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湖畔
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三日間の休暇を通してそれぞれが自分たちに欠けていたモノを考え、それを全体で共有したスズネたち。
そこで改めてパーティとしての方向性を一致させたのであった。
「うわ~、キレ~イ」
「久しぶりに来たけど、いつ来ても静かでいいわね」
今回スズネたちは六人での時間を作るため、近場にあるモアナ湖にやって来ていた。
今日は快晴ということもあり水面に陽の光が反射してキラキラとか輝いている。
モアナ湖は近場ではあるものの、普段スズネたちが暮らしているラグレスの森よりもさらに澄んだ空気をしており、周囲を囲む新緑も相まってまるで別世界のようである。
そんな非日常と開放感を前にテンションの上がったスズネたちはさっそく羽を伸ばすことに。
「それじゃ着いて早々だけど着替えちゃおうか」
「そうね。こんな最高のロケーションを前にしてジッとなんてしてらんないわ」
スズネたちは手慣れた手つきであっという間にテントを設営し、さっそく水着に着替えることにした。
「マクスウェル」
「何ですか?ミリア」
「アンタ、覗くんじゃないわよ」
「そ…そんな事しませんよ!!何を言ってるんですか、まったく」
「アハハハハ。顔真っ赤にして、分っかりやすいわね」
マクスウェルを揶揄い、期待通りの反応を見ることが出来たミリアは、ニヤニヤしながら満足気にテントへ入っていった。
まんまとしてやられたマクスウェルは、顔を赤く染めながらチラリとスズネへと視線を向けた。
「もう、マクスウェル君ごめんね。ただの悪ノリだから気にしないで。あと、クロノとマクスウェル君も隣のテントで着替えてね」
そう言うとスズネを含めた他のメンバーたちもテントの中へ入っていった。
そして、残されたマクスウェルが着替えるためにテントへ入ろうとした時、湖を眺めているクロノの姿に気がつく。
「どうしたんですか。僕たちも着替えますよ」
「はぁ?勝手にやってろよ、色ガキ。俺は別にお前らと戯れ合う気はない」
「あとで怒られても知りませんからね。それから、僕は色ガキではありません」
マクスウェルの呼び掛けに対し、一切視線を向けることなく答えたクロノ。
何を考えているのか分からないが、到着してからずっとモアナ湖の景色を眺め続けていたのだった。
そうこうしている内に全員水着に着替え終えてテントの外に出てきた。
やはり男性と違い女性はお洒落に余念がない。
それぞれ色とりどりの色鮮やかな水着を着ており、出てくるなりキャッキャと騒いでいる。
その様子を直視出来ないマクスウェルは、目のやり場に困り不自然にキョロキョロと周囲を見回していた。
そして、それに気がついたミリアがまたも悪い笑みを浮かべながら声を掛ける。
「何してんのよマクスウェル。女性が水着になってんだからちゃんと見て感想を言いなさいよ」
挑発にも似たミリアの言葉に一瞬躊躇した様子を見せたマクスウェルであったが、意を決してスズネたちの方へと振り向く。
しかし、そのあまりの衝撃の強さに照れの感情バロメーターが限界を迎えてしまい、完全に思考が停止し固まってしまった。
「あれ?お~い、マクスウェル?お~い」
完全に動きが停止したマクスウェルの顔の前でミリアが手を上下に振るが全く反応しない。
「あちゃ~完全に停止しちゃったわね。もう、しっかりしなさいよ!!」
バシーン ──────── 。
そう言いながらミリアはマクスウェルの背中を勢いよく叩く。
そして、背中に走った衝撃によって我に返ったマクスウェル。
─────── ハッ!?
