魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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混乱

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コンコンコン ──────── ガチャッ。


「失礼致します」

「おい、軍議中だぞ!」

「申し訳ありません。ですが、緊急のご報告が ───── 」

「良い。申せ」


ガルディア王国国王であるレオンハルトを始め聖騎士長アーサー、筆頭魔法師ギュスターヴ、大臣ドルーマンによる軍議の最中に一人の兵士が会議室へと駆け込んできた。
その無礼に対してドルーマンが叱責しようとしたが、急を要するとのことでありレオンハルトはそれを受け入れたのだった。


「ハッ、新たに中間都市ギャシャドゥル周辺の五つの村や町が獣人族によって襲われました。今回は今のところ死亡者は確認されていないようですが、負傷者多数、家屋には火が放たれたとのことです」

「クッ…またか…。報告ご苦労、下がってよいぞ」

「ハッ、失礼致します」


報告を受けたレオンハルトは頭を抱える。
これまでにも同様の報告が連日されており、その全てが小さな村や町を狙ったものであった。
それによってレオンハルトたちも連日対応に追われ、打開策を見つけるべく夜通し軍議が開かれていたのだった。


「さてさて、どうしたものでしょうかね~」

「フゥー・・・。さすがに五日連続ともなると応えるな」


連日報告される被害の数々に頭を悩ませながらもこれ以上国民を傷つけさせるわけにはいかないと軍議を続けてきた。
しかし、大都市や中間都市だけならまだ守りようもあるのだが、その周辺に点在している無数の村や町まで全てを守ることは容易ではない。
その解決策を必死に探している中でのさらなる被害報告を前に歴戦の猛者であるアーサーやギュスターヴですらも疲労の色を隠せなくなっていた。


「今回はギャシャドゥル周辺か・・・」

「初日・二日目は商業都市ロコン周辺が襲われ、三日目は王都メルサ周辺、四日目はモア周辺、そして今日がギャシャドゥル周辺とバラバラで法則性もないですからね」

「しかし、少しずつ分かってきたこともありますぞ。今ガルディアに攻撃してきている部隊を率いているのは、虎の獣人・猿の獣人・鳥の獣人とのこと」


獣王国からの攻撃に対して受け身の状態が続いてはいたものの、少しずつではあるが敵の姿も見え始めていた。


「アーサー、そいつらに心当たりはあるか?」

「はい。恐らく十二支臣のやつらでしょう。報告されている風貌から察するに“猛獣タイガード”・“妖猿サルザール”・“飛翔バルバドール”であると思われます」

「十二支臣…。獣王国が誇る精鋭を送り込んできているにも関わらず王都メルサどころか大都市や中間都市を狙ってこないのは何故だと思う?」

「それはこちらの戦力を分散させるためでしょう。ガルディアと獣王国では戦力差があり過ぎますからな」

「そう単純な話であればどれほど楽か」

「何じゃギュスターヴ、わしが何も考えておらんとでも言いたいのか!!」

「ハァ~、そうカリカリするな。あの曲者として有名な獣王がただ戦力を分散させるためだけにこのようなまどろっこしいことをするのかという話だ」

「う~む。確かに揺動にしては単調過ぎるような気もするな」


四人で連日話し合っているにも関わらずなかなか打開策を見つけることが出来ず話もまとまらない。
すでにガルディア王国中に獣王国との戦争が始まる旨は通達してある。
兵士たちにも厳戒態勢を敷かせており、小さな村や町への巡回も増やしている。
それでも獣王国の攻勢は止まらない。
それどころか戦禍は広がる一方である。
そこにきて獣王国が誇る最高戦力『十二支臣』の登場。

問題は山積みだ。
そして次に何処が狙われるかも分からない。
それでも彼らには一刻も早い対処が求められている。


「陛下、恐れながら発言させて頂きますが・・・そろそろこちらから攻めるというのは如何でしょうか?」

「・・・・・」


これまでの軍議の中でもガルディア王国側から獣王国へ向けて進軍するという案は何度か出されていた。
その度にレオンハルトは躊躇していたのだ。
しかし、もはやそのような悠長なことを言っていられる場合ではなくなっている。


「アーサー、ギュスターヴ」

「「 ハッ 」」

「各軍の準備は?」

「我が軍及び全十二軍準備は出来ております」

「同じく我が魔法師団も準備出来ております」

「そうか・・・。それでは軍の編成が完了次第、獣王国ビステリアへ ────── 」


コンコンコン ──────── ガチャッ。


「度々失礼致します」

「今度は何じゃ!」

「獣王国に新たな動きがありました」

「して、次は何処だ?」

「ギャシャドゥルです。周辺の村や町を襲った一団が集結してそのままギャシャドゥルへと向かった模様。その数、千~千五百とのことです」

「なんだと!?それではすぐに聖騎士団を ────── 」

「陛下!お待ちください」

「??アーサー、何を言っているんだ。相手は千を超える数で攻めてきているんだぞ!すぐに応援を向かわせねば間に合わなくなる」

「ご安心ください。ギャシャドゥルでしたら近くに冒険者の街リザリオがあります。それにギャシャドゥルには ────── あの男がいます」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


その頃、獣人族の軍団に迫られていたギャシャドゥルでは冒険者ギルドに事態の現状とその数が報告されていた。


冒険者ギルド ギャシャドゥル支部 ───── 支部長室。


「支部長」

「おやおやオリヴィアさん、いったい何事ですか?」

「獣人族の軍団がこちらに向かって来ております。その数、千~千五百程度。最近あちこちの村や町が獣人族に襲われていることを考えると、今回はここギャシャドゥルが狙われたのかと思われます。如何なさいますか?」

「フム・・・それは大変ですね~。これから獣王国との戦争が始まるということを考えると冒険者の皆さんをこんなところで負傷させるわけにはいきませんし・・・。分かりました、私が行きましょう」

「まっ…まさか、お一人で行かれるつもりですか?」

「ええ、そうですよ」

「相手は千を超す数ですよ。私もお供致します」

「フフフフフッ、美女に戦場は似合いませんよ。温かい紅茶でも準備しておいてください。それに千五百程度の獣相手でしたら老いたとはいえ私一人で十分ですよ」


この時、獣人族の軍団を率いていたのは猛獣タイガードであった。
血に飢えたこの男は獣王の命令を無視し、小さな村や町では満足出来ずに中間都市へ侵攻しようとしていたのだ。
しかし、この判断が大きな過ちであることをこの時のタイガードは知る由もなかった。



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