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ネームレス
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《ネームレス》
ガルディア王国中の無法者たちによる非公式のクラン。
“ネームレス”を率いるリーダーのカネロを始め、これまでに何かしらの事件や問題、悪事をはたらいてきた者たちの集まりである。
その中にはそれまでの地位や称号、ランクを剥奪された元冒険者や元王国聖騎士も在籍している。
その多岐に渡る一癖も二癖もあるメンバーたちはカネロを筆頭にかなりの実力者が揃っているのだ。
そして、“ネームレス”が他のクランと大きく異なる点は、クラン内にルールというものが存在しないこと。
あるのは、ただ一つ。
『やりたいようにやる』という不文律だけ ───────── 。
─────────────────────────
ドーーーーン!
ドーーーーン!
ドーーーーン!
ネームレスによるトライデント襲撃。
多くの人が行き交う王都のメインストリートで行われた暴挙。
トライデントの凱旋に湧き立つ人々に恐怖を与えるようにわざと大きな音を立てメルサの街を破壊していくネームレス。
「住民の避難を最優先にしつつ、隊列を組み迎え撃て!」
「「「「「 ハッ!! 」」」」」
指揮官らしき人物の指示を受け、黒い鎧に身を包んだ騎士たちが素早く隊列を組み直す。
そして、じわりじわりと近づいてくる男たちを迎え撃つ準備を整える。
こうしてトライデントが誇る団の一つである“黒の騎士団”と“ネームレス”の戦いが始まる ──────── 。
襲撃してきたネームレスのメンバーはたったの三名。
そのメンツはリーダーのカネロ、サブリーダーのリコ、幹部のジャックであった。
まず、ドラゴンの刺青が描かれた特徴的なスキンヘッド、二メートルはあろうという巨体に筋骨隆々な身体をしている見るからにパワー系の男がカネロ。
次に、腰の位置まで伸びたオレンジ色の長髪、カネロよりもさらにひと回り大きな超巨体をしているのがリコ。
最後に、三人の中では一番小柄で細身であり、グレーのおかっぱ頭で見るからに不健康そうな顔色をした目の下にクマがある男がジャックである。
三名ともがガルディア王国と冒険者ギルドより特別指定人物として危険視されており、王国聖騎士や高ランクの冒険者であってもおいそれと手を出そうとはしない者たちなのだ。
「たった三人だと思ってナメてかかるなよ。一人一人がSランク級の魔獣だと思ってかかれ」
「クソッ!カネロに、ジャック、そしてリコ様まで ─────── 」
「つべこべ言わずに構えろ!相手が誰であろうとメルサの街は我々の手で守るぞ」
「第一部隊 ───── かかれ!!」
「「「「「 ウォォォォォ ─────── 」」」」」
迫り来るネームレスの脅威から王都メルサの住人と街を守るために黒の騎士団の第一部隊総勢五十名がカネロたちへと攻撃を仕掛ける。
ドゴーーーーーン!!!!!
人・・・人・・・人・・・。
二十名の騎士たちが宙を舞う。
その場にいた誰しもが何が起こったのか理解出来なかった。
いや ───── 理解したくなかったのだ。
Sランクのクランであり、王国最大のクランである“トライデント”に所属し、日々の弛まぬ研鑽と高ランクの魔獣を相手にしても渡り合える自分たちが・・・まさか、たった一振りのパンチによって一気に二十名もの者たちがやれられてしまったという事実。
この事実をすぐに受け止めることはなかなかに難しいものである。
ネームレスを、カネロという男を決してナメていたわけではない。
しかし、噂以上の実力を見せつけられ言葉を失ってしまう騎士たちなのであった。
「おいおい、天下のトライデントも大したことねぇ~な」
半数近くの仲間が殴り飛ばされる様を目の当たりにし、呆然と立ち尽くす騎士たちに対して余裕たっぷりに挑発するカネロ。
「どうよ?リコ。元仲間たちの脆弱な様はよぉ」
「・・・・・」
「カネロの旦那ぁ~、さっさと殺っちまおうぜぇ~。俺ぁ~まだまだ刻み足りねぇ~よ」
「わぁ~た、わぁ~た。そう慌てなくとも獲物は大量だ。好きなだけ切り刻めジャック」
まだまだ逃げ惑う人々が大勢いる中でもそれを気にも止めることなく暴れ回るネームレス。
建物や出店を破壊し、向かってくる黒の騎士団を次々と薙ぎ倒していく。
そして、ひと通り暴れ終えたカネロたちの周りには負傷した騎士たちと瓦礫の山が散々としているのだった。
「はぁ~…全くもって歯応えのねぇ~やつらだな」
「随分とうちの新人たちをいたぶってくれたようだな」
