結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり

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一話

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「旦那様、私達もう離縁した方が良さそうですわ。」





そう言ったのはこの家の女主人。


丁寧に手入れをされた長く流れるような艶やかなベリー色の髪。
そしてルビーを嵌め込んだような美しい赤色の瞳をした女性。

5年前、ストレイ伯爵家からこのアレンベル侯爵家に親同士の政略結婚で嫁いで来たこの私、アルヴィラ・アレンベルだ。



「何…?」



その申し出に対し質素に聞き返しているのが、旦那様と呼ばれるこの男。


艶やかな黒髪を後ろにオールバックにしていて、その瞳はサファイアのような美しい青。
目鼻立ちは凛々しく表情は硬いが、俗に言うイケメンという類の男だ。

そう。この方こそが今現在、私が離縁を突きつけている相手。

この侯爵家の主であり、
私の夫、ダリウス・アレンベル侯爵だ。




「私がこのアレンベル家に嫁いで来てもう5年が経ちます。」


「それがどうした。」





私は思わず溜め息を溢す。


(相変わらず、私にだけは冷たいのね…。)


私の旦那であるダリウスは基本、私にだけはものすごく冷たい。
どこへ行っても何をしていても、妻とは思えない物凄い塩対応だ。
そのせいで社交界では変な噂が立つし、他の令嬢には嘲笑われるし、使用人の前でもそんな態度だから女主人としての格好がつかず、毎日恥をかかされ続ける日々だ。


正直言って、苦痛でしかない。



(もう我慢の限界よ……!)



旦那様は多分、私の事を嫌っている。
多分と言うか、絶対にだ。

しかし、私には思い当たるところで嫌われるような事をした覚えが全くなかった。
だから何が原因なのかもサッパリわからない。

本人に直接、原因を聞いても「そんなものはない。」と冷たく突っぱね返されるだけだった。



(何がないですって?!あからさますぎよ!"そんなものはない"訳がないじゃない…!!)



私たちは貴族間で良くも悪くもとても目立つ存在だ。
それは旦那様が人目を引くほどの美形で、侯爵という強い立場であることも深く関係している。

そんな私達は何かと噂の標的にされやすい。

そしてこの間、参加した社交界で旦那様のとある噂が飛び交っていたのを私は偶然、小耳に挟んだ。


「そういえばこの前の社交界で、旦那様がマーガレット様と不貞関係にあるという噂話を小耳に挟んだのですが、本当ですか?」


旦那様は肉を切っていたナイフを止めて眉をピクリとさせ怪訝な顔をしたが、それはほんの一瞬で、その後はいつもの仏頂面に戻り、何事もなかったかのように口を進めた。



「お前が気にするようなことではない。」


「……そうですか。」




(……私に不倫を気づかれても別に構わないってことね。)





彼のその度胸を素直に尊敬すると同時に、"随分舐められたものだわ"と、沸々と怒りが湧いた。



マーガレット様とは、ピンク色の髪に愛らしい顔立ちをした、愛想の良い女性だ。
彼女はこの帝国の由緒あるロミストリー伯爵家のご令嬢で、その愛らしさから社交界での評判もとても良くて、よく注目される存在だ。

元々は彼女の母親と、亡くなられてしまった旦那様のお母様が親友同士で、その繋がりで昔からよく交流していたらしい。


つまり、マーガレット様と旦那様は俗に言う"幼馴染"という関係なのだ。


「聞いた話によると、最近よくマーガレット様とお出かけになられている様子だとか。」



ちなみに明言しておくが、私は旦那様と出かけたことなど一度もない。


出掛けるどころか、私の名前すら呼ばない。
周りに指示する時は、"妻"とか"彼女"を使って巧みに名前を呼ぶのを避けている。


だがそれがまだマシだ。


直接私を呼ぶ時なんかそもそも名称でも何でもない。
大抵、"オイ"という呼びかけだけだ。

しかも仮にも同じ邸宅にいる夫婦なのにも関わらず、顔を合わせるのですら、こうして一日に一食共にできれば良い方ぐらいの頻度だ。
いや、もしかしたら週に3回か4回、顔を合わせるかどうかかもしれない。


確かに、最近たまに旦那様がお出掛けになられているのは見かけていた。

だがまさかあのマーガレット様とそのような淫らな関係にあるだなんて、その話を聞くまでは微塵も思いはしなかった。



だけどこれでやっとわかった。
旦那様が私にだけ特別冷たい理由。



(私との政略結婚で想い人であるマーガレット様と結ばることが叶わなかった…。だから私にだけは冷たかったのね。)


だけどこれは親同士が決めた結婚。
私だってお断りできればそうしたかったけれど、実際はどうすることもできない。
正直、私に八つ当たりされても困る。


すると珍しく今度は旦那様から口を開いた。



「……お前は他人から聞いたものを全て鵜呑みにするのか?」



(鵜呑みにしているんじゃなくて、貴方があまりに何も話してくれないものだから、周りから情報を集める他ないのよ...!)


