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頂上会談(後編)
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ガルディア王国国王レオンハルト、冒険者ギルドギルドマスターメリッサ、商業ギルドギルド長フッガー、ガルディア王国を支える三大組織のトップである三人が集結し、獣王国ビステリアによる攻撃に対してガルディア王国としてどのように対処するのか話し合いが行われていた。
そして、いよいよその最終的な方針が決められようとしていた。
「フゥー・・・。それでは我々の方針を決めようか」
大きく息を吐いた後、レオンハルトが目の前に座る二人に最後の確認を取る。
そして、獣王国からの攻撃に対して武力をもって対抗することが満場一致で可決されたのだった。
しかし、国王であるレオンハルトの胸中としてはかなり複雑なものとなっていた。
それでも目の前に避けられない戦いがあるのであれば、自国の民を守るためにも覚悟を決めて戦わなければならない。
一国の王として決断しなければならない時がある。
そして ─────── 今がまさにその時なのだ。
「それで、この戦争はいったいどこまでやるつもりだ?」
レオンハルトにとっては一難去ってまた一難。
ひと息つく間もなくメリッサからこの戦争の落とし所をどこにするのかという質問がなされる。
元冒険者として戦いの中に身を置いていたメリッサとしてはごくごく当然のことである。
冒険者時代には相手を完膚無きまでに叩きのめしていた彼女のことを考えると、むしろ“どこまでやるのか”という選択肢を与えようとしているだけ丸くなったのかもしれない。
「どこまでというのは?」
「はぁ?これだから温室育ちのお坊ちゃんは ───── 。俺たちはこれから戦争するんだろ?相手をどこまでブチのめすのかって話だよ!お前でも分かるように言うと、徹底的に攻めて攻めて攻めまくって獣王国そのものを滅ぼすのかって聞いてんだ!!」
「それだけは絶対に許さん!!!!!」
メリッサの発言にこれまでとは比べ物にならないほどに語気を強めて反対の意を示すレオンハルト。
自分たちの考えに従わない者、意にそぐわない者を排除する ──────── 。
それはレオンハルトにとって最も嫌悪する手段の一つであり、それを許すということは彼の信念に反するものであった。
そんなレオンハルトのあまりの剣幕にメリッサとフッガーでさえも圧倒されるのだった。
「お…おお…。ビックリした~。いきなり大声出すなよ」
「ああ…、すまない」
「ホッホッホッ。国王にも譲れない熱い想いがあるようですね。まぁ~私と致しましても獣王国を滅ぼすことには反対です。獣王国からもたらされる食材や素材はたいへん貴重であり、周辺の山岳地帯に生息している資源というのは我々では入手することが不可能なのですよ。それこそ獣人族でないと採取することが出来ませんからね。もし滅ぼすということでしたら我々は手を引かせて頂きます」
さすがは商人である。
どこまでいっても最優先は商売なのだ。
それ故に関係の深く太い取引先を失うことなどあってはならない。
そのため戦争後に獣王国と和平協定を結ぶことを大前提として今回の件に協力するということなのであった。
そして、ここでフッガーの言葉にレオンハルトが続く。
「私も獣王国を滅ぼすことに関しては断固として反対する。今回はあくまでも話し合うための戦争だ。獣王国軍を無力化することさえ出来れば無理に殺す必要は無い」
「はいはい、お前らの考えは理解したよ。まぁ~今回の主力は聖騎士団だろ。俺たち冒険者はあくまでもサポートとバックアップだ。好きにしたらいい」
レオンハルトとフッガーの言葉を聞きそれぞれの覚悟と想いを受け取ったメリッサはそれ以上の言葉を発さなかった。
─────────────────────────
三大組織の役割は明確である。
▪️王国は軍の編成と王都の防衛。
▪️冒険者ギルドは王国軍のサポートとバックアップ及び首都以外の街の警備。
▪️商業ギルドは食料などの物資の調達及び運搬。
そして、三人はさっそくそれぞれの側近に対して指示を出す。
レオンハルトはアーサーに十二の剣と筆頭魔法師ギュスターヴを召集し、軍の編成及び首都メルサの防衛を指示。
メリッサは秘書の女性に各支部に街の警備の強化とBランク以上の冒険者に対して特別依頼を手配するように指示。
フッガーはフィリップに商業ギルドへ物資の調達と運搬経路の確認と確保及び警備を指示。
それぞれが指示を出し終えひと段落ついたかと思われたのだが、メリッサはどこかスッキリしない表情をしていた。
