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First Chapter
縁切り廟
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「実は」とギルガンドが歩きながら事のあらましを説明すると、『幻闇のキア』は三度頷いて帝国城の方を指さした。ギルガンドも納得しているようで、
「ああ、すぐにそうしてくれ。私はヴォイドごときに負けはしないが、『赤斧帝』……と言う事もあり得る」
黙ってもう一度頷くと――『幻闇のキア』は文字通り『姿をくらました』のだった。
青々と生い茂っている森の中に鎮座する、巨大な人造の『封印塚』が見えてきた。あれの中に構築されているのが『滅廟』だ。平民が数人程いるのが遠目に分かるところまで近づくと、ギルガンドはロウを見つめた。
「一応聞いてやるが、貴様はどのくらい戦える?」
「何かあったらアンタに全部押しつけて、ゲイブンを連れて逃げるくらいは出来るさ」
一般人が立ち入れるのは高い五重の鋼の防柵の一番の外までだったが、柵の向こうに小さな木箱が置いてあって、その周りに銅貨が何枚か飛び散っていた。お賽銭や浄財のつもりらしい。その前に数名の平民が座って祈っていたが、ロウが杖を突いてオレ達を連れて歩いてきたので道を空けてくれた。
「ここまで来たには来たけど……でもですよ?本当に目が見えるようになるんですかねえ?」
オレ達がゲイブンの口調で、さも疑っているような事を口にすると、小耳に挟んだらしい平民の一人が怒った声を上げる。
「若造の分際で、何言っているんだい!ここは霊験あらたかな『縁切り廟』さ!あたしだって曲がった腰の縁を切られて、ちゃんとこの通りに治ったんだ!」
「何だって!噂より凄いじゃないか!」ロウは驚いた振りをする。「どうやったら縁を切って貰える?すぐにでもこの見えない目との悪縁を切って欲しいんだ!」
「そこの木箱に浄財を投げ入れると、縁を切ってくれる不思議な神官様が出てきて下さるのさ」
なるほど!とロウはオレ達に銅貨一枚を渡した。チャリーン!と音を立ててオレ達が木箱に投げ入れると――。
――シャーン、シャーン、シャーン、と言う小さな鈴が沢山鳴っているような音がした。
「お出でになったよ!ほらあんた達も正座して目を閉じて、頭を下げるんだ!」
我先に平民が地面に座って頭を下げ始めた。
それを真似して、オレ達も目を閉じていたけれど――パーシーバーが代わりに感知してくれている。
――やがて、パーシーバーの半狂乱の声が聞こえた。
『ちょっ……ちょっとどころじゃないわ!とっても途轍もなくヤバいじゃないのーっ!エルダー級のヴォイドが三体も仲良く出てくるなんてきわどい冗談やめて頂戴よ!
ああっ!違うわ、ロウ、違うのよー!それだけじゃないからこのパーシーバーちゃんも慌てているのよ!ヴォイド三体だけだったらこっちには『閃翔のギルガンド』も『シャドウ』もいるからどうにでもなるわ!ええ、そっちじゃないの!
むしろこの際、ヴォイドは後回しよ!後付けのオプションのトカゲの尻尾の蛇足よ!
あのね、ついでに他の警備兵の様子も感知したんだけれど……全員がこのヴォイド達に操られているとしか思えないのよ。精神及び身体反応の大半が異常な数値を示しているから……。
それにね、中にいないのよ。あの忌々しい気配の持ち主が、いないのよ!
嘘よ!嫌よー!絶対に信じたくないわ!今まで予想していた中で、最悪の中の最悪がど真ん中で的中しちゃったなんてっ!』
――思わずオレ達は目を開けて、ヴォイド越しに『封印塚』を見上げていた。
その中に構築されている『滅廟』、いや、『縁切り廟』はもはや形骸化したのだ。
『「赤斧帝」――いいえ、ケンドリック・ダルダイルス・ガルヴァリーノスが復活したんだわ!』
「ああ、すぐにそうしてくれ。私はヴォイドごときに負けはしないが、『赤斧帝』……と言う事もあり得る」
黙ってもう一度頷くと――『幻闇のキア』は文字通り『姿をくらました』のだった。
青々と生い茂っている森の中に鎮座する、巨大な人造の『封印塚』が見えてきた。あれの中に構築されているのが『滅廟』だ。平民が数人程いるのが遠目に分かるところまで近づくと、ギルガンドはロウを見つめた。
「一応聞いてやるが、貴様はどのくらい戦える?」
「何かあったらアンタに全部押しつけて、ゲイブンを連れて逃げるくらいは出来るさ」
一般人が立ち入れるのは高い五重の鋼の防柵の一番の外までだったが、柵の向こうに小さな木箱が置いてあって、その周りに銅貨が何枚か飛び散っていた。お賽銭や浄財のつもりらしい。その前に数名の平民が座って祈っていたが、ロウが杖を突いてオレ達を連れて歩いてきたので道を空けてくれた。
「ここまで来たには来たけど……でもですよ?本当に目が見えるようになるんですかねえ?」
オレ達がゲイブンの口調で、さも疑っているような事を口にすると、小耳に挟んだらしい平民の一人が怒った声を上げる。
「若造の分際で、何言っているんだい!ここは霊験あらたかな『縁切り廟』さ!あたしだって曲がった腰の縁を切られて、ちゃんとこの通りに治ったんだ!」
「何だって!噂より凄いじゃないか!」ロウは驚いた振りをする。「どうやったら縁を切って貰える?すぐにでもこの見えない目との悪縁を切って欲しいんだ!」
「そこの木箱に浄財を投げ入れると、縁を切ってくれる不思議な神官様が出てきて下さるのさ」
なるほど!とロウはオレ達に銅貨一枚を渡した。チャリーン!と音を立ててオレ達が木箱に投げ入れると――。
――シャーン、シャーン、シャーン、と言う小さな鈴が沢山鳴っているような音がした。
「お出でになったよ!ほらあんた達も正座して目を閉じて、頭を下げるんだ!」
我先に平民が地面に座って頭を下げ始めた。
それを真似して、オレ達も目を閉じていたけれど――パーシーバーが代わりに感知してくれている。
――やがて、パーシーバーの半狂乱の声が聞こえた。
『ちょっ……ちょっとどころじゃないわ!とっても途轍もなくヤバいじゃないのーっ!エルダー級のヴォイドが三体も仲良く出てくるなんてきわどい冗談やめて頂戴よ!
ああっ!違うわ、ロウ、違うのよー!それだけじゃないからこのパーシーバーちゃんも慌てているのよ!ヴォイド三体だけだったらこっちには『閃翔のギルガンド』も『シャドウ』もいるからどうにでもなるわ!ええ、そっちじゃないの!
むしろこの際、ヴォイドは後回しよ!後付けのオプションのトカゲの尻尾の蛇足よ!
あのね、ついでに他の警備兵の様子も感知したんだけれど……全員がこのヴォイド達に操られているとしか思えないのよ。精神及び身体反応の大半が異常な数値を示しているから……。
それにね、中にいないのよ。あの忌々しい気配の持ち主が、いないのよ!
嘘よ!嫌よー!絶対に信じたくないわ!今まで予想していた中で、最悪の中の最悪がど真ん中で的中しちゃったなんてっ!』
――思わずオレ達は目を開けて、ヴォイド越しに『封印塚』を見上げていた。
その中に構築されている『滅廟』、いや、『縁切り廟』はもはや形骸化したのだ。
『「赤斧帝」――いいえ、ケンドリック・ダルダイルス・ガルヴァリーノスが復活したんだわ!』
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