とは思ったものの、流石にそれは言えなかった。



「だから聞いているのですよ。それは事実なのですか、と。」


そう言うと旦那様は顔を俯けて、気まずそうに答えた。



「......彼女と会っているのは事実だ。」


「...…そうなのですね。」




(......ほら、やっぱり。)



不貞の関係を否定しないということは、多分そう言うことなのだろう。


先程から側で待機している執事やメイド達は、この微妙な晩餐の空気にソワソワと落ち着かない様子だ。

それはそうだろう。

自身が使える主人と女主人が、こんなにも険悪な雰囲気なら誰だって気まずくもなる。

それもこんな最悪な空気の中で準備させたり、待たせたりさせてしまっている召使い達には、いつも本当に申し訳なく思っていた。

それでもここを辞めないでいてくれるのは、きっと少なくとも私にとってはクソみたいなこの旦那様でも、彼らにとっては忠誠心を誓うだけの価値のある方だということなのだろう。

いけ好かない旦那様だが、良き臣下を持ったものだ、とそこだけは素直に思った。


(あの子達にはいつも本当に感謝しているから、とてもじゃないけど悪い事は言えないわ…。)


旦那様に冷たくあしらわれている私を見かけても、変わらず私のことを"奥様"と呼んで、慕ってくれる。
こんな私を見下さずに接してくれる。

ここの使用人はそんな素晴らしい人たちばかりだった。




兎に角、旦那様がマーガレット様と不倫をしているという事実はわかった。



けれど正直、まだここまでは全然聞き流せる。



何故ならこの結婚は、先ほども言ったが元々お互いの父親同士が取り決めた、貴族じゃよくある政略結婚だからだ。



旦那様が私を愛していないのと同じように、私だって旦那様を愛してなどいない。



そんな私でもひとつだけ、どうしても聞き流せない"ある噂"が今現在、社交界に飛び交っていた。

それが今、旦那様に離縁を求めている私の最大の理由にもなっている。




「私達になぜ子供がいないのかと尋ねられました。」




旦那様は一瞬、口に運ぼうとしたワイングラスの手を止め、怪訝な顔をこちらに向けた。

結婚して5年。
この期間、私達は初夜を行うどころか、寝室さえも別々だ。




「…気にする必要はない。聞き流せ。」




(聞き流せですって?私と子供を作ることが相当嫌みたいね。)


ここまで不当な扱いを受ける程、私は悪いことをした覚えはない。

冷たくする理由を言わないのならせめて妻を迎え入れた身として、その義務を果たしてほしい。

お互い嫌だからと言って、義務を放置するわけにはいかない。
今流れている社交界の噂がそれを証明している。



「一部では、私が旦那様をその気にできていないからだと噂されています。」



ダリウスは思わずと言った調子で、飲んでいたワインをブッと吹き出した。



「ゲホゲホッ…!何てことを……」


「事実ですわ。だから不倫などされるのだと、嘲笑されました。」



そこでこの暗すぎる雰囲気は、この日1番の記録を更新した。


使用人たちには、とんでもない空気にしてしまって重ね重ね申し訳ないが、ここで今言わなければ他にこの男に伝える時間がない。
……というか、次いつ会えるかも定かではない。



「このままいけば、私が子供を産めない身体なのだと悪い噂が広まってしまうでしょう。」



そう。
この時代、不妊の原因は全て女にあると言われている時代。
つまり私たちに子供ができない事で悪い噂の矛先が向くのは、また私なのだ。



「初夜どころか寝屋も共にできず、後継を産むと言う責務も果たせないこの私を一体、誰がアレンベル家の女主人と呼ぶのでしょうか。」


私はもう考えすぎてうんざりした言葉を旦那様に伝えた。

だが平静を取り戻し、口をナプキンで拭った旦那様はやはりどこまでも冷たかった。



「...……。どれだけ噂されようが、お前がアレンベルだと言う事実は変わらないだろう。」


「つまり旦那様は私がそのような不名誉な噂をされていても構わないと仰るのですか?」


「………。」


「.....それが旦那様の答えなのですね。分かりました。」



私はそこでとうとう、本気で決意した。


(本当は旦那様に態度を改善する意思があるなら、夫婦関係を続けてもいいと思ったんだけれど…。)


