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Second Chapter
孤独では無い未来へ
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シューヤドリックが熱を出して寝ていたその日、珍しくヴェドの帰りが明け方になった。
半分夢うつつの、熱に浮かされた意識の中でシューヤドリックは帰ってきたヴェドに呼びかけた。
「ヴェド…………?」
すぐさまヴェドが枕元に跪いて、彼の手を強く握った。
この10年、およそ泣いた姿を見せた事が無い男がボロボロと涙をこぼしていたので、シューヤドリックの意識は覚め渡った。
「殿下が助かる道が、見つかりました」
「え、ええと。3年……ですよね?」
セージュドリックは『裂縫』に確認する。彼女は恭しく答える。
「はい、殿下。およそ3年後に、病の特効薬が出来上がる見込みなのです」
怖ず怖ずと彼が『ドルマー』の方を見ると、
『人一人、何の労苦も無い。ましてやセージュドリックのために動いてくれた者なれば、誰が断ろうか』
「ええと、大丈夫そう、です!」
「精霊獣『ドルマー』の『スキル:ララバイ』で眠った者は、身体と心の時が完全に止まる様なのです」
打ち明けられた言葉に、シューヤドリックは震えが走った。
「そんな……そんな都合の良い話があるのならば、それは詐欺か犯罪の加担だろう」
「『裂縫』が藪医者だとでも?」
違う。違う。しかし――。
「……私はずっと諦めて耐えてきた、お前に出逢うまでは秘密を暴かれる恐怖に震え、孤独だった……。どうしようもなく誰かに迷惑をかけ傷つけて生きてきた。なのに、なのに今更、こんな幸運があって良いのか?」
ヴェドは泣きながら笑っていた。シューヤドリックも気付けば同じ顔をして泣いていた。
二人は手を握り合って、言葉を交わす。この手を二度と離すまいと引き合いながら。
「私を一人にしないで下さい、殿下」
「3年だ、待ってくれるか」
「喜んで」
――今日も眠るシューヤドリックの手をそっと握り、ヴェドは3年後に彼が起きた時に何を、何からどう話そうか、いや、何よりも先に『お早うございます』と申し上げた方が良いのかと――例えようも無く幸せな考えに浸るのだった。
「ひえええええええええええええええっ!?」
護衛の兵士達を引き連れてバズムの屋敷を訪れたセージュが『セージュドリック』であった事を知ったゲイブンは、まだ治りがけの腕の傷が痛むのも忘れてしまい、可哀想な位に青い顔をして地面にめり込みそうなくらいに伏せたのだった。
「えーと、ええーと……無礼千万、どうかお許しくださいませですぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ひれ伏した彼にセージュドリックは笑いかけた。
「ブン兄、ブン兄。ギューッてしてよ」
「え……?」
「早く、ギューッて」
へ、へいですぜ、と怯えつつも起き上がったゲイブンは、恐る恐るセージュドリックを抱きしめたのだった。
「ねえ、ブン兄。有り難うね。マダム達にも、よろしくって……。ノエム姐さんは、一緒に来てくれるけれど」
「何処か……遠くに行っちゃうんですぜ?」
「これから、ホーロロに行くの。政治とかは、よく分からないけれど、少しでもみんなにとって、住みやすい場所にするつもり」
「……それは、凄く寂しくなるんですぜ……」
「ねえ」セージュドリックはゲイブンを強く抱きしめ返しながら言った。「いつか、ブン兄も遊びに来てね。ブン兄なら、いつだって大歓迎だから」
「……おいら、医者になりたいんですぜ。もし、立派な医者になれたら……その時は必ず、会いに行きますぜ」
「うん……待ってる。大好きだよ、ブン兄」
ツンと鼻の奥が痛くなったのを、ゲイブンは強く抱きしめる腕の傷の痛みで誤魔化した。
「おいらだって、大好きですぜ」
半分夢うつつの、熱に浮かされた意識の中でシューヤドリックは帰ってきたヴェドに呼びかけた。
「ヴェド…………?」
すぐさまヴェドが枕元に跪いて、彼の手を強く握った。
この10年、およそ泣いた姿を見せた事が無い男がボロボロと涙をこぼしていたので、シューヤドリックの意識は覚め渡った。
「殿下が助かる道が、見つかりました」
「え、ええと。3年……ですよね?」
セージュドリックは『裂縫』に確認する。彼女は恭しく答える。
「はい、殿下。およそ3年後に、病の特効薬が出来上がる見込みなのです」
怖ず怖ずと彼が『ドルマー』の方を見ると、
『人一人、何の労苦も無い。ましてやセージュドリックのために動いてくれた者なれば、誰が断ろうか』
「ええと、大丈夫そう、です!」
「精霊獣『ドルマー』の『スキル:ララバイ』で眠った者は、身体と心の時が完全に止まる様なのです」
打ち明けられた言葉に、シューヤドリックは震えが走った。
「そんな……そんな都合の良い話があるのならば、それは詐欺か犯罪の加担だろう」
「『裂縫』が藪医者だとでも?」
違う。違う。しかし――。
「……私はずっと諦めて耐えてきた、お前に出逢うまでは秘密を暴かれる恐怖に震え、孤独だった……。どうしようもなく誰かに迷惑をかけ傷つけて生きてきた。なのに、なのに今更、こんな幸運があって良いのか?」
ヴェドは泣きながら笑っていた。シューヤドリックも気付けば同じ顔をして泣いていた。
二人は手を握り合って、言葉を交わす。この手を二度と離すまいと引き合いながら。
「私を一人にしないで下さい、殿下」
「3年だ、待ってくれるか」
「喜んで」
――今日も眠るシューヤドリックの手をそっと握り、ヴェドは3年後に彼が起きた時に何を、何からどう話そうか、いや、何よりも先に『お早うございます』と申し上げた方が良いのかと――例えようも無く幸せな考えに浸るのだった。
「ひえええええええええええええええっ!?」
護衛の兵士達を引き連れてバズムの屋敷を訪れたセージュが『セージュドリック』であった事を知ったゲイブンは、まだ治りがけの腕の傷が痛むのも忘れてしまい、可哀想な位に青い顔をして地面にめり込みそうなくらいに伏せたのだった。
「えーと、ええーと……無礼千万、どうかお許しくださいませですぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ひれ伏した彼にセージュドリックは笑いかけた。
「ブン兄、ブン兄。ギューッてしてよ」
「え……?」
「早く、ギューッて」
へ、へいですぜ、と怯えつつも起き上がったゲイブンは、恐る恐るセージュドリックを抱きしめたのだった。
「ねえ、ブン兄。有り難うね。マダム達にも、よろしくって……。ノエム姐さんは、一緒に来てくれるけれど」
「何処か……遠くに行っちゃうんですぜ?」
「これから、ホーロロに行くの。政治とかは、よく分からないけれど、少しでもみんなにとって、住みやすい場所にするつもり」
「……それは、凄く寂しくなるんですぜ……」
「ねえ」セージュドリックはゲイブンを強く抱きしめ返しながら言った。「いつか、ブン兄も遊びに来てね。ブン兄なら、いつだって大歓迎だから」
「……おいら、医者になりたいんですぜ。もし、立派な医者になれたら……その時は必ず、会いに行きますぜ」
「うん……待ってる。大好きだよ、ブン兄」
ツンと鼻の奥が痛くなったのを、ゲイブンは強く抱きしめる腕の傷の痛みで誤魔化した。
「おいらだって、大好きですぜ」
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