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25.届く言葉-5
しおりを挟む「王妃様……。申し訳ございません、このような――」
「謝罪は不要です。むしろ、そうしなくてはならないのは、私の方です」
頭を下げようとしたヴィオラは、オフェリアの初めて見せる苦しげな表情に呆気にとられた。決して冷たくはないが、苦悩を曝け出す人でもない。
「己の浅ましい欲心のために揺らぎ、あなたをすぐに助けようとはしませんでした。公爵からの嘆願書を受け取って、ようやく……」
言葉を切ったオフェリアの眦に、微かに光るものが滲む。隣に立っていたグスタフが不意に身じろぎすると、オフェリアは彼を振り仰いだ。そしてお互いに頷きあう。
ヴィオラへ向き直ったオフェリアは、もう落ち着いていた。
「私は、こうしてあなたに会うことはできても、逃がすことはできません。私の手勢は護衛騎士がグスタフともう一名のみ。温室の入り口の近衛兵はあなたの窮状も知るため協力を得られましたが、ここから城門の外まで連れ出すにはあまりに力不足です」
「陛下は、私が逃げれば自ら命を絶つと仰っていました……」
やはり王妃でも、ヴィオラを逃がすことはできないようだ。それに、逃げればイザークが自害する可能性は引き続き残る。
しかし、オフェリアは何もできないままヴィオラへ会いに来たわけではなかった。
「あなたを逃がすことはできずとも、あなたが陛下に立ち向かうための情報を与えます」
「立ち向かう……。私がですか」
さすがにイザークを物理的に制圧する力はない。かといって、説得に応じてくれる様子はない。これまで何度も失敗してきた。
「外で、陛下とあなたがどのように言われているか、ご存じですか」
「それは……、年初の相手を務めながら、不義の関係にあると……」
晩餐の時の不義密通を目撃され、父の耳に入るほど噂が広まっていた。そのような背徳へ手を染める娘を生み出した公爵家や、妻の勝手を看過した伯爵家の、いずれも悪しざまに言われていることだろう。風評の悪化により人間関係、商取引等、各方面で実害が生じていると想定される。
なるべく頭の外へ追い出していたが、両家がどのような状況へ陥っているか改めて考え、ヴィオラは耐えるように膝の上に重ねた手を握りしめた。
ところが、オフェリアはゆっくりと首を横に振った。
「そう噂されていたのは最初だけです。今どうなっているのか、説明しましょう。陛下はあなたを人質に、ルドヴィーク公爵からエリヌミシュ鉱山を取り上げました。公爵はあなたの身柄を取り戻せると信じて鉱山を差し出しましたが、陛下は約束を守りませんでした。陛下はあなたが秘書官としての職を辞し、自らに貢献しなくなった途端に、軟禁し、手籠めにし、人質にしたのです」
「一体、どういうことですか。人質……?」
オフェリアの説明は、ヴィオラの話をしているとは思えないほど、突飛なものだった。
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