【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る

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First Chapter

第五のラッパ

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 ガルヴァリナ帝国の太祖は『インベンダー』と言う精霊獣を従えていたそうだ。
この精霊獣の前世は兵器開発を担っていた技術者であったらしい、と歴史書にはある。
『インベンダー』は……太祖がガルヴァリナ帝国を興して大陸に覇を唱える大国へと一代にして成り上がるには欠かせなかった要因の一つ――圧倒的な威力を持つ兵器を数多生み出しては与えたそうだ。
しかし、時と共に歴史が流れていくにつれてその兵器のほとんどが壊れ、一つ、また一つと消えていったが――唯一残存したのが『アバドン』であった。
『皇帝』と『皇太子』しか操縦の方法と安置された場所を知らぬこの伝説的な兵器『アバドン』は、帝都が敵軍に攻め込まれ、帝国城がもしも攻囲されるような事があった場合にのみ発動する事を許されていた。
帝国における、文字通りの最終兵器扱いだったのだ。

 「……案の定、『アバドン』を起動させたか。非力だな、ヴァン!」
『赤斧帝』は自らに突きつけられ、今まさに放たれんとする魔導レールガンを興ざめした顔で見つめた。
ガルヴァリナ帝国の帝の座が変形して、今やその砲台と化していた。
「正しくあろうと願う事すら出来ぬ、暴力を無差別に振るう貴様が言うか?」
ヴァンはミマナ姫と手を取り合い、ロードとオラクルのありったけの魔力をそこに込めている。
この魔導レールガンは精霊獣の魔力で起動し、操縦でき――圧縮された魔力を超高速・超威力で放つ兵器なのだ。
「正しい?正しいだと?
……ヴァンよ、貴様は高貴な者になりたいのだ。誰よりも卑しい身の上で、何よりもおぞましい性根なのに!それ故に『正しい事』や『正義』にすがるのだ。この世にはそんなものよりもっと大事な事があると言うのに、そちらに気づきもしない!」
「辞世の言葉が自己紹介か」

 ――充填が完了した魔導レールガンが、凄まじい魔力光と共に放たれようとしていた。


 「お父さんに何をする!」
その刹那、いとけない少女が魔導レールガンの前に飛び出した。皇太子達は構わず放とうとしたが、オラクルが何故か怯んでしまった。
『あ、あああ……!?未来が、未来が……!?眩しい!!!!!!』
「「『オラクル!?』」」
『ころす!』
蹴った床に大穴を開けて一瞬で距離を詰めたタイラントが、魔導レールガンの砲身を殴りつけて変形させた。充填された魔力が行き場を失って――。

 『くっ!』
 『「V」!』


 辺りは壮絶な閃光と、凄まじい爆発に伴う建物の崩落に飲み込まれた。
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