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今、出来ること
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ガルディア王国と獣王国の戦争についての噂が広がる中、それについて師匠であるミロクに話をしたミリアとマクスウェル。
そこでミロクの口から告げられたのは、獣王国の王である獣王ゼリックが過去にミロクの下で剣の腕を磨いた弟子であったというものだった。
「獣王が僕たちの兄弟子・・・」
「師匠、それってホントですか!?」
「ああ、本当じゃよ。一番弟子のメリッサから一年程遅れて修行をつけ始めたはずじゃからな。ほぼ同時期に剣の腕を磨いておったわ。懐かしいのう」
突然告げられた事実に驚きを隠すことが出来ないミリアとマクスウェル。
剣聖ミロクの二番弟子にして、ミロクと同じく“四聖”の一人に数えられ“剛剣”の異名を持つ冒険者ギルドのギルドマスターメリッサの弟弟子 ────── そんな男が弱いわけなどない。
それどころか、もしかすると“四聖”に割って入るほどの力を要している可能性すらある。
さらにいうと、ミロクより教わった剣技に加えて獣人族特有の身体能力が合わさるとなると、その実力は未知数であると言わざるを得ない。
「ちょっと師匠!獣王国と戦争にでもなったら、その獣王も出てくるんじゃないの」
「ホッホッホッ。あやつのことじゃから最前線で飛び出してくるかもしれんのう」
「ミロク様、獣王ゼリックというのは強いのですか?」
緊迫した表情のミリアたちに対して穏やかな笑顔を見せながら落ち着いた様子のミロク。
そして、何かを懐かしむように話し始めた。
「長らく会っておらんからのう。最後に会ったのは、確か五年程前じゃったかな?軽く手合わせをしたが腕は全く落ちておらんかったわ。まぁ~今のお主らでは手も足も出んじゃろうな。ホッホッホッホッホッ」
「ちょっと笑いごとじゃないわよ!最悪ソイツとも戦わないといけないのに」
「止めておけ。もしゼリックと相対しても決して戦ってはならん。何も考えずにその場を離れるんじゃ」
敵前逃亡。
剣士にとってこれほどまでに屈辱的なことはない。
しかもミロクの言葉をそのまま受け取るのであれば、剣を交えることすらも叶わないということである。
『そんなことはプライドが許さない!!』
ミリアの顔にはハッキリとそう書いてある。
しかし、今は修行中の身。
師匠であるミロクの言葉は絶対である。
どれほど惨めで、どれほど悔しく、どれほど腹立たしくともその注告を受け入れなければならない。
「あーーーもう!クソッ!!」
苦虫を噛み潰したような表情を見せ、自身の無力さと脆弱さに苛立つミリア。
その時、そんな彼女の思いを誰よりも理解するマクスウェルが獣王ゼリックについてさらに質問する。
「獣王ゼリックとはそれほどなのですか?ミロク様より剣技を学び、メリッサさんと共に腕を磨いた方が弱いとは思いませんが、やはり“四聖”と呼ばれる方々と肩を並べるくらいの強さということでしょうか?」
「うむ。単純な剣技だけでいえばメリッサの方が遥かに強い。じゃが、あやつは稀少な“雷獣”の力を有しておる。その力は天候すらも操る」
「そ…それは…、人が太刀打ち出来るような相手なのでしょうか?最高難易度の魔獣すらも凌駕しそうですが・・・」
「まぁ~やりようはいくらでもある。それでも、今のお主らではそもそもの実力差があり過ぎて話にもならんのだがのう。今は急がず慌てずじっくりと力を付けるんじゃ」
ミロクの言葉が二人の心に突き刺さる。
そもそも修行も始まったばかりであり、まだまだ基礎中の基礎の段階である。
そんな二人がミロクの修行を最後までやり切った兄弟子に敵うはずもない。
そのことは二人も重々承知している。
それでも仮に戦争が始まってしまい獣王を始め獣王国の戦士たちと戦うことになった時、ただ指を咥えてやられるわけにはいかないのだ。
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
二人は再び剣を振り始める。
いつ戦いが始まるかは分からない。
今日明日でいきなり強くなるようなお伽話みたいなことはない。
それでも今の自分に出来ることはある。
