魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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アンダークラスヒーロー

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~ 冒険者ギルドモア支部 ~


「さ~て、何か気合の入るようなクエストはあるかしら」

「今日も気合い十分だねミリア」

「もちろんよ!まだまだ強くならなきゃいけないんだから」

「はぁ~…気合いの入り過ぎには注意してほしいっす」

「だっ…大丈夫よ」

「こ…この前は危なかったですから気をつけてくださいね」

「もう!分かってるってば!!」


前回のクエスト時に気合いの入り過ぎたミリアが前に出過ぎたため連携が崩れてしまい、他のメンバーたちが必死にフォローに回ったおかげでなんとか難を逃れたということがあったのだ。
それによって他のメンバーたちの中において、気合いの入ったミリアには十分な警戒が必要であるという認識で一致しているのだ。


「お~い、“宿り木”のみんな~」

「あっ!?パトリックさん、お久しぶりです」


スズネたちに声を掛けてきた男の名はパトリック。
王都メルサのギルドを拠点に活動しているAランクの冒険者パーティ“アンダークラスヒーロー”のリーダーを務めている人物である。


=========================

《アンダークラスヒーロー》
総数五名のAランク冒険者パーティ
パトリック(剣士:リーダー)
メル(魔法師)
モンロン(大盾使い)
ケリク(槍使い)
サラサ(射手者)

=========================


“アンダークラスヒーロー”はパーティメンバー全員が同じ孤児院出身であり、その境遇を言い訳にせず続けた地道な努力と幼少期より共に過ごしてきたことによるメンバーたちの連携を強みとしてAランクにまで上り詰めたパーティである。
さらに、五名という小規模なパーティではあるが、その実力は並大抵のものではなく、ギルドに登録されているAランクパーテイの中でも上位に入るほど。
リーダーのパトリックを中心に繰り出す練度の高い連携と個々による確かな技量により、隙という隙が見当たらないバランスのとれたパーティなのだ。
そして、彼らの活躍とその生い立ちも合わさり多くのガルディア王国民に夢と希望を与え人気を博しているのだった。
しかし、それと同時に当然そのことをおもしろく思わない者たちもいた。

そんな“アンダークラスヒーロー”とスズネたち“宿り木”が出会ったのは、人魚族の件で国王と謁見をしたその日。
謁見を終えたスズネたちはその足で王都の冒険者ギルドを訪れ、その時に声を掛けてきたのがパトリックであった。
その時が冒険者になって初めて高ランクの冒険者パーティから声を掛けられたということもあり、スズネたちはその嬉しさのあまり“アンダークラスヒーロー”のメンバーたちを質問攻めにし、パトリックたちを困惑させたのだった。

このように少しずつではあるが、先輩冒険者たちからも声を掛けられるようになってきた“宿り木”。
本人たちの活躍に加え魔王クロノという存在も相まって高ランク冒険者たちの間でも知られるようになっていたのだった。


「アッハッハッハッハッ。そんな事があったのか。まぁ~ミリアらしいといえばミリアらしいな」

「ちょっとパトリックさん、笑い過ぎですよ」

「ミリアはもう少し落ち着いた方がいいわね」

「も~う、メルさんまで」

「「「「「 アハハハハハハハハ 」」」」」


“アンダークラスヒーロー”のメンバーたちは、全員がAランクの冒険者ではあるものの一切偉ぶる様子もなく、スズネたち格下のランクの者に対しても分け隔てなくフラットに接してくれる。
こういった面からも彼らの人気が高い理由がよく分かる。