「アンタ大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ご心配を ───── !?」
突然目の前に現れた水着姿のミリアに慌てた様子を見せるマクスウェルであったが、ひと呼吸おいて冷静さを取り戻す。
「フゥ~、もう大丈夫です」
「そう、それならいいわ。で、どうなのよ?美少女の水着姿を見た感想は」
身に纏った黒いビキニを見せつけるようにポーズをとるミリア。
「えっ…はい、まぁ~似合ってるんじゃないでしょうか」
「何よその無難な回答は。もっと“直視出来ない輝きだ”とか“この世のモノとは思えない美しさだ”とか言いなさいよ」
「一体僕に何を期待しているんですか…そんなの無理に決まってるでしょ」
マクスウェルらしいといえばマクスウェルらしい。
変に媚びたり煽てたりすることはせず、正直に思ったままの感想を述べたのだった。
トン、トン。
マクスウェルがミリアと話していると優しく肩を叩かれる。
それに反応してマクスウェルが振り向くと ───── 。
「マクスウェル君、私のはどうかな?」
そこにはヒラヒラとしたフリルの付いたビキニを着て恥ずかしそうにしているスズネの姿があった。
「!? ───── スズネさん!?いや…とてもお似合いで、可愛らしく素敵だと思います」
それを見たマクスウェルは、顔を真っ赤にしながら懸命に言葉を振り絞ってスズネの水着姿を褒める。
すると、その様子に我慢ならなかったミリアがスッとスズネの背後に回る。
そして・・・。
「コレかー!!どうせ男はみんなコレなのかーーー!!」
怒りに震えるミリアが背後からスズネの両胸を鷲掴みにして上下に揺らす。
「ちょっ…ちょっと止めてよミリア」
「うるさい。男を惑わす元凶を許すまじ」
「ちょっと、止めるっすよミリア」
突然のことに困惑するスズネ。
怒りのあまり暴走するミリア。
そして、年長者として暴走するミリアを止めようとするシャムロム。
しかし、シャムロムの行動によってミリアの暴走に拍車をかけることとなる。
「ハッ!?シャムロム、お前もかーーー!!」
「ええ~~~、ウチもっすかーーー」
「なんでこんなスポーティな水着着てんのに、これ見よがしに主張してんのよ」
スズネに続いて今度はシャムロムへと襲いかかるミリア。
必死の抵抗も虚しくシャムロムも鷲掴みされてしまう。
こうしてミリアの餌食となってしまったシャムロムは、項垂れながら諦めたようにその状況を受け入れたのだった。
───── ポカン。
「いい加減にしなさい」
スズネによって軽く叩かれ注意を受けたミリアは渋々その手を離した。
ひと悶着あったが、スズネたちは気を取り直して湖で遊ぶことに。
しかし、ここで第二の事件が発生する。
「うん?何じゃマクスウェル、ジロジロ見おって。わっちの色香にやられてしもうたか?だが、残念じゃったな、わっちには旦那様という ───── 」
「いえ、なんだかラーニャは安心出来るなと思って」
「はぁ??」
マクスウェルの言葉を受け、およそ十一歳の少女とは思えない表情で睨みつけるラーニャ。
「わっちの聞き間違いか?もう一度言うてみい」
「ええ。ですから、他のメンバーと比べてラーニャの水着姿は安心して見ていられますね」
悪気はない(本人にとっては)。
むしろ目のやり場に困る他のメンバーたちよりも安心して一緒にいられるという、マクスウェルにとっては褒め言葉のつもりなのであった。
が…しかし、他の者からすると完全な煽りである。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ─────── 。
「それは、わっちに色気が無いと?」
「い…いえ、決してそういう訳では」
他のメンバーたちは一斉に二人から距離を取る。
それによりやっと事態を理解したマクスウェルであったが、時すでに遅し。
「お…落ち着いてくださいラーニャ。決してそのような ───── 」
「言い残すことはそれだけか?どうやらマクスウェルは一度地獄を見たいようじゃな」
「まっ…待ってください」
「黙れ!!そして、灰となれ ───── 爆炎弾」
ドーーーーーン。
「ぐわぁぁぁぁぁ ───── 」
爆発をモロに食らい吹き飛ばされるマクスウェル。
そして魔法を放ったラーニャはというと、まだ鼻息を荒くしてお怒りの様子。
「旦那様~。旦那様はわっちの水着姿をどう思うのじゃ?」
マクスウェルの失言?によって傷心したラーニャは、急いでクロノの元へと駆け寄っていく。
そして、腕と足の部分以外をスッポリと覆い隠した青と白のボーダー柄の水着を出来る限りの可愛らしさを添えてアピールした。
「あ?ああ、ガキっぽくて良いんじゃないか」
!? !? !? !?