その理由は冒険者たちへの特別依頼にあった。
冒険者ギルドにおいて最高戦力というのは間違いなくSランクの冒険者たちだ。
しかし、実際のところ彼らが今回の呼び掛けに応じるかどうかは不透明である。
特に現在ガルディア王国に五つしか存在しないSランククランに関しては、それぞれが一癖も二癖もあり、自分たちの欲求を満たすものでない限りは一切動こうとはしない。
それが分かっているからこそ、メリッサの心中は穏やかでなかったのだ。
誰しもが戦争をするということに対して不安はあるものの、各組織のトップがそれぞれ指示を出したことにより、戦争に向けて大きく舵が切られることとなった。
国王レオンハルトを始め和平を望むガルディア王国ではあるもののこれは遊びではない。
正真正銘の戦争である。
両者が一滴の血も流さずに無血終戦などあろうはずがない。
そのことはレオンハルトも重々承知してはいるが、自身の代わりに戦うことになる騎士や冒険者たちのことを想うとなんとも言い難い気持ちになるのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ガルディア王国が誇る三大組織のトップたちが集まり話し合いをしていたちょうどその時、時を同じくして獣王国ビステリアでも獣王ゼリックによって召集された十二支臣が会議用の大広間に集結し、椅子に腰掛け獣王の到着を待っていた。
「ハァ~・・・眠い・・・。獣王様はまだなの?僕、寝てていい?」
「うるさい!黙って待ってなさい。締め殺すわよ」
「っていうか~、今日は~何の用で~呼ばれたの~」
「まぁ~我々十二支臣が全員集まることなど滅多にありませんからね」
「ウッキッキッキッキッ。それほどの事が起こるッキ」
「・・・・・」
「ガルディアとやり合うんだよ」
「ガルルルルルルルル。おいブル、それは本当なのか」
「イノッシッシッ。ガルディアか~ぶつかりがいのある子はいるかな~」
「誰が相手だろうと蹴り殺せばいい」
「みんな~甘い物持ってきたピョン!獣王様が来るまでお茶でもしながら待つピョン」
「オイラは急いでひとっ飛びしてきたからちょいと羽を休めてるよん」
獣王国が誇る十二名の精鋭たち。
こちらはこちらでなかなかクセのあるメンバーが揃っている。
純粋な力こそが自身の存在証明となる獣王国ビステリアにおいて、その地位を得ているということが彼らの実力を表している。
そして、そんな十二支臣たちが自由気ままに騒いでいると大広間唯一の扉がゆっくりと開かれたのだった。
ギィーーーーーッ。
「おう、ちゃんと全員揃ってるな。さぁ~さぁ~野郎ども、戦争を始めようか!!」
そして、いよいよその最終的な方針が決められようとしていた。
「フゥー・・・。それでは我々の方針を決めようか」
大きく息を吐いた後、レオンハルトが目の前に座る二人に最後の確認を取る。
そして、獣王国からの攻撃に対して武力をもって対抗することが満場一致で可決されたのだった。
しかし、国王であるレオンハルトの胸中としてはかなり複雑なものとなっていた。
それでも目の前に避けられない戦いがあるのであれば、自国の民を守るためにも覚悟を決めて戦わなければならない。
一国の王として決断しなければならない時がある。
そして ─────── 今がまさにその時なのだ。
「それで、この戦争はいったいどこまでやるつもりだ?」
レオンハルトにとっては一難去ってまた一難。
ひと息つく間もなくメリッサからこの戦争の落とし所をどこにするのかという質問がなされる。
元冒険者として戦いの中に身を置いていたメリッサとしてはごくごく当然のことである。
冒険者時代には相手を完膚無きまでに叩きのめしていた彼女のことを考えると、むしろ“どこまでやるのか”という選択肢を与えようとしているだけ丸くなったのかもしれない。
「どこまでというのは?」
「はぁ?これだから温室育ちのお坊ちゃんは ───── 。俺たちはこれから戦争するんだろ?相手をどこまでブチのめすのかって話だよ!お前でも分かるように言うと、徹底的に攻めて攻めて攻めまくって獣王国そのものを滅ぼすのかって聞いてんだ!!」
「それだけは絶対に許さん!!!!!」
メリッサの発言にこれまでとは比べ物にならないほどに語気を強めて反対の意を示すレオンハルト。
自分たちの考えに従わない者、意にそぐわない者を排除する ──────── 。
それはレオンハルトにとって最も嫌悪する手段の一つであり、それを許すということは彼の信念に反するものであった。
そんなレオンハルトのあまりの剣幕にメリッサとフッガーでさえも圧倒されるのだった。
「お…おお…。ビックリした~。いきなり大声出すなよ」
「ああ…、すまない」
