誰かから教えられた可能性があるとすれば、犯人側だ。
「当初はロレンサ様が侍女殺害を知っていたとしても、それだけでは脅しの言葉として成立しないと思っていたのですが、シュザンヌ様もご存じという前提があるのでしたら、脅迫として効果がありますね」
「そうだな。真相を知るものからすれば、シュザンヌの口裏合わせは、彼女もまた知っているという推測に繋がる。ロレンサも殺害の件を知っているならば、シュザンヌへの脅しとして有効だ」
「ですが、そもそも決定的な言葉ではありませんので、ロレンサ様が本当に真相をご存知なのか、確信が持てません」
後宮から逃げ出した侍女のようになる、では、後宮に嫌気がさすように嫌がらせをする、という意味ともとれる。無事に後宮から出ることに専念しろ、というのも、将来的に妃になるつもりのロレンサの不興を買わないよう大人しくしろ、という意味かもしれない。
「推測を積み上げるしかない。しかし、生粋の貴族令嬢のロレンサが、侍女を手ずから殺すとは思えんな」
侍女の傷からして、殺害の手腕は手練れのものだ。
「ロレンサ様は、ご実家から侍女をお連れになっておられます」
「身元の証明ができれば可能だったが、公爵家の権力で偽造している可能性もなくはないか。だがロレンサが侍女を殺す理由がわからん」
殺された侍女について、つい昨日また招待を受けたイルダのお茶会で、それとなく聞いてみた。失踪騒ぎを起こした扱いになっているため、ただの侍女とはいえ噂を集めることができた。
それによると、特に悪い噂もない、仕事熱心で真面目な娘だったそうだ。後宮に嫌気がさしていたとは同僚も知らなかったが、主のシュザンヌには時折悩みを打ち明けていたという。
口裏合わせのことも加味すれば、悩みの相談はシュザンヌがあったていにしているのだろう。
「殺害された侍女が、恨みを買っているという話はありませんでした」
あえて言うなら、ロレンサはシュザンヌを嫌っている。だから、根拠としては弱いが、シュザンヌへの見せしめとして殺害したかもしれない。
「ならばやはり本来の狙いは陛下で、侍女はついでか偶然か……。他にロレンサの疑惑を強めるものはあるか?」
「はい。ロレンサ様は密かに外部と手紙をやり取りされているとのことです」
密かに、という点に、シヒスムンドは少し眉を上げた。
「噂では、芸術家との交流会で出会った詩人と文通をなさっていると聞きました」
愛妾たちは、ロレンサと詩人が恋愛関係にあると噂していた。
「後宮と外部との手紙は全て検閲されているが、密かにということは、正規の手順ではないのか?」
「そこまではわかりかねます。ただ私は、妃になる強い意志をお持ちのロレンサ様が、文通だけとはいえ、男性と、その……、親しくなろうとされるのかが不思議で」
もしかすると、詩人との文通と偽って、中身は別のことなのではないか。
「いいだろう。それはこちらで調べる」
メルセデスの疑念を汲み取り、シヒスムンドは外からの調査を約束した。
「当初はロレンサ様が侍女殺害を知っていたとしても、それだけでは脅しの言葉として成立しないと思っていたのですが、シュザンヌ様もご存じという前提があるのでしたら、脅迫として効果がありますね」
「そうだな。真相を知るものからすれば、シュザンヌの口裏合わせは、彼女もまた知っているという推測に繋がる。ロレンサも殺害の件を知っているならば、シュザンヌへの脅しとして有効だ」
「ですが、そもそも決定的な言葉ではありませんので、ロレンサ様が本当に真相をご存知なのか、確信が持てません」
後宮から逃げ出した侍女のようになる、では、後宮に嫌気がさすように嫌がらせをする、という意味ともとれる。無事に後宮から出ることに専念しろ、というのも、将来的に妃になるつもりのロレンサの不興を買わないよう大人しくしろ、という意味かもしれない。
「推測を積み上げるしかない。しかし、生粋の貴族令嬢のロレンサが、侍女を手ずから殺すとは思えんな」
侍女の傷からして、殺害の手腕は手練れのものだ。
「ロレンサ様は、ご実家から侍女をお連れになっておられます」
「身元の証明ができれば可能だったが、公爵家の権力で偽造している可能性もなくはないか。だがロレンサが侍女を殺す理由がわからん」
殺された侍女について、つい昨日また招待を受けたイルダのお茶会で、それとなく聞いてみた。失踪騒ぎを起こした扱いになっているため、ただの侍女とはいえ噂を集めることができた。
それによると、特に悪い噂もない、仕事熱心で真面目な娘だったそうだ。後宮に嫌気がさしていたとは同僚も知らなかったが、主のシュザンヌには時折悩みを打ち明けていたという。
口裏合わせのことも加味すれば、悩みの相談はシュザンヌがあったていにしているのだろう。
「殺害された侍女が、恨みを買っているという話はありませんでした」
あえて言うなら、ロレンサはシュザンヌを嫌っている。だから、根拠としては弱いが、シュザンヌへの見せしめとして殺害したかもしれない。
「ならばやはり本来の狙いは陛下で、侍女はついでか偶然か……。他にロレンサの疑惑を強めるものはあるか?」
「はい。ロレンサ様は密かに外部と手紙をやり取りされているとのことです」
密かに、という点に、シヒスムンドは少し眉を上げた。
「噂では、芸術家との交流会で出会った詩人と文通をなさっていると聞きました」
愛妾たちは、ロレンサと詩人が恋愛関係にあると噂していた。
「後宮と外部との手紙は全て検閲されているが、密かにということは、正規の手順ではないのか?」
「そこまではわかりかねます。ただ私は、妃になる強い意志をお持ちのロレンサ様が、文通だけとはいえ、男性と、その……、親しくなろうとされるのかが不思議で」
もしかすると、詩人との文通と偽って、中身は別のことなのではないか。
「いいだろう。それはこちらで調べる」
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