先程のマクスウェルの件があったことから、このクロノの発言により再びラーニャが憤慨するのではないかと一同に緊張が走る。
「ワハハハハ。そうか、そうか、良い感じか。旦那様に気に入ってもらえたのであれば、それで良いのじゃ」
スズネたちの心配をよそに何故かご満悦のラーニャ。
どうやら言葉じりがどうこうではなく、クロノに“良い”と言って褒められたことが重要であり嬉しかったようだ。
もちろん当の本人であるクロノにそんなつもりはない。
「ねぇねぇクロノ、私はどう?」
その流れに乗り、続けてスズネがクロノに感想を求めた。
そして、チラリとスズネを見たクロノはすぐにプイッと背を向ける。
「まぁ~良いんじゃないか」
「ちょっと~せっかく新しく買ったんだからちゃんと見てよ~」
せっかく用意した水着を一瞬しか見ることをせずに背を向けたクロノに対し、強請るように見せたがるスズネ。
「さっき見ただろ。いつまでもこんな事してないで、さっさと遊んでこいよ」
「あっ、そうだね。みんな行こう!!っていうか、クロノはなんで着替えてないの?」
「はぁ?俺はお前らと戯れ合うつもりは ───── 」
「着替えて」
「いや、だから俺は ───── 」
「いいから着替えて」
今日は『六人での時間』を作るために来たのだ。
もちろん六人の中にはクロノも含まれている。
そこに加わらないというのは、リーダーとして決して許すことは出来ない。
両頬をぷっくりと膨らませながらジッとクロノを見つめるスズネ。
こうなったスズネが頑固なのは周知のことである。
それを察したクロノは大きく溜息を吐き、抗うことを諦めたのだった。
「はぁ~分かったよ。着替えればいいんだろ」
「うん!!それじゃ、私たちは先に行ってるからね。急いで来てよ」
そこからスズネたちは湖で大いに遊び、途中に昼食を挟み、一日をかけて六人の時間を楽しんだ。
そして夕暮れ時、夕日によって茜色に染まるモアナ湖を眺めながら夕食を食べ、これまでの事・これからの事などをざっくばらんに語り合ったのだった。
─────────────────────────
パチッ パチッ パチッ。
夕食を食べ終えすっかり夜も更けた頃、スズネたちは焚き火を囲みながら今日一日を振り返っていた。
「今日はみんなでいっぱい遊べて楽しかったね」
「ホントいろんな話も出来たし、意外な一面も知れたしね~」
ニヤリと笑みを浮かべ意味深なことを言いながらマクスウェルを見るミリア。
「なんですか?別に全く泳げない訳ではないですからね。少し苦手なだけです」
これは日中の湖にて、足がつく場所なのにも関わらずマクスウェルが「溺れる~」と大騒ぎしたことをイジられたのだ。
顔を赤くしながら苦しい言い訳を並べるマクスウェルの姿に大笑いする他のメンバーたち。
「意外といえば、ラーニャの料理スキルには驚かされたっす」
「本当に手際も良くて美味しかったよね」
「わっちはお師匠様のところで毎日やっておったからの、あれくらい作れて当然じゃ」
みんなから絶賛され鼻高々で得意気になるラーニャ。
「ホント、アンタあれだけ出来るんなら普段から手伝いなさいよ」
「ダメじゃ!!わっちは旦那様との甘い時間(魔法の鍛錬)で忙しいのじゃ」
「もう、ホント我儘ね」
いつも通り自分勝手な理由を述べるラーニャに対し、ミリアが呆れた様子で返事をする。
「まぁまぁ、みんなで協力してやればいいじゃない。ラーニャちゃんも時間がある時にはお手伝いしてね」
「うむ。了解したのじゃ」
呆れるミリアを宥めつつ、ラーニャへも協力をお願いするスズネ。
それに対してラーニャも快く了承する。
「それじゃ~今日一日でしっかりリフレッシュ出来たし、明日からまた頑張っていこう!!まずは目先の目標としてCランクへの昇格を目指そう」