私は部屋から持って来てテーブルの下に隠すように置いていた鞄を膝の上に乗せ、その中からとある1枚の紙を取り出した。

そしてその紙を向かいに座っている旦那様の、目の前のテーブルの上に叩きつけるように置いた。
不思議に思ったのか、旦那様が紙を見つめながら私に聞いて来る。



「これは…?」



「.......こちら離縁書になります。」




旦那様は目を見開きとても驚いて、その紙を凝視していたが、その後怪訝な顔で聞き返して来た。



「何だって…?」



「離縁書。私の欄は既に記入済みです。あとは旦那様のサインと印を押して頂ければ、こちらですぐに役所に向かい受理していただきますので。」


「君は本気で俺と離縁したいと言うのか…?」



何故か旦那様は険しい顔つきで、怒ったような口調でそう私に聞いた。

この男はここまで言ってもまだ私が本気だとわからないの?
私が冗談を言っているとでも思っているのだろうか。
というか離縁を叩きつけられた時点で可笑しいと思わないのかしら…。
それとも、私が旦那様に惚れているとでも思ってるの?
相当、自分に自信があるのかしら?



「勿論ですわ。そうして頂ければ早くて明日にでもここを出て行くつもりです。」



私がそう言い終わるや否や、突然旦那様は立ち上がって、私の目の前でその離縁書の紙をビリビリに破いた。




「……は?」





私は思わず、素っ頓狂な声が口から出た。



何故なら目の前で今、何が行われたのか、脳の処理が追いつかなかったからだ。


私は初めて見る旦那様の少し荒れたその行動に驚き、その場で目を見開いたまま固まってしまった。




(え…?この人今…離縁書の紙を破いた??)






「………離縁はしない。」



「!!?」


衝撃的な答えに私は思わず旦那様を見て、そこでさらに驚いた。
なぜなら旦那様は俯きながらも、唇を悔しそうに噛み締めていて、まるで子供がおもちゃを買ってもらえずに駄々を捏ねている時のような、そんな表情をしていたからだ。
私は初めて見る旦那様のそんな顔に取り乱しながら理由を尋ねる。



「な、何故ですか……?!」


すると旦那様は未だ俯きながらも、珍しく私に声を荒げてこう言った。


「逆に君は何故そんなに離縁がしたいんだ?!たかがそんな理由で…!!」


そんな言葉に私は耐えきれず、思わず強く反論し返した。


「"そんな理由"ですって……?!貴方にとってはちっぽけな事かもしれませんが、私にとっては大事なことなのです!それに何より、そんなことを言うあなたと居ては私は絶対に幸せにはなれませんわ!!」


「…何だと?!君に不自由な思いはさせていないはずだ!!一体何が不満なんだ?!それに君が気にしすぎなんだ!噂など聞き流せばいいだけのことだ!!」


「私は旦那様のように強い心を持っているわけではありません!!………何故そこまでして私を引き留めようとしするのですか?」


「そ、それは……」


言い合いの末、突然口篭った旦那様を怪訝に思った。
しかしどんな利益があるのかわからないが、今これだけはハッキリ言える。



「私を愛してもいないくせに……!!」



そう言った直後、私の瞳からとうとう堪えていたはずの涙が溢れた。

旦那様は勿論、周りの使用人達もそんな私に驚愕した。
私の泣き顔を見た旦那様は原因は自分だというのに、何故だか酷く傷ついた顔をしていた。


(何でそんな顔するのよ…その顔をしたいのはこっちよ…ッ!)


もう最悪だ。
というか空間その物が地獄だ。

私が泣いたことで誰も何も喋らなくなったこの空間で、私は自暴自棄になった。
構うもんか!と吹っ切れて、みっともなく泣きながら旦那様に叫んだ。


「私を妻にすると決めたのなら…!社交界で笑い者にされる私の気持ちを少しは考えたらどうですか…?!!」


私が本心のままにそう叫んだ後、辺りは余計に一気に静まり返った。



「奥様、どうか落ち着いてください…。」



私の専属のメイド、ユールにそう嗜められた私は、少しだけ気持ちを落ち着かせた。
冷静を取り戻し改めて考えてみると、何だかいい歳をしてこんな子供みたいに泣き喚いてしまったことを、今更ながら恥ずかしく思ってしまった。

因みに私のそんな姿を目の当たりにした当の旦那様は、私の言葉を聞いてからずっと目を見開いていた。
私がメイドの言葉で落ち着いたタイミングで声を掛けようとしたのか、しかし何と声をかけるべきか考えあぐねているようで、先程から少し手を伸ばしては引っ込めたりで、結局は視線や身体をソワソワと動かしているだけに留まっている。


旦那様がそうなるのも無理はない。
こうして大きな言い合いになるのは初めてのことだった。
それは私が旦那様の冷たい態度に文句も言わず、従順に大人しくしていたからだ。
だけど今は、今日からの私はもうその時の私とは違う。


「…ッもう良いです。旦那様には付き合いきれません。明日、勝手に実家に帰らせて頂きますわ。」



「!!ま、待て…!!!」




呼び止める旦那様の静止の声も、もう聞かなかった。
私は不機嫌を隠そうともせず、大雑把に地獄のような食堂を後にした。




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