「!? ───── おお~、やっと本命のお出ましか」
それまで退屈そうにしていたカネロの瞳が一人の男の登場によって活き活きと輝きだす。
「あいつは何者だい?強いのかい?リコ」
「奴は黒の騎士団団長ダナンだ」
「へぇ~団長さんかい・・・刻み甲斐がありそうだねぇい」
破壊の限りを尽くすカネロたちの前に現れたのは、黒の騎士団の精鋭三十名を率いた団長のダナンであった。
そして、ダナンの登場によってカネロたちによる一方的な攻勢は止むこととなる。
「カネロ・・・何故貴様が王都にいる?」
「あぁ?俺様がいつ何処にいようが俺様の勝手だろうが」
「このような騒ぎまでお越し、王宮もギルドも黙っていないぞ」
「だ~か~ら~、それが何だってんだ?十二の剣だろうが、お前らSランククランだろうが、俺様たちの邪魔をするやつは皆殺しだ」
「この・・・外道が ─────── 」
「おいおい、黒の騎士団団長ダナン、お前は俺様とお喋りでもしに来たのか?違ぇ~だろ、文句があるなら拳で語れ!それが俺たちネームレスのやり方だ」
カネロの挑発を受けたダナンは騎乗していた馬から降りると腰に携えていた黒刀を抜く。
「カネロ・・・貴様の悪名も今日までだ」
「ハン!やれるもんならやってみろ」
ダッ ──────── はぁぁぁぁぁ ─────── ブンッ!!
キーーーーーン!!
カネロに向かって猛然と駆けていき、大きく跳躍したのち力一杯に黒刀を振り下ろしたダナン。
しかし、その攻撃を左腕一本で受け止めるカネロ。
そこから二人の戦いは激しさを増していく。
ガンッ! ガンッ!! ガンッ!!!
「かぁ~うざってぇ。吹き飛べ!」
───────── ブウォン 。
ヒュンッ ──────── 。
次々と繰り出されるダナンの斬撃に手を焼くカネロ。
一向に反撃に出られるような隙を与えてもらえず、耐えかねた末に力任せにその剛腕を振るうのだが、ダナンにいとも容易く躱されてしまう。
イライラが募っている様子のカネロに対し、愛対するダナンもまた一切の余裕はないようで、数分程度の戦闘にも関わらず少し息を乱している。
それでも必死の形相で剣を振るうダナンとは対照的に、時間の経過と共に徐々にその剣撃にも慣れてきたのか、どこか遊んでいるような余裕を見せ始めるカネロ。
そして、その中でダナンの攻撃をいなしつつ、カネロは再び無闇にメルサの街を破壊していくのであった。
「おらおら、もっと必死にやらねぇ~と王都の街が破壊し尽くされちまうぞ」
「クッ・・・ナメたことを言っていられるのも今のうちだ」
その時、カネロとダナンの戦いを見守っていた三十名の精鋭たちがカネロに向け奇襲をかける。
「ダナン様、お下がりください」
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ ─────── 。
─────── カーーーン、キーーーン。
─────── バキッ、バキッ。
「お~いおい、サシの勝負に無粋なマネするんじゃ~ないよぉ」
「くだらん事をするな。先にお前たちから血祭りに上げるぞ」
ダナンを援護すべく放たれた攻撃もリコとジャックの前にあえなく阻止される。
そして、それと同時に二人より強烈なプレッシャーを受ける精鋭たちであったが、気持ちを奮い立たせリコとジャックに戦いを挑むのであった。
数の上では圧倒的に有利なトライデントであったが、一人一人が超強力なカネロたちを前に少しずつ、そして確実に押され始める。
もちろん狭い街中であること、住民の避難と安全を考えながらの戦闘になっていることも少なからず影響していた。
さらに、それら全てを度外視して好き勝手に戦えるカネロたちにとって状況が有利に働いているということも事実であった。
「そこまでだ」
黒の騎士団とカネロたちが戦い始めて十五分ほどが経ったその時、満を持してシルビアとマルコを引き連れたアルバートが現場に到着した。
そして、その姿を確認したカネロたちは戦いの手を止めたのだった。
ガルディア王国中の無法者たちによる非公式のクラン。
“ネームレス”を率いるリーダーのカネロを始め、これまでに何かしらの事件や問題、悪事をはたらいてきた者たちの集まりである。
その中にはそれまでの地位や称号、ランクを剥奪された元冒険者や元王国聖騎士も在籍している。
その多岐に渡る一癖も二癖もあるメンバーたちはカネロを筆頭にかなりの実力者が揃っているのだ。
そして、“ネームレス”が他のクランと大きく異なる点は、クラン内にルールというものが存在しないこと。
あるのは、ただ一つ。
『やりたいようにやる』という不文律だけ ───────── 。
─────────────────────────
ドーーーーン!