三年後、五年後、十年後に勝つために ───── 今、出来ることをやるのだ。
二人にとってそれは剣を振ること。
この一振り一振りが未来の自分を強くする ──────── 。
そう信じてただひたすらに剣を打ち込むミリアとマクスウェル。
そんな二人の姿に、かつて自身の下で剣を学び、毎日飽きることなく一心不乱に剣を振り続けていたメリッサとゼリックの姿を重ね合わせるミロクなのであった。
「ハァ…ハァ…ハァ…。もう一本いくわよ!」
「ハァ…ハァ…ハァ…。もちろんです!」
「ホッホッホッ。大丈夫、お主らは強くなるよ」
懸命に剣を振り続ける二人を前に嬉しそうな笑みを浮かべながらミロクはそう呟くのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ガルディア王国に獣王国からの使者が訪れてから一週間後 ──────── 。
ガルディア王国王城 ~会議室~
──────── ガチャッ。
「待たせてすまない」
扉が開かれると忙しい様子の国王レオンハルトが聖騎士長アーサーを引き連れて会議室へと入ってきた。
そして、最後の空席である椅子に腰掛ける前にすでに着席している二人の人物に向けて謝罪したのだった。
「いいからさっさと座れよ」
「メリッサ様、国王陛下に対して失礼ですよ」
一人は冒険者ギルドのギルドマスターであるメリッサ。
秘書らしき女性を後ろに従え、三つしか用意されていない椅子の一つに腰掛けている。
そして、一番最後に登場した今回の会議の発起人に対して嫌味を言い放つ。
「ホッホッホッホッホッ。メリッサさんは相変わらずパワフルですね。まぁ~時間は有限ですので、早く会議を始めるという点では私も賛成です」
もう一人は商業都市ロコンの市長にして商業ギルドのギルド長でもあるフッガー。
メリッサと同様に秘書であるフィリップを従え椅子に腰掛け、国王レオンハルトの着席を待っていた。
「本当にすまない。何かとバタバタしていてな」
最後の一つである椅子に腰掛けたレオンハルトは改めて二人に謝罪をする。
そして、二人と視線を交わすと会議の開始を告げたのだった。
「二人とも忙しい中よく集まってくれた。それでは、これよりガルディア王国三大組織による頂上会談を始める!!」
そこでミロクの口から告げられたのは、獣王国の王である獣王ゼリックが過去にミロクの下で剣の腕を磨いた弟子であったというものだった。
「獣王が僕たちの兄弟子・・・」
「師匠、それってホントですか!?」
「ああ、本当じゃよ。一番弟子のメリッサから一年程遅れて修行をつけ始めたはずじゃからな。ほぼ同時期に剣の腕を磨いておったわ。懐かしいのう」
突然告げられた事実に驚きを隠すことが出来ないミリアとマクスウェル。
剣聖ミロクの二番弟子にして、ミロクと同じく“四聖”の一人に数えられ“剛剣”の異名を持つ冒険者ギルドのギルドマスターメリッサの弟弟子 ────── そんな男が弱いわけなどない。
それどころか、もしかすると“四聖”に割って入るほどの力を要している可能性すらある。
さらにいうと、ミロクより教わった剣技に加えて獣人族特有の身体能力が合わさるとなると、その実力は未知数であると言わざるを得ない。
「ちょっと師匠!獣王国と戦争にでもなったら、その獣王も出てくるんじゃないの」
「ホッホッホッ。あやつのことじゃから最前線で飛び出してくるかもしれんのう」
「ミロク様、獣王ゼリックというのは強いのですか?」
緊迫した表情のミリアたちに対して穏やかな笑顔を見せながら落ち着いた様子のミロク。
そして、何かを懐かしむように話し始めた。
「長らく会っておらんからのう。最後に会ったのは、確か五年程前じゃったかな?軽く手合わせをしたが腕は全く落ちておらんかったわ。まぁ~今のお主らでは手も足も出んじゃろうな。ホッホッホッホッホッ」
「ちょっと笑いごとじゃないわよ!最悪ソイツとも戦わないといけないのに」
「止めておけ。もしゼリックと相対しても決して戦ってはならん。何も考えずにその場を離れるんじゃ」
敵前逃亡。
剣士にとってこれほどまでに屈辱的なことはない。
しかもミロクの言葉をそのまま受け取るのであれば、剣を交えることすらも叶わないということである。
『そんなことはプライドが許さない!!』
ミリアの顔にはハッキリとそう書いてある。