「ホッホッホッ。国王にも譲れない熱い想いがあるようですね。まぁ~私と致しましても獣王国を滅ぼすことには反対です。獣王国からもたらされる食材や素材はたいへん貴重であり、周辺の山岳地帯に生息している資源というのは我々では入手することが不可能なのですよ。それこそ獣人族でないと採取することが出来ませんからね。もし滅ぼすということでしたら我々は手を引かせて頂きます」
さすがは商人である。
どこまでいっても最優先は商売なのだ。
それ故に関係の深く太い取引先を失うことなどあってはならない。
そのため戦争後に獣王国と和平協定を結ぶことを大前提として今回の件に協力するということなのであった。
そして、ここでフッガーの言葉にレオンハルトが続く。
「私も獣王国を滅ぼすことに関しては断固として反対する。今回はあくまでも話し合うための戦争だ。獣王国軍を無力化することさえ出来れば無理に殺す必要は無い」
「はいはい、お前らの考えは理解したよ。まぁ~今回の主力は聖騎士団だろ。俺たち冒険者はあくまでもサポートとバックアップだ。好きにしたらいい」
レオンハルトとフッガーの言葉を聞きそれぞれの覚悟と想いを受け取ったメリッサはそれ以上の言葉を発さなかった。
─────────────────────────
三大組織の役割は明確である。
▪️王国は軍の編成と王都の防衛。
▪️冒険者ギルドは王国軍のサポートとバックアップ及び首都以外の街の警備。
▪️商業ギルドは食料などの物資の調達及び運搬。
そして、三人はさっそくそれぞれの側近に対して指示を出す。
レオンハルトはアーサーに十二の剣と筆頭魔法師ギュスターヴを召集し、軍の編成及び首都メルサの防衛を指示。
メリッサは秘書の女性に各支部に街の警備の強化とBランク以上の冒険者に対して特別依頼を手配するように指示。
フッガーはフィリップに商業ギルドへ物資の調達と運搬経路の確認と確保及び警備を指示。
それぞれが指示を出し終えひと段落ついたかと思われたのだが、メリッサはどこかスッキリしない表情をしていた。
その理由は冒険者たちへの特別依頼にあった。
冒険者ギルドにおいて最高戦力というのは間違いなくSランクの冒険者たちだ。
しかし、実際のところ彼らが今回の呼び掛けに応じるかどうかは不透明である。
特に現在ガルディア王国に五つしか存在しないSランククランに関しては、それぞれが一癖も二癖もあり、自分たちの欲求を満たすものでない限りは一切動こうとはしない。
それが分かっているからこそ、メリッサの心中は穏やかでなかったのだ。
誰しもが戦争をするということに対して不安はあるものの、各組織のトップがそれぞれ指示を出したことにより、戦争に向けて大きく舵が切られることとなった。
国王レオンハルトを始め和平を望むガルディア王国ではあるもののこれは遊びではない。
正真正銘の戦争である。
両者が一滴の血も流さずに無血終戦などあろうはずがない。
そのことはレオンハルトも重々承知してはいるが、自身の代わりに戦うことになる騎士や冒険者たちのことを想うとなんとも言い難い気持ちになるのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ガルディア王国が誇る三大組織のトップたちが集まり話し合いをしていたちょうどその時、時を同じくして獣王国ビステリアでも獣王ゼリックによって召集された十二支臣が会議用の大広間に集結し、椅子に腰掛け獣王の到着を待っていた。
「ハァ~・・・眠い・・・。獣王様はまだなの?僕、寝てていい?」
「うるさい!黙って待ってなさい。締め殺すわよ」
「っていうか~、今日は~何の用で~呼ばれたの~」
「まぁ~我々十二支臣が全員集まることなど滅多にありませんからね」
「ウッキッキッキッキッ。それほどの事が起こるッキ」
「・・・・・」
「ガルディアとやり合うんだよ」
「ガルルルルルルルル。おいブル、それは本当なのか」
「イノッシッシッ。ガルディアか~ぶつかりがいのある子はいるかな~」
「誰が相手だろうと蹴り殺せばいい」
「みんな~甘い物持ってきたピョン!獣王様が来るまでお茶でもしながら待つピョン」
「オイラは急いでひとっ飛びしてきたからちょいと羽を休めてるよん」
獣王国が誇る十二名の精鋭たち。
こちらはこちらでなかなかクセのあるメンバーが揃っている。
純粋な力こそが自身の存在証明となる獣王国ビステリアにおいて、その地位を得ているということが彼らの実力を表している。
そして、そんな十二支臣たちが自由気ままに騒いでいると大広間唯一の扉がゆっくりと開かれたのだった。
ギィーーーーーッ。
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