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First Chapter
亡国の末裔
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#亡国の末裔
ギルガンドが報告のために東宮御所に帰還した時には、既に後宮の女の戦装束である絢爛豪華で威厳のある衣服をまとい、美しいかんばせに戦化粧のようにきりりと眉を引いたミマナとレーシャナの皇太子妃二人が揃って相談を重ねていた。
シャドウの捕縛の命令は出したものの、身重故にそれ以上を医者に止められたキアラカ皇太子妃は御所の奥にて、厳重な警備に守られて休んでいる。
「帰りましたか」
レーシャナ姫が先に、敬礼する彼に声をかけた。
「はっ、『キアラカ皇太子妃殿下を襲撃したシャドウなる者』について有益な情報を得て参りました」
「その様子だと……やはりアレは紛い物だったようですわね」
ミマナ姫が小さく頷いた。
「はっ。――昨晩、地獄横町にもシャドウが出現し、ヴォイドを撃破したとの情報を確認いたしました」
「……地獄横町に足を運んだのね、ギルガンド。キアラカの父にも会ったかしら?」
「……ご存じであらせられましたか」
身元の調査は徹底的に行いましたから、とミマナ姫は告げた。
「滅ぼされた吸血鬼の国ザルティリャが王族の末裔が、キアラカ達です」
レーシャナ姫が目を伏せて続けた。
「種族の名とは裏腹に、彼らは血を吸う事を何より下品な行いとし、専ら草花の精気を吸って生きてきました。彼らは植物とその栽培の知識に長け、国中が良質な薬草の栽培に適していた気候と土壌だった事もあり、医学と薬学が頭一つ抜きん出ていました。
このガルヴァリナ帝国とも通商条約を結び、かの国からもたらされる薬草と薬品は効果も効能も実に素晴らしかった、と記録にあります」
一呼吸してから、彼女はギルガンドに確認する。
「『乱詛帝』の時代に大規模な冷害がこの帝国を襲った事は知っていますね?」
「はっ」
「その最大の原因は『乱詛帝』がザルティリャを焦土に変えた事だとされています」ギルガンドは目を見張った。「ザルティリャはこの国の北方に位置し、擁した豊かな大草原には、群生する事で周辺一帯を自らが生育しやすい一定の温度に保つ効果を発するヤハノ草が大量に生えていました。……それをも焦土にした所為で、北方からの冷気がヤハノ草の草原が作り出していた緩衝剤も無くこの国にも大量に流れ込んだのだ、と」
ギルガンドが報告のために東宮御所に帰還した時には、既に後宮の女の戦装束である絢爛豪華で威厳のある衣服をまとい、美しいかんばせに戦化粧のようにきりりと眉を引いたミマナとレーシャナの皇太子妃二人が揃って相談を重ねていた。
シャドウの捕縛の命令は出したものの、身重故にそれ以上を医者に止められたキアラカ皇太子妃は御所の奥にて、厳重な警備に守られて休んでいる。
「帰りましたか」
レーシャナ姫が先に、敬礼する彼に声をかけた。
「はっ、『キアラカ皇太子妃殿下を襲撃したシャドウなる者』について有益な情報を得て参りました」
「その様子だと……やはりアレは紛い物だったようですわね」
ミマナ姫が小さく頷いた。
「はっ。――昨晩、地獄横町にもシャドウが出現し、ヴォイドを撃破したとの情報を確認いたしました」
「……地獄横町に足を運んだのね、ギルガンド。キアラカの父にも会ったかしら?」
「……ご存じであらせられましたか」
身元の調査は徹底的に行いましたから、とミマナ姫は告げた。
「滅ぼされた吸血鬼の国ザルティリャが王族の末裔が、キアラカ達です」
レーシャナ姫が目を伏せて続けた。
「種族の名とは裏腹に、彼らは血を吸う事を何より下品な行いとし、専ら草花の精気を吸って生きてきました。彼らは植物とその栽培の知識に長け、国中が良質な薬草の栽培に適していた気候と土壌だった事もあり、医学と薬学が頭一つ抜きん出ていました。
このガルヴァリナ帝国とも通商条約を結び、かの国からもたらされる薬草と薬品は効果も効能も実に素晴らしかった、と記録にあります」
一呼吸してから、彼女はギルガンドに確認する。
「『乱詛帝』の時代に大規模な冷害がこの帝国を襲った事は知っていますね?」
「はっ」
「その最大の原因は『乱詛帝』がザルティリャを焦土に変えた事だとされています」ギルガンドは目を見張った。「ザルティリャはこの国の北方に位置し、擁した豊かな大草原には、群生する事で周辺一帯を自らが生育しやすい一定の温度に保つ効果を発するヤハノ草が大量に生えていました。……それをも焦土にした所為で、北方からの冷気がヤハノ草の草原が作り出していた緩衝剤も無くこの国にも大量に流れ込んだのだ、と」
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