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Final Chapter
被害者の会
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「テオ様の所為で酷い目に遭った人……挙手」
とロサリータ姫が言うと、全員が我先に手を挙げた。
「クノハル・ゼーザ。婚約者が激怒して、敢えなく婚約が破談となりました。後、仕事を馘首になるのも時間の問題です」
「オユアーヴ・クォクォ。取り調べの所為で芸術作品を作る時間が何日も削られた」
「ゲイブン・ドゥーレト。処刑だって聞かされてまた漏らし……じゃなくて、泣いたんですぜ!セージュドリックがいなかったら、本当に処刑されそうだったんですぜ!?」
「ロウ・ゼーザ。よろず屋アウルガを強制休業にされた上、未だに帝国城に捕まっている」
『可愛くて頭が良くてオシャレでパーフェクトな精霊獣パーシーバーちゃん。大事なロウがこんなにも酷い目に遭っているのよ!後でテオ達が顔を見せたら腐った卵と岩塩をこれでもかと投げつけてやるわーっ!』
「はい、私、ロサリータ・マーロウスントゥス。皇后様がたに囲まれて何時間も徹底的に詰問されたわ、精神的な拷問よ、あれは……」
『精霊獣マスコット。大事なロサリータがあんなに詰められるなんて……もう、わたしも、精神的にヘトヘトよ……』
そこで彼らは同時に、深い溜息をついた。
「全ては皇帝陛下のご機嫌次第、ね……」
ロサリータは呟いて、頬杖をつく。
「クノハルは、どう思う?」
「仲良く全員生首に一票」と冷静にクノハルは答える。
「俺もだ」とロウが渋い顔をした。「後はテオがどのくらいオレ達の命乞いをしてくれるかだが……」
「……ねえ、オユアーヴ」
ロサリータ姫は諦めきった顔でオユアーヴに頼む。
「せめて死ぬ前に美味しい料理が食べたいの。此の世で一番素晴らしい芸術作品みたいな料理、作れるかしら?」
「芸術作品なら任せろ」
オユアーヴは大喜びで台所に入っていった。
その脳天気さと単純さを羨ましく思いながらも、
「ところで、ロサリータ姫さんよ」
ロウは膝の上にパーシーバーを乗せて、『黒葉宮』の奥を指さす。
「ユルルア姫さんは、何をしているんだ……?」
「テオ様の後追いの準備みたいよ?止めたら殺すとか言われて、どうしようもなくて……」
「はあ……好きだったんだけど、婚約破棄かー」
とひたすら虚ろな目をしているクノハルにロサリータはかける言葉も無い。
「『「シャドウ」の正体を知っていてわざと黙っていたのか!!!!!』って怒られても、『はいそうです』としか答えようが無いのは、確かに私が悪いんだけど……はあ……兄さん、辛いよー……」
ロウは寄りかかってきたクノハルの頭を優しく撫でて、
「実際に婚約破棄の書類を書いたのか?」
「向こうが頭に血が上りすぎていて、とてもそれが出来る状態じゃなかった。と言うかあの剣幕で……私をよく殺さなかったなーって……今更ながら思う……」
一方、精霊獣達は、
『ロサリータだけは、わたし……守りたいの。ねえパーシーバー、協力してくれない……?』
『パーシーバーちゃんもロウだけは守りたいの。良いわよ、何だって協力するわよっ!』
『取りあえず……最寄りの国に、亡命しない……?』
『そうね、何処の国が良いかしら……。マーロウスントはちょっと遠すぎるし、トラセルチアは海を渡らなきゃだし……』
「……ただいま」
テオ、と誰もが名を呼んで車椅子で入ってきた少年に駆け寄った。
「俺の助命嘆願は上手く行ったか!?」
『ねえ、ロサリータは助かるのよね?!』
「おいら死ぬのは嫌なんですぜー!」
「殿下、遺書には私達の助命について書かれたのですよね!?」
「私は遺書なんて書きたくない、だって死にたくないもの!」
『ねえロウは助かるのよねーっ!?だってロウは何も悪い事なんてしていないものね!?ねえそうでしょうテオ!?』
オレ達は思わず叫んだ。
「一人で良いから僕の心配をしろ!」
「テオ様!」
半泣きで名を呼んで、小瓶を片手にユルルアちゃんが奥の部屋から駆けだしてきた。
そしてオレ達にすがりついて、
「ご無事だったのですね!」
ユルルアちゃん!!!!!
君だけは僕を心配してくれていると信じていた!
