【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る

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Final Chapter

兄貴、引きこもる

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 メーデー、メーデー!SOSだ!頼む、誰か!
オレ達の人生最大最悪の窮地だ!
誰でも良いから助けてくれ……!!!!!


 「死ぬまでもう一度鞭で叩かせましょう!」
フォートンはそう言って分厚い木製の会議机を平手で叩いた。
「生温い!火炙りこそが適切であろう!」
カルポ!宰相のカルポ、常識人の貴方が!頼むからそんな恐ろしい発言をしないでくれ!
「えーと……釜ゆでと言う処刑方法も検討の余地がありますが……」
おいおいロクブ!温厚で有名な男が何て事を言っているんだよ!
「ワシは牛馬を使っての八つ裂きの刑を提案するぞい」
バズムの爺さんは腕組みをしている。ああ、文字通りに狂犬みたいな形相だ……。
「えーとえーと、僕ちゃん、毒物の致死量を試す実験動物が欲しいんですけどねえ!」
レトゥは相変わらずだ。畜生。
「首を鋸で切り落とせば良かろう」
ギルガンド!何度も助けてやったじゃないか!なのにどうして!?酷いじゃ無いか!!!
「……溺死」
嫌だ!ヴェドの目が本気だ!冗談じゃない!
「ええー、幾ら何でも可哀想じゃないの?」アイイナが助け船をくれた!やった!「関係者を目の前で皆殺し。これが一番でしょう?」
ど、泥船どころか三途の川の渡し船だった……。
「普通に、手足を順番にへし折って行くのはどうだ?」
モルソーン……何が『普通』だ、血も涙も無いのかよ!!!
「……」
キアは黙ってナイフを机に幾つも突き刺した。
もう良い、それ以上言わなくても十分に分かったから……。ダーツの的は勘弁してくれ……。
「あのさ、後始末する者の身にもなってくれよ」
トキトハ!医者のお前なら絶対にオレ達を助けてくれると思っていた――!
「出来りゃ、綺麗なまま新鮮なまま若い連中の献体にしたいんだが駄目かい?」
この鬼畜!



 「……さて、第十二皇子殿下」
ヌスコが眉間に谷間を作り、額に青筋を浮かべに浮かべながらオレ達を微笑んで見つめる。
いっそ鬼の形相で睨んでくれれば良いのに、いっその事、そっちの方が怖くないのに!
「陛下がもう三日も太極殿にお出でにならず、皇后皇妃様はおろか誰にもお会いにならぬ程塞ぎ込ませた事態を――如何様に対応なさいますかな?」
「……そ、それは、」
そんなの知るかよと言いたい所だが、言ったら殺される。グロテスクに!猟奇的に!惨殺される!
「嗚呼、陛下のご心中、お察しするに余りある……」
カルポが顔をどす黒くして、オレ達を睨む。
「誰よりも可愛がっておられた同母弟の裏切り、さぞやご心痛であらせられたのでしょうな……!!!!!」
「う、裏切るつもりは……」
「では、どのようなおつもりだったのか是非に伺いたいのですが?」
「それは、それは、その……」
そこでギルガンドが大声で言い放つ、
「やはり鋸だ!他に手はあるか!あるならば答えてみよ!」
うるせー!寄ってたかってオレ達を生贄に皇帝を召喚しようとしてんじゃねー!!!
……と叫びたいが叫んだら血みどろな末路がオレ達を待ち受けている。

 「――皆、揃っていますわね」
そこにミマナ皇后が精霊獣オラクルを連れてやって来た。ミマナ皇后だけじゃない、レーシャナ皇后もキアラカ皇妃も、まるでオレ達が国家反逆を企てた大罪人であるかのような、凄まじく敵意のある眼差しで睨んでくる。
「これは皇后様がた!ところで、陛下は……?」
カルポが恭しく訊ねると、
「……ようやくロードと連絡が取れましたの。直ちに第十二皇子テオドリック殿下を、陛下がおわす『紫天宮』にお連れするようにと。お労しい事に……ロードの声も届かず、陛下は慟哭しておいでだそうですわ。
これは場合によっては関係者全員を処刑しても解決出来ぬ、この帝国の存亡の危機やも知れません。各、覚悟するように」
帝国十三神将からも睨まれて、オレ達は震え上がる。
「あの、ちょっと、その……」
黙れ。ミマナ皇后からの無言の一瞥でオレ達はとうとう声も出なくなる。
「「「直ちに」」」
ヴェド、ギルガンド、モルソーンに、オレ達は囲まれた。
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