「「「「 おーーー 」」」」
こうして新たにCランクへの昇格に向けて力を合わせていこうと一致団結した“宿り木”。
その後も夜空に輝く数多の星々が映るモアナ湖を眺めながら、夜が深くなるまで語り合ったのだった。
そこで改めてパーティとしての方向性を一致させたのであった。
「うわ~、キレ~イ」
「久しぶりに来たけど、いつ来ても静かでいいわね」
今回スズネたちは六人での時間を作るため、近場にあるモアナ湖にやって来ていた。
今日は快晴ということもあり水面に陽の光が反射してキラキラとか輝いている。
モアナ湖は近場ではあるものの、普段スズネたちが暮らしているラグレスの森よりもさらに澄んだ空気をしており、周囲を囲む新緑も相まってまるで別世界のようである。
そんな非日常と開放感を前にテンションの上がったスズネたちはさっそく羽を伸ばすことに。
「それじゃ着いて早々だけど着替えちゃおうか」
「そうね。こんな最高のロケーションを前にしてジッとなんてしてらんないわ」
スズネたちは手慣れた手つきであっという間にテントを設営し、さっそく水着に着替えることにした。
「マクスウェル」
「何ですか?ミリア」
「アンタ、覗くんじゃないわよ」
「そ…そんな事しませんよ!!何を言ってるんですか、まったく」
「アハハハハ。顔真っ赤にして、分っかりやすいわね」
マクスウェルを揶揄い、期待通りの反応を見ることが出来たミリアは、ニヤニヤしながら満足気にテントへ入っていった。
まんまとしてやられたマクスウェルは、顔を赤く染めながらチラリとスズネへと視線を向けた。
「もう、マクスウェル君ごめんね。ただの悪ノリだから気にしないで。あと、クロノとマクスウェル君も隣のテントで着替えてね」
そう言うとスズネを含めた他のメンバーたちもテントの中へ入っていった。
そして、残されたマクスウェルが着替えるためにテントへ入ろうとした時、湖を眺めているクロノの姿に気がつく。
「どうしたんですか。僕たちも着替えますよ」
「はぁ?勝手にやってろよ、色ガキ。俺は別にお前らと戯れ合う気はない」
「あとで怒られても知りませんからね。それから、僕は色ガキではありません」
マクスウェルの呼び掛けに対し、一切視線を向けることなく答えたクロノ。
何を考えているのか分からないが、到着してからずっとモアナ湖の景色を眺め続けていたのだった。
そうこうしている内に全員水着に着替え終えてテントの外に出てきた。
やはり男性と違い女性はお洒落に余念がない。
それぞれ色とりどりの色鮮やかな水着を着ており、出てくるなりキャッキャと騒いでいる。
その様子を直視出来ないマクスウェルは、目のやり場に困り不自然にキョロキョロと周囲を見回していた。
そして、それに気がついたミリアがまたも悪い笑みを浮かべながら声を掛ける。
「何してんのよマクスウェル。女性が水着になってんだからちゃんと見て感想を言いなさいよ」
挑発にも似たミリアの言葉に一瞬躊躇した様子を見せたマクスウェルであったが、意を決してスズネたちの方へと振り向く。
しかし、そのあまりの衝撃の強さに照れの感情バロメーターが限界を迎えてしまい、完全に思考が停止し固まってしまった。
「あれ?お~い、マクスウェル?お~い」
完全に動きが停止したマクスウェルの顔の前でミリアが手を上下に振るが全く反応しない。
「あちゃ~完全に停止しちゃったわね。もう、しっかりしなさいよ!!」
バシーン ──────── 。
そう言いながらミリアはマクスウェルの背中を勢いよく叩く。
そして、背中に走った衝撃によって我に返ったマクスウェル。
─────── ハッ!?
