【完結】転生したら登場人物全員がバッドエンドを迎える鬱小説の悪役だった件

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きっとこれが俺の夢の終わり

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 ……あっという間に、それから3年が過ぎた。
ディーンが卒業パーティを迎えて成人した次の日に、サリナとマグヌスが家にやって来た。
サリナは杖を突きながらも歩いていて、マグヌスがそれを支えていた。
特に感動的な言葉のやり取りも無くて、ディーンとサリナは軽く話をして、笑い合って、それで別れた。
「サリナ、あれで本当に良かったの?一緒に住んだりとか……」
「まあ坊ちゃま、ご立派になられて!――ええ、良いのです。あの子があんなにも立派になって元気に生きている、それだけで私には充分ですよ。本当に、デボラ様には何てお礼を申し上げれば良いのか。だって私が育てていたのでは間違いなくいじけた泣き虫に育っていた事でしょうからね。
うふふ、胸のつかえがスーッと取れた気分です!」

サリナとマグヌスはゆっくりと、でも手を繋いで帰って行った。これで踏ん切りも付いたので、遠縁から養子を貰って商会の跡取りにするつもりだと笑いながら話してくれた。


 それから更に3年が過ぎて無事に大飢饉も回避した後、俺とオリンピアもいよいよ結婚式も挙げる事になり(ゲンコツ親父は雷ゲンコツ親父に昇格した)、ヤヌシア州全域が慶事だと湧き上がった。

……今度こそ、大飢饉の時に猛毒入りの炊き出しを行ったり、酷い増税をしたり、穀物倉庫に放火したり、穀物の価格を不当に暴騰させたりしなかったので――『ヤヌシア州を大飢饉が襲った』と言ってもハイ・ポーションを売って、豊作すぎて農作物の値段が下がりすぎているジューニー州から穀物を買っていれば、何とか死者を出さずに切り抜けられた。
飢餓で栄養状態が悪化すると人間は体調を崩して疫病にかかりやすくなるものだ。でも平均的な栄養状態は無事に健康的なまま保持されたし、もし疫病にかかってもハイ・ポーションがあったので大流行になる前に防げたのだ。
ハイ・ポーションを魔人族が作っている事を大々的に喧伝した事、クリッピアヌスを呼んで魔人族の料理を元に魔人族が育てた薬草を味のアクセントにした『魔人料理』を考案して広めて貰った事もあって、人間の魔人族に対する『北方の野蛮な異民族』と言うイメージは肯定的なものへ変わりつつある。『野蛮な』に『新鮮な』『武骨だが大胆な』『エキゾチックな』『野性味がある』『(肯定的に)ヤバい』に近いニュアンスが含まれ始めて、ただ悪い意味だけの形容詞では無くなってきたのだ。

人間も魔人族も、己に対して好感を抱かれている相手を嫌ったり蔑ろにしたりする事に多少の抵抗感を覚える生き物である。何となくお互いに好ましく思えれば、今はそれで充分だと思う。
勿論、土地の所有問題などが発生したが、全部を金で解決した。幸いにも金で解決できる段階の問題だったから、遠慮無くやってみた。文句を言う人間の口には(ごねない限り)金貨を放り込んだのだ。

話を変えるけれど、結婚式って想像以上に金がかかるんだな……。
『刀』と『新型多機能水洗トイレ』で儲けていなかったら泣いていたかも知れないよ、俺。
あ、ディーンとヴァリアンナ嬢は今の皇帝陛下がもう数年で退位するのにあたって新たな公爵家を創出するらしく(『投票権』問題が絡むのだ)、そこの初代公爵に内定している。それもあって俺には『身内だけで挙式する』と言う選択肢が当初から無かったのだ。
大貴族故の悲哀である。

まあ、最大の問題は、オリンピアがとってもノリノリだって事だけどな。
あれだけ楽しみにしている姿を見せられたらさ、金ー!金ぇー!とみみっちい発言を俺がぶちかませる訳がない。一応は……予算内だしな……一応は。

 ヴァロやレクスのような本当の友達から、アレ……誰だっけ?な人まで全部招待して、とても盛大に挙式して(初めてキスをした……!)、素晴らしく盛大に披露宴を催して、その後は花びらとデナリィ金貨をまき散らしながら州都テーバーイ中をパレード。
鮮やかな刺繍に彩られた花嫁衣装に身を包んだオリンピアが凄く神聖で美しくて、感謝と祈りのようなもので胸が一杯になった。
新婚初夜についてはオリンピアが大☆爆発してそれに俺も巻き込まれて最高に酷い目に遭ったので割愛する。ビッグバンが起きて宇宙が始まったとでも思ってくれ。もしくは新・天地創造。


――俺はカイン・コンスタンティンが死んだはずの22歳を越えて、23歳になろうとしていた。

『なあ、ジン』
ある日の夜明け前に、カインがいきなり話しかけてきた。
俺は寝台の中にいたんだが、上半身を起こして訊ねる。
『どうした、カイン』
『俺はそろそろ行こうと思う』
『何処に』
『さあな。それはこの世界の「神」にでも聞いてくれ』
『ユーリかよ。でも、どうして行くんだ?』
『……。聖剣は既に封じられた。だから魔剣と俺も……人の手が届かない何処かに行くべきだと思う』
『寂しくなるな』
『そうだな。少しだけ……寂しくなる』
『最後にデボラに会わなくて良いのかよ』
『駄目だ。デボラの母上に会ったら、何処にも行けなくなってしまう。それに、いい加減……俺も独り立ちせねば安心させられない』
『オマエ……あんなにもマザコンだったのにな。分かったよ。カイン……じゃあな』
『じゃあな、ジン。またいつか――いや、案外早く会えるかも知れん』
『おい、それはどう言う――』

もう返事は無かった。
まるで夢が覚めてしまうように、俺の中から魔剣ごとカインの存在が消え去っていた。

「ううん、うぅん……あら、旦那様、おはようござ――旦那様!?」
オリンピアの声に我に返る。
「どうしたの……オリンピア?」
顔を引きつらせて、まじまじと俺を見つめているのだ。
「どうして泣いていらっしゃるのです!?何があったのですか!?」
「ああ」俺はその時に涙をこぼして泣いていた事を自覚した。もう涙なんて涸れ果てたと思っていたのに。「とても寂しい夢を見たんだ」
――もう1人の俺と永遠にさようならをする夢を。
「旦那様……」
「とても、寂しかった」

そのまま俺はオリンピアを抱きしめて、声を殺して泣いた。
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