「さ…サラサさん、こういう場合にはどうしたら ───── 」

「ああ、そういう時には位置取りに注意して ───── 」


「モンロンさん、もう一回大盾使いの立ち回り方を教えてほしいっす」

「おう。まず基本の型は ───── 」


「メルさん、他にもパーティを助けられるお勧めの補助魔法ってありますか?」

「う~ん。そうね…例えば ───── 」


「パトリックさん、大型の魔獣と相対している時にはどういった点に注意を払っていますか?」

「アッハッハッ、マクスウェルは勤勉だね。まず大型の場合だと一人ではどうしようもないから ───── 」

「パトリックさん、アタシも聞きたいことがあって ───── 」

「待ってくださいミリア。今は僕が質問しているんですから ───── 」


スズネたちは再び“アンダークラスヒーロー”のメンバーたちからそれぞれのジョブについて話を聞き交流を深める。


「そういえば、今度合同クエストの依頼が来ているんだけど、“宿り木”のみんなも参加してみないかい?」

「合同クエスト?」

「それって確か複数の冒険者パーティが一緒になってクエストを受けるってやつですよね」

「ウチらまだCランクっすけど、その合同クエストに参加出来るんすか?」

「僕たちAランクパーティもいるし、僕たちからの推薦という形で参加出来ると思うよ」

「やった!参加します!ぜひ参加させてください」

「決まりだね。詳しいことは支部長と話をした後に連絡するよ」


こうして合同クエストの誘いを受けたスズネたちは、このあと支部長リタに用があるというパトリックたちに別れを告げギルドを後にしたのだった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


その日の夜 ───── 王都メルサ。


他の冒険者たちと酒場で盛り上がったパトリックたちは、良い気分のまま自分たちのホームへの帰路についていた。


「次の合同クエストは大掛かりなものになりそうだな」

「“宿り木”の子たちも楽しみにしてるみたいだったわね」

「まぁ~初めての合同クエストだから僕たちでしっかりサポートしてあげよう」

「パトリックって本当に面倒見がいいわよね」

「まぁ~過保護とも言いますけどね」

「「「「「 アハハハハハハハハ 」」」」」


その時、ほどよくお酒も回り良い気分で歩いていたパトリックたちの前に一つの影が現れる。


「お前らが“アンダークラスヒーロー”かぁ?」

!? !? !? !? !?

「そうだが…。貴様は何者だ」

「イッヒッヒッ。お前らぁ~全員孤児院出身なんだってぇ~?」

「それが何だっていうんだ!僕たちは孤児院で育ったことを誇りに思っている」

「そうかぁ、そうかぁ…。それはさぞかし苦労して成り上がったんだろうなぁ~」


暗闇に姿を隠し、前葉を明かさない相手を前にして警戒を強める“アンダークラスヒーロー”。
しかし、そんな彼らのことなどお構い無しにその気味の悪い声は少しずつ、そして確実に近づいてくるのだった。


「それで、用件はなんだ?」

「用件…用件ねぇ~。少し夜風に当たっていたらぁ、身の程を弁えない雑魚どもの姿が目に入ってきたのでぇ、プチッ!と殺してやろうかと思っただけですよぉ」


その言葉を聞いたパトリックたちは武器を手に取り一斉に構える。
そして、すぐさま陣形を作ると声の主に対して臨戦態勢を取ったのだった。

Aランクパーテイによる本気の殺気を浴びせられてもなお、相対するものは一向に引く気配を見せない。
それどころかパトリックたちが本気になったその状況を楽しむかのように笑い出すのであった。


「イ~ッヒッヒッヒッ。いいねぇ~、いいねぇ~。生きるか死ぬかの瀬戸際の者が放つこのヒリヒリした感じが堪らないねぇ~」


より一層のプレッシャーを掛けてくる相手に対し、負けじと圧力を強める“アンダークラスヒーロー”であったのだが、その者が暗闇から姿を現すとその正体に驚愕する。
彼らの前に現れたのはピエロだ。
ピエロと言われて誰しもが思い浮かべる姿をしたピエロがそこに立っている。
しかし、当然ただのピエロなどではない。

Aランクパーティの中でも上位に入ると言われているパトリックたちであっても、その悍ましいオーラと狂気じみた雰囲気に押され冷や汗が止まらなくなっていたのだった。


「きっ・・・貴様は・・・」


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