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第三部
@51 折れ線
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僕は学園の医務室にいる。壁に折れ線やいくつもの数字が表示されていた。折れ線は僕の心電図で、他の数字は心拍数だとか、酸素飽和度だとか、ホルモンの分泌だとかを表しているようだった。
ベッドに横たわり、感染防止の透明板越しにユヅハに話しかける。身体がすこしだるかった。
「風邪だってさ」
僕は呟く。ついさっき僕は保健医にそう診察されたのだ。自業自得だと言われれば言い返せない。何時間も寒いところに薄着でいたんだ、まったくもって僕自身のせいだ。
「よかった」
透明な板越しに聞くユヅハの声はくぐもっていた。
「僕が風邪を引いたのが?」
冗談だろうと僕は考え、小さく笑う。でも彼女は首を横に振る。
「ううん、ただの風邪でよかった」
「あぁ…そうだ、そうだね」
彼女は僕が体調を崩して発熱したと聞くや否や心配して医務室に飛んできた。僕はもはや前のように不養生をするわけにはいかない。自分の健康に責任を持たなくてはならない。それを自分のこと以上に心配する人間がいるのだ。そして僕はそれが嬉しかった。
「心配をかけたね」
ユヅハは頷く。
「そうだ、幽霊が消えたんだ」
僕は白い天井を見上げる。
「幽霊って、夏の頃から言っていた?」
「ああ、その幽霊がついに消えた」
僕は言葉を続ける。
「幽霊の正体は…どこまでも近くだった。探しても見つからなかったわけだ。雪は、僕自身だった」
僕はユヅハの心配そうな顔を見る。きっと彼女は僕が支離滅裂なことを言い出したと思っているだろう。
「安心してくれ、僕は大丈夫だ、自分がどれだけ奇妙なことを言っているかわかっているから」
「…じゃあ邏陽の見ている幽霊も彼女自身?」
「そうかもしれないね、魏雷進の姿をしていると言っていた」
「いまのコズ、安心したって顔してる。幽霊が消えて寂しくない?」
僕は夏休みの途中ぐらいからユヅハに対して雪への好意的な印象をたびたび話していた。いま思うと彼女は反応に困っただろう。
「会おうと思えばいつでも会えるからね」
「そう」
ユヅハは透明板を横に押しのけて僕の枕元でしゃがむ。
「いまは良くないよユヅハ、君に風邪を移したくない」
僕は思わず彼女から遠ざかる。
「これくらいなら大丈夫」
彼女は僕の頬にキスをした。壁に表示されていた僕の心拍数がちょっとだけ上がる。彼女はそれを見て微笑んだので、僕は恥ずかしくなってしまった。
「いつまでに治る?」
「薬を飲めば明日か明後日には治るってさ」
僕はベッド脇の机に置いてある白い錠剤を親指で差した。この学園の保健医は生徒への処方が許可されている。おかげで病気になってもすぐに治すことができる。
「よかった、クリスマスまでには治る」
僕は頷く。今日は十九日だ。まだ何日もある。
「ああ、何が何でも治してみせるよ」
ユヅハが去ったあと、経馬も僕の見舞いに来てくれた。僕と彼はいつものように取り留めのない話をした。身体の不調を忘れるぐらいに会話は僕を夢中にさせた。
ベッドに横たわり、感染防止の透明板越しにユヅハに話しかける。身体がすこしだるかった。
「風邪だってさ」
僕は呟く。ついさっき僕は保健医にそう診察されたのだ。自業自得だと言われれば言い返せない。何時間も寒いところに薄着でいたんだ、まったくもって僕自身のせいだ。
「よかった」
透明な板越しに聞くユヅハの声はくぐもっていた。
「僕が風邪を引いたのが?」
冗談だろうと僕は考え、小さく笑う。でも彼女は首を横に振る。
「ううん、ただの風邪でよかった」
「あぁ…そうだ、そうだね」
彼女は僕が体調を崩して発熱したと聞くや否や心配して医務室に飛んできた。僕はもはや前のように不養生をするわけにはいかない。自分の健康に責任を持たなくてはならない。それを自分のこと以上に心配する人間がいるのだ。そして僕はそれが嬉しかった。
「心配をかけたね」
ユヅハは頷く。
「そうだ、幽霊が消えたんだ」
僕は白い天井を見上げる。
「幽霊って、夏の頃から言っていた?」
「ああ、その幽霊がついに消えた」
僕は言葉を続ける。
「幽霊の正体は…どこまでも近くだった。探しても見つからなかったわけだ。雪は、僕自身だった」
僕はユヅハの心配そうな顔を見る。きっと彼女は僕が支離滅裂なことを言い出したと思っているだろう。
「安心してくれ、僕は大丈夫だ、自分がどれだけ奇妙なことを言っているかわかっているから」
「…じゃあ邏陽の見ている幽霊も彼女自身?」
「そうかもしれないね、魏雷進の姿をしていると言っていた」
「いまのコズ、安心したって顔してる。幽霊が消えて寂しくない?」
僕は夏休みの途中ぐらいからユヅハに対して雪への好意的な印象をたびたび話していた。いま思うと彼女は反応に困っただろう。
「会おうと思えばいつでも会えるからね」
「そう」
ユヅハは透明板を横に押しのけて僕の枕元でしゃがむ。
「いまは良くないよユヅハ、君に風邪を移したくない」
僕は思わず彼女から遠ざかる。
「これくらいなら大丈夫」
彼女は僕の頬にキスをした。壁に表示されていた僕の心拍数がちょっとだけ上がる。彼女はそれを見て微笑んだので、僕は恥ずかしくなってしまった。
「いつまでに治る?」
「薬を飲めば明日か明後日には治るってさ」
僕はベッド脇の机に置いてある白い錠剤を親指で差した。この学園の保健医は生徒への処方が許可されている。おかげで病気になってもすぐに治すことができる。
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