「アンタ大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ご心配を ───── !?」
突然目の前に現れた水着姿のミリアに慌てた様子を見せるマクスウェルであったが、ひと呼吸おいて冷静さを取り戻す。
「フゥ~、もう大丈夫です」
「そう、それならいいわ。で、どうなのよ?美少女の水着姿を見た感想は」
身に纏った黒いビキニを見せつけるようにポーズをとるミリア。
「えっ…はい、まぁ~似合ってるんじゃないでしょうか」
「何よその無難な回答は。もっと“直視出来ない輝きだ”とか“この世のモノとは思えない美しさだ”とか言いなさいよ」
「一体僕に何を期待しているんですか…そんなの無理に決まってるでしょ」
マクスウェルらしいといえばマクスウェルらしい。
変に媚びたり煽てたりすることはせず、正直に思ったままの感想を述べたのだった。
トン、トン。
マクスウェルがミリアと話していると優しく肩を叩かれる。
それに反応してマクスウェルが振り向くと ───── 。
「マクスウェル君、私のはどうかな?」
そこにはヒラヒラとしたフリルの付いたビキニを着て恥ずかしそうにしているスズネの姿があった。
「!? ───── スズネさん!?いや…とてもお似合いで、可愛らしく素敵だと思います」
それを見たマクスウェルは、顔を真っ赤にしながら懸命に言葉を振り絞ってスズネの水着姿を褒める。
すると、その様子に我慢ならなかったミリアがスッとスズネの背後に回る。
そして・・・。
「コレかー!!どうせ男はみんなコレなのかーーー!!」
怒りに震えるミリアが背後からスズネの両胸を鷲掴みにして上下に揺らす。
「ちょっ…ちょっと止めてよミリア」
「うるさい。男を惑わす元凶を許すまじ」
「ちょっと、止めるっすよミリア」
突然のことに困惑するスズネ。
怒りのあまり暴走するミリア。
そして、年長者として暴走するミリアを止めようとするシャムロム。
しかし、シャムロムの行動によってミリアの暴走に拍車をかけることとなる。
「ハッ!?シャムロム、お前もかーーー!!」
「ええ~~~、ウチもっすかーーー」
「なんでこんなスポーティな水着着てんのに、これ見よがしに主張してんのよ」
スズネに続いて今度はシャムロムへと襲いかかるミリア。
必死の抵抗も虚しくシャムロムも鷲掴みされてしまう。
こうしてミリアの餌食となってしまったシャムロムは、項垂れながら諦めたようにその状況を受け入れたのだった。
───── ポカン。
「いい加減にしなさい」
スズネによって軽く叩かれ注意を受けたミリアは渋々その手を離した。
ひと悶着あったが、スズネたちは気を取り直して湖で遊ぶことに。
しかし、ここで第二の事件が発生する。
「うん?何じゃマクスウェル、ジロジロ見おって。わっちの色香にやられてしもうたか?だが、残念じゃったな、わっちには旦那様という ───── 」
「いえ、なんだかラーニャは安心出来るなと思って」
「はぁ??」
マクスウェルの言葉を受け、およそ十一歳の少女とは思えない表情で睨みつけるラーニャ。
「わっちの聞き間違いか?もう一度言うてみい」
「ええ。ですから、他のメンバーと比べてラーニャの水着姿は安心して見ていられますね」
悪気はない(本人にとっては)。
むしろ目のやり場に困る他のメンバーたちよりも安心して一緒にいられるという、マクスウェルにとっては褒め言葉のつもりなのであった。
が…しかし、他の者からすると完全な煽りである。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ─────── 。
「それは、わっちに色気が無いと?」
「い…いえ、決してそういう訳では」
他のメンバーたちは一斉に二人から距離を取る。
それによりやっと事態を理解したマクスウェルであったが、時すでに遅し。
「お…落ち着いてくださいラーニャ。決してそのような ───── 」
「言い残すことはそれだけか?どうやらマクスウェルは一度地獄を見たいようじゃな」
「まっ…待ってください」
「黙れ!!そして、灰となれ ───── 爆炎弾」
ドーーーーーン。
「ぐわぁぁぁぁぁ ───── 」
爆発をモロに食らい吹き飛ばされるマクスウェル。
そして魔法を放ったラーニャはというと、まだ鼻息を荒くしてお怒りの様子。
「旦那様~。旦那様はわっちの水着姿をどう思うのじゃ?」
マクスウェルの失言?によって傷心したラーニャは、急いでクロノの元へと駆け寄っていく。
そして、腕と足の部分以外をスッポリと覆い隠した青と白のボーダー柄の水着を出来る限りの可愛らしさを添えてアピールした。
「あ?ああ、ガキっぽくて良いんじゃないか」
!? !? !? !?
