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前編
5.再会-3
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グンナルが語ったのは、卒業後のアルヴィドの身上だった。
エーベルゴート家の直系嫡男として十分な素質を持っていたアルヴィドは、ゆくゆくは官僚となり、いずれ政府の要職へ就く輝かしい将来が期待されていた。
しかしイリスの復讐により凄惨な記憶を植え付けられたアルヴィドは、様子がおかしくなった。エーベルゴートの家長は彼を後継ぎとして不適格と判断し、排除を決めた。ほぼ無関係といえるほど遠い傍流のノイマン家へ養子に出し、名実ともにエーベルゴート家から追放したのだ。
ノイマン家は、戸籍は存在すれど家人は消息不明で家屋もない。加えて、家門の後ろ盾を前提にしていた卒業後の働き口はなくなった。全てを失ったアルヴィドは、一人で生きていくことを余儀なくされた。
名家の嫡男という自尊心が邪魔をしたのか、アルヴィドはどの職も長続きしない。実家から渡された僅かな手切れ金を切り崩しながら、職のない期間をやり過ごしていた。
そんな中もたらされた、非常勤講師の仕事。薄給だが、金に困っている状況においては十分な職だっただろう。
イリスは、アルヴィドとエーベルゴートに関する情報を全て断ってきた。またエーベルゴート家も、余計な噂を招きかねない一連の動きが、人々の口に上らないよう対処した。その結果、イリスは彼の近況をグンナルに聞かされて初めて知った。
優等生だったアルヴィドしか知らない人の目には、随分気の毒な状況に映るだろう。しかし、イリスからすれば自業自得だ。
凌辱されたイリスの方は、過去の記憶を抑え込みながら働いている。対して、加害者である彼の方が、家を追い出されたぐらいでまともに働けなくなるなど、甘えにしか思えない。
第一、自分が犯した相手の職場で働こうなどと無神経にも程がある。記憶を植え付けられたことはともかく、イリスにしたこと自体は軽視している証左だ。
「わかりました。その経歴なら、ここでの仕事もそう長くは続かないでしょう……」
アルヴィドの行動に、セムラクを使っていなければ怒りが湧いただろうが、イリスの復讐は八年前に終わった。
その時々の感情にのまれ、追加の復讐を自分に許してしまえば、最終的に彼を殺すまで納得できなくなる。イリスはそう理解しているからこそ、彼の神経を逆なでする行為に何もしない。イリスが今でも過去の記憶に苛まれているとしても、アルヴィドへの対応はあれで終わったのだ。
彼が一年を待たずに自ら仕事を辞めることを願って、イリスは引き下がった。
「これからどうするつもりだ」
「……逆恨みを受けている可能性もありますから、最低限自衛はします。ですが、これまで通り、誰にも知られないようにします。先生も、私たちが同時期にこの学校に在籍していたことは話さないでください」
再会したとき、イリスは初対面と思ったが、アルヴィドの方は様子がおかしかった。目の前の相手の名を聞いて、かつて自分が犯した女だと気付いたのだろう。
その後、職員室で彼がエーベルゴートだと露見した際、アルヴィドはイリスを一瞥した。イリスに合わせて初対面のふりをした理由に、後ろめたいものがあるのかもしれない。
イリスは用心しつつ、彼の出方をうかがうことに決めた。
エーベルゴート家の直系嫡男として十分な素質を持っていたアルヴィドは、ゆくゆくは官僚となり、いずれ政府の要職へ就く輝かしい将来が期待されていた。
しかしイリスの復讐により凄惨な記憶を植え付けられたアルヴィドは、様子がおかしくなった。エーベルゴートの家長は彼を後継ぎとして不適格と判断し、排除を決めた。ほぼ無関係といえるほど遠い傍流のノイマン家へ養子に出し、名実ともにエーベルゴート家から追放したのだ。
ノイマン家は、戸籍は存在すれど家人は消息不明で家屋もない。加えて、家門の後ろ盾を前提にしていた卒業後の働き口はなくなった。全てを失ったアルヴィドは、一人で生きていくことを余儀なくされた。
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そんな中もたらされた、非常勤講師の仕事。薄給だが、金に困っている状況においては十分な職だっただろう。
イリスは、アルヴィドとエーベルゴートに関する情報を全て断ってきた。またエーベルゴート家も、余計な噂を招きかねない一連の動きが、人々の口に上らないよう対処した。その結果、イリスは彼の近況をグンナルに聞かされて初めて知った。
優等生だったアルヴィドしか知らない人の目には、随分気の毒な状況に映るだろう。しかし、イリスからすれば自業自得だ。
凌辱されたイリスの方は、過去の記憶を抑え込みながら働いている。対して、加害者である彼の方が、家を追い出されたぐらいでまともに働けなくなるなど、甘えにしか思えない。
第一、自分が犯した相手の職場で働こうなどと無神経にも程がある。記憶を植え付けられたことはともかく、イリスにしたこと自体は軽視している証左だ。
「わかりました。その経歴なら、ここでの仕事もそう長くは続かないでしょう……」
アルヴィドの行動に、セムラクを使っていなければ怒りが湧いただろうが、イリスの復讐は八年前に終わった。
その時々の感情にのまれ、追加の復讐を自分に許してしまえば、最終的に彼を殺すまで納得できなくなる。イリスはそう理解しているからこそ、彼の神経を逆なでする行為に何もしない。イリスが今でも過去の記憶に苛まれているとしても、アルヴィドへの対応はあれで終わったのだ。
彼が一年を待たずに自ら仕事を辞めることを願って、イリスは引き下がった。
「これからどうするつもりだ」
「……逆恨みを受けている可能性もありますから、最低限自衛はします。ですが、これまで通り、誰にも知られないようにします。先生も、私たちが同時期にこの学校に在籍していたことは話さないでください」
再会したとき、イリスは初対面と思ったが、アルヴィドの方は様子がおかしかった。目の前の相手の名を聞いて、かつて自分が犯した女だと気付いたのだろう。
その後、職員室で彼がエーベルゴートだと露見した際、アルヴィドはイリスを一瞥した。イリスに合わせて初対面のふりをした理由に、後ろめたいものがあるのかもしれない。
イリスは用心しつつ、彼の出方をうかがうことに決めた。
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