魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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十二支臣

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「おう、お前ら待たせたな!ちゃんと全員揃ってんじゃね~か」


会議室に入るや否や嬉しそうに声を張り上げる獣王ゼリック。


「さぁ~さぁ~野郎ども、戦争を始めようか!!」


何の説明もなく急遽今回の会議に呼び出された十二支臣の面々は事前にブルより軽く情報を得てはいたのだが、まさか戦争という大事にまで発展しているとは思いもよらず驚愕した表情を見せた。


「ガッハッハッ。いいね、いいね~。その顔が見たかったんだよ。マヌケ面並べやがって最高だな」


大喜びする獣王ゼリック。
どうやら自身の思い描いた通りの状況となったことに満足したようで、未だ驚きを隠せないでいる部下たちを前にご機嫌な様子を見せながら自身のために空けられた椅子へと腰掛けたのだった。


「獣王様、十二支臣の皆様が固まっておられますよ。急にお呼びだてしたわけですからご説明をした方が宜しいかと」


自身の欲求が満たされたことに満足しているゼリックに対して、側近が今回急遽十二支臣を集めたことの説明をするようにと促す。


「ガッハッハッ。それもそうだな。お前ら忙しい中よく集まってくれた。それじゃ、仕方ねぇ~から説明してやるよ」


─────────────────────────


今回会議の場に集められたのは獣王国ビステリアが誇る十二名の精鋭たち。
その名も『十二支臣』。


=========================


【十二支臣】

子:月日のマウルス(鼠の獣人)

丑:闘牛のブル(牛の獣人)

寅:猛獣タイガード(虎の獣人)

卯:跳弾ピヨン(兎の獣人)

辰:炎獄のドラン(大翼蜥蜴の獣人)

巳:万毒のスネル(蛇の獣人)

午:暴脚のホルス(馬の獣人)

未:幻惑のメール(羊の獣人)

申:妖猿サルザール(猿の獣人)

酉:飛翔バルバドール(鳥の獣人)

戌:噛砕ドルグ(犬の獣人)

亥:猛進ボウア(猪の獣人)


=========================


これまでにも十二支臣の内数名が召集されることはあったが、十二名全員が一堂に会するというのは滅多にあることではなく、現体制においてはゼリックが王座についた就任式の時以来初めてのことであった。
それ故、集められた十二支臣の面々はいったい何事かと思いながら獣王の到着を待っていたのだ。


「え~っと、まぁ~なんだ、さっき言った通りガルディアと戦争するぞ」


なんとも適当な説明である。
いや、もはや説明ですらない。
当然このような説明で納得出来るはずもなく、十二支臣の中から声が上がる。


「獣王様、それは本気なのですか?ブルからガルディアとぶつかるとは聞いていましたが、戦争となるとかなりの大事ですよ」

「なんだなんだ?鉄をも噛み砕くと恐れられている噛砕ごうさいドルグがまさかヒト族相手にビビってんのか?」

「いえ、決してそのようなことは・・・」


獣王国ビステリア。
力こそが絶対的な正義であるという考えの下、完全な実力社会となっているこの国では敵を前にして引くということは御法度である。
ましてや今この場に集まっているのは獣王国において圧倒的な力を有している実力者ばかり。
そんな立場の者が戦う前から逃げ腰であるなんてことはこの国では許されざること。
それは獣王国を代表する者として、獣王国を守護する者として当然のことであった。


「ガルルルル。獣王よ、それはあの大国ガルディアと全面戦争ということで間違いないか」

「ああ、その受け取りで間違いない」

「いいね、いいね~。そういうことならガルディアのアイツら…なんと言ったか?」

「ウッキッキッ。十二の剣ナンバーズッキね」

「おお、そうだそうだ。十二の剣ナンバーズとかいう強ぇヤツらとガチンコ勝負が出来るんだろ。最高じゃねぇ~か!!」


十二支臣の中でも特に好戦的な性格をしている虎の獣人タイガードが興奮気味に笑みを漏らす。


「獣王様~」

「あん?何だマウルス」

「ハァ~・・・ガルディアと戦争なんて・・・面倒臭そうだから・・・僕は寝てていい?」

「ダメに決まってんだろうが!相手の十二の剣ナンバーズも十二人いるからな、当然お前にもその内の誰かを相手してもらうぞ」

「ハァ~・・・面倒だなぁ~・・・。やるなら一番弱いやつにしてよ。さっさと殺して寝るからさ」

「ガッハッハッ。お前のそういう所が気に入ってんだよ。それでこそ獣人族だ」


一見するとやる気が無さそうに見えてもやはり獣人族。
やる気無し、覇気無し、大人しそうな鼠の獣人であったとしても獣の本能は持ち合わせている。


弱肉強食。
それは自然の摂理である。

強き者が勝ち。
弱き者が負ける。

勝者は生きることを許され。
敗者は生きることも許されない。


自分たちの世界を創り、生活圏を構築し、安心安全の中で日々を過ごしているヒト族にとってはなかなか実感しづらいかもしれない。
しかし、一日一日を生きるか死ぬかの中で生活することを強いられた獣たちにとってそれは至極当然なこと。
獣人族は今でこそヒト族との交流があり似たような生活圏を構築しつつあるが、元はその摂理の中を勝ち抜いてきた種族なのだ。
その本能は決して失われることはなく、それ故に未だに実力主義の社会となっているのである。


「他になんか言いたい奴はいるか?」

「「「「「 ・・・・・ 」」」」」


獣王の問い掛けに沈黙が広がる。
突然のことに困惑しているというのもあるが、それに関して反対することもないため発する言葉を探しているようでもあった。
その時、一人の獣人が手を挙げる。


スッ ──────── 。


「獣王様、二つ聞いてもいいかい?」

「何だ?バルバドール」

「戦争をするのは別にいいんだけど、なんで突然ガルディアとやる気になったんだい?それから、この戦争・・・いったいどこまでやるつもりなんだよん?」


十二支臣全員が思っていたことをバルバドールが質問する。
確かに戦う理由というのは重要なポイントである。
そして、戦争となればどこまで戦い、どこを落とし所とするかによって作戦も大きく変わってくる。
ガルディア王国でも話し合われていたこの問題は、当然獣王国にとっても重要な問題であった。

そして、ここから場の空気が一変することとなる ───────── 。


「ガルディアのバカどもに同胞が殺された。なんの罪もない商人たちだ。二十名が襲われ、その内二名が殺された ───── 幼い二人の子供を残してな」

「「「「「 なっ!? 」」」」」

「ヒト族どもめ!ふざけた真似を・・・。全員絞め殺してやるわ」


獣王によって語られた今回の事件。
それを聞いた十二支臣たちの顔色は一気に変わり、部屋中に怒りに満ちた殺気が漂う。
そして、それを確認した獣王ゼリックは不敵な笑みを浮かべながら話を続ける。


「そんな事をされて許せるのか?話し合いで終わらせられんのか?俺様には無理だ!!」

「ウチも無理ピョン」

「因果~応報~。やったら~やり返される~」

「蹴り殺そう ────── そんなやつらは全員血祭りだ!」

「イノッシッシッ。ガルディアのクソどもは全員轢き殺してやりましょう」

「・・・・・」


十二支臣たちからさらに殺気が溢れ出る。
もはや話し合いなどする気もない。
全員が徹底的にやるつもりだ。
そして、ここで獣王ゼリックがバルバドールの二つ目の質問に答える。


「どこまでだ?最後までに決まってんだろ!徹底的にガルディアを攻め滅ぼす。そして、愚かなヒト族を俺たち獣人族の支配下に置く!!」



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