先程のマクスウェルの件があったことから、このクロノの発言により再びラーニャが憤慨するのではないかと一同に緊張が走る。
「ワハハハハ。そうか、そうか、良い感じか。旦那様に気に入ってもらえたのであれば、それで良いのじゃ」
スズネたちの心配をよそに何故かご満悦のラーニャ。
どうやら言葉じりがどうこうではなく、クロノに“良い”と言って褒められたことが重要であり嬉しかったようだ。
もちろん当の本人であるクロノにそんなつもりはない。
「ねぇねぇクロノ、私はどう?」
その流れに乗り、続けてスズネがクロノに感想を求めた。
そして、チラリとスズネを見たクロノはすぐにプイッと背を向ける。
「まぁ~良いんじゃないか」
「ちょっと~せっかく新しく買ったんだからちゃんと見てよ~」
せっかく用意した水着を一瞬しか見ることをせずに背を向けたクロノに対し、強請るように見せたがるスズネ。
「さっき見ただろ。いつまでもこんな事してないで、さっさと遊んでこいよ」
「あっ、そうだね。みんな行こう!!っていうか、クロノはなんで着替えてないの?」
「はぁ?俺はお前らと戯れ合うつもりは ───── 」
「着替えて」
「いや、だから俺は ───── 」
「いいから着替えて」
今日は『六人での時間』を作るために来たのだ。
もちろん六人の中にはクロノも含まれている。
そこに加わらないというのは、リーダーとして決して許すことは出来ない。
両頬をぷっくりと膨らませながらジッとクロノを見つめるスズネ。
こうなったスズネが頑固なのは周知のことである。
それを察したクロノは大きく溜息を吐き、抗うことを諦めたのだった。
「はぁ~分かったよ。着替えればいいんだろ」
「うん!!それじゃ、私たちは先に行ってるからね。急いで来てよ」
そこからスズネたちは湖で大いに遊び、途中に昼食を挟み、一日をかけて六人の時間を楽しんだ。
そして夕暮れ時、夕日によって茜色に染まるモアナ湖を眺めながら夕食を食べ、これまでの事・これからの事などをざっくばらんに語り合ったのだった。
─────────────────────────
パチッ パチッ パチッ。
夕食を食べ終えすっかり夜も更けた頃、スズネたちは焚き火を囲みながら今日一日を振り返っていた。
「今日はみんなでいっぱい遊べて楽しかったね」
「ホントいろんな話も出来たし、意外な一面も知れたしね~」
ニヤリと笑みを浮かべ意味深なことを言いながらマクスウェルを見るミリア。
「なんですか?別に全く泳げない訳ではないですからね。少し苦手なだけです」
これは日中の湖にて、足がつく場所なのにも関わらずマクスウェルが「溺れる~」と大騒ぎしたことをイジられたのだ。
顔を赤くしながら苦しい言い訳を並べるマクスウェルの姿に大笑いする他のメンバーたち。
「意外といえば、ラーニャの料理スキルには驚かされたっす」
「本当に手際も良くて美味しかったよね」
「わっちはお師匠様のところで毎日やっておったからの、あれくらい作れて当然じゃ」
みんなから絶賛され鼻高々で得意気になるラーニャ。
「ホント、アンタあれだけ出来るんなら普段から手伝いなさいよ」
「ダメじゃ!!わっちは旦那様との甘い時間(魔法の鍛錬)で忙しいのじゃ」
「もう、ホント我儘ね」
いつも通り自分勝手な理由を述べるラーニャに対し、ミリアが呆れた様子で返事をする。
「まぁまぁ、みんなで協力してやればいいじゃない。ラーニャちゃんも時間がある時にはお手伝いしてね」
「うむ。了解したのじゃ」
呆れるミリアを宥めつつ、ラーニャへも協力をお願いするスズネ。
それに対してラーニャも快く了承する。
「それじゃ~今日一日でしっかりリフレッシュ出来たし、明日からまた頑張っていこう!!まずは目先の目標としてCランクへの昇格を目指そう」
「「「「 おーーー 」」」」
こうして新たにCランクへの昇格に向けて力を合わせていこうと一致団結した“宿り木”。
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