ドーーーーン!
ドーーーーン!
ネームレスによるトライデント襲撃。
多くの人が行き交う王都のメインストリートで行われた暴挙。
トライデントの凱旋に湧き立つ人々に恐怖を与えるようにわざと大きな音を立てメルサの街を破壊していくネームレス。
「住民の避難を最優先にしつつ、隊列を組み迎え撃て!」
「「「「「 ハッ!! 」」」」」
指揮官らしき人物の指示を受け、黒い鎧に身を包んだ騎士たちが素早く隊列を組み直す。
そして、じわりじわりと近づいてくる男たちを迎え撃つ準備を整える。
こうしてトライデントが誇る団の一つである“黒の騎士団”と“ネームレス”の戦いが始まる ──────── 。
襲撃してきたネームレスのメンバーはたったの三名。
そのメンツはリーダーのカネロ、サブリーダーのリコ、幹部のジャックであった。
まず、ドラゴンの刺青が描かれた特徴的なスキンヘッド、二メートルはあろうという巨体に筋骨隆々な身体をしている見るからにパワー系の男がカネロ。
次に、腰の位置まで伸びたオレンジ色の長髪、カネロよりもさらにひと回り大きな超巨体をしているのがリコ。
最後に、三人の中では一番小柄で細身であり、グレーのおかっぱ頭で見るからに不健康そうな顔色をした目の下にクマがある男がジャックである。
三名ともがガルディア王国と冒険者ギルドより特別指定人物として危険視されており、王国聖騎士や高ランクの冒険者であってもおいそれと手を出そうとはしない者たちなのだ。
「たった三人だと思ってナメてかかるなよ。一人一人がSランク級の魔獣だと思ってかかれ」
「クソッ!カネロに、ジャック、そしてリコ様まで ─────── 」
「つべこべ言わずに構えろ!相手が誰であろうとメルサの街は我々の手で守るぞ」
「第一部隊 ───── かかれ!!」
「「「「「 ウォォォォォ ─────── 」」」」」
迫り来るネームレスの脅威から王都メルサの住人と街を守るために黒の騎士団の第一部隊総勢五十名がカネロたちへと攻撃を仕掛ける。
ドゴーーーーーン!!!!!
人・・・人・・・人・・・。
二十名の騎士たちが宙を舞う。
その場にいた誰しもが何が起こったのか理解出来なかった。
いや ───── 理解したくなかったのだ。
Sランクのクランであり、王国最大のクランである“トライデント”に所属し、日々の弛まぬ研鑽と高ランクの魔獣を相手にしても渡り合える自分たちが・・・まさか、たった一振りのパンチによって一気に二十名もの者たちがやれられてしまったという事実。
この事実をすぐに受け止めることはなかなかに難しいものである。
ネームレスを、カネロという男を決してナメていたわけではない。
しかし、噂以上の実力を見せつけられ言葉を失ってしまう騎士たちなのであった。
「おいおい、天下のトライデントも大したことねぇ~な」
半数近くの仲間が殴り飛ばされる様を目の当たりにし、呆然と立ち尽くす騎士たちに対して余裕たっぷりに挑発するカネロ。
「どうよ?リコ。元仲間たちの脆弱な様はよぉ」
「・・・・・」
「カネロの旦那ぁ~、さっさと殺っちまおうぜぇ~。俺ぁ~まだまだ刻み足りねぇ~よ」
「わぁ~た、わぁ~た。そう慌てなくとも獲物は大量だ。好きなだけ切り刻めジャック」
まだまだ逃げ惑う人々が大勢いる中でもそれを気にも止めることなく暴れ回るネームレス。
建物や出店を破壊し、向かってくる黒の騎士団を次々と薙ぎ倒していく。
そして、ひと通り暴れ終えたカネロたちの周りには負傷した騎士たちと瓦礫の山が散々としているのだった。
「はぁ~…全くもって歯応えのねぇ~やつらだな」
「随分とうちの新人たちをいたぶってくれたようだな」
「!? ───── おお~、やっと本命のお出ましか」
それまで退屈そうにしていたカネロの瞳が一人の男の登場によって活き活きと輝きだす。
「あいつは何者だい?強いのかい?リコ」
「奴は黒の騎士団団長ダナンだ」
