魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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開戦①

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獣王国ビステリアによるガルディア王国への宣戦布告から始まった今回の戦争。
ついに両軍が顔を合わせる。
早朝に首都メルサを出発した王国軍がパスカル大山脈の中腹にて獣王国軍と相対したのはちょうど昼を回った頃であった。

この日の空は雲ひとつ無い快晴が広がっており、大地には陽の光が燦々と降り注いでいた。
しかし、両軍が対峙しているパスカル大山脈の中はまるで世界から隔離されたかのように薄暗い世界が広がっている。
それでもすでに入山してから三時間以上が経ち、最初は戸惑いを見せていた王国軍の騎士たちもだんだんとその環境にも慣れ始めていた。


ここで両軍の戦力について話しておこう。

ガルディア王国の軍勢は、各聖騎士団の精鋭1,000人、トライデント1,000人(アルバート直属の部隊100人、紅の騎士団300人、蒼の騎士団300人、黒の騎士団300人)、ローズガーデン800人による総勢11,800人。

対する獣王国ビステリアの軍勢は、各十二支臣の部隊500人ずつによる総勢6,000人。

その戦力差は約二倍。
戦前の予想通り数の上で圧倒的に有利な王国軍ではあるのだが、獣王国軍にはその劣勢を跳ね返せるだけの地の利がある。
そのような状況下でいよいよ開戦することとなったガルディア王国と獣王国ビステリアによる戦い。
その先陣を切ったのは第四軍の戦闘地であった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


~ 第四軍戦闘地 ~

「ガルルルル。さっさとらせろ!!」

「本当に戦うことしか頭に無いピョン」

「いい加減殺す殺すっていうのやめなさい。余計に弱く見えるわよ」

「うるせーぞ!こっちは血に飢えてんだ。奴等の肉を引き裂かせろ」

「タイガード・・・。粋がるのは別にいいけど言葉遣いには気をつけなさい。あまり調子に乗っているようならアンタから絞め殺すわよ」

「グッ・・・。悪かったよスネル姉さん」

「本当にいつまで経っても子供なんだから。残虐なのはいいけど頭は常に冷静にしておけって教えたでしょ」

「アハハハハ。猛獣と恐れられるタイガードもスネルにとっては子猫同然だピョン」


早く戦いたくてウズウズした様子のタイガード。
放っておくと今にも単身で突っ込んで行きそうである。
しかし、三人の中で最年長であるスネルがそんな彼を諌め冷静さを取り戻させるのであった。


─────────────────────────


「現れた十二支臣は三名。まず“猛獣タイガード”、先日ギャシャドゥルを襲った者です。あとは兎の獣人と蛇の獣人ですので ───── えーっと、報告書によりますと兎の獣人が“跳弾ピヨン”、蛇の獣人が“万毒のスネル”とのことです」

「報告ありがとうキリアン。それでは眼前の敵も分かったことですし、どのように戦いましょうか」


突如としてその姿を現した獣王国ビステリアの軍勢。
ちょうど休息を取っていた王国軍は急ぎ戦闘態勢に入るよう強いられたのだった。
そうして陣形を整えている間にケイ・エスター・シャルロッテの三人は第三聖騎士団の副団長であるキリアンより報告を受けていた。
そして、その報告を受け彼女たちは速やかに作戦について話し合いを始める。


「それではあの五月蝿い虎は我々ローズガーデンが受け持とう。あのような輩はさっさと始末しておいたほうがいい」

「畏まりました。それでは私の団で残りの兎と蛇のお相手を致しましょう。エクター様の団は双方の援護をお願い致します」

「うん、分かったよ。でも、ケイの団だけで十二支臣を二人も相手して大丈夫?」

「ええ、問題ありません。お相手の方々には早々に退場して頂き先を急ぎましょう」


こうしている間に軍の陣形が整い、それぞれの団長が配置に着く。
そして、それを確認したところでようやく獣王国軍が動き出す。
どうやら敵軍が準備を終えるのを待っていたようであり、そのことからも獣王国側の余裕が伺える。
そして、いよいよ開戦の時 ──────── 。


「やぁやぁ、アンタがこの軍を率いているケイかい?」

「はい。私がこのガルディア王国第四軍を率いる聖騎士団第三席ケイで間違いありません。貴方様方は十二支臣の“万毒のスネル”と“跳弾ピヨン”でお間違いありませんか?」

「うわぁ~、ウチらのこと知ってるピョン!まさかとは思うけど、ウチら二人の部隊をキミの団だけで相手するつもりピョン?」

「ええ、このくらいの相手でしたら私の第三聖騎士団であれば問題ありません」

「アンタここが何処だか分かって言ってるの?ヒト族ごときがこのパスカル大山脈でアタシら獣人族の相手になると思ってんの?」

「もちろんです」


獣王国の軍勢を前にしても一切動揺することなく、むしろ殺気を込めた圧を掛けてくるスネルに対して笑顔で応えるケイ。
その余裕綽々な態度がさらにスネルを苛立たせるのであった。


「あとで後悔することになるわよ。その細い首を圧し折ってやるわ」

「フフフフフッ。御託を並べるのはその辺りにしておいてそろそろ始めましょうか」

「クッ…小娘が!!」

「アハハハハ。ウチの部隊もやる気満々ピョン!さっさと始めるピョン」


ケイたちが開戦前の舌戦を繰り広げていたその頃、もう一方の戦場では別の意味でひと悶着が起きていた。


「なんだよ…雌ばっかりかよ…。完全にハズレじゃねーか」


ローズガーデンを前にしたタイガードは気落ちしたようにそう言葉を漏らした。
力と力のぶつかり合いを望んでいた彼としては屈強な男が並ぶ騎士団と拳を交えたい思いがあったのだろう。
しかし、ローズガーデンは女性だけで構成されたクランとはいえガルディア王国が誇る数少ないSランククランである。
そして、そこまでの地位に至った最大の要因であるシャルロッテの実力とカリスマ性を支持する団員たちにとってタイガードが発した言葉は決して無視出来るようなものではなかった。


「シャルロッテ様」

「うん?どうしたの?ソフィア」


タイガードの暴言に表情ひとつ変えることなく反応を見せないシャルロッテに対して、その言葉を決して許すことの出来ない副リーダーのソフィアが怒りに満ちた表情で声を掛ける。


「あのような低俗な獣ごときシャルロッテ様が出るまでもありません。我々の…いえ、私の剣で斬り刻んでやります」

「どうかしたの?今回の参戦にはあまり乗り気じゃなかったはずだけど・・・。無理しなくても私が ─────── 」

「いえ!シャルロッテ様に対する無礼な物言い。断じて許すわけにはいきません!!たかだか五百程度の獣、私たちだけで十分です。そうよね!みんな!!」

「「「「「 はい!!!!! 」」」」」


自身が発した言葉によって敵の士気が上がっていることなど知る由もなく、突然大声を出し臨戦態勢に入った敵軍を前にして笑みと滴るヨダレが止まらないタイガード。


「ガルルルル。なんだかよく分からんがやる気だけはあるようだな!お前らのような弱い雌などさっさと片付けて俺はもっと強い雄と戦いに行く!!」

「戯言を!貴様ごとき私の剣で細切れにしてやるわ」


こうしてガルディア王国第四軍とタイガードたちによる戦いによって、とうとう今回の戦争の火蓋が切って落とされたのだった。



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