オレ達が思わず涙をこぼしそうになった瞬間。
「ご覧下さいな、こちらが皇帝陛下をも一滴で殺し奉る猛毒ですわ!今さっき作りましたの!帝国城の水場に仕込むだけで、皆殺しに出来ますわ!」
そう言って嬉しそうに小瓶(中身入り)を見せびらかしてきた。
「違う……違うのだ、ユルルア……」
オレ達は深呼吸をして、薄情な連中に告げてやる。
「陛下は特別に『一切を許す』と仰せであった。ただ……その……」
「「「「『『?』』」」」」
「都度、詳細な報告を……欠かさぬように、と……」
なーんだ、とゲイブンが無邪気に笑った。
「じゃあおいら達、もう自由ですぜ!」
「おい」とそこでオユアーヴが良い匂いと共に台所から顔を出す。「皿を運ぶのを手伝ってくれ!」
「あーあ!生きていられるって分かったら途端にお腹が空いたわー!」
「生きると言う事は、幾ら悲しくても辛くても、明日に命を繋ぐと言う事ですからね」
ロサリータ姫やクノハルはさっさと机の上を片付けて、拭いて、皿を並べ始める。
「ひゃー!おいらの大好きな鶏肉の唐揚げですぜー!」
「見て、とっても大きなお魚の料理!」
ゲイブンやユルルアちゃんは台所から次々と料理の乗せられた皿をウキウキしながら運んできた。
「お、良い匂いだな」
とロウは腰を浮かせ、皿を並べ終えたクノハルは意気込んで、
「婚約破棄されたらお腹が空いた、今日はいっぱい食べてやります!」
『ああ……生きているって大事よね。命があるって、それだけで……素晴らしいわ』
マスコットとパーシーバーは楽しそうに話している。
『楽しい食事会になりそうね。ロウが嬉しそうで、パーシーバーちゃんも嬉しいものっ!』
違うんだ。違うんだみんな。
僕にとっては、最大の罰とも言えるんだぞ。
ここまで来ると、もはや羞恥プレイでしかねえからな……。
兄上は、僕相手だけには、桁違いで理解不能、かつ意味不明なくらいに難解なのだ……。
それに加えてヴァンドリックと先に食卓を囲んでいたオレ達は、完全に食欲も無くて、和気藹々とした雰囲気の中で一人だけ水だけチビチビと飲みながら……落ち込んでいたのだった。
とロサリータ姫が言うと、全員が我先に手を挙げた。
「クノハル・ゼーザ。婚約者が激怒して、敢えなく婚約が破談となりました。後、仕事を馘首になるのも時間の問題です」
「オユアーヴ・クォクォ。取り調べの所為で芸術作品を作る時間が何日も削られた」
「ゲイブン・ドゥーレト。処刑だって聞かされてまた漏らし……じゃなくて、泣いたんですぜ!セージュドリックがいなかったら、本当に処刑されそうだったんですぜ!?」
「ロウ・ゼーザ。よろず屋アウルガを強制休業にされた上、未だに帝国城に捕まっている」
『可愛くて頭が良くてオシャレでパーフェクトな精霊獣パーシーバーちゃん。大事なロウがこんなにも酷い目に遭っているのよ!後でテオ達が顔を見せたら腐った卵と岩塩をこれでもかと投げつけてやるわーっ!』
「はい、私、ロサリータ・マーロウスントゥス。皇后様がたに囲まれて何時間も徹底的に詰問されたわ、精神的な拷問よ、あれは……」
『精霊獣マスコット。大事なロサリータがあんなに詰められるなんて……もう、わたしも、精神的にヘトヘトよ……』
そこで彼らは同時に、深い溜息をついた。
「全ては皇帝陛下のご機嫌次第、ね……」
ロサリータは呟いて、頬杖をつく。
「クノハルは、どう思う?」
「仲良く全員生首に一票」と冷静にクノハルは答える。
「俺もだ」とロウが渋い顔をした。「後はテオがどのくらいオレ達の命乞いをしてくれるかだが……」
「……ねえ、オユアーヴ」
ロサリータ姫は諦めきった顔でオユアーヴに頼む。
「せめて死ぬ前に美味しい料理が食べたいの。此の世で一番素晴らしい芸術作品みたいな料理、作れるかしら?」
「芸術作品なら任せろ」
オユアーヴは大喜びで台所に入っていった。
その脳天気さと単純さを羨ましく思いながらも、
「ところで、ロサリータ姫さんよ」
ロウは膝の上にパーシーバーを乗せて、『黒葉宮』の奥を指さす。
「ユルルア姫さんは、何をしているんだ……?」
「テオ様の後追いの準備みたいよ?止めたら殺すとか言われて、どうしようもなくて……」