「へぇ~団長さんかい・・・刻み甲斐がありそうだねぇい」
破壊の限りを尽くすカネロたちの前に現れたのは、黒の騎士団の精鋭三十名を率いた団長のダナンであった。
そして、ダナンの登場によってカネロたちによる一方的な攻勢は止むこととなる。
「カネロ・・・何故貴様が王都にいる?」
「あぁ?俺様がいつ何処にいようが俺様の勝手だろうが」
「このような騒ぎまでお越し、王宮もギルドも黙っていないぞ」
「だ~か~ら~、それが何だってんだ?十二の剣だろうが、お前らSランククランだろうが、俺様たちの邪魔をするやつは皆殺しだ」
「この・・・外道が ─────── 」
「おいおい、黒の騎士団団長ダナン、お前は俺様とお喋りでもしに来たのか?違ぇ~だろ、文句があるなら拳で語れ!それが俺たちネームレスのやり方だ」
カネロの挑発を受けたダナンは騎乗していた馬から降りると腰に携えていた黒刀を抜く。
「カネロ・・・貴様の悪名も今日までだ」
「ハン!やれるもんならやってみろ」
ダッ ──────── はぁぁぁぁぁ ─────── ブンッ!!
キーーーーーン!!
カネロに向かって猛然と駆けていき、大きく跳躍したのち力一杯に黒刀を振り下ろしたダナン。
しかし、その攻撃を左腕一本で受け止めるカネロ。
そこから二人の戦いは激しさを増していく。
ガンッ! ガンッ!! ガンッ!!!
「かぁ~うざってぇ。吹き飛べ!」
───────── ブウォン 。
ヒュンッ ──────── 。
次々と繰り出されるダナンの斬撃に手を焼くカネロ。
一向に反撃に出られるような隙を与えてもらえず、耐えかねた末に力任せにその剛腕を振るうのだが、ダナンにいとも容易く躱されてしまう。
イライラが募っている様子のカネロに対し、愛対するダナンもまた一切の余裕はないようで、数分程度の戦闘にも関わらず少し息を乱している。
それでも必死の形相で剣を振るうダナンとは対照的に、時間の経過と共に徐々にその剣撃にも慣れてきたのか、どこか遊んでいるような余裕を見せ始めるカネロ。
そして、その中でダナンの攻撃をいなしつつ、カネロは再び無闇にメルサの街を破壊していくのであった。
「おらおら、もっと必死にやらねぇ~と王都の街が破壊し尽くされちまうぞ」
「クッ・・・ナメたことを言っていられるのも今のうちだ」
その時、カネロとダナンの戦いを見守っていた三十名の精鋭たちがカネロに向け奇襲をかける。
「ダナン様、お下がりください」
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ ─────── 。
─────── カーーーン、キーーーン。
─────── バキッ、バキッ。
「お~いおい、サシの勝負に無粋なマネするんじゃ~ないよぉ」
「くだらん事をするな。先にお前たちから血祭りに上げるぞ」
ダナンを援護すべく放たれた攻撃もリコとジャックの前にあえなく阻止される。
そして、それと同時に二人より強烈なプレッシャーを受ける精鋭たちであったが、気持ちを奮い立たせリコとジャックに戦いを挑むのであった。
数の上では圧倒的に有利なトライデントであったが、一人一人が超強力なカネロたちを前に少しずつ、そして確実に押され始める。
もちろん狭い街中であること、住民の避難と安全を考えながらの戦闘になっていることも少なからず影響していた。
さらに、それら全てを度外視して好き勝手に戦えるカネロたちにとって状況が有利に働いているということも事実であった。
「そこまでだ」
黒の騎士団とカネロたちが戦い始めて十五分ほどが経ったその時、満を持してシルビアとマルコを引き連れたアルバートが現場に到着した。
そして、その姿を確認したカネロたちは戦いの手を止めたのだった。
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