しかし、今は修行中の身。
師匠であるミロクの言葉は絶対である。
どれほど惨めで、どれほど悔しく、どれほど腹立たしくともその注告を受け入れなければならない。
「あーーーもう!クソッ!!」
苦虫を噛み潰したような表情を見せ、自身の無力さと脆弱さに苛立つミリア。
その時、そんな彼女の思いを誰よりも理解するマクスウェルが獣王ゼリックについてさらに質問する。
「獣王ゼリックとはそれほどなのですか?ミロク様より剣技を学び、メリッサさんと共に腕を磨いた方が弱いとは思いませんが、やはり“四聖”と呼ばれる方々と肩を並べるくらいの強さということでしょうか?」
「うむ。単純な剣技だけでいえばメリッサの方が遥かに強い。じゃが、あやつは稀少な“雷獣”の力を有しておる。その力は天候すらも操る」
「そ…それは…、人が太刀打ち出来るような相手なのでしょうか?最高難易度の魔獣すらも凌駕しそうですが・・・」
「まぁ~やりようはいくらでもある。それでも、今のお主らではそもそもの実力差があり過ぎて話にもならんのだがのう。今は急がず慌てずじっくりと力を付けるんじゃ」
ミロクの言葉が二人の心に突き刺さる。
そもそも修行も始まったばかりであり、まだまだ基礎中の基礎の段階である。
そんな二人がミロクの修行を最後までやり切った兄弟子に敵うはずもない。
そのことは二人も重々承知している。
それでも仮に戦争が始まってしまい獣王を始め獣王国の戦士たちと戦うことになった時、ただ指を咥えてやられるわけにはいかないのだ。
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
二人は再び剣を振り始める。
いつ戦いが始まるかは分からない。
今日明日でいきなり強くなるようなお伽話みたいなことはない。
それでも今の自分に出来ることはある。
三年後、五年後、十年後に勝つために ───── 今、出来ることをやるのだ。
二人にとってそれは剣を振ること。
この一振り一振りが未来の自分を強くする ──────── 。
そう信じてただひたすらに剣を打ち込むミリアとマクスウェル。
そんな二人の姿に、かつて自身の下で剣を学び、毎日飽きることなく一心不乱に剣を振り続けていたメリッサとゼリックの姿を重ね合わせるミロクなのであった。
「ハァ…ハァ…ハァ…。もう一本いくわよ!」
「ハァ…ハァ…ハァ…。もちろんです!」
「ホッホッホッ。大丈夫、お主らは強くなるよ」
懸命に剣を振り続ける二人を前に嬉しそうな笑みを浮かべながらミロクはそう呟くのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ガルディア王国に獣王国からの使者が訪れてから一週間後 ──────── 。
ガルディア王国王城 ~会議室~
──────── ガチャッ。
「待たせてすまない」
扉が開かれると忙しい様子の国王レオンハルトが聖騎士長アーサーを引き連れて会議室へと入ってきた。
そして、最後の空席である椅子に腰掛ける前にすでに着席している二人の人物に向けて謝罪したのだった。
「いいからさっさと座れよ」
「メリッサ様、国王陛下に対して失礼ですよ」
一人は冒険者ギルドのギルドマスターであるメリッサ。
秘書らしき女性を後ろに従え、三つしか用意されていない椅子の一つに腰掛けている。
そして、一番最後に登場した今回の会議の発起人に対して嫌味を言い放つ。
「ホッホッホッホッホッ。メリッサさんは相変わらずパワフルですね。まぁ~時間は有限ですので、早く会議を始めるという点では私も賛成です」
もう一人は商業都市ロコンの市長にして商業ギルドのギルド長でもあるフッガー。
メリッサと同様に秘書であるフィリップを従え椅子に腰掛け、国王レオンハルトの着席を待っていた。
「本当にすまない。何かとバタバタしていてな」
最後の一つである椅子に腰掛けたレオンハルトは改めて二人に謝罪をする。
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「二人とも忙しい中よく集まってくれた。それでは、これよりガルディア王国三大組織による頂上会談を始める!!」
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