「はあ……好きだったんだけど、婚約破棄かー」
とひたすら虚ろな目をしているクノハルにロサリータはかける言葉も無い。
「『「シャドウ」の正体を知っていてわざと黙っていたのか!!!!!』って怒られても、『はいそうです』としか答えようが無いのは、確かに私が悪いんだけど……はあ……兄さん、辛いよー……」
ロウは寄りかかってきたクノハルの頭を優しく撫でて、
「実際に婚約破棄の書類を書いたのか?」
「向こうが頭に血が上りすぎていて、とてもそれが出来る状態じゃなかった。と言うかあの剣幕で……私をよく殺さなかったなーって……今更ながら思う……」
一方、精霊獣達は、
『ロサリータだけは、わたし……守りたいの。ねえパーシーバー、協力してくれない……?』
『パーシーバーちゃんもロウだけは守りたいの。良いわよ、何だって協力するわよっ!』
『取りあえず……最寄りの国に、亡命しない……?』
『そうね、何処の国が良いかしら……。マーロウスントはちょっと遠すぎるし、トラセルチアは海を渡らなきゃだし……』
「……ただいま」
テオ、と誰もが名を呼んで車椅子で入ってきた少年に駆け寄った。
「俺の助命嘆願は上手く行ったか!?」
『ねえ、ロサリータは助かるのよね?!』
「おいら死ぬのは嫌なんですぜー!」
「殿下、遺書には私達の助命について書かれたのですよね!?」
「私は遺書なんて書きたくない、だって死にたくないもの!」
『ねえロウは助かるのよねーっ!?だってロウは何も悪い事なんてしていないものね!?ねえそうでしょうテオ!?』
オレ達は思わず叫んだ。
「一人で良いから僕の心配をしろ!」
「テオ様!」
半泣きで名を呼んで、小瓶を片手にユルルアちゃんが奥の部屋から駆けだしてきた。
そしてオレ達にすがりついて、
「ご無事だったのですね!」
ユルルアちゃん!!!!!
君だけは僕を心配してくれていると信じていた!
オレ達が思わず涙をこぼしそうになった瞬間。
「ご覧下さいな、こちらが皇帝陛下をも一滴で殺し奉る猛毒ですわ!今さっき作りましたの!帝国城の水場に仕込むだけで、皆殺しに出来ますわ!」
そう言って嬉しそうに小瓶(中身入り)を見せびらかしてきた。
「違う……違うのだ、ユルルア……」
オレ達は深呼吸をして、薄情な連中に告げてやる。
「陛下は特別に『一切を許す』と仰せであった。ただ……その……」
「「「「『『?』』」」」」
「都度、詳細な報告を……欠かさぬように、と……」
なーんだ、とゲイブンが無邪気に笑った。
「じゃあおいら達、もう自由ですぜ!」
「おい」とそこでオユアーヴが良い匂いと共に台所から顔を出す。「皿を運ぶのを手伝ってくれ!」
「あーあ!生きていられるって分かったら途端にお腹が空いたわー!」
「生きると言う事は、幾ら悲しくても辛くても、明日に命を繋ぐと言う事ですからね」
ロサリータ姫やクノハルはさっさと机の上を片付けて、拭いて、皿を並べ始める。
「ひゃー!おいらの大好きな鶏肉の唐揚げですぜー!」
「見て、とっても大きなお魚の料理!」
ゲイブンやユルルアちゃんは台所から次々と料理の乗せられた皿をウキウキしながら運んできた。
「お、良い匂いだな」
とロウは腰を浮かせ、皿を並べ終えたクノハルは意気込んで、
「婚約破棄されたらお腹が空いた、今日はいっぱい食べてやります!」
『ああ……生きているって大事よね。命があるって、それだけで……素晴らしいわ』
マスコットとパーシーバーは楽しそうに話している。
『楽しい食事会になりそうね。ロウが嬉しそうで、パーシーバーちゃんも嬉しいものっ!』
違うんだ。違うんだみんな。
僕にとっては、最大の罰とも言えるんだぞ。
ここまで来ると、もはや羞恥プレイでしかねえからな……。
兄上は、僕相手だけには、桁違いで理解不能、かつ意味不明なくらいに難解なのだ……。
それに加えてヴァンドリックと先に食卓を囲んでいたオレ達は、完全に食欲も無くて、和気藹々とした雰囲気の中で一人だけ水だけチビチビと飲みながら……落ち